日本畜産学会報
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80 巻, 2 号
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一般論文(原著)
  • 佐々木 修, 相原 光夫, 長嶺 慶隆, 石井 和雄, 佐藤 正寛
    2009 年 80 巻 2 号 p. 145-156
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    牛群検定記録を用いて,北海道および都府県の農家からそれぞれ平均乳量上位,中位,下位20%を抽出し,さらにそれぞれの中から平均産次数を基準に上位,中位,下位20%を抽出することで,地域ごとに9グループずつ合計18グループを作成した.これらのグループに含まれる24,742戸において1979年から2004年に分娩した2,191,204頭,3,646,839記録を解析に用いた.農家あたりの分娩頭数規模は年々増加し,乳量上位かつ産次数下位のグループにおける規模拡大が顕著であった.泌乳形質の生産量は北海道で都府県より多く(P < 0.01),年々増加した.産次数は北海道で都府県より長く(P < 0.01),1984年から1988年まで大きく減少し,1997年以降一定となった.北海道では乳量の高いグループで産次数が短かった.初産分娩時日齢は北海道で都府県より遅く(P < 0.01),年々早くなる傾向がみられた.北海道では乳量が高いほど,また産次数が短いほど初産分娩時日齢が早い傾向にあった.分娩間隔は北海道で都府県より短く(P < 0.01),1986年以降長くなる傾向があった.都府県では,乳量が高いほど,また産次数が長いほど分娩間隔が短くなる傾向がみられた.搾乳日数は北海道で都府県より短く(P < 0.01),1993年以降長くなる傾向にあった.また,産次数の長い方が長い傾向にあった.体重は北海道で都府県より重く(P < 0.01),年々重くなる傾向があった.また,乳量の高い方が重かった.濃厚飼料給与量は北海道で都府県より少なく(P < 0.01),年々増加する傾向がみられた.また,乳量が高いほど,産次数が短いほど多い傾向がみられた.乳生産量の増加が産次数低下の一つの要因だが,産次数の低下の原因は複雑であると考えられた.分娩間隔が年々長くなっていることは,乳生産量よりも年次ごとの乳生産量の増加に飼養管理の変更が追いつかないことが原因と考えられた.産次数が長いグループでは,濃厚飼料給与量を低く抑え,高い繁殖性に加え泌乳期における障害の少ないことが示唆された.
  • 小松 正憲, 西尾 元秀, 佐藤 正寛, 千田 雅之, 広岡 博之
    2009 年 80 巻 2 号 p. 157-169
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家経営において,BMSナンバーや枝肉重量(CW)に関与するQTLアリル型情報はどの程度収益上昇に活用できるかを,初期QTLアリル頻度 (p),計画年数 (T),DNAタイピング料金(CTYP),使用する精液差額(SEM),種雄牛と繁殖雌牛の割合(R (s/d))を変化させて検討した.その結果,BMSナンバーに関わるQアリルを1個持つことで得られるBMSランク上昇分(ΔBMSQTL)を1.0,BMSナンバー1ランク上昇分の枝肉単価(CWPBMS)を150円/kg, CWを440 kg, CWに関わるQアリルを1個持つことで得られる枝肉重量上昇分(ΔCWQTL)を20 kg, 黒毛和種去勢枝肉単価(CWPU)を1,900円/kgとした場合,QTLアリル型情報は,黒毛和種繁殖肥育一貫経営農家の経営に充分活用できると考えられた.また,以下のことが明らかになった.QTLアリル型情報を経営に活用する際,集団におけるpの頻度,SEMおよびT数が重要であり,CTYPR (s/d) の重要性は低かった.CTYPが5千円/頭,SEMが1万円程度以下で,1頭当たり1万円程度の収益上昇を確保するためには,pの頻度は,BMSナンバーでは0.6~0.7以下,CWでは0.4~0.5以下であることが示唆された.繁殖雌牛集団のQTLアリル型情報は,pの頻度が0.5~0.7程度の範囲内,T数がBMSナンバーで6年以上,CWで8年以上であれば,収益上昇に貢献できることが明らかになった.
  • 星野 佑治, 玉置 和之, 稲山 一成, 上野 光敏, 永易 彩, 保坂 善真, 植田 弘美, 竹花 一成
    2009 年 80 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    飼料成分の違いによる仔豚空腸絨毛の変化を,形態学的手法を用いて評価した.同腹7頭の仔豚のうち,離乳直後1頭を無処理群とし,3頭を乳製品原料主体飼料給餌群(乳製品飼料群),3頭を植物原料主体飼料給餌群(植物飼料群)に区分し用いた.離乳する6日前から餌付けを行い,離乳後,乳製品飼料群には乳製品を主体とした飼料を,植物飼料群には植物原料を主体とした飼料をそれぞれ給餌し,飲水は自由とした.体重増加割合は離乳3日後および14日後で,乳製品飼料群よりも植物飼料群の方が高かった.絨毛長は離乳3日後,吸収上皮細胞の大きさは離乳14日後,微絨毛長は離乳3日後および14日後に,いずれも乳製品飼料群に比べ植物飼料群で有意に増大していた.また,離乳3日後において乳製品飼料群に比べ植物飼料群では吸収上皮細胞の剥離はほとんど観察されなかった.その要因としては,乳製品飼料群よりも植物飼料群に与えた飼料の方が消化され易い成分構成であったことが考えられ,それ故に絨毛や吸収上皮細胞の成長が促進されたものと思われる.以上の結果より,離乳後に植物主体の飼料を与えることによって仔豚の空腸絨毛の成長が促進され,吸収面積が増大して栄養素の吸収効率が向上したことが示唆された.
  • 前田 恵助, 味村 妃紗, 筒井 視有, 築野 卓夫, 入江 正和
    2009 年 80 巻 2 号 p. 179-188
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    飼料用ライストリエノールの飼料添加濃度の違いが採卵鶏の卵黄中と肝臓中のトコフェロール(Toc),トコトリエノール(T3)濃度,卵黄中TBARS濃度,生産性,卵質に与える影響を調べた.採卵鶏200羽を50羽ずつ4群に分け,それぞれ飼料用ライストリエノールを0%,0.25%,0.50%,1.00%含む飼料を24週齢から74週齢まで不断給与した.単回帰分析の結果,飼料中のToc, T3濃度と卵黄中と肝臓中のToc, T3濃度に正の相関が認められた.卵黄中のToc同族体濃度はα-Toc > γ-Toc > β-Toc > δ-Tocとなり,T3同族体濃度はα-T3 > γ-T3となった.卵黄中TBARSは飼料用ライストリエノールの飼料添加濃度の上昇にしたがい減少し,卵黄色はa*がやや減少した.以上より,飼料用ライストリエノールの飼料添加レベルは卵黄中のα-,β-,γ-トコフェロールおよびα-,γ-トコトリエノール濃度をほぼ直線的に高め,卵黄への移行はトコフェロールで顕著であり,生産性には影響がないことがわかった.
  • 嶋澤 光一, 本多 昭幸, 尾野 喜孝
    2009 年 80 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    昼間屋外飼養とバレイショ混合サイレージ給与が,肥育豚の行動,生産性,肉質および筋線維特性に及ぼす影響を検討する目的で,三元交雑豚(WL・D)(平均体重57.4 kg)32頭を飼養環境(屋内飼養vs.屋外飼養)と給与飼料(市販飼料vs.バレイショ混合サイレージ)を要因とした4区(2要因×2水準)に配置して各区の平均体重が105 kgに達するまで肥育した.行動における休息割合では,屋外飼養区が屋内飼養区より,またバレイショ混合サイレージ給与区が市販飼料給与区より少なかった(P < 0.01).増体量では,屋外飼養区が屋内飼養区より,またバレイショ混合サイレージ給与区が市販飼料区より低かった(P < 0.01).屠体成績において,屋外飼養区は屋内飼養区より背脂肪厚が薄く(P < 0.01),屠体長が長い(P < 0.01)特徴があり,ロース肉の理化学的特性においては,バレイショ混合サイレージ給与区が市販飼料給与区より筋肉内脂肪含量で高く(P < 0.01),破断応力で低い(P < 0.01)特徴を示した.筋線維型構成割合において,I型筋線維(遅筋線維)には区間差は認められないものの,II型筋線維(速筋線維)では,屋外飼養区が屋内飼養区より,またバレイショ混合サイレージ給与区が市販飼料給与区よりIIA型(速筋線維-酸化型)の構成割合で高かった.以上の結果より,屋外飼養およびバレイショ混合サイレージ給与は,屋内で市販飼料を給与する場合より生産性の点では劣るものの,枝肉の形状,豚肉の理化学的特性および筋線維特性の異なる豚肉を生産することから,様々な消費者ニーズに対応した豚肉生産へ応用可能であると考えられる.
  • 石塚 譲, 因野 要一, 西岡 輝美, 上脇 昭範, 入江 正和
    2009 年 80 巻 2 号 p. 199-206
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    野生イノシシにおける最長筋の一般成分,α-トコフェロールおよび色調,大腿二頭筋のα-トコフェロール,皮下脂肪の厚さおよび脂肪酸組成について捕獲時期と性の影響を検討した.最長筋において水分含量と粗脂肪含量は狩猟期で高く(P < 0.05),粗タンパク質含量は非狩猟期で高かった(P < 0.01).また,粗脂肪含量はいずれの時期,性でも1%以下であった.α-トコフェロール含量は非狩猟期(P < 0.01)ならびに雄(P < 0.05)で高かった.イノシシ肉色調は暗赤色~濃赤色であった.表面色調は切断24時間後でメト化が認められた.皮下脂肪厚は狩猟期で厚かった(P < 0.01).皮下脂肪の飽和脂肪酸割合は非狩猟期で高く(P < 0.05),オレイン酸割合およびモノ不飽和脂肪酸割合(オレイン酸を含む)は狩猟期で高かった(P < 0.01).肉におけるこれらの成分の違いは餌や生息環境に起因するものと考えられた.以上より,野生イノシシにおける肉と脂肪の品質は捕獲時期と性の影響を受けることが分かった.
  • 村澤 七月, 中橋 良信, 浜崎 陽子, 堀 武司, 加藤 貴之, 口田 圭吾
    2009 年 80 巻 2 号 p. 207-213
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種(JBL : 1,739頭),褐毛和種(JBR : 105頭),黒毛和種(♂)とホルスタイン種(♀)の交雑種(F1 : 1,362頭)およびホルスタイン種(HOL : 88頭)における,6-7肋骨間ロース芯内脂肪交雑の配置バランスに関する特徴を明らかにした.胸椎端部を底辺とした時の右上の領域を1象限とし,反時計回りに2,3,4象限と割り当て,1~4象限における画像解析形質の最小二乗平均値の変動係数を脂肪交雑の配置バランス指標とした.各品種の月齢とBMSナンバーはそれぞれ,28.79,5.2(JBL),26.08,3.2(JBR),27.20,3.1(F1)および20.39,2.2(HOL)であった.各象限の脂肪面積割合は,すべての品種において1および4象限が2および3象限に比べて高かったが,変動係数はホルスタイン種(10.77)と交雑種(4.63)において,他品種(1.97~1.99)よりも高く,脂肪面積割合の配置バランスが悪いことが示された.また,すべての品種において,3および4象限のあらさ指数1~5は高く,細かさ指数は低い傾向にあった.あらさ指数1~5の変動係数はホルスタイン種において特に高かった(40.77).脂肪交雑配置バランスの偏り方はどの品種も同様であったが,変動係数の大小により,バランスの偏りの程度は品種で異なった.
  • 早川 徹, 佐藤 三佳子, 雜賀(江草) 愛, 高畑 能久, 森松 文毅, 野村 義宏
    2009 年 80 巻 2 号 p. 215-222
    発行日: 2009/05/25
    公開日: 2009/11/25
    ジャーナル フリー
    ブタ大動脈よりエラスチンの酵素加水分解ペプチド(エラスチンペプチド)を調製し,その摂取が皮膚にもたらす影響について検討した.生後7週の雄ヘアレスマウスにエラスチンペプチドなどの試料を経口投与し,63日間の飼育を行った.皮膚老化モデルとして光老化モデルを採用し,週3回の頻度で紫外線を照射した.照射52日目および55日目にエラスチンペプチドとコラーゲンペプチドを混合投与した群およびコラーゲンペプチド投与群において,皮膚水分量が照射対照群に比べて有意に上昇し,エラスチンペプチドの単独投与群において上昇傾向が認められた.エラスチンペプチドやコラーゲンペプチドの単独投与に比べ,皮膚中の存在比やそれに近い比での混合投与による相乗効果が得られ,光老化に対する皮膚症状の改善が認められた.つまり,エラスチンペプチドがコラーゲンペプチドの摂取による皮膚水分量の上昇効果を増強することが示唆された.
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