日本畜産学会報
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88 巻, 4 号
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一般論文(原著)
  • 小山 秀美, 今村 清人, 坂元 信一, 西 和隆, 井上 慶一, 河邊 弘太郎, 岡本 新, 本多 健, 大山 憲二, 下桐 猛
    2017 年 88 巻 4 号 p. 425-430
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    黒毛和種の損徴は品種の特徴を損なうだけでなく,経済的損失となり得るものもある.本研究では,損徴発生率の低減に関する知見を得ることを目的に,1999年~2015年の鹿児島県産黒毛和種雌子牛511,337頭の記録を用いて,白斑,舌の異常,乳頭の異常,被毛の異常について基礎的な調査を試みた.全データにおける損徴発生率は被毛の異常の0.29%から白斑の3.68%の範囲であり,年次推移はすべて増加傾向を示した.白斑の発生部位も年次により変化した.白斑では,近交度が高まると発生率が有意に上昇した(P<0.05).被毛の損徴以外では,母牛の損徴の有無が子牛の損徴発生率に有意に影響した(P<0.01).さらに,白斑と舌の異常においては,損徴を持つ母牛と持たない母牛の子牛の損徴発生率を種雄牛別に算出したところ両者に高い正の相関が得られ,両親の組合せを考慮することで損徴の発生を低減できる可能性を示した.

  • 鎌田 八郎, 松井 義貴
    2017 年 88 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    分娩前の血中ステロイドホルモン濃度と分娩までの日数の関係をホルスタイン分娩予定牛を用いて調べた.分娩予定10日前および7日前の血中エストラジオール17β濃度は,分娩までの日数と高い相関があった.分娩予定7日前の血中プロジェステロン濃度は,分娩予定前に分娩する場合の分娩までの日数と高い相関があった.分娩予定7日前,10日前の血中コルチゾール濃度と分娩までの日数は,分娩が大きく遅れる個体を除くと相関が見られた.また,デキサメサゾンとプロスタグランジンを用いて分娩誘起した場合,デキサメサゾン注射直前の血中エストラジオール17β濃度はプロスタグランジン注射から分娩までの時間と高い相関があった.分娩前の血中エストラジオール17β濃度を知ることで,人工授精から計算した分娩予定日の1週間以上前に分娩日を予測できる.また,分娩誘起処置時の血中エストラジオール17β濃度から分娩時刻が予測できる.

  • 石田 真穂, 西島 嘉隆, 谷口 紗耶, 北村 勇人, 池田 俊太郎, 葭谷 健一, 濱野 貴史, 谷 浩, 藤田 雅彦, 村上 賢司, 小 ...
    2017 年 88 巻 4 号 p. 439-444
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    黒毛和種繁殖牛35頭を対照区および乾燥ニンジン区に割り当てて,乾燥ニンジン区では分娩予定日の3週間前から分娩60日後までβ─カロテンを多量に含有した乾燥ニンジンを給与し,黒毛和種繁殖牛の分娩直後の血漿中免疫グロブリン(Ig)濃度の変動要因と分娩後の血漿中Ig濃度に及ぼす乾草ニンジン給与の影響を調べた.黒毛和種繁殖牛の分娩直後の血漿中IgG1濃度と月齢間,血漿中IgG1濃度と血漿中総タンパク質濃度間および血漿中IgM濃度と血漿中IgA濃度間に有意な正の相関が認められたが,血漿中Ig濃度と血漿中β─カロテン濃度間には有意な相関は認められなかった.乾燥ニンジン区の分娩直後の血漿中IgG1濃度は対照区より高かった(P<0.05)が,乾燥ニンジン区の分娩60日後の血漿中IgG1濃度は対照区より低かった(P<0.05).以上の結果から,黒毛和種若齢牛では分娩直後の血漿中IgG1濃度が低いことと,乾燥ニンジン給与は分娩直後の血漿中IgG1濃度を改善することが推察された.

  • 渡邉 敬文, 川崎 武志, 小山 洋一, 遠目塚 千紗, 杉山 慎治, 蛯原 哲也, 西村 佳, 平松 浩二
    2017 年 88 巻 4 号 p. 445-453
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    コラーゲンを主成分として含むソーセージ用コラーゲンケーシングの製造残渣をエコフィード素材として利用し,肉用鶏における生産性,腸管粘膜,免疫機能および腸内細菌叢に与える影響を解析した.飼料にケーシング製造残渣を1.0%添加した群(ケーシング群)の平均体重は有意に増加した.また,腸粘膜の発達も認められ栄養吸収効率の向上が示唆された.ケーシング群の盲腸扁桃と脾臓では,それぞれ炎症性サイトカインであるIL-2,IFN-γ遺伝子の有意な発現量の減少が認められた.腸粘膜付着細菌に占める乳酸菌と大腸菌の菌数と体重の変化に相関は認められなかった.本研究では,コラーゲンケーシング製造残渣の投与は,腸管における慢性的な炎症を部分的に抑制し,腸粘膜の発達を促進して栄養吸収効率を向上させることが示唆され,エネルギー分配効率の改善により体重増加に寄与することが推察された.

  • 東山 由美, 小松 篤司, 深澤 充
    2017 年 88 巻 4 号 p. 455-462
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    粗飼料多給下の黒毛和種子牛において,哺乳期間が増体,血液成分および行動に及ぼす影響について調査した.黒毛和種親子牛を7.5ヵ月離乳区(4組)と3ヵ月離乳区(3組)に分け,7.5ヵ月離乳区では子牛が約7.5ヵ月齢になるまで母子同居を続けた.3ヵ月離乳区では子牛が約3ヵ月齢の時に完全に離乳した.日増体量は7.5ヵ月離乳区で1.1kg/日,3ヵ月離乳区で0.7kg/日であった.飼料摂取量は両区で差はなかった.血漿中βヒドロキシ酪酸濃度は,3ヵ月離乳区で離乳後に急激に上昇した.7.5ヵ月離乳区では月齢とともに上昇し,7.5ヵ月離乳区の離乳時には両区で差はなかった.7.5ヵ月離乳区では,1日あたりの伏臥時間および睡眠姿勢時間は3ヵ月離乳区よりも総じて長く,母牛からなめられた時間は,7ヵ月齢時においても調査を開始した3ヵ月齢時とほぼ同じであった.以上のことから,粗飼料多給下では哺乳期間を延長すると子牛の発育成績が向上し,血液成分や行動にも違いがみられることがわかった.

  • 細川 遥果, 谷本 智里, 村元 隆行
    2017 年 88 巻 4 号 p. 463-472
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    筋肉内脂肪含量が塩漬後の黒毛和種牛肉および日本短角種牛肉のNaCl含量およびメトミオグロビン割合に及ぼす影響について検討を行った.筋肉サンプル(100gまたは500gの半腱様筋)は6gのNaClで1日間または3日間の塩漬を行った.塩漬後,筋肉サンプルの粗脂肪含量,浸透NaCl含量(浅部および深部),およびメトミオグロビン割合(最表面,浅部表面,および深部表面)の測定を行った.筋肉内脂肪含量と筋肉サンプル100gを1日間または3日間塩漬した後の浸透NaCl含量との間には有意な相関は認められなかった.筋肉サンプル500gを3日間塩漬した後の深部の浸透NaCl含量は筋肉内脂肪含量の増加に伴って有意に減少した.筋肉サンプル100gを1日間塩漬した後の深部表面のメトミオグロビン割合および筋肉サンプル100gを3日間塩漬した後の浅部表面および深部表面のメトミオグロビン割合は筋肉内脂肪含量の増加に伴って有意に減少した.

  • 谷本 智里, 細川 遥果, 村元 隆行
    2017 年 88 巻 4 号 p. 473-477
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    異なるNaClの量で塩漬を行った日本短角種去勢牛(n=8)の牛肉(大腿二頭筋)の品質について比較を行った.筋肉サンプル(100g)は2g(2g区),4g(4g区),および6g(6g区)のNaClで3日間の塩漬を行った.筋肉サンプルのテクスチャーは表面および内部(表面から10mm)で測定を行った.メトミオグロビン割合およびa*値は表面,表面から5mm (浅部),および表面から10mm(深部)で測定を行った.凝集性,付着性,およびガム性荷重はすべての測定部位で2g区が6g区に比較して,それぞれ有意に低かった.メトミオグロビン割合は浅部および深部で2g区が6g区に比較して,それぞれ有意に低かった.a*値はすべての測定部位で2g区が6g区に比較して有意に高かった.ドリップロスは2g区が最も低く,また6g区が最も高かった.

  • 白石 誠, 長田 隆, 水木 剛, 高取 健治
    2017 年 88 巻 4 号 p. 479-490
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    牛舎排水浄化処理施設から排出される温室効果ガス(GHG)を実測し,GHG発生要因の解明を行うとともに精確な排出係数の算定を実施した.試験は岡山県農林水産総合センター畜産研究所内の曝気槽(24m3)と沈殿槽(2.6m3)からなる,乳牛40頭規模の連続式活性汚泥浄化処理施設で行った(35.02N 133.50°E).曝気量は1.5m3/m3/時とし,排気は曝気槽上部に設置したチャンバーにより捕集,排気中の一酸化二窒素(N2O),メタン(CH4),アンモニア(NH3)を光音響マルチガスモニタにより連続測定した.測定は2008年~2013年の間で15回行い,浄化処理施設からのGHG排出量と投入全窒素および有機物から排出係数を算出した.測定結果に基づく排出係数はN2O 2.88%,CH4 0.30%となり,現行の排出係数よりN2Oで低く,CH4で高い結果となった.また,N2Oの排出は汚水のBOD/N比が6以下,COD/N比が2.5以下になると増加することが確認されるとともに,排出係数が極めて高い期間が存在した.CH4の排出は貯留槽からの持ち込みが原因の一つと考えられた.

技術報告
  • 迫田 康平, 前田 さくら, 阿佐 玲奈, 萩谷 功一, 後藤 達彦, 口田 圭吾
    2017 年 88 巻 4 号 p. 491-495
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    黒毛和種の第6-7切開面における頭半棘筋,背半棘筋および胸最長筋に囲まれた筋間脂肪(サイコロ脂)において,面積が大きすぎるものは購買者や消費者に好まれない傾向にある.消費者が望む牛肉を生産するため,サイコロ脂を小さくするような遺伝的改良は必要と考えられる.本研究では,サイコロ脂面積の遺伝的パラメータを推定するとともに,遺伝的改良の可能性の検討を目的とした.単形質および多形質アニマルモデルによりサイコロ脂面積の遺伝的パラメータを性ごとに推定した.サイコロ脂面積の遺伝率は,去勢は0.43 ± 0.06,メスは0.51 ± 0.09であり,サイコロ脂面積の遺伝的改良は十分に可能であると示唆した.またサイコロ脂面積とあらさ指数間の遺伝相関は,去勢は0.21 ± 0.10,メスは0.13 ± 0.13であり,サイコロ脂面積に対する遺伝的改良を行うことで,あらい脂肪交雑粒子の減少が期待できる.

  • 戸澤 あきつ, 佐藤 衆介
    2017 年 88 巻 4 号 p. 497-506
    発行日: 2017/11/25
    公開日: 2017/12/14
    ジャーナル フリー

    スノコ床のウィンドウレスで20頭群飼(SI),スノコ床のウィンドウレスで350頭群飼(LI),発酵床のビニールハウスで400頭群飼(LD),放牧地で9頭群飼(SP)の4つの飼育方式における肥育豚の動物福祉レベル並びに生理的ストレス指標の実態を調査した.福祉評価にはWQ®プロトコルを用い,生理的ストレス評価は血清中コルチゾール濃度と健康性に関わるストレス指標である免疫グロブリンA(IgA)濃度を,唾液,糞便,血液から測定した.福祉評価点はSP > LD > LI > SIの順で,福祉レベルは前2者で「良」,後2者で「可」と評価された.血清中コルチゾール濃度はLIで突出して高く,唾液中IgAはSIとLIで高く,糞便中IgAはSIとSPで高かった.SIは低福祉でストレスレベルが高く,LIは低福祉でストレスレベルが最も高く,糞便中IgAは極端に低く,LDは高福祉で低ストレス,SPは最も福祉レベルが高く,ストレスレベルもやや高いが正常値範囲内の飼育方式と考えられた.

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