日本畜産学会報
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78 巻, 3 号
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一般論文
  • 坂東島 直人, 石田 孝史, 原田 宏
    2007 年 78 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    超音波診断装置を利用した牛生体の脂肪交雑推定は以前より多数報告されているが,これらは主に得られた画像をハードコピーやVTRへ録画することで行われてきた.本研究はデジタル保存された超音波診断画像を用い,その画像情報を利用したより客観性の高い脂肪交雑判定の可能性について検討した.超音波診断装置はHS-2000を用い,肉用肥育牛499頭に対して屠畜前日に測定を行った.超音波診断装置によって得られた画像をパーソナルコンピュータに取り込み,市販の汎用ソフトを用いて画像解析を行い,その画像解析形質とBMSとの関連性について検討した.画像解析の結果,画像解析形質はBMSの増減とともに変化が認められた.画像解析形質を独立変数として重回帰分析によりBMSの推定式の検討を行った結果,寄与率は0.603が得られた.また,得られた重回帰式によりBMSの推定を行ったところ,BMS±1の範囲で71.5%が推定できた.
  • 田村 哲生, 井上 和典, 篠原 晃, 古賀 照章
    2007 年 78 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    泌乳牛の日中の部分尿(4時間尿,08 : 00-12 : 00および12 : 00-16 : 00)から尿中総窒素(N)およびアラントインの排泄日量が推定できることを明らかにした.7頭の尿中クレアチニン,総Nおよびアラントインの濃度を測定した.総N/クレアチニン濃度比,およびアラントイン/クレアチニン濃度比は1日を通じてほぼ一定であった.クレアチニン排泄日量は107.2mg/kg0.75であった.これらのことから,式[総N(あるいはアラントイン)排泄日量(mg)=4時間尿の総N(あるいはアラントイン)濃度(mg/dL)/4時間尿のクレアチニン濃度(mg/dL)×107.2×代謝体重(kg0.75)]が導かれた.この式による推定値と実測値との間に有意な相関が認められ(r>0.750,P<0.001),また,実測値=推定値と判断された.以上より,日中の4時間尿から総Nおよびアラントインの排泄日量を推定できる.
  • 八代田 千鶴, 小原 潤子
    2007 年 78 巻 3 号 p. 317-324
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    分娩後の配合飼料給与水準が,黒毛和種の乳量と乳成分および血液性状に及ぼす影響を検討した.黒毛和種成雌牛18頭を供試し,給与水準を維持(L区),維持+乳量7kgレベル(M区),維持+乳量14kgレベル(H区)の3処理設定した.維持レベルに相当する量として,乾草を現物で7.5kg/日の一定給与とし,体重差および処理区ごとの乳量レベルに相当する増給分を配合飼料の給与量で調節した.給与飼料中の粗飼料割合はL, M, H区でそれぞれ,87.6,64.1,47.5%であった.分娩後1~4週目まで週1回,乳量と乳成分および血液成分を測定した.乳量はL, M, H区でそれぞれ5.1,5.4,6.7kg/日,乳タンパク質率は3.55,3.75,3.84%であり,給与水準の増加にともない有意に増加した(P<0.01).乳脂肪率はそれぞれ5.57,6.03,5.10%とM区で有意に高かった(P<0.05).乳糖および無脂固形分率は処理間に差はなかった.血中尿素態窒素濃度は給与水準の増加にともなって有意に増加し(P<0.01),グルコース濃度は有意に低下した(P<0.05).血中遊離脂肪酸濃度とコレステロール濃度は処理間で変動が異なった.以上の結果から,黒毛和種において分娩後の給与水準を高めると乳量が増加し,乳成分は粗飼料割合に影響されることが示された.
  • 植竹 勝治, 金子 さやか, 森田 茂, 湯浅 友紀, 干場 信司, 田中 智夫
    2007 年 78 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    搾乳牛78頭を対象に,フリーストール牛舎において,ヒトの介在場面でウシが示す行動反応12項目に対して因子分析を行った.その上で,得られた因子の因子得点と乳量,産次,乳期,跛行の有無との関連を検討した.第1因子はヒトに対する逃避反応と搾乳室への進入順位,第2因子は搾乳室からフリーストールに戻る際の所要時間,第3因子は搾乳時気質とフリーストールでの居場所,第4因子は搾乳室戻り通路での立ち止まり頻度と見回りのヒトに対する反応に負荷量が高いことから,それぞれ「ヒトに対する恐怖心の強さ」,「鈍重さ」,「搾乳に対する嫌悪性」,「感受性」と解釈した.ヒトに対する恐怖心の強さ(r=-0.20,P=0.10)および搾乳に対する嫌悪性(r=-0.22,P=0.07)と乳量との間に弱い相関がみられた.また,鈍重さに対する産次(P<0.05)ならびに感受性に対する跛行の有無(P<0.01)の効果がそれぞれ有意であった.
  • 長峰 孝文, 中澤 宗生, 古谷 修, 伊藤 稔, 小堤 恭平
    2007 年 78 巻 3 号 p. 331-338
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    645の堆肥について,食中毒の原因となる代表的な細菌であるサルモネラおよび志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157の検出を行った.堆肥化の過程によって損傷を受けたそれらの細菌を賦活化させるため,選択培地による試験の前に,堆肥サンプルを緩衝ペプトン水とともに37℃にて18~24時間インキュベートした.サルモネラが検出された堆肥は8件(1.2%)であり,3件から分離された株が公衆衛生上問題のある血清型であった.STEC O157は,検出されなかった.堆肥からサルモネラが検出された原因は,堆肥生産の際の低い処理温度もしくは堆肥化後の原料の混入が考えられた.
  • 矢吹 芳教, 森 達摩, 相子 伸之, 切畑 光統, 杉村 仁, 田中 康男
    2007 年 78 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    グラファイトカーボン(GC)を0.5-5%含むアルギン酸ゲルビーズを作製し,畜産排水の色度吸着試験を実施した.これらのビーズは,磁力により攪拌するため,マグネタイトを2%混合させることにより磁性を持たせた.5%,2.5%,0.5%のGCを含むビーズ10gを畜産排水100mLに加え,3時間バッチ処理したところ排水の色をそれぞれ79,80,73%除去できた.同様のバッチ処理を,排水を交換して10回繰り返し実施したところ5%と2.5%のGCを含むビーズでは50%以上の色度除去率を維持したが,0.5%のGCを含むビーズでは色度除去率が13%まで低下した.色度除去率が低下したビーズをメタノールで洗浄することにより色度除去率は回復した.以上の結果から,GCを含有した磁性アルギン酸ゲルビーズは繰り返し使用でき,畜産排水中の色度除去のための有効な資材として利用できることが明らかとなった.
技術報告
  • 平 俊雄
    2007 年 78 巻 3 号 p. 345-348
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    牛用飼料には牛海綿状脳症(BSE)の発生を防止するため,肉骨粉等の動物性タンパク質の混入は認められていない.飼料中の肉骨粉の検出には顕微鏡鑑定,ELISA,PCRが組み合わされているが,顕微鏡鑑定は経験を要し,呈色に水銀を用いる検査では安全性に難点がある.本試験ではニンヒドリンと塩酸の併用による獣骨の鑑定法の開発を試みた.骨は主にタンパク質(コラーゲン)とリン酸カルシウムから構成される.獣骨の小片はタンパク質の検出剤であるニンヒドリンにより青紫色に発色し,塩酸により発泡した.一方,穀類の小片はニンヒドリンにより青紫色に発色したが,塩酸では発泡しなかった.また,鉱物質のリン酸カルシウムはニンヒドリンにより発色はしなかった.このように本試験では,飼料の主な原料である獣骨と穀類およびリン酸カルシウムとをニンヒドリンと塩酸を併用することにより簡易に区別することができた.
  • 大塚 舞, 大森 英之, 田島 清, 川島 知之
    2007 年 78 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    ギ酸による甘しょ焼酎粕の保存性改善効果について検討した.試験区は対照区(CN区)と0.2%ギ酸添加区(FA区)とし,それぞれ25℃で10日間保存し,pH,好気性菌,大腸菌群,酵母数,クエン酸濃度,エタノール濃度を測定した.FA区のpHは10日目まで有意に低い値を示した(P<0.05).CN区の好気性菌数は4日目まで増加したが,FA区での増加は緩やかで,4,6,8日目に有意に低い値を示した(P<0.05).酵母数はCN区では2日目に大きく増加したが,FA区では大きな増加は見られず,2日目以降有意に低い値を示した(P<0.05).クエン酸濃度は,CN区で8日目に減少し,10日目には検出限界以下を示したが,FA区では8日目まで変化は見られず,10日目に有意に高い値を示した(P<0.01).大腸菌群は両区とも検出されず,エタノールの推移に両区間に差は見られなかった.よって,甘しょ焼酎粕に0.2%量のギ酸を添加すると,微生物の増殖を抑制し,品質の保存性を高めることが明らかとなった.
  • 嶋澤 光一, 本多 昭幸, 竹野 大志, 西川 徹, 尾野 喜孝
    2007 年 78 巻 3 号 p. 355-362
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/02/25
    ジャーナル フリー
    流通規格から外れたバレイショの有効活用を目的に,バレイショ混合サイレージを調製し,成分および品質の調査を行うとともに,その給与が肥育豚の発育および肉質に及ぼす影響について検討した.バレイショ混合サイレージはバレイショを原物割合で50%含有し,リジン含量が日本飼養標準・豚の要求量以下になるように調製することで,pHが低く,栄養損失の少ない良質なサイレージとして調製できた.総数22頭の三元交雑豚(WL・D, 平均体重63.4kg)をバレイショ混合サイレージを給与するバレイショ給与区10頭と,市販配合飼料を給与する対照区12頭に区分けし,平均体重が110kgに達するまで肥育を行った.バレイショ給与区は対照区より有意に増体量が少なかった(P<0.01)ため,体重110kgに達するまでに要した日数も約20日長かった.ロース肉の脂肪含量はバレイショ給与区で3.8~4.4%と対照区の1.8~2.1%より高く(P<0.01),肉色の明度(L*値)および黄色度(b*値)も高い傾向にあった.食味官能検査の結果,バレイショ混合サイレージを給与した豚肉は,対照区の豚肉より有意に香りが弱く,柔らかく,そして風味が良いため総じて美味しいと評価された(P<0.01).以上の結果より,流通規格外バレイショを原料としたサイレージは肥育豚の発育に遅れをもたらすものの,脂肪交雑に富む食味の良い豚肉を生産することが示唆された.
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