日本畜産学会報
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83 巻, 3 号
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一般論文(原著)
  • 本多 昭幸, 嶋澤 光一, 尾野 喜孝
    2012 年 83 巻 3 号 p. 271-280
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    バレイショ生澱粉(RPS)を配合した低タンパク質飼料の給与が肥育豚の窒素排泄量およびアンモニア揮散量に及ぼす影響を調査した.飼料反転法による窒素出納試験に 4頭の去勢雄(WLD, 64.0kg)を,またウインドウレス豚舎内でのアンモニア揮散量の測定試験には 8頭の去勢雄(WLD, 70.0kg)を用い,いずれの試験でも標準的肥育飼料(CP 15.7%)を給与する対照区とRPSを20%配合した低CP飼料(CP 11.6%)を給与するRPS区を設定した.RPS区では糞への窒素排泄量は対照区より多い(P<0.01)ものの,尿への窒素排泄量と糞尿への総窒素排泄量は少なくなった(P<0.01).糞尿混合物からの in vitro アンモニア揮散量(P<0.05)および豚舎内アンモニア濃度(P<0.01)はRPS区で低くなった.一方,試験期間における肥育豚の増体量,飼料摂取量および飼料要求率には両区間の差は認められなかった.以上の結果から,RPSを配合した低タンパク質飼料の給与は肥育豚の発育に影響することなく,尿への窒素排泄量および豚舎内アンモニア濃度を大幅に低減できる可能性が示された.
  • 池上 春香, 小林 直彦, 松橋 珠子, 武本 淳史, 吉廣 卓哉, 井上 悦子, 加藤 里恵, 加藤 博己, 田口 善智, 天野 朋子, ...
    2012 年 83 巻 3 号 p. 281-290
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種肥育牛の枝肉形質を診断するバイオマーカータンパク質同定を目的に構築した統合情報管理システムに,腎周囲白色脂肪組織のプロテオーム解析情報を搭載し,タンパク質発現に及ぼす性差と血統の影響を調べた.システム内の枝肉形質情報データベースには,黒毛和種肥育牛 10,789 頭の個体情報,血統情報,および枝肉形質情報が登録されている.このうち 252頭を選択して腎周囲白色脂肪組織のプロテオーム解析情報を獲得し,同システム内に登録した.まず,去勢牛と雌牛群間でタンパク質発現量を比較したところ,タンパク質スポット 879個のうち 56個(6.4%)でその発現量に性差が認められた.次に,種雄牛 4頭を一代祖に持つ去勢牛の個体群間でタンパク質発現量を比較した結果,発現量に差が見られたタンパク質スポットの割合は低く,プロテオーム解析情報を検討する場合に種雄牛の遺伝的背景を必ずしも考慮する必要はないと判断された.
  • 佐久間 弘典, 齋藤 薫, 曽和 拓, 淺野 早苗, 小平 貴都子, 奥村 寿章, 山田 信一, 河村 正
    2012 年 83 巻 3 号 p. 291-299
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    黒毛和種肥育牛の胸最長筋108検体について,理化学分析および分析型パネルを用いた官能評価を行い,黒毛和種牛肉の官能特性に及ぼす粗脂肪含量と脂肪酸組成の影響を検討した.MUFA割合で,理化学分析値と官能評価値を上位群(MUFA割合平均値59.6%)と下位群(同51.2%)に抽出し,比較したところ,官能特性では,甘い香りの評価値のみが,下位群より上位群で有意に高かった.さらに,甘い香りと脂っぽい香りに対して,SFA割合,MUFA割合またはPUFA割合のそれぞれに,粗脂肪含量の効果を加えた2変量を説明変数とした3種類のモデルを用いて回帰分析を行った.いずれの香りでも,粗脂肪含量はモデルを問わず,有意な正の偏回帰係数となったが,甘い香りにおけるMUFA割合が含まれるモデルでのみ,脂肪酸組成は有意な正の偏回帰係数となった.これらのことから,香りの官能特性の中でも,粗脂肪含量は脂っぽい香りや甘い香りと,MUFA割合は甘い香りと正の関係があることが示された.
技術報告
  • 山田 信一, 齋藤 薫, 曽和 拓, 佐久間 弘典, 小平 貴都子, 本郷 美那子, 中山 佐智雄, 佐藤 進司, 赤井田 満
    2012 年 83 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    冷凍が黒毛和種牛肉の理化学特性と官能特性に及ぼす影響について検討した.1頭の黒毛和種去勢牛から採取された左右の胸最長筋を用い,一方は2°Cで畜後 15日間冷蔵するとともに(冷蔵区),もう一方は2°Cで畜後 14日間冷蔵した後,-30°Cで6日間冷凍し,さらに2°Cで24時間かけ解凍した(冷凍区).理化学特性は冷凍区の方が冷蔵区より剪断力価や保水性はやや低くなり,また水分や遊離アミノ酸量などの呈味成分がわずかに減少したものの,脂肪酸組成や TBARS 値に差はみられなかった.官能特性では,多汁性において冷凍区の方が冷蔵区より評価値がやや低くなったものの,やわらかさや風味に関する項目において差はみられなかった.このことから,冷凍は黒毛和種牛肉の物理的特性にやや影響するものの,官能特性には大きくは影響せず,官能評価に冷凍した牛肉を用いてもおそらく特段の問題はないと考えられた.
  • 木元 広実, 青木 玲二, 佐々木 啓介, 鈴木 チセ, 水町 功子
    2012 年 83 巻 3 号 p. 307-313
    発行日: 2012/08/25
    公開日: 2013/02/25
    ジャーナル フリー
    Lactococcus lactis H61の摂取がヒトの肌状態へ及ぼす影響を年齢層別に評価するために39人の健康な女性を二群に分け,H61株摂取群は加熱死菌体60mgを含むバレイショデンプン1gを,プラセボ摂取群はバレイショデンプン1gを,一日一回,4週間摂取させた.被験物質の摂取前後に,前腕内側の水分量,の状態(水分量,弾力,きめ,明度)を測定した.すべての機器分析項目において両群間で著差は認められなかったが,年齢層,被験物質の摂取前後での解析で以下の知見が得られた.前腕の水分量は50~60代で40代よりも有意に高く,の明度は20~30代で40代,50~60代よりも有意に高い値を示した.の水分量は50~60代で20~30代よりも有意に高かった.被験物質の摂取前に比べて,摂取後はの水分量および明度が有意に高く,のきめの数値は有意に低かった.50~60代においてプラセボ摂取群では摂取前に比べての水分量が減少したのに対し,H61株摂取群では増加した.H61株の摂取は50~60代の女性のの水分量を保持できる可能性が示された.
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