日本畜産学会報
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77 巻, 3 号
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一般論文
  • 奥村 寿章, 撫 年浩, 齋藤 薫, 三角 さつき, 増田 恭久, 佐久間 弘典, 藤田 和久, 河村 正
    2006 年 77 巻 3 号 p. 387-393
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    ビタミンAコントロールを用いた黒毛和種去勢牛において,血中ビタミンA濃度が30IU/dl未満,30~80IU/dlおよび80IU/dl以上で推移した月数の累計(以下低,中,高濃度で推移した期間)と産肉性との間の関係を調査した.調査牛は黒毛和種去勢牛22頭とし,肥育期間は7~24ヵ月齢(生後6.5~24.5ヵ月)までの約18ヵ月間とした.ビタミンAの給与量は,肥育前期(7~13ヵ月齢まで)は1995年度日本飼料標準の50%量,肥育中期(13~21ヵ月齢まで)は無添加,肥育後期(21~24ヵ月齢まで)は日本飼養標準の50%量を給与した.血中ビタミンA濃度が低濃度で推移した期間と脂肪交雑項目(粗脂肪含量,BMS)との間に有意な相関関係はなかった.また低濃度で推移した期間と枝肉重量との間の相関係数は-0.55であった(P<0.01).これらの結果から,血中ビタミンAが低濃度で推移した期間が長くなっても,脂肪交雑の向上は望めず,枝肉重量の低下を招くことが明らかになった.
  • 佐藤 忠, 菊地 裕人, 中井 朋一, 佐渡谷 裕朗, 花田 正明, 岡本 明治
    2006 年 77 巻 3 号 p. 395-399
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    Difructose Anhydride (DFA)IIIは難消化性の糖類であり,ヒトやラットで腸管からのカルシウム吸収促進と,腸内微生物に分解されにくいことが報告されている.そこで,乳牛へのDFA IIIの利用を検討するため,第一胃微生物による分解性をin vitro培養により調査した.試験1はDFA IIIと他に3種類の糖をホルスタイン種去勢牛の第一胃内容液を用いて24時間培養し,分解率を測定した.試験2はDFA IIIで馴致したホルスタイン種泌乳牛の第一胃内容液により,DFA IIIの分解性を調査した.DFA IIIは試験1および2のいずれにおいても分解されなかった.試験1で合わせて調査したラフィノース,ラクツロースおよびスクロースの24時間培養後の分解率はそれぞれ100,61および100%であった.DFA IIIを24時間培養した培養液のpHおよび短鎖脂肪酸の性状は糖無添加のものと差はなく,短鎖脂肪酸の各成分含量は他の3種類の糖を添加した培養液よりも低い値であった.
  • 家木 一, 岸本 勇気, 枡井 和恵, 嶋家 眞司, 谷口 幸三
    2006 年 77 巻 3 号 p. 401-407
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    ケールジュースの製造過程で発生する搾汁残渣(ケールジュース粕)の乳牛用飼料としての利用を図るため,サイレージ調製における乳酸菌添加(L区),乳酸菌とセルラーゼの同時添加(LC区)および無添加(対照区)の3処理のケールジュース粕サイレージについて,化学組成と発酵品質を測定するとともに,乳牛6頭を用いた嗜好性試験をおこなった.LC区では,中性デタージェント繊維および酸性デタージェント繊維含量が他の処理区よりも低く,逆に非構造性炭水化物とグルコース含量が高かった.発酵品質は,LC区が他の処理区に比べて,pHが低く乳酸含量の高い良質発酵となった.また,乳牛による嗜好性試験でも,LC区が供試したすべてのウシで良好な嗜好を示した.これらの結果から,ケールジュース粕のサイレージ調製では,乳酸菌とセルラーゼの同時添加処理によって発酵品質と乳牛の嗜好性を改善できることが明らかになった.
  • 三津本 充, 佐々木 啓介, 川島 知之, 佐伯 真魚, 立川 洋, 山本 英雄
    2006 年 77 巻 3 号 p. 409-416
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    肥育豚後期の養分要求量に合うように食品製造残さの米飯,豆腐,アン粕を原料とした飼料設計を行い,長期間の給与が可能となるように乳酸菌添加により発酵調製したリキッド飼料を用いた.さらに,冷蔵保存中の肉質の安定化を図るために茶カテキン類を添加給与する処理を組み合わせた.この発酵リキッド飼料と茶カテキン類を肥育豚に屠畜前6週間給与し,増体や枝肉性状,および冷蔵保存中の豚肉品質に及ぼす影響を調べた.その結果,発酵リキッド飼料給与は配合飼料給与に比べて一日増体量,生体重,屠畜前体重,枝肉重量,枝肉歩留,背脂肪厚,筋肉中の粗脂肪含量が増加し(P<0.05),内臓重量が低下した(P<0.01).茶カテキン類の給与により枝肉重量,枝肉歩留,筋肉重量が低下したが,筋肉中の粗脂肪含量は増加した(P<0.05).また,茶カテキン給与による冷蔵保存中の肉色や脂質酸化の経時変化への影響は認められなかった(P>0.10).以上の結果から,肥育豚への食品製造残さ発酵リキッド飼料の給与による効率的な豚肉生産の可能性が示された.また,高濃度の茶カテキン類の添加給与による豚肉の品質安定化の効果は得られなかった.
  • 松永 孝光, 柴田 清弘, 雜賀 愛, 賀来 由夏, 河原 礼人, 岡本 武, 中島 誠人, 西村 敏英, 新村 裕
    2006 年 77 巻 3 号 p. 417-424
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    イタリア産乾塩生ハムであるクラテッロの品質特性を調べ,パルマハムならびにイベリアハムと比較した.クラテッロの生菌数は,2.0×104~2.5×106で,その主たるものは乳酸菌であった.大腸菌,黄色ブドウ球菌等の病原菌は検出されなかった.クラテッロの脂肪酸は,パルマハムのものとほぼ同じ組成を示したが,イベリアハムのものとは若干異なっていた.クラテッロのオレイン酸の割合は,イベリアハムのものより8.2%少なく,ステアリン酸やリノール酸の割合は,それぞれ4.4%と5.4%多かった.クラテッロに顕著に検出された有機酸は,乳酸とグルコン酸であった.クラテッロの遊離アミノ酸含量は,パルマハムやイベリアハムよりも多く,100g当たり約4.7gであった.とくに,Glu, Lys, Leu, Ala, Aspの含量が多かった.またペプチド含量も,他のハムに比べて高い値を示した.この中のペプチドを解析した結果,トロポニンTの分解物であるペプチド断片が検出された.クラテッロ,パルマハムならびにイベリアハムを官能評価した結果,クラテッロが他に比べて有意にまろやかであると評価された.
  • 石黒 裕敏, 木舩 厚恭
    2006 年 77 巻 3 号 p. 425-431
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    乳牛の運動負荷時の生理反応を知る目的で,ラウンダーまたは運動トラックを用いた歩行・走行による運動負荷が,心拍数(HR)および血中乳酸値(BL)に及ぼす影響について検討した.試験は繋養した15頭のホルスタイン種乾乳牛を用い2つの実験を行った.供試牛の平均の年齢および体重は,5.6±1.7歳および786±72kgであった.実験1ではラウンダーを用い,5段階の歩行速度で10分間の歩行運動を行った.また,実験2では1周100mの運動トラックにおいて,4段階の速度で各3周の歩行または走行運動を行い,その時のHRおよびBLをそれぞれ測定した.歩行・走行速度(WRS)とHRの関係は,11.3~64.7m/分の速度とHRとの間に有意な相関(r=0.73)が認められ,直線回帰式が得られた(実験1).また,50~最大186m/分の速度とHRとの間にも有意な相関(r=0.75)が認められ,実験1と同様に直線回帰式が得られた(実験2).WRSとBLの関係は両者間に有意な高い相関(r=0.94)が認められ,指数曲線回帰式が得られた(実験2).この回帰式から判断すると,乳牛において歩行速度が49.8m/分未満は有酸素的な代謝からのエネルギー供給であり,そこから速度139.5m/分までは徐々に無酸素的なエネルギーの供給が加わり,そして,この速度を超えると血中乳酸の蓄積が認められ,無酸素的な代謝によるエネルギーの供給がさらに高まることが示唆された.
  • 高橋 正宏
    2006 年 77 巻 3 号 p. 433-442
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/02/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,廃食用油を活用した牛糞オガクズ混合物の堆肥化の方法および窒素源添加の効果について検討した.堆肥化7日後に廃食用油だけの添加では廃食用油の分解に時間を要したが,廃食用油とグリシンを同時に添加すると廃食用油の分解も速やかに進み,発酵温度も高く,持続時間も長かった.堆肥化の途中に廃食用油を添加する場合は,窒素源の添加が必要であった.廃食用油を原料と同時に添加した場合,廃食用油以外の有機物の分解率は無添加と比べて低くなった.廃食用油がほとんど無くなった後も廃食用油以外の有機物分解率は無添加と比べて低くなった.堆肥化7日後に廃食用油とグリシンを同時に添加した場合,廃食用油以外の有機物分解率も無添加区に近い値となった.牛糞オガクズ堆肥に廃食用油を添加するには,堆肥化7日後に窒素源と同時に添加するのが有効であった.
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