日本畜産学会報
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91 巻, 2 号
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一般論文(原著)
  • 阿部 隼人, 萩谷 功一, 山口 諭, 中川 智史, 後藤 裕作, 馬場 俊見, 河原 孝吉
    2020 年 91 巻 2 号 p. 93-102
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/06/13
    ジャーナル フリー

    乳牛の新たな長命性形質である生存能力(CL)について閾値モデルおよび線形モデルを適用し,1)遺伝的パラメータを推定,2)育種価を推定し遺伝的趨勢を調査,および3)CLにおける選抜形質としての有効性を検討した.CLとの比較のため,在群性(STAY)も分析に加えた.CLの遺伝率は0.1未満,同一産次のCLとSTAYの遺伝相関は0.70から0.84と推定された.同一形質の産次間分析では,閾値モデルを適用したとき高い遺伝相関(0.81から0.96)が推定された.同一形質の閾値モデルと線形モデルによる育種価間の相関は初産で0.97以上となった.CLとSTAYの遺伝的趨勢はともに低下傾向にあった.初産CLに対する選抜により,2産以降のCLに関する相関反応が期待できるかもしれない.

  • 後藤 弥子, 阿佐 玲奈, 萩谷 功一, 口田 圭吾
    2020 年 91 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/06/13
    ジャーナル フリー

    客観的な脂肪交雑の評価を目的として小ザシの程度を表す複数の指標を比較し,その遺伝的パラメーターを推定した.ロース芯面積および脂肪交雑の形状にばらつきを持つように選定した黒毛和種30頭の第6-7横断面画像を用い,枝肉の評価に慣れた5人の判定者から肉眼的な脂肪交雑の小ザシの印象に関する評価値を得た.画像解析値より得られた複数の小ザシ評価指標を比較し,肉眼的評価値との相関分析を行った.遺伝的パラメーターの推定には,黒毛和種25,432頭を用い,単形質および二形質アニマルモデルを使用した.選定した30頭におけるロース芯面積およびBMS No.の範囲はそれぞれ55から121cm2および10から12であった.肉眼的な評価値と脂肪交雑粒子の周囲長の総和をロース芯面積で除した値(NFI-2)との相関係数は−0.81で最も強い相関であった.NFI-2の遺伝率は0.55であり,遺伝的改良が十分可能な形質であろう.

  • 高屋 朋彰, Bulgan ENKHBAATAR, 大嶋 旭昇
    2020 年 91 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/06/13
    ジャーナル フリー

    島豆腐おからに含まれる付着乳酸菌を活用したサイレージの開発を目的として,島豆腐おからへ炭素源を添加した場合の実験室規模,屋内パイロット試験,および屋外実地試験におけるサイレージ発酵を検討した.グルコース(1%(w/w Fresh Matter : FM))もしくは糖蜜(2%(w/w FM))を添加して実験室規模で島豆腐おからサイレージを調製し,30°Cで112日間の貯蔵を行った結果,グルコースを添加した場合にもっとも乳酸が増加した.次に,屋内パイロット試験および屋外実地試験による島豆腐おからのサイレージ発酵を検討した.その結果,いずれの実施条件においても貯蔵112日目まで良好な発酵品質を示した.発酵期間を通した全窒素に対する揮発性塩基態窒素の割合は6%以下,Flieg’s scoreは良~優,V-scoreは良であった.

  • 小松 智彦, 小松 正尚, 庄司 則章
    2020 年 91 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/06/13
    ジャーナル フリー

    牛肉中のグルコースなどの単糖類は,呈味成分であるとともに,加熱調理時に生成する香気成分の前駆物質である.本研究では,黒毛和種の横隔膜,僧帽筋,腰最長筋の熟成時のグリコーゲンおよび単糖類含量の変化を調査した.その結果,熟成に従い単糖類含量は増加することが示唆され,屠畜直後の温屠体の横隔膜および腰最長筋のグリコーゲン含量と,2,3日熟成後の単糖類増加量は有意な正の相関を示した.同様に,冷屠体の僧帽筋および腰最長筋のグリコーゲン含量と,14日熟成後の単糖類増加量は有意な正の相関を示した.以上のことから,温屠体または冷屠体のグリコーゲン含量が多い牛肉では,熟成過程で単糖類が多く生成し,風味の良い牛肉となる可能性が示唆され,今後のさらなる調査と検証により,これらの筋肉中グリコーゲン含量を黒毛和種の新たな肉質の評価指標として用いることができる可能性が示唆された.

技術報告
  • 中井 瑞歩, 西山 萌乃, 村元 隆行
    2020 年 91 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2020/05/25
    公開日: 2020/06/13
    ジャーナル フリー

    鹿挽肉に添加したNaCl含量の違いが鹿肉ソーセージの保水性およびテクスチャー特性に及ぼす影響について検討した.野生ホンシュウジカ(n=16)の胸最長筋から挽肉を調製し,NaClの添加量が異なる0%区,1%区,2%区,および3%区に分け,鹿肉ソーセージを調製し,保水性およびテクスチャー特性を測定した.0%区のクッキングロスは他区のものに比較して有意に高かった.凝集性および付着性には試験区間での有意な差はなかった.また,ガム性荷重は2%区と3%区が0%区に比較して有意に高く,3%区が1%区に比較して有意に高かった.2%区および3%区のガム性荷重およびすべての試験区の凝集性および付着性は,口内でばらけにくいと評価される値であった.保水性が高く,口内でばらけにくい鹿肉ソーセージを製造するためには,鹿挽肉に少なくとも2%のNaClを添加する必要があることが示唆された.

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