日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
86 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
解説
  • 平田 昌弘, 木村 純子, 内田 健治, 元島 英雅
    2015 年 86 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,熟成ハード系チーズ(パルミジャーノ・レッジャーノ)と熟成ソフト系チーズ(タレッジョ)の加工上の特徴を分析し,イタリア北部における熟成チーズの発達史を再構成することを目的とした.パルミジャーノ・レッジャーノの加工の特色は,生乳の脱脂,自然に混入してくる微生物を利用していること,一日静置させて乳酸菌を増やしたホエイを加え合わせる技術,カッティング後の加温による凝乳粒からのホエイ排出,加温後に凝乳を細かくカッティングする技術にあった.タレッジョはもともとは移牧民により冬の寒い間に一時的に低地でつくられるものであった.北イタリアでの熟成チーズの発達史は,基層に熟成ハード系チーズがあり,低地では塩が豊富に供給される背景のもとに熟成ハード系チーズの厚みが増し,後になって,アルプス山脈山麓の低地で湿度が高く保てる特殊な状況設定のもとに熟成ソフト系チーズが発達してきたと推論することができる.
一般論文(原著)
  • 佐々木 修, 相原 光夫, 西浦 明子, 武田 尚人, 佐藤 正寛
    2015 年 86 巻 1 号 p. 13-27
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    乳量,乳脂率,乳タンパク質率,および乳脂率の乳タンパク質率に対する比(FPR)への産次,分娩月,地域の影響と泌乳曲線の形の違い,および泌乳曲線を用いた,これら環境要因の補正について検討した.家畜改良事業団に集積されたホルスタイン種雌牛の2008〜2010年の検定日記録13,364,965件を用いた.産次を4グループ,分娩月を12グループ,全国の地域を4グループに分けた.5次のLegendre多項式とWilmink式を組合せた泌乳曲線を用いて,環境の効果を補正した標準成績を求めた.すべての形質の泌乳曲線の形は,産次,分娩月,地域の組合せによって違いがあった.ただし,乳量では,産次と地域の組合せには違いがなかった.標準成績は2010年の夏期に大きく低下し,例年より暑熱の影響が強く,エネルギー摂取量より粗飼料摂取量の回復が遅れた可能性が示唆された.乳成分の標準成績により,飼養管理において多面的な情報提供が可能となる.
  • 萩谷 功一, 山崎 武志, 武田 尚人, 鈴木 三義
    2015 年 86 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種雄牛の後代検定に参加する候補種雄牛決定のための事前選抜(後代検定一次選抜)のため,推定育種価の信頼度を考慮した選抜方法を提案した.データは,2011年8月に発表された全種雄牛の乳量,乳脂量,乳タンパク質量,体細胞スコアおよび体型形質の遺伝評価値,2010年2月から2014年8月の間に供用された種雄牛の遺伝評価値,2008年2月から2010年8月に発表された総合指数上位1000頭の雌牛の遺伝評価値,2010年の後代検定候補種雄牛の血縁情報である.総合指数に含まれた形質間の遺伝相関係数は,1643頭の国内種雄牛の遺伝評価値を使用して推定した.2010年に後代検定に参加した44頭の候補種雄牛について,将来,総合指数上位40位に含まれる確率(P40)を予測した.信頼度が大きく異なる遺伝評価値(両親の平均育種価とゲノミック評価値)が混在する場合,本研究で提案した後代検定一次選抜法は有効である.
  • 手塚 咲, 山形 健登, 片山 寛則, 渡邉 学, 村元 隆行
    2015 年 86 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    浸漬液および浸漬時間の違いが日本短角種牛肉の理化学特性に及ぼす影響について検討を行った.4頭の日本短角種去勢牛の大腿二頭筋をパイナップル果汁(pH3.5),豊水果汁(pH4.4),イワテヤマナシ果汁(pH3.9),およびRO水(pH5.9)に0,24,48,および96時間浸漬させた.また,別の4頭の日本短角種去勢牛の大腿二頭筋をpH4.01標準緩衝液,pH6.86標準緩衝液,およびRO水(pH5.8)に0および24時間浸漬させた.浸漬後,ドリップロス,クッキングロス,色調値,および最大荷重を測定した.クッキングロスは,イワテヤマナシ果汁がRO水およびパイナップル果汁に比較して浸漬48時間まで有意に低かった.最大荷重は,パイナップル果汁が他の浸漬液に比較して浸漬96時間で有意に低くなったが,イワテヤマナシ果汁,RO水,および豊水果汁の間で有意な差は認められなかった.本研究の結果から,イワテヤマナシ果汁は保水性を少なくとも48時間保持することが示された.
  • 長谷川 輝明, 田中 康男
    2015 年 86 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    水産用水槽を転用したバッフルドリアクターと粉末硫黄を利用した脱窒技術の検討を行った.水槽は水容積311Lで,仕切板により上下迂流方式で流下する.底面には親水化処理した粉末硫黄を27kg(層厚4.2cm)充填して,養豚汚水の浄化処理水(硝酸態窒素濃度約270mg/L)を原水として通水した.また,硫黄酸化細菌増殖用のCO2の供給と中和のために重曹溶液を連続添加した.水温と窒素負荷の異なる3つの実験区を設けて試験したところ,実験区1(水温17〜21°C,窒素負荷0.2〜0.3kg/ton-S・日)では窒素除去率は平均99.6%であった.実験区2(水温16〜21°C,窒素負荷0.3〜0.4kg/ton-S・日)では除去率77.9%,実験区3(水温12〜14°C,窒素負荷0.6〜0.8kg/ton-S・日)では除去率47.9%であった.以上から,水温15°C以上で,窒素負荷0.4kg/ton-S・日までは十分な脱窒性能を有することが示唆された.
技術報告
  • 舩津 保浩, 宮内 千枝, 川上 誠, 石下 真人
    2015 年 86 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    本研究はエゾシカ肉を原料とし醤油醸造技術を応用した日本人好みの肉醤を開発することを目的とした.エゾシカモモ肉を挽肉にし,5種類の麹(大豆麹(SBK),醤油麹(SSK),米麹,ミンチ肉麹,細切り肉麹)に15%食塩,醤油用乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)および醤油用酵母(Zygosaccharomyces rouxii)を添加して30°Cで6ヵ月間発酵した.火入れ・ろ過後の最終製品の品質を物理化学的性状,呈味成分,味覚センサによる味の評価(MTS)および官能評価(SE)から調査した.その結果,SBK添加区はpHや酢酸レベルが高い点で他の試料と異なった.MTSデータの主成分分析から麹単独区,乳酸菌添加区および乳酸菌と酵母添加区での味の識別が可能となった.麹の種類に応じて,試料間でうま味やクセの強さが異なった.順位法によるSEではSSKが全試料中で最も好まれた.
  • 高橋 正宏, 沖 尚子, 広岡 博之
    2015 年 86 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2015/02/25
    公開日: 2015/03/18
    ジャーナル フリー
    酪農家の経営改善をはかるため,牛個体識別情報と無登録牛の情報を組み合わせることにより,個別酪農家または普及指導センター,家畜保健衛生所,農協等関係機関が牛群の繁殖成績を分析する手法について検討した.石川県南部家畜保健衛生所管内酪農家4戸における繁殖成績を,家畜改良センターの個体識別情報検索サービスと家畜保健衛生所の無登録牛情報から抽出した.その繁殖成績を用いて,個体識別情報のみが得られた場合と個体識別情報と無登録牛情報の両方が得られた場合とを比較し,繁殖成績に及ぼす無登録牛情報を用いることのメリットを調べた.無登録牛が出生牛の10%を越える酪農家では個体識別情報のみに比べて無登録牛をあわせた全頭情報を利用した場合,平均産子数,産次数が大きくなった.無登録牛が約15%の酪農家では全頭情報を利用した場合,初産日齢と分娩間隔が小さくなった.家畜改良センターから入手できるMicrosoft社Excel形式の繋養牛の異動一覧と同じ形式で作成した無登録牛情報から繁殖成績を分析できる新しいプログラムとその応用の可能性を示した.
feedback
Top