日本畜産学会報
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89 巻, 4 号
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一般論文(原著)
  • 中堀 祐香, 高野 直樹, 大江 史晃, 齊藤 朋子, 萩谷 功一
    2018 年 89 巻 4 号 p. 409-414
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,ばんえい競走馬における能力検定後馬体重(馬体重)を適切に説明する数学モデルの選択および遺伝率を推定することを目的とした.データは,2007年から2016年までに能力検定に合格した重種馬1,849頭の品種,性別,生産地市町村および馬体重の記録,および27,214個体を含む血縁個体である.測定時月齢は,能力検定合格回次の検定実施月と誕生月の記録から推定した.遺伝分析に用いる数学モデルを決定するため,測定年,性別,測定時月齢および生産地市町村を組み合わせた複数の母数効果モデルを仮定した.赤池の情報量規準,ベイズの情報量規準および決定係数より,遺伝分析には,測定年,性別および月齢を母数効果として含むアニマルモデルを採用した.馬体重の遺伝率推定値は,中程度(0.47)であったことから,遺伝的改良が可能な形質である.

  • 広岡 博之
    2018 年 89 巻 4 号 p. 415-421
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    ブタの繁殖肥育一貫生産における母豚とその生産子豚の成長,飼料(TDN)摂取量,肉生産を予測し,母豚1頭からの生涯にわたる収益,生産費および利益を算出する生物経済シミュレーションモデルを開発した.このモデルでは,母豚が導入され,交配,受胎,分娩,離乳を繰り返し,決められた繁殖サイクル数を経て,淘汰されるまでの過程と生産された子豚の生時から出荷されるまでの過程がシミュレーションの対象である.さらに母豚の更新率や子豚の一腹産子数,死亡率も考慮され,集団レベルでトータルな経済評価も可能である.本モデルは,国内外の研究成果の知見や情報を統合し,さまざまな飼育条件,管理条件,経済条件のもとで飼育された異なる遺伝レベルのブタ生産に対応できるように組み立てられている.

  • 安部 亜津子, 成相 伸久, 杉野 利久, 長岡 俊徳, 小櫃 剛人
    2018 年 89 巻 4 号 p. 423-430
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    肥育牛における発酵TMR中の破砕籾米の配合割合が,飼料の摂取量,消化率,消化管通過速度および窒素出納に及ぼす影響を検討した.黒毛和種経産牛4頭を用い,破砕籾米を乾物重量比で0%,7%,14%および21%配合した発酵TMRを給与した.乾物摂取量,消化管通過速度パラメーターならびに乾物消化率には供試飼料による差は見られなかったが,籾米配合割合の増加に伴って粗タンパク質および中性デタージェント繊維の消化率は低下した(P<0.05).一方,尿中への窒素排泄率は籾米配合割合の増加に伴い減少し(P<0.05),窒素蓄積率は籾米割合14%区が最も高かった(P<0.05).以上のことから,肥育牛用の発酵TMRを給与する場合,破砕籾米の配合割合を21%まで高めても飼料摂取量への影響はないが,繊維の消化性と窒素利用効率を考慮した場合,配合割合を14%とすることが適正であると考えられた.

  • 多田 慎吾, 青木 康浩, 大下 友子
    2018 年 89 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    イアコーンサイレージ(ECS)の反芻胃内分解特性と泌乳牛への給与時の採食行動と飼養成績を圧ぺんトウモロコシ(FC)を対照として検討した.In situ法から,ECSはFCより乾物およびデンプンの可溶性画分が多く,分解が速いことが示された.イネ科牧草サイレージ主体でFCまたはECSを含む飼料を飼料F,Eとし,泌乳牛8頭にクロスオーバー法で朝(9 : 30)と夕方(16 : 30)に給与した.朝の給与後の採食持続時間に差は認められなかったが,夕方の給与後は飼料E給与期に飼料F給与期より短く,その間の採食量も少なかった.一方,その後翌朝の給与までの採食量は飼料E給与期に多く,1日の採食量に差は認められなかった.乳量および乳成分に差は認められなかった.前回給与からの間隔が短い場合,ECS給与時はFC給与時より給与直後の採食が制限されるが,その後の採食は活発となり採食量や乳生産は維持されることが示唆された.

  • 勝俣 沙智, 山内 望萌, Lin WANG, 大石 風人, 広岡 博之, 熊谷 元
    2018 年 89 巻 4 号 p. 439-450
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    蒸米仕込みによる清酒粕の給与が,濃厚飼料多給条件下の緬羊の消化性,ルーメン発酵,血液性状に及ぼす影響をin vitro発酵試験およびin vivo代謝試験により検討した.In vitro試験では,発酵基質の圧ペン大麦を粗タンパク質(CP)含量が等しくなるように大豆粕(SBM),乾燥清酒粕(SLd),生清酒粕(SLw)で一部代替した.DM消化率はSBM, SLd, SLw区,CP消化率はSBM, SLw, SLd区の順で高かった(P<0.01).酢酸濃度はSBM, SLd, SLw区,プロピオン酸濃度はSLw, SLd, SBM区の順で高かった(P<0.01).In vitro消化率の結果に基づき,in vivo試験では,去勢緬羊4頭を供試し,肥育牛用濃厚飼料と稲わらを7 : 3で給与した.In vivo試験は濃厚飼料の10%を占める大豆粕の0,34,69,100%をCPとTDN含量が同等となるように生清酒粕で代替した区(C, L, M, H区)を設け,4×4のラテン方格法で実施した.給餌後のルーメン内プロトゾア数はM, H区がC, L区よりも低かったが(P<0.05),DM摂取量,見かけの消化率,窒素出納,ルーメンpH, NH3-NおよびVFA濃度に差は認められず,蒸米仕込み生清酒粕は大豆粕に代替できることが示唆された.

  • 竹田 志郎, 和賀 正洋, 坂田 亮一
    2018 年 89 巻 4 号 p. 451-458
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    本研究では,生理活性を有する発酵食肉製品製造用スターターとして有用な乳酸菌株を使用し,それらの培養液浸漬による豚肉の物性と微生物への影響について調べた.豚肉を各供試乳酸菌株培養液に浸漬した結果,Lactobacillus sakei No. 23株(LS-23)培養液に浸漬した豚肉の最大荷重は,未処理および標準菌株培養液で浸漬した豚肉と比べ,有意に低値であった(P<0.05).またLS-23培養液に浸漬した豚肉はSDS-PAGEにおいて分子量100kDa以上のバンドの消失,著しいpHの低下,乳酸濃度の上昇が認められた.さらにLS-23培養液浸漬により,豚肉由来の黄色ブドウ球菌と低温細菌生菌数の減少が確認された.以上より豚肉をLS-23培養液に浸漬させることは,その最大荷重の低下による物性の向上,特に軟化効果と汚染菌の生菌数減少効果があると示唆され,食肉加工におけるマリネード液やバイオプリザベーションとしての応用が期待された.

  • 高田 偲帆, 柴 伸弥, 村元 隆行
    2018 年 89 巻 4 号 p. 459-463
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    ブロメライン溶液への浸漬がウシの3筋肉の硬さおよびコラーゲン含量に及ぼす影響について検討を行った.日本短角種去勢牛(n=4)の内転筋,大腰筋,および棘上筋から調製した筋肉サンプルを40°Cのブロメライン溶液(0.43%)に1時間浸漬させ,80°Cで3分間の加熱を行い,ガム性荷重およびコラーゲン含量を測定した.40°Cのブロメライン溶液への浸漬だけではコラーゲンは溶出しなかったが,その後で80°Cの加熱を行うことにより,すべての筋肉からコラーゲンが溶出した.40°Cのブロメライン溶液への浸漬および80°Cでの加熱により,内転筋および棘上筋のガム性荷重は有意に低下したが,大腰筋は有意な影響を受けなかった.

技術報告
  • 村元 隆行, 野呂 聡美, 谷本 智里, 福田 智歩
    2018 年 89 巻 4 号 p. 465-469
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    塩漬剤としてのKClが日本短角種牛肉の理化学特性およびテクスチャー特性に及ぼす影響について検討を行った.日本短角種去勢牛(n = 7)の大腿二頭筋(M. biceps femoris)から調製した筋肉サンプル(100g)に,NaClとKClとの組み合わせが6gと0g(6Na0K区),0gと6g(0Na6K区),または4gと2g(4Na2K区)の塩漬剤を擦りこみ,3日間の塩漬を行い,ドリップロスおよびメトミオグロビン割合を測定し,またテクスチャープロファイル分析を行った.ドリップロスは0Na6K区が他区に比較して有意に低く,6Na0K区が他区に比較して有意に高かった.筋肉サンプルの表面から25mmの深さにおけるメトミオグロビン割合は0Na6K区が6Na0K区に比較して有意に低かった.テクスチャー特性には試験区間での有意な差は認められなかった.KClはNaClに比べ,塩漬中のドリップロスを少なくするが,筋肉内への浸透は遅いことが示された.

  • 佐々木 啓介, 本山 三知代, 渡邊 源哉, 中島 郁世
    2018 年 89 巻 4 号 p. 471-488
    発行日: 2018/11/25
    公開日: 2018/12/13
    ジャーナル フリー

    食肉の記述的官能評価候補用語集を作成するために,用語の収集およびアンケート調査によるスクリーニングを行った.第一次候補用語は文献より味について54語,匂いについて67語,食感について141語を収集した.これらについて,「食肉との関係の有無」について一般消費者522名および調理に関する資格を保有する調理従事者234名を対象としたインターネット上でのアンケートを実施した.アンケート結果を解析した結果,「食肉と関係無い」と判定された用語を除外し,味39語,匂い44語,食感64語からなる第二次候補用語集を作成できた.また,アンケート結果をコレスポンデンス分析した結果,「おいしくない食肉」を表す用語については牛肉,豚肉,鶏肉の間での違いは比較的少ない一方,「おいしい食肉」を表す用語については畜種間で違いがあることが推察された.

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