プラスチックは、製造・使用・リサイクル・廃棄処分といったライフサイクルを通じて環境中へ流出しており、海洋汚染をはじめとする環境汚染が社会問題となっている。2022年2月〜3月に開催された国連環境総会では、海洋プラスチック汚染をはじめとするプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書(いわゆる「プラスチック汚染条約」)の策定に向けて議論を進めることが決定された。これを受けて、条約の目的の特定や持続可能な生産と消費の促進などに関する交渉が、日本を含む約170か国の国連加盟国、関係国際機関、NGO等の参加のもとで行われている。
海洋プラスチック汚染の問題は、大きく経済的影響と人・生態系への影響の二つに区分される。経済的影響としては、景観悪化による観光業への影響、回収処理に要する費用負担、漁業被害、大型漂流プラスチックによる船舶事故や漁具損傷などが指摘されている。一方、人や生態系への影響については、プラスチックがサイズや形状に応じて多様な生物に有害な作用を及ぼし、その結果として個体群の減少や生態系バランスの攪乱を引き起こしていることが報告されている。とりわけ、生物に取り込まれやすい粒径5mm未満のマイクロプラスチックによる影響が懸念されている。
こうした背景のもと、プラスチック汚染条約の科学的基盤を支えるため、経済的・生態的影響の定量的把握や対策の優先順位付けに向けた研究が、環境省及び大学・研究機関において精力的に進められている。
本特集では、海洋マイクロプラスチック汚染の現状を理解・共有することを目的として、プラスチック汚染条約に関する国際的な動向や国内の環境行政の取り組みを紹介するとともに、マイクロプラスチックの生成、流出、汚染実態、生物影響、環境中での運命に関する最新の研究成果を、環境研究総合推進費による研究プロジェクトを中心に取りまとめたものである。本特集の趣旨にご賛同いただき、ご多忙の中ご執筆くださった著者の皆様に、心より御礼申し上げます。
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