牛群検定記録を用いて,北海道および都府県の農家からそれぞれ平均乳量上位,中位,下位20%を抽出し,さらにそれぞれの中から平均産次数を基準に上位,中位,下位20%を抽出することで,地域ごとに9グループずつ合計18グループを作成した.これらのグループに含まれる24,742戸において1979年から2004年に分娩した2,191,204頭,3,646,839記録を解析に用いた.農家あたりの分娩頭数規模は年々増加し,乳量上位かつ産次数下位のグループにおける規模拡大が顕著であった.泌乳形質の生産量は北海道で都府県より多く(
P < 0.01),年々増加した.産次数は北海道で都府県より長く(
P < 0.01),1984年から1988年まで大きく減少し,1997年以降一定となった.北海道では乳量の高いグループで産次数が短かった.初産分娩時日齢は北海道で都府県より遅く(
P < 0.01),年々早くなる傾向がみられた.北海道では乳量が高いほど,また産次数が短いほど初産分娩時日齢が早い傾向にあった.分娩間隔は北海道で都府県より短く(
P < 0.01),1986年以降長くなる傾向があった.都府県では,乳量が高いほど,また産次数が長いほど分娩間隔が短くなる傾向がみられた.搾乳日数は北海道で都府県より短く(
P < 0.01),1993年以降長くなる傾向にあった.また,産次数の長い方が長い傾向にあった.体重は北海道で都府県より重く(
P < 0.01),年々重くなる傾向があった.また,乳量の高い方が重かった.濃厚飼料給与量は北海道で都府県より少なく(
P < 0.01),年々増加する傾向がみられた.また,乳量が高いほど,産次数が短いほど多い傾向がみられた.乳生産量の増加が産次数低下の一つの要因だが,産次数の低下の原因は複雑であると考えられた.分娩間隔が年々長くなっていることは,乳生産量よりも年次ごとの乳生産量の増加に飼養管理の変更が追いつかないことが原因と考えられた.産次数が長いグループでは,濃厚飼料給与量を低く抑え,高い繁殖性に加え泌乳期における障害の少ないことが示唆された.
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