日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
85 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
一般論文(原著)
  • 萩谷 功一, 大澤 剛史, 白井 達夫, 寺脇 良悟, 山崎 武志, 長嶺 慶隆, 伊藤 文彰, 河原 孝吉, 増田 豊, 鈴木 三義
    2014 年 85 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種雌牛の受胎率について,多形質アニマルモデルによる推定育種価の信頼性について検討した.データは,1985年から2010年までに分娩した2,246,286個体における未経産,初産および2産次の授精記録,初産乳量および血縁情報である.受胎率は初回授精における成否を表す.受胎率および空胎日数の遺伝評価に含めた効果は,牛群・年次(母数),授精月(母数),授精月齢(母数),交配相手種雄牛(変量),個体(変量)および残差(変量)とした.受胎率の推定育種価の平均信頼度は,受胎率のみ(未経産,初産および2産)を含む3形質モデルを採用したとき,後代検定済み種雄牛について未経産0.40,初産0.40および2産0.37であったが,受胎率3形質に加え,初産乳量および初産-2産間の空胎期間を含めた5形質モデルを採用したとき,それぞれ0.46,0.59および0.42に増加した.
  • 永野 由祐, 中田 真一, 上田 浩三, 松下 浩一, 高橋 和昭
    2014 年 85 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    未利用海藻ノコギリモクの乾燥粉末給与が鶏卵品質に及ぼす影響を産卵ステージの異なるニワトリを用いて調査した.飼料としては,トウモロコシ─大豆粕を主体とした市販の採卵鶏用飼料とこの飼料の40%を籾米と置換した飼料を用いた.供試鶏として,産卵最盛期または廃棄直前の国産鶏と産卵後期の外国産鶏を用いた.卵黄中ヨウ素濃度は産卵時期や使用したニワトリの種類にかかわらず,ノコギリモク添加区で無添加区に比較して増加した.卵黄中β-カロチン濃度は国産鶏を用いた試験において,ノコギリモク添加区で無添加区に比較して増加した.また,ノコギリモク添加による卵黄中β-カロチン濃度の増加は,籾米混合飼料を使用した時に顕著であった.卵殻厚は,廃棄直前鶏に籾米混合飼料を給与した時に,ノコギリモク添加による増加が観察された.一方で,外国産鶏へのノコギリモク添加給与は,卵殻厚に影響を及ぼさなかったが,卵殻強度の有意な上昇が認められた.以上のことから,ノコギリモクは採卵鶏において卵黄中ヨウ素およびβ-カロチン濃度を増加させ,産卵後期におけるニワトリの卵殻質を改善させる有用な未利用資源となる可能性が示された.
  • 手塚 咲, 村元 隆行
    2014 年 85 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    パイナップル果汁への浸漬時間が日本短角種牛肉の理化学特性に及ぼす影響について検討を行った.日本短角種去勢牛の内転筋をパイナップル果汁に0,6,12,18,24,および30時間浸漬させ,ドリップロス,クッキングロス,トータルロス,L*値,a*値,およびb*値を測定し,またテクスチャープロファイル分析を行った.サンプル表面において,最大荷重およびガム性荷重は浸漬12時間後に有意に低下したが,凝集性は浸漬18時間後に有意に低下した.クッキングロスおよびトータルロスは浸漬6時間後に有意に増加した.加熱前のサンプルのa*値およびb*値は浸漬6時間後に有意に低下したが,加熱後のサンプルのL*値およびa*値は浸漬による有意な影響を受けなかった.
  • 三明 清隆, 柚木 恵太, 川村 純, 府中 英孝, 杉山 雅昭, 大西 正男
    2014 年 85 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    プラズマローゲン(Pls)は神経炎症抑制やアミロイド形成抑制効果を有し,アルツハイマー病の治療や予防に利用できる可能性がある.親鶏の皮および筋肉部のリン脂質(PL),特にPlsの組成を調べた.皮のPL画分のスフィンゴミエリン(19%)は,他の3つの筋肉組織(6%)に比べて多く含まれていた.皮PLの21%がエタノールアミンプラズマローゲン(PlsEtn),6%がコリンプラズマローゲン(PlsCho)であった.ムネではPlsChoはPlsEtnの1.8倍多く含まれていたが,モモではPlsChoとPlsEtnは同量含まれていた.Plsの脂肪酸組成としては,皮ではn-6系の20:4や22:4が多く,筋肉組織では18:1が多く検出された.皮エタノール抽出画分(高PlsEtn型)とムネ肉エタノール抽出画分(高PlsCho型)をホスホリパーゼA1処理し,ヘキサン,アセトンおよび溶解分画することにより高純度プラズマローゲン画分を容易に調製できた.皮,ムネとも鶏種および飼育環境の違いによるPL組成の変動は少ないため,親鶏は安定したPlsの供給源として有望であることが確認できた.
  • 堂腰 顕, 瀬尾 哲也, 柏村 文郎
    2014 年 85 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    乳牛の反芻行動は給与飼料の物理性の良否や乳牛の健康状態を知る上で重要な情報源となり得る.本試験では,将来の実用性を考慮し,乳牛の首に装着可能な反芻計測装置を作成し,その精度を評価することを目的とした.実験1では高感度低周波圧力センサを用いた反芻計測装置を試作した.得られたデータを反芻,摂食,非咀嚼行動に分け,ケプストラム法によるスペクトル解析をした結果,反芻時には1.3 Hzおよび2.6 Hzの周波数帯に特徴的なピークが現れることが明らかとなった.その特徴を用いて反芻行動を自動識別するプログラムの開発を行った.実験2では,装置の精度と信頼性を検証するため,フリーストール牛舎およびタイストール牛舎でデータを収集し,本装置と人による行動観察で得られた反芻時間を比較した.実験全体の平均反芻識別正解率は91.1%となり,本装置は乳牛の反芻時間を計測する機器として実用化の可能性が示された.
  • 石関 紗代子, 石川 弘道, 足立 吉數, 山崎 尚則, 山根 逸郎
    2014 年 85 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    92養豚場の2010年の生産成績,豚繁殖・呼吸障害症候群(porcine reproductive and respiratory syndrome: PRRS)ウイルス(PRRSV)有無,立地条件を解析した.PRRSV陽性農場の割合は82.6%(76/92)で,陽性群は陰性群に比べ離乳後死亡率が有意に高く(陽性6.1%,陰性3.9%:P <0.01),平均1日増体重が有意に低かった(陽性585.1 g,陰性638.8 g:P<0.01).PRRSV有無に関するロジスティック回帰分析より,PRRSV陽性割合は周辺3 kmに他養豚場がある農場で有意に高く(オッズ比=4.09,95%信頼区間=1.07,15.70),関東地域で東北以北地域より有意に高かった(オッズ比=41.80,95%信頼区間=4.80,363.0).PRRSV保有は所在地や近隣農場の存在と関連しており,地域でのPRRS対策が重要と考えられた.
  • 田中 康男, 三浦 啓一, 明戸 剛, 美濃和 信孝, 戸田 雅也, 長谷川 輝明
    2014 年 85 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)は,畜舎排水の高度処理(リン除去,色度低減,消毒)に有効であり,使用後の回収物はリン酸肥料として利用可能であることが既往研究により確認されている.CSHによるセシウムおよびストロンチウムの収着能を調べたところ,未使用CSHは収着能が無いのに対して,回収CSHはセシウム(非放射性,放射性)およびストロンチウム(非放射性)の収着能を有することが確認された.回収CSHのみに収着能が発現する理由は明らかではないが,セシウムの場合は,排水の高度処理の過程でCSHにリン酸が吸着し,CSHの表面電荷がマイナスに変化することで静電的な吸着が生ずるようになった可能性もある.また,ストロンチウムについては,回収CSHに含まれると考えられるヒドロキシアパタイトのカルシウムとイオン交換反応を起こした可能性がある.回収CSHを肥料利用した場合に,そのセシウム収着能が土壌中または堆肥中セシウムの植物への移行率に何らかの影響を与えるかどうか今後の検討課題である.
  • 小高 真紀子, 福原 絵里子, 金子 国雄, 浅田 研一, 荻野 和正
    2014 年 85 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    ワクモの習性を利用したトラップを試作し,海外で既に報告されているトラップとワクモの定着数を比較した.まず,2枚の板を重ねて,2枚の板の1辺が接合するトラップ(非平行板トラップ)と2枚の板が平行となるトラップ(平行板トラップ)を作製し,ワクモの定着率を比較した.その結果,平行板トラップと比較して非平行板トラップの定着率が高くなる傾向を示した.次に杉,桧,竹およびポリ塩化ビニールのうち非平行板トラップに最も適した材質が何かを検討した.その結果,杉や桧は他の材質よりも有意にワクモが定着した.また,既報の段ボールや厚紙を用いたトラップよりも著者らが作製した杉材の非平行板トラップに有意にワクモが定着した.以上の結果から,今回開発したトラップはワクモを効率よく捕獲でき,農場におけるモニタリングや駆除あるいはワクモの生態解明の有効な道具となりうることが示唆された.
技術報告
  • 鎌田 丈弘, 村元 隆行
    2014 年 85 巻 2 号 p. 193-196
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    接触型電極を装着したLCRメータを用いたインピーダンス測定による牛肉中脂肪含量の推定について検討を行った.ウシの半腱様筋,胸最長筋,および中殿筋からステーキを作製し,接触型電極を装着したLCRメータを用いてインピーダンスを測定した.またステーキの粗脂肪含量をソックスレー法により測定した.ステーキの粗脂肪含量とインピーダンスとの関係を単回帰分析により解析した結果,粗脂肪含量とインピーダンスとの間には正の高い相関がみられた.
  • 田中 康男
    2014 年 85 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 2014/05/25
    公開日: 2014/06/21
    ジャーナル フリー
    放射性セシウム(Cs)で軽度に汚染された乳牛糞堆肥(約590 Bq/kg乾重,関東南部で採取.調製後に降雨中のCsが混入.)と,強く汚染された乳牛糞堆肥(約7500 Bq/kg乾重,関東北部で採取.汚染された飼料を摂食した乳牛の糞から調製された.)のそれぞれに,蒸留水または1 mol/L塩化カリウム(KCl)溶液を混合した場合のCs溶出について定性的な検討を行った.その結果,軽度に汚染された堆肥では,蒸留水溶出液中のCs濃度は4.2 Bq/kgと低かったのに対し,KCl溶出液では濃度が8.6倍に上昇した.強く汚染された堆肥では,蒸留水溶出液でも119 Bq/kgと高く,KCl溶出液ではさらにその2倍の濃度を示した.強く汚染された堆肥中のCs濃度は,蒸留水溶出により約18%,KCl溶出により約63%低減した.強く汚染された堆肥の溶出液中Csを各種Cs吸着シートに接触させたところ,プルシアンブルー含有シートがゼオライト含有シートおよびベントナイトシートより高い吸着能を示した.中でも,プルシアンブルーナノ粒子を含有するシートが最も高い吸着能を示した.
feedback
Top