日本畜産学会報
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88 巻, 2 号
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一般論文(原著)
  • 當眞 嗣平, 及川 卓郎
    2017 年 88 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    アグーは,沖縄県で飼養されている黒毛で小柄なブタである.その品種特性を明らかにするため,アグーの体尺測定値(n=1,164)と繁殖成績の現状調査を行った.アグーの体尺測定値は,50年前の報告値と変わっていなかった.主成分分析により中国系品種および西洋系品種の体尺測定値を比較した結果,アグーの体の大きさは中型の中国系品種と同程度であった.しかし,外貌上の特徴はそれらとは異なり,体長が短い割に体は太い体型であった.繁殖成績における分散分析の結果,着床胎子数,総産子数,生存産子数,離乳頭数,死産頭数,離乳時生存率,ミイラ率,平均離乳時体重および離乳時総体重で品種の効果が有意であり,最小2乗平均値においてアグーの着床胎子数,総産子数,生存産子数,離乳頭数は西洋系品種の半分以下であった.生時生存率,離乳時生存率は低く,ミイラ率は高い傾向にあった.平均離乳時体重と離乳時総体重も低かった.

  • 石田 元彦, 常川 千春, 浅野 桂吾, 小柳 喬, 長井 誠
    2017 年 88 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    モヤシの製造過程で副産物として発生するモヤシ残さを反芻家畜の飼料として活用するための実験を行った.まず,スクリュープレスで脱水したモヤシ残さを供試し,小規模サイレージ発酵試験法を用いて,無添加区,乳酸菌添加区およびアクレモセルラーゼ入り乳酸菌製剤(アクレモ乳酸菌)添加区を設けて,サイレージの調製試験を実施した.次に3頭のヒツジを供試し,乾草と濃厚飼料から成る基礎飼料と基礎飼料の乾物30%をアクレモ乳酸菌添加モヤシ残さサイレージ(モヤシ残さサイレージ)で置き換えた試験飼料のそれぞれの消化率を消化試験で測定し,間接法によってモヤシ残さサイレージの消化率と可消化養分総量(TDN)含量を求めた.その結果,サイレージの発酵品質は乳酸菌添加では向上しないが,アクレモ乳酸菌添加で改善すること,モヤシ残さサイレージのTDN含量は,乾物あたり73.3%であり,フスマのそれに近いことが分かった.

  • 浅田 正嗣, 杉山 あかね, 山下 千果, 武田 和也, 角屋 敏幸, 滑川 拓朗, 井上 慶一
    2017 年 88 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    イアコーンサイレージ(ECS)給与が,肥育牛の増体性および産肉性に及ぼす影響を検討した.黒毛和種去勢牛を,濃厚飼料の可消化養分総量(TDN)として40%相当をECSで代替した飼料を給与した区(ECS区)および市販濃厚飼料給与区(対照区)に各6頭ずつ配置し,10~27ヵ月齢まで肥育して増体性と産肉性を調査した.その結果,ECS区の体重および増体量(865kg, 0.93kg/日)は,対照区(790kg, 0.83kg/日)を上回り,TDN要求量はECS区が対照区よりも少なかった(P<0.05).枝肉重量やバラの厚さはECS区で対照区よりも良好であったが(P<0.05),肉質や肉の理化学的分析値に差は認められなかった.このように,肥育牛に対するECSの給与は,増体性および産肉性において慣行法と遜色ない結果が得られたことから,国産飼料として活用可能であると結論づけられた.

  • 渡邉 貴之, 熊谷 周一郎, 野口 浩正, 前田 昌稔, 小西 一之
    2017 年 88 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    黒毛和種繁殖牛においてルーメン内揮発性脂肪酸(VFA)と血液生化学検査値の関係を考察する材料とするため,ルーメン液性状と血液生化学検査値を調査した.高水分サイレージを主体とした飼料をTMRミキサーにより給与した牛群(TMR区)と低水分サイレージをロールカッターで給与後圧片トウモロコシを分離給与した牛群(分離給与区)において,血中のβ-ヒドロキシ酪酸(BHB),アセト酢酸(ACAC),遊離脂肪酸(FFA)とルーメン内揮発性脂肪酸(VFA)の関係を調べた.TMR区では飼料給与前に比べ給与後のBHB, ACACは上昇,FFAは下降し,分離区では逆の推移を示した.TMR区ではBHBが酢酸比率と有意な負の相関がみられ,酪酸比率と正の相関がみられた.分離区ではFFAが酢酸比率と有意な負の相関がみられた.これらのことから,血液生化学検査値からルーメン液性状を推測できる可能性が考えられた.

  • 阿佐 玲奈, 岡本 匡代, 佐々木 可奈恵, 大井 幹記, 竹尾 麻紗美, 萩谷 功一, 口田 圭吾
    2017 年 88 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    黒毛和牛の脂肪交雑の形状と消費者型官能評価との関係性を調査した.29頭の黒毛和種去勢牛の中から,BMS6または7で,脂肪交雑形状に違いがある4頭を選び供試牛とした.このとき,2頭は小ザシを特徴とし,残りの2頭は粗ザシを特徴としたものであった.半冷凍状態のサーロインを1mm厚でスライスし,10mm間隔でスライス肉の撮影を行った.筋間脂肪を含まない直径6cmの肉片をしゃぶしゃぶとして供し,消費者型官能評価を行った.サーロインにおける脂肪面積割合および新細かさ指数の平均値は小ザシを特徴とした2頭で46.96%および158.93,粗ザシを特徴とした2頭で48.29%および127.77であった.小ザシを特徴とする2頭の嗜好スコアは,粗ザシを特徴とするものに比べ有意に高い値(P<0.05)であった.しかし,見た目の好ましさの順位は,嗜好スコアの順位および新細かさ指数の順位とはおおむね逆であった.よって小ザシが粗ザシに比べて嗜好スコアが高く,新細かさ指数が消費者型官能評価結果を支持することが明らかとなった.

技術報告
  • 山中 惇平, 阿佐 玲奈, 萩谷 功一, 口田 圭吾
    2017 年 88 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2017/05/25
    公開日: 2017/06/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,画像解析などにより肉質等級における格落ちに関連する要因を調査することを目的とした.材料牛は,2005年9月から2014年12月にかけて北海道内の枝肉市場に出荷された黒毛和種21,768頭である.格落ち割合の調査では,性別,出荷月齢,BMSNoおよび年次別に割合を算出した.格落ちに関連する形質の調査では,格落ち割合の調査で使用した個体のうち7,967頭を分析対象とし,BMSNo 3,5および8ごとで格落ち項目について各形質の最小二乗平均を算出した.年次による格落ち項目は,近年「肉の締まりおよびきめ」と「肉の色沢」の両方で格落ちする個体が大部分を占めていた.格落ちに関連する要因の調査では,いずれのBMSNoでも格落ち項目について脂肪面積割合,新細かさ指数などの画像解析形質が有意に影響した(P<0.05).

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