日本畜産学会報
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90 巻, 4 号
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一般論文(原著)
  • 近藤 萌里, 長谷川 類, 加藤 葉月, 福嶋 知賀子, 川島 千帆
    2019 年 90 巻 4 号 p. 295-305
    発行日: 2019/11/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    乾乳牛において,日間変動の有無を含めたルーメンフィルスコア(RFS)と分娩前後の栄養代謝状態,分娩後の疾病発生や乳量,繁殖機能回復との関係をホルスタイン種経産牛35頭を用いて調査した.分娩前3-4週のRFSが3.5以上で一定(HM, 6頭)と変動あり(HC, 9頭),3.0以下で一定(LM, 5頭)と変動あり(LC, 15頭)の4群に分けた.血中代謝物濃度では,LM群はHM群より分娩後の低グルコース(P=0.05)や高β-ヒドロキシ酪酸(P<0.05)を示し,LM群の2頭は試験期間中に排卵しなかった.HC群はHM群より分娩後の低アルブミン(P<0.05)を示し,LC群はLM群より分娩後の疾病発症頭数が多く(LM2頭,LC10頭),低乳量だった(P<0.1).以上より,RFSの低値や日間変動を示す乾乳牛はエネルギー状態が低く,分娩後の疾病発生や乳量低下,卵巣機能の回復遅延につながる可能性が示された.

  • 細田 謙次, 宮地 慎, 松山 裕城
    2019 年 90 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 2019/11/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    抗酸化活性を示すアントシアニンを含有する紫黒米のヒツジへの給与が,飼料の利用性および酸化ストレスマーカーに及ぼす影響を検討した.給与飼料中のアントシアニンを含まないコメの0,50および100%を紫黒米に置き換える3区を設定し,去勢ヒツジ6頭を用いた3×3ラテン方格法による給与試験を実施した.紫黒米の配合割合が高くなると,乾物の消化率および可消化養分総量は低下したが,成分の消化率は影響を受けなかった.また,すべての給与飼料のデンプンは,99.5%以上が消化された.胃液性状のすべての項目において,各試験区に差は認められなかった.酸化ストレスマーカーの総抗酸化能あるいは酸化ダメージ指標には差がなかったが,抗酸化酵素のスーパーオキシドディスムターゼ活性が紫黒米給与により上昇した.以上のことから,紫黒米はデンプンを中心とした栄養成分と抗酸化物質を同時に供給できる有望な国産飼料であると考えられた.

  • 深谷 芽衣, 阿佐 玲奈, 小林 健一, 口田 圭吾
    2019 年 90 巻 4 号 p. 315-320
    発行日: 2019/11/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    従来の画像解析ではロース芯内の肉色の濃淡により二値化に失敗し脂肪面積割合を過小評価する場合があった.本研究では,より高精度な新手法による画像解析を用いたBMS判定を目的とした.2017年1月から12月に北海道内の枝肉市場に上場された黒毛和種,乳用種,交雑種2,508頭の格付BMSおよび新適応二値化処理(新手法)による画像解析形質を用いた.脂肪面積割合,あらさ指数および新細かさ指数の組み合わせごとに格付BMSの平均値を求め,最大あらさ指数およびロース芯面積によって条件付きの補正を行うことでBMSを判定した.新手法を用いることで,従来法より適切に脂肪交雑を認識でき(58.0→ 69.0%),推定BMSと格付BMSとの差が±1以内の割合は96.5%と高い値を示した.黒毛和種,交雑種および乳用種における±1以内割合は,それぞれ95.9,99.5および100%となった.

  • 金谷 圭太, 福田 智歩, 村元 隆行
    2019 年 90 巻 4 号 p. 321-325
    発行日: 2019/11/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    塩漬剤としての4種類のミネラルの添加量の違いが日本短角種去勢牛(n=10)の大腿二頭筋の保水性およびテクスチャー特性に及ぼす影響について検討を行った.筋肉サンプル(40g)に筋肉重量あたり2%,4%,または6%のNaCl, MgCl2, MgSO4, またはCaSO4を添加して3日間の塩漬を行った.塩漬後,ドリップロス,最大荷重,凝集性,付着性,およびガム性荷重を測定した.ドリップロスは,CaSO4で塩漬した筋肉サンプルで最も高く,MgCl2で塩漬したもので最も低かった.ガム性荷重は,6%のMgSO4で塩漬した筋肉サンプルがNaClで塩漬したものに比較して有意に低かった.

  • 汪 斐然, 黄 聖智, 山野 はるか, 吉田 詞温, 黒崎 弘平, 小泉 聖一, 小林 信一
    2019 年 90 巻 4 号 p. 327-335
    発行日: 2019/11/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    豚肉の消費行動に関する日中比較を行う目的で,2018年7~11月に日中の都市部在住一般人を対象にアンケート調査を実施した.その結果,日中ともに豚肉に対する嗜好性や食頻度は高かったが,日本では他の食肉類とほぼ同程度の食頻度であったのに対し,中国では突出して多く,一方で他の肉類の頻度が比較的低かった.また日中とも食品の安全性に対する懸念は共通で,豚肉購買時に注目する項目では「原産国」が高かったが,日本では国産品を志向するのに対し,中国は輸入豚肉の安全性も高いと認識されており,輸入豚肉の購買経験も日本より高かった.

技術報告
  • 本多 健, 大山 憲二
    2019 年 90 巻 4 号 p. 337-340
    発行日: 2019/11/25
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー

    但馬牛は古くから閉鎖育種を行っているが,これまで顕著な近交退化は報告されていない.しかし,今後,系統内交配を行うことで遺伝的多様性の維持を図る際,系統内の近交係数の増加は必至であるため,集団が抱える遺伝的荷重について何らかの情報を得ることが必要である.本研究は,但馬牛集団において生後1年以内の死亡率に対する致死相当量を推定した.加重最小二乗法によって得られたMortonらの回帰式の切片(A)および回帰係数(B)は,それぞれ0.058と0.111,最尤法から得られたABはそれぞれ,0.033と0.000であった.これらの値より同集団の致死相当量は接合体あたり0.222から0.338および0.000から0.066と推定された.同集団が小さな致死相当量を示した原因は2つ考えられた.1つは,有害劣性遺伝子がホモ化して淘汰を受ける機会が多かったという理由である.もう1つは,強度の選抜によって,有害遺伝子が種々の遺伝的変異とともに集団中から消失したことによると考えられた.

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