日本畜産学会報
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81 巻, 4 号
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一般論文
  • 山口 諭, 河原 孝吉, 後藤 裕作, 中川 智史, 増田 豊, 鈴木 三義
    2010 年 81 巻 4 号 p. 401-412
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    本研究では,多形質予測法(MTP)を使用して途中経過記録から305日乳生産量の予測精度を調査した.データは,1998から2005年に北海道で収集された初産から10産のホルスタイン種からなる検定日記録である.真の305日乳生産量は,1ヵ月間隔で実施した11回の検定日記録を使用し(305日の完成記録),検定日間隔法(TIM)からの推定値と仮定した.TIMとMethod Pの修正法を組み合わせた手法(TIM-MP)およびMTPを乳期途中の記録から305日乳生産量を予測するために使用した.牛群ごとの事前情報を考慮したMTPは,TIM-MPと比較し,検定回数の少ない段階で精度の高い305日乳生産量の予測が可能であった.MTPにおいて事前情報は,牛群ごとに細分化し,頻繁に更新することが305日乳生産量の予測精度を維持するのに重要であると考えられた.また,MTPは,様々な検定方法や検定間隔の記録からもより精度の高い305日乳生産量の予測が可能な手法であった.
  • 坂口 実
    2010 年 81 巻 4 号 p. 413-419
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    搾乳牛を用い,無線送信歩数計で計測した歩数上昇による発情検出の成績(検出指数 : 検出率×的中率)を,装着部位および飼養条件による違いも含めて検討した.フリーストール飼養条件下では,歩数計を頸に装着しても,十分に実用的な発情検出成績が得られた.また,脚に歩数計を装着し,放牧条件も含めて比較・検討した結果,1日輪換の昼夜放牧条件下では,移動距離の影響により発情検出成績がやや劣るものの,フリーストールおよび中牧区での時間制限放牧条件下では,良好な発情検出成績を示し,実用的な発情検出方法であることが確認された.転牧に際しては,毎日の搾乳施設への移動距離の変動を少なくすることにより,発情検出成績の向上が期待できると考えられた.以上の結果から,無線送信歩数計を用いた歩数上昇による発情検出法は,搾乳牛でも有効であるが,昼夜放牧条件下では搾乳前後の移動距離の変化に注意する必要のあることが示された.
  • 谷川 珠子, 大坂 郁夫, 川本 哲, 原 悟志
    2010 年 81 巻 4 号 p. 421-429
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    破砕処理トウモロコシサイレージ(CS)におけるローラ間隔の違いが,乳牛の養分利用に及ぼす影響を検討した.黄熟期に設定切断長を19 mmとし,ローラ間隔5 mm (CPR)または1 mm (FPR)で破砕処理をして収穫し,飼料全体の粗タンパク質含量が14%となるように,各CSに大豆粕を混合したものを供試した(CPR区,FPR区).これらをルーメンおよび十二指腸カニューレを装着したホルスタイン種乾乳牛3頭に給与した.CSの化学成分および乾物摂取量は区間に差がなかった.ルーメン内のデンプン消化率はFPR区が高かったが(P < 0.05),有機物およびNDF消化率は区間に差がなかった.ルーメン液のpHはFPR区が低かった(P < 0.05).可消化養分総量,ルーメン内の微生物体窒素合成効率および粗飼料価指数にはローラ間隔の影響がみられなかった.以上より,黄熟期に収穫したCSにおいて,設定切断長が19 mmのとき,ローラ間隔を5 mmから1 mmにしても養分利用性の向上はみられず,ローラ間隔5 mmで破砕処理の効果が十分に得られることが示された.
  • 奥村 寿章, 波田 瑞乃, 齋藤 薫, 藤嶋 吉宏, 高橋 奈緒子, 爲岡 奈々恵, 阿部 剛, 平山 宗幸, 武田 和也, 曽和 拓, 佐 ...
    2010 年 81 巻 4 号 p. 431-442
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    同一ドナーから作出した黒毛和種体細胞クローン牛11頭,ドナー牛1頭および一般牛9頭を用いて,体細胞クローン牛の発育および肉質形質を調査した.体細胞クローン牛の発育形質の変動係数は,体重,体高および胸囲で一般牛間より低く,BMS No.を含む枝肉形質の変動係数も同様の傾向を示した.また,体細胞クローン牛の胸最長筋の理化学特性,官能特性の変動係数は,筋線維とコラーゲンを除く,ほとんどの形質で一般牛より低かった.体細胞クローン牛と一般牛との平均値は,すべての発育形質で同水準であった.体細胞クローン牛の肉質形質の平均値は多くの形質で一般牛と異なったが,これまで報告されている黒毛和種の値と顕著な違いはなく,異なった要因の多くは遺伝的な筋肉内脂肪蓄積量の違いで説明できた.また,ミトコンドリアDNAは,筋肉内脂肪に影響を及ぼす可能性があるが,その効果は小さいことが示された.なお,体細胞クローン牛とそのドナー牛との発育および枝肉形質は,高い相似性を示した.以上の結果から,体細胞クローン牛間および体細胞クローン牛とドナー牛との発育と肉質の相似性は高く,クローン技術により作出したウシの発育および肉質は正常値の範囲内にあることが確認された.
  • 鈴木 知之, 神谷 裕子, 田中 正仁, 服部 育男, 佐藤 健次
    2010 年 81 巻 4 号 p. 443-448
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    米焼酎粕濃縮液で大豆粕を置き換えた混合飼料(TMR)の乳牛への給与が摂取量,消化性および乳生産成績に及ぼす影響を検討するため,4頭のホルスタイン種泌乳牛に大豆粕を20%(乾物ベース)含むTMR(大豆粕区)あるいは大豆粕を米焼酎粕濃縮液で置き換えたTMR(焼酎粕区)を給与し,1期14日間の反転法で試験を行った.濃厚飼料の種類や割合を変えることにより,TMRの粗濃比,可消化養分総量および窒素含量を両区でそろえた.米焼酎粕濃縮液の粗タンパク質含量は大豆粕と同程度であったが,酸性デタージェント不溶性窒素含量は高かった.摂取量,1日の反すう時間を除く咀嚼活動,乳生産量および乳成分に処理間差は見られなかったが,焼酎粕区は大豆粕区に比べ血漿中リン濃度は高く,窒素吸収率,血漿および乳中尿素態窒素濃度が低かった.以上から,窒素吸収率を考慮して飼料設計を行えば,米焼酎粕濃縮液は泌乳牛用TMR原料として有用であることが示された.
  • 鈴木 知之, 神谷 裕子, 田中 正仁, 服部 育男, 野中 最子, 佐藤 健次
    2010 年 81 巻 4 号 p. 449-456
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    カンショ焼酎粕濃縮液(以下,濃縮液)の泌乳牛向け発酵混合飼料(発酵TMR)原料としての可能性を検討するため,ホルスタイン種泌乳牛4頭に濃縮液を20%(乾物ベース)含む発酵TMR(濃縮液区)あるいはこれを含まない発酵TMR(対照区)を給与した1期21日間の試験を行い,2期目には処理を反転した.加えて,発酵TMRの発酵品質を調査した.TMRの粗濃比,水分含量,可消化養分総量および粗タンパク質含量は両区でそろえた.濃縮液を添加した発酵TMRの発酵品質は良好であり,自由摂取量に差は見られなかった.濃縮液無添加の発酵TMRと比較すると,一日の反すう時間は低下したが,反すう胃内発酵環境や窒素出納に差は見られなかった.濃縮液のカリウム含量の高さから,濃縮液区の排尿量は対照区よりも高くなった.4%脂肪補正乳量に処理間差は見られなかった.以上の結果から,カンショ焼酎粕濃縮液は泌乳牛用発酵TMR原料として利用可能であることが示された.
  • 木村 知史, 大石 風人, 広岡 博之, 横井 大輔, 熊谷 元
    2010 年 81 巻 4 号 p. 457-466
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    トールフェスクと圧ぺん大麦を各々粗飼料および濃厚飼料基質とする条件下でのグアノシン(GR)およびイノシン(HxR)の投与効果を調べるため,第一胃内の発酵モデルとしてin vitro法を用いて検討した.添加物量は,尿素窒素当量で40 mLの培養液に対し各々4, 16および64 mgとした.48時間でのin vitroガス発生量は,両基質条件でGRおよびHxR添加で尿素添加に比べて高かった(P < 0.05).in vitro DM消化率は,粗飼料基質条件では64 mgのGRおよびHxR添加で尿素添加よりも高くなったが(P < 0.05),濃厚飼料基質条件では差はみられなかった.総VFA濃度は,粗飼料基質条件で64 mgのGR添加で尿素添加よりも高かったが(P < 0.05),濃厚飼料基質条件ではGRおよびHxR添加に比べて尿素添加で高くなった(P < 0.05).NH3-N濃度は,両基質条件で64 mgの尿素添加でGRおよびHxR添加よりも高くなった(P < 0.05).GRおよびHxRの添加は,特に粗飼料を基質とした場合,in vitro法における発酵を活性化する効果が高いことが示された.
  • 尾花 尚明, 入江 正和, 高橋 俊浩, 森田 哲夫, 堀之内 正次郎, 岩切 正芳, 林 國興
    2010 年 81 巻 4 号 p. 467-474
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    本研究は焼酎粕の豚飼料への有効利用を目的とした.LW・D交雑豚29頭(平均体重68.8 kg)を用い,対照区と4つの乾燥焼酎粕ケーキ添加試験区(2%,4%,6%,8%)に区分けした.供試豚は体重約110 kgで屠畜し,枝肉成績,肉質を調査した.日平均飼料摂取量,日平均増体量,飼料要求率,背脂肪厚,ロース面積,マーブリング,筋間脂肪量,肉のしまり,肉色,脂肪色,胸最長筋の水分,粗脂肪含量,ドリップロス,クッキングロス,脂肪の融点,屈折率,脂肪酸組成には焼酎粕配合による有意な影響はみられなかった.胸最長筋のα-トコフェロール含量は対照区と比べて焼酎粕配合区で有意に高くなり,6%,8%添加区では,対照区,2%,4%添加区よりも有意に高い値を示した(P < 0.01).以上から,焼酎粕ケーキの飼料添加は,肥育豚の生産性や枝肉特性,肉質に問題なく利用でき,特に筋肉内ビタミンE含量を増加させることが明らかとなった.
  • 尾花 尚明, 入江 正和, 高橋 俊浩, 森田 哲夫, 堀之内 正次郎, 岩切 正芳, 林 國興
    2010 年 81 巻 4 号 p. 475-480
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    副産物飼料化のため,乾燥焼酎粕ケーキの給与期間の違いがブタの発育,枝肉,肉質に及ぼす影響を検討した.平均体重30.0 kgのLW・D交雑豚23頭を市販配合飼料給与の対照区と,体重30 kg, 50 kg, 70 kgから4%焼酎粕飼料給与の試験区に分けた.飼料摂取量は対照区より30 kg, 70 kg区でやや高かった(P < 0.05).背脂肪厚,ロース面積,筋間脂肪量,肉色,脂肪色,マーブリング,肉のしまり,ドリップロス,クッキングロスには焼酎粕ケーキ給与による有意な影響はみられなかった.胸最長筋のビタミンE含量は,対照区に比べ焼酎粕給与区で,給与期間による影響は特になく高まった(P < 0.05).脂肪の脂肪酸組成,融点,屈折率には顕著な影響はみられなかった.以上から,焼酎粕ケーキはブタの飼料摂取を高める可能性があり,体重30 kgから給与しても発育や枝肉,肉質に問題なく,短期間給与でも肉のビタミンE含量を増加させることが示された.
技術報告
  • 神谷 充, 服部 育男, 常石 英作, 上村 昌志, 日高 明生, 永濱 誠一, 中村 好徳, 佐藤 健次
    2010 年 81 巻 4 号 p. 481-488
    発行日: 2010/11/25
    公開日: 2011/05/26
    ジャーナル フリー
    玄米と食品残さの発酵TMR給与が飼養成績,枝肉成績,および肉質に及ぼす影響を検討するため,黒毛和種肥育牛12頭(平均23ヵ月齢,対照区6頭,試験区6頭)の仕上げ期5ヵ月間に給与試験を実施した.対照区には配合飼料と稲わら,試験区には玄米,カンショ焼酎粕濃縮液,乾燥豆腐粕,フスマなどの発酵TMR,配合飼料,稲わらを給与した.乾物,可消化養分総量,粗タンパク質,中性デタージェント繊維,および酸性デタージェント繊維摂取量に有意差は認められず,各月齢時の体重および日増体量にも有意差は認められなかった.血漿中成分は,対照区と比較して試験区でγ-GTP, AST, およびALT濃度が有意に低く,リン濃度が有意に高かった.枝肉重量,BMS, BCS, BFS, 肉の光沢,締まり,きめ,脂肪の光沢と質,胸最長筋の粗脂肪含量,脂肪酸組成,脂肪上昇融点にも有意差は認められなかった.以上の結果から,黒毛和種肥育牛の仕上げ期に玄米や食品残さを含む発酵TMRを乾物ベースで配合飼料の平均60%程度代替給与しても,飼養成績,枝肉成績,および肉質に問題ないことが分かった.
解説記事
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