地球環境
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12 巻, 2 号
低炭素社会のビジョンと実現シナリオ
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  • 西岡 秀三
    2007 年12 巻2 号 p. 121-122
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
    ジャーナル フリー

    研究の背景

     気候安定化のために、世界は温室効果ガス排出を大幅に削減し、化石燃料利用を制限した「低炭素社会」を構築しなければならない。日本もここ半世紀のうちに、今の60%~80%もの削減が要請されよう。果たして、そのような削減ができるのだろうか、そのためには今からどのような手を打って行かねばならないのだろうか。「脱温暖化2050研究プロジェクト」はこうした疑問に答えるために、2004年から5年計画で、環境省地球環境研究総合推進費戦略研究のひとつ(S-3)として開始され、2007年2月にその中間報告が発表された(http://2050.nies.go.jp)。本号はこれに参加した研究者による現時点での知見を取りまとめた論文を収録している。

     中間報告は、「日本を対象に、2050年に想定されるサービス需要を満足しながら、主要な温室効果ガスである二酸化炭素を1990年に比べて70%削減する技術的なポテンシャルが存在する」ことを結論としている。そしてその「低炭素社会」の実現に向けて、今から国民が目標を共有し、社会システムやインフラを徐々に代替してゆき、技術が確実に導入できるように適切な政策を打ってゆくことの必要性を示している。

     「低炭素社会」とは、単に供給エネルギー源を低炭素にすれば実現できるといった生易しいものではない。研究結果の示すところでは、まずエネルギー需要側での省エネルギーに向けて、大きな意識・行動・システムの変革が必要である。高エネルギー消費を前提とする今の技術社会を、半分のエネルギーで効用を確保できる社会システムに代えてゆかねばならない。そのためには産業構造、国土構造、経済構造自体を低炭素時代に向けて大きく舵を切らねばならない。本研究で描かれた「低炭素社会」の実現は、そういう意味で今世紀の日本再構築のひとつの軸になるものである。

     折しも2007年5月24日、日本は、ハイリゲンダムG8サミットで、2050年世界の温室効果ガス半減を提言した。2007年12月、国際社会は、2009年までに世界のすべての国が参加する、京都議定書約束期間以降の世界気候政策新レジーム構築に向けたバリロードマップを設定した。2008年7月洞爺湖サミットで、日本は主催国として温暖化防止の国際的リーダーシップをとろうとしている。さまざまな国際交渉に、日本自身がどこまでやればどれだけ削減できるのかの腹づもりを持って臨むことの必要性はいうまでもない。

     気候安定化には途上国の温室効果ガス削減への参加が必須である。先進国が陥った高エネルギー消費技術社会に落ち込まないで、どのようにして途上国の低炭素社会下での成長を可能にするか。今後の国際協力における日本の一番の貢献は、「低炭素社会」が実現可能であることを身をもって示すことにある。そのために、この70%削減可能性の提示が、世界の模範となる「日本モデル」を実現する一歩となるのではなかろうか。

    本号の構成

     研究内容は大きく3部に分かれる。第一は、科学および国際政治の面からみた低炭素時代への必然性と日本の削減目標設定の意義を示す2論文である。ここでは、シナリオ構築は国際政治動向に対して頑健なものである必要性を指摘し(太田 ら)、現在進行中の国際制度枠組再構成検討の中では、いずれにしても日本は2050年までに70%~90%もの大幅削減が要請されることを示している(蟹江 ら)。

     第二は、温室効果ガス大幅削減可能性を検討する統一シナリオの検討であり、2050年の社会ビジョンの提示、そこでの整合ある低炭素社会シナリオの作成とその実現可能性検討、バックキャスティングによるシナリオ実現に向けた政策手順検討からなる。まず、国民の低炭素社会ビジョン共有のために、2050年に想定される日本の社会経済の姿として、活力ある技術社会とゆったり自然調和社会の2イメージを描き(榎原 ら)、適切な技術開発と選択によって、どちらの社会イメージでも温室効果ガス排出70%削減は可能であることを示し(藤野 ら)、その達成のためにはインフラ投資などを早期に始めることの必要性を述べる(増井 ら)。

     第三はいわば各論になるが、低炭素社会を構築するいくつかの分野で、さらに深めた削減の考え方が論じられている。エネルギー分野では、大きく変わる需要形態に低炭素エネルギー源がどう組み合わせ得るかを論じ(藤野 ら)、交通部門においては自動車技術進歩と地域にあわせた交通体系整備に向けた施策・政策を提示(松橋 ら)、住宅・オフィスを主体とした削減可能性を日本の都市単位で検討(伊香賀)、湿系バイオマス利用による都市での削減効果算定(荒巻 ら)、ITによる情報化がダイナミックに環境配慮を浸透させ、新たな社会システムが創造される可能性を想定した低炭素化検討(藤本 ら)などである。また既成の産業社会構造を低炭素社会に導くための社会調整メカニズムとしてエコロジカル・モダナイゼーションの観点から、セクター間のダイアログ推進、スマートレギュレーションの利用が提案されている(山田 ら)。これら各論は、必ずしも全分野を網羅したものではないが、上記のシナリオ作成検討をそれぞれに裏打ちする論考である。

     本研究はいまだ途上にある。今後なさねばならない研究としては、ここで設定したビジョン達成に向け、そこへ至るための道筋・障壁・政策を示すことである。産業部門のイメージはまだ十分には書ききれていない。本研究をさらに発展させるには、本号の第一段で論議されている国際政策検討の中で、ここで打ち立てた日本モデルと先進工業国や発展途上国とのモデル比較によって、低炭素世界論議を深める材料にしてゆく努力が必要であろう。

  • 太田 宏, 蟹江 憲史, 河瀬 玲奈
    2007 年12 巻2 号 p. 123-134
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     本稿は、各国の目標検討に使用されたモデルやシナリオを検討した上で、これらに国際政治の中長期シナリオという視点が欠けていることを指摘する。「脱温暖化2050研究プロジェクト」で開発したシナリオ等を提示し、併せてシナリオの側面からみた目標検討モデルの評価を行い、通常の経済学系・理工学系のシナリオ検討に国際政治学からの考察を加える。これにより、各国の中長期削減シナリオの背景にあるモデルや考え方を明らかにする一方、これらのシナリオ検討には、実際にはシナリオを左右する重要な要素となる国際政治動向が十分考慮されていないことを指摘する。G8で提示された目標のように、政治的フォーラムで合意に至る目標は必ずしも科学的に厳密なものではなく、政治的メッセージ性を重視した目標である。このような目標は多分に国際政治動向を反映しているにもかかわらず、国際政治シナリオの背後にある価値観、信念、世界観については、これまで十分に勘案されてきたとはいえない。国際政治変動の側面から目標検討のためのシナリオやモデルのアプローチを評価すると、既存のアプローチは多様な国際協力アプローチを目標検討の前提としていることがわかる。したがって、シナリオ形成の際に国際政治動向シナリオも十分検討の上で作成することが、よりロバストなシナリオには求められよう。各種シナリオの根拠となる中長期目標の数値を与えている既存の中長期目標検討アプローチは、それぞれ想定している国際政治動向が異なる。したがって、作成するシナリオも、目標検討に使用された国際政治シナリオに整合する形で検討を加える必要がある。政策指向の分野横断的研究の最たるもののひとつであるシナリオ研究は、今後より多分野横断型の研究へと発展する必要がある。

  • 蟹江 憲史, 肱岡 靖明, 西本 裕美, 森田 香菜子
    2007 年12 巻2 号 p. 135-143
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     2007年のハイリゲンダムG8サミットは、GHG排出量を2050年に現状比で半減することを検討することに合意した。本稿は「2050年半減」を実現するためにとりうるグローバルな排出削減パスを統合評価モデルATM/Impact 〔Policy〕によって算出し、不確実性の幅を考慮して「2050年半減」の示唆する気温上昇レベルを明らかにする。また、そのようなレベルの気温上昇の影響を、気候変動に関する政府間パネル第4次評価報告書の知見などを元に検討した結果、2050年半減が示唆するところの2.1℃〜2.5℃の気温上昇でも、気候変動の影響によるリスクはかなり大きくなることがわかった。2050年半減を目指す限りにおいては、緩和策とともに適応策も重要になることが見込まれる。さらに、世界全体での2050年半減を所与としたときの国際的な排出許容量の差異化を考えることで、日本の排出許容量の程度を導いた。日本のような先進国にとっては、2050年半減は、1990年比でいえば70%〜90%というレベルでの排出削減が必要となることがわかった。また、短期的気候変動レジームとの関連では、2050年世界半減を実現するとしても、2020年や2030年といったような時点での排出削減量をどこまで抑えるかや、安定化レベルの取り方の違いによって、温暖化影響は大きく変わる可能性があることを指摘した。2050年世界半減目標はそれ自体のみでは不十分であり、そこに到達するための削減努力を十分勘案しない限り、気温上昇が大きくなる可能性さえある。2013年以降の国際制度構築を考える際には、一方で中長期的志望目標をより意欲的なレベルで合意できる国の数を増やし、他方、このような削減を可能たらしめる排出パスを検討し、これをたたき台として国別の短・中期的目標を議論していく国際交渉プロセスが必要となる。

  • 榎原 友樹, 藤野 純一, 日比野 剛, 松岡 譲
    2007 年12 巻2 号 p. 145-151
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     地球温暖化による深刻な影響を回避するためには、例えば2050年までに世界全体の温室効果ガスを現状から半減させる、といった大幅な削減が必要であると指摘されている。一方、CO2を中心とする温室効果ガスはあらゆる人間活動に関連しており、その削減には技術の開発・普及もさることながら、社会経済の在り方自体の変更まで迫られる。このような大規模な変革をもたらすためには、人々が目指すべき社会像として「低炭素社会ビジョン」を共有することが第一歩であり、そのビジョンを元に合理的な取り組みを計画的に進めていくことが重要である。ここでは、様々な社会的側面について「目指すべき」方向性について多面的な検討を行った上で、低炭素社会ビジョン検討の前提となる2つの社会経済ビジョンを構築した。

  • 藤野 純一, 日比野 剛, 榎原 友樹, 松岡 譲, 増井 利彦, 甲斐沼 美紀子
    2007 年12 巻2 号 p. 153-160
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     地球温暖化による深刻な影響を回避するためには、2050年までに世界全体の温室効果ガスを現状から半減、先進国はそれ以上の大幅削減をする必要があることが指摘されている。そこで、日本を対象に一定の経済成長の下、国民に必要なサービスを提供しながら、2050年のCO2排出量を1990年比で70%削減するような低炭素社会を構築する技術ポテンシャルがあるか、定量的な分析を行った。2050年の社会経済シナリオを構築し、推計したサービス需要の下で、部門別にボトムアップ的にエネルギー需要とエネルギー機器選択を行い、さらに低炭素エネルギーによる供給を行うと、現時点で知られている対策の組み合わせでも70%削減を実現できる可能性があることがわかった。

  • 増井 利彦, 松岡 譲, 日比野 剛
    2007 年12 巻2 号 p. 161-169
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     どのような行動を選択するかは、将来の状況を踏まえた上で決定されるが、無数に存在する将来の可能性から1つの像を描くことは容易ではない。不確実な将来を取り扱うツールとして、シナリオが様々な意思決定の場において活用されている。温暖化対策においても同様で、将来の社会・経済活動の動向を見通した上での対策が求められる一方、将来の気候の安定化のためには、温室効果ガス排出量の大幅な削減が必要となる。本稿では、将来の目標を定義した上で、現在からその目標に至る道筋を明らかにするバックキャスティングの手法を用いて、低炭素社会への道筋を明らかにする。すなわち、2050年を対象に二酸化炭素排出量を大幅に削減する社会像を示した上で、そうした目標となる社会像をどのように実現させていくのかについて、本分析用に開発した動学的最適化モデルによる分析をもとに明らかにする。

     開発した動学的最適化モデルは、2000年を基準に、5年ごとに2070年までを対象とした線形モデルである。モデルでは日本の経済活動を26部門に分割し、割引現在価値で評価された効用を最大にするように消費、投資といった活動が決定される。二酸化炭素排出量については、2030年から削減を開始し、2050年には1990年比70%削減を実現するような制約条件を設定する。現状で導入が見込まれる様々な炭素削減対策についてそれらの導入上限と費用を設定し、炭素制約下において、2050年までにどのような対策が導入され、どのような影響が発生するかを分析する。その結果、炭素制約が課されていない2030年以前から一部の炭素削減対策が導入されるとともに、これらの対策の導入がGDPを押し上げる結果となった。一方、今回の対策の想定では、2040年にほぼすべての対策が導入され、2040年以降においては経済活動への影響も見られるようになる。これは、二酸化炭素排出量の制約を満たすために経済活動を縮小しようとするもので、そうした状況を回避するためには、より多様で削減量の大きい対策の開発や導入も必要となる。こうした対策を現実のものとするためには、2040年までの期間を有効に使用しなければならない。

  • 藤野 純一, 日比野 剛, 榎原 友樹, 芦名 秀一
    2007 年12 巻2 号 p. 171-178
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     エネルギー供給システムは既存のインフラの積み重ねであり、長らく政府やエネルギー業界の示す指針に従ったエネルギー政策が採られてきた。しかし、2050年のCO2排出量を1990年比で60%〜80%削減するような低炭素社会を志向するのならば、おそらくエネルギー需要部門だけでなく供給部門においても大胆な転換を図らなければ実現できない。そこで、2050年の日本社会を想像し、人々がどんなエネルギーサービスを必要とするかを検討し、それを満たすエネルギー供給像についてそれぞれのエネルギー資源の供給可能量を推計した。その結果、既存のエネルギーシステムの大幅な変更を行えば、70%削減が実現可能なことがわかった。

  • 松橋 啓介, 工藤 祐揮, 森口 祐一
    2007 年12 巻2 号 p. 179-189
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     交通分野を対象に、2050年低炭素社会を実現するための施策について検討を行った。2020年に向けては、自動車技術の改善と普及による削減策を中心に検討した。燃料の精製・供給から走行に使用されるまでの環境負荷を定量化するWell to Wheel分析の結果を踏まえた検討を行い、加減速の多い都市内の短距離移動に関しては電気自動車が優位であること、平均旅行速度の高い地域ではハイブリッド車(HV)の普及が優位であることを明らかにした。次に、従来型車両の技術的改良に加えて、HVの生産能力を前年比倍増させてHVの乗用車を大量に普及させ、CO2排出量を1990年並に抑えるシナリオを作成した。また、2050年の7割減達成を容易にするためのシナリオとして、2020年に向けて年間約1%~1.5%のペースで自動車交通量を抑制し、CO2排出量を14%減とするシナリオを示した。一方、2050年に向けては有識者ヒアリングを行い、都市基盤の位置関係は大きく変わらないが交通機関や地域単位では大きな変化が起こりうること、施策として課税によるインセンティブの活用や道路財源を用いた公共交通整備が進むことを基本的な方向性として把握した。また、シナリオを大きく左右する要因としては、原油価格、居住動向や移動へのニーズが挙げられた。次に、地域別の自動車CO2排出量の実態把握を踏まえて、地域別および排出要因ごとに分類した施策と、その削減可能量を行列に整理したビジョン例を構築した。さらに、これらの施策を実現するための具体的な施策・政策を整理した。

  • 伊香賀 俊治
    2007 年12 巻2 号 p. 191-199
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     住宅については、気候条件と都市規模のバリエーションを考慮して選定した札幌市、宇都宮市、広島市、那覇市の4都市を対象とし、未来社会像として、シナリオA(都市集中型社会)とシナリオB(地方分散型社会)とシナリオAおよびBの中間のシナリオMにおいて、2050年における住宅居住時のCO₂排出量を1990年に比べて概ね70%削減するために、電力事業者の対策(電力のCO₂原単位改善)を前提とした上で、住宅の断熱性能向上、高効率家電製品の買い替え促進、省エネ型ライフスタイルへの変革をどの程度行えばよいかを検討した。

     事務所ビルについては、運用時のCO₂排出量に加えて、新築時、改修時のCO₂排出量を加えた47都道府県ごとのCO₂排出量を2050年まで予測した。未来社会像として、シナリオA、シナリオB、シナリオMについて、2050年における事務所ビルからのCO₂排出量が1990年に比べて概ね70%削減を達成するために、省エネルギー対策、長寿命化対策、エコマテリアル採用をどの程度行えばよいかを検討した。電力事業者の対策として、電力のCO₂原単位が2005年以降変化しないシナリオと経済産業省の超長期エネルギー技術ロードマップに基づくシナリオを想定した。

  • 荒巻 俊也, 石井 暁, 園田 隼也, 加用 千裕, 花木 啓祐
    2007 年12 巻2 号 p. 201-207
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     本研究では、比較的賦存量が多いと考えられている厨芥や下水汚泥といった都市湿系バイオマス、人びとの住まい方による影響が大きいと考えられる建設発生木材を対象として、都市湿系バイオマスについてはバイオガス生産、建設発生木材についてはバイオ燃料化を技術オプションとした場合の超長期的な供給ポテンシャルを日本の社会の将来像を表す2つのシナリオの下に推定した。さらに、これらの利用による温室効果ガス排出削減効果を推定した。その結果、2050年において、都市湿系バイオマスからのバイオガス生産については年間約1.8百万t、建設発生木材からのバイオエタノール製造については約5.0百万t程度の二酸化炭素排出削減がポテンシャルとして示された。それぞれのポテンシャルの算出において多くの仮定を用いているため、結果の解釈には十分な注意が必要であるが、異なる2つの社会像の下でのこれらのバイオマス利用ポテンシャルには大きな差はないことが示された。今後、さまざまなバイオマス資源について、さまざまな技術オプションを利用した場合の将来にわたる利用可能量とその効果や環境影響を推定していくことにより、ある地域においてどのバイオマスをどのように利用していくかについて、戦略的に検討するための材料を提供しうるものと考えている。

  • 藤本 淳, 松本 光崇, 折口 壮志, 西 史郎, 植田 秀文, 端谷 隆文
    2007 年12 巻2 号 p. 209-218
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     情報技術(Information Technology:IT)の社会普及に環境配慮設計(エコデザイン)の視点を入れることで、安全で豊かな低炭素社会を実現することを目的に研究を進めている。最初に、2020年におけるIT普及がCO₂排出に与える影響を考察した。2020年には、高度ITの普及が進み、環境対策、観光、流通管理、ショッピングなど様々な場面で活用されている可能性が高い。現在の延長でこのようにIT普及が進んだ場合でも、国内総排出量の約5%のCO₂排出削減ポテンシャルをもつ。「ITによって新たな社会システムが創造される」といったダイナミックな変革が生じれば、さらに大きな削減効果が得られるであろう。そこで、2050年低炭素社会を想定して、未来社会で実現して欲しい事象を市民1,000名へのアンケート、作家・映画監督・科学者など有識者インタビュー、および未来社会を題材としたSF(Science Fiction)映画やアニメーションの調査により抽出した。これらキーワードをもとに、IT普及がコミュニティや家族とのつながり、人間と自然との関係を回復させた結果、人々が目標達成に向けていきいきと生活している社会を、物語とイラストで描いた。このように描いた2050年社会のCO₂削減量を試算した。

  • 山田 修嗣, 藤井 美文, 石川 雅紀
    2007 年12 巻2 号 p. 219-226
    発行日: 2007年
    公開日: 2026/08/10
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     本稿は、「エコロジカル・モダナイゼーション」論の検討を通して、脱温暖化という社会的目標に適合する日本産業社会のモデル構築のための諸条件を考察する。その際の主要な概念は「社会的調整」である。社会的調整は環境目標を設定し、目標遂行過程の正当化を進め、環境的パフォーマンスと経済的パフォーマンスを一定の条件下で調整する意味合いがある。この点からみれば、それぞれの社会には歴史依存的な社会構造が形成され、それを無視しての調整は行い得ない。したがって、当該社会を脱温暖化型の社会構造に近づけるイノベーションは、エコロジカル・モダナイゼーション論が主張するように、社会的セクター(政治、経済、市民)による調整様式の確立を踏まえた「調整された社会」の構築ときわめて親和性が高い。その際の手段には、新しい社会構造へと志向させる契機(イニシアティブ)と、脱温暖化型の産業社会へと再秩序化させる制度(調整の場)が必要である。本稿の分析では、脱温暖化を環境政策とともに達成させる目的から、政治的なイニシアティブにより社会を変容させる方法を前提とした。これを契機として、2つの制度的調整を析出した。1つは、セクター間の「ダイアログ」により目標の設定と正当化を同時に進め、環境市場の正当化を促す方法である。もう1つは、「スマート・レギュレーション」を効果的に利用しつつ、経済セクターの技術革新を正当化して、市場に投下される財の環境的パフォーマンスを向上させる方法である。両者がともに環境と経済のパフォーマンスを維持し統合する点で、日本が脱温暖化社会を目指す際の示唆を含むと考えられる。

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