地球環境
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30 巻, 2 号
海洋マイクロプラスチック汚染の 現状理解
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 鈴木 剛
    2025 年30 巻2 号 p. 123
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     プラスチックは、製造・使用・リサイクル・廃棄処分といったライフサイクルを通じて環境中へ流出しており、海洋汚染をはじめとする環境汚染が社会問題となっている。2022年2月〜3月に開催された国連環境総会では、海洋プラスチック汚染をはじめとするプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書(いわゆる「プラスチック汚染条約」)の策定に向けて議論を進めることが決定された。これを受けて、条約の目的の特定や持続可能な生産と消費の促進などに関する交渉が、日本を含む約170か国の国連加盟国、関係国際機関、NGO等の参加のもとで行われている。

     海洋プラスチック汚染の問題は、大きく経済的影響と人・生態系への影響の二つに区分される。経済的影響としては、景観悪化による観光業への影響、回収処理に要する費用負担、漁業被害、大型漂流プラスチックによる船舶事故や漁具損傷などが指摘されている。一方、人や生態系への影響については、プラスチックがサイズや形状に応じて多様な生物に有害な作用を及ぼし、その結果として個体群の減少や生態系バランスの攪乱を引き起こしていることが報告されている。とりわけ、生物に取り込まれやすい粒径5mm未満のマイクロプラスチックによる影響が懸念されている。

     こうした背景のもと、プラスチック汚染条約の科学的基盤を支えるため、経済的・生態的影響の定量的把握や対策の優先順位付けに向けた研究が、環境省及び大学・研究機関において精力的に進められている。

     本特集では、海洋マイクロプラスチック汚染の現状を理解・共有することを目的として、プラスチック汚染条約に関する国際的な動向や国内の環境行政の取り組みを紹介するとともに、マイクロプラスチックの生成、流出、汚染実態、生物影響、環境中での運命に関する最新の研究成果を、環境研究総合推進費による研究プロジェクトを中心に取りまとめたものである。本特集の趣旨にご賛同いただき、ご多忙の中ご執筆くださった著者の皆様に、心より御礼申し上げます。

  • 長谷 代子
    2025 年30 巻2 号 p. 125-132
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     2022年の国連環境総会決議に基づき、プラスチック汚染に関する国際条約の策定交渉が行われているが、それらの議論を支え、またプラスチック汚染対策の実施を促進するため、環境省では「海岸漂着物処理推進法」や「プラスチック資源循環促進法」等の下、製造から廃棄までライフサイクル全体での対策を推進してきた。

     特にマイクロプラスチックに関しては科学的知見の集約として、プラスチックの環境中の分布・動態の把握のための調査、各種国内外のガイドラインやデータベースの策定、及び生態系への影響評価手法の検討や関連する研究支援等を行うとともに、流出抑制対策として、民間事業者の取組としてグッド・プラクティス集の策定や業界別懇話会の開催を行うほか、大きなプラスチックごみ対策もマイクロプラスチックの発生抑制につながるとの認識の下、地方公共団体との連携事業や様々なステークホルダーによる取組紹介のウェブサイトの運用等を行っている。

     プラスチック汚染対策には、製造から廃棄までの全ライフサイクルでの国内外での連携が不可欠であり、今後もこうした取組を継続していく。

  • 田中 周平, 大下 和徹, 高岡 昌輝, 中田 晴彦, 鈴木 裕識, 大野 順通, TAN Shih-Wei, 藤原 拓
    2025 年30 巻2 号 p. 133-139
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     海洋へのマイクロプラスチック(MPs)の流出抑制を進めるうえで、陸域からの排出負荷量の推定は不可欠である。本稿では、陸域点源からのMPs排出量をマテリアルフロー解析ではなく現地調査に基づき推計する手法を提案するとともに、粒子状MPsの排出インベントリ(長軸径1mm~5mm、晴天時)を取りまとめた。対象とする点源としては、流域汚濁解析に準じて、下水道、浄化槽等の汚水処理施設及び廃棄物関連施設とした。その結果、廃棄物処理施設からの排出量は他の排出源と比較して十分に少ないことが示された。加えて、汚水処理施設からの繊維状MPs排出量を評価した結果、繊維状MPsの浄化槽からの排出量は無視できないことが示唆された。さらに、超高透過水流束で運転可能な重力駆動型布ろ過システムによるMPs除去性能の評価を行った結果、下水処理場における微細なMPsの実用的で安価かつ持続可能な除去技術としての可能性が示された。

  • 中島 典之
    2025 年30 巻2 号 p. 141-146
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     近年の水質問題において市街地面源の寄与が大きいと考えられるものにマイクロプラスチック(MP)がある。本稿では、市街地面源由来マイクロプラスチックの国レベルでの排出負荷量推定を目的とし、その方法と課題を整理した。まず従来の面源排出負荷量算定のスキームに準ずる形での現場調査結果に基づく環境科学的推定を示し、浮遊物質量(suspended solids, SS)のEMC(event mean concentration; 一降雨の流量加重平均濃度)に基づく試算(暫定)として1.7×104[t/年]を得た。素材ごとの積み上げ方式としてタイヤ摩耗粉じん、自動車ブレーキ粉じん、道路標示材の環境省による推定値合計は1.6×104[t/年]であり一定の整合性は取れていたが、どちらの手法においても不確実性が高いことを論じ、推定には多くの課題が残されていることを示した。

  • 二瓶 泰雄
    2025 年30 巻2 号 p. 147-153
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     これまで、河川のプラスチック汚染に関しては、マイクロプラスチック(<5 mm, MicP)は多く調査がなされているものの、メソプラスチック(5 mm~25 mm, MesoP)は対象外となっていた。本研究では、日本の河川水中のMicPとMesoPの濃度(数、質量ベース)、形状、材質を明らかにするために、147河川、185観測点での現地調査を実施した。これより、MicPとMesoPは、それぞれ全地点中99%、74%で確認された。MicPとMesoPの濃度差は、MicP濃度の増加とともに拡大するが、適切なサンプリングによってMicPとMesoP両方の濃度を監視する必要があることを示した。MicPとMesoPの主な形状と材質は、それぞれFragmentとFiber、及びポリエチレン(PE)とポリエチレンテレフタレート(PET)であった。これらは、多くのFiber clusterの大きな影響を受けていた。これより、流域内外における繊維クラスターの動態を監視する必要性を示唆した。

  • 鈴木 剛, 田中 厚資, 天野 敦子, 宇野 誠一, 国末 達也, 板木 拓也, 仲山 慶
    2025 年30 巻2 号 p. 155-166
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     プラスチックごみによる海洋汚染は、国際社会で対処すべき喫緊の環境問題である。環境研究総合推進費1-2204(2022年度~2024年度)では、陸域・沿岸域・海洋における5mm未満のマイクロプラスチック(MP)を対象に、汚染実態及び生物影響の評価を通じて、生態系や生物多様性へのリスクを明らかにし、優先的に詳細評価すべきMPの特定を目指した。汚染実態把握では、海洋に流出したMPの動態を調査し、材質や粒子サイズにより挙動が異なること、また水底堆積物において高濃度となるホットスポットが形成される場合があることが判明した。生物影響評価では、MPを摂取した生物に対する毒性影響を調査し、材質・添加剤・劣化状態に応じて多様な毒性作用が生じることが明らかとなった。さらに、生態リスク評価では、ポリオレフィン系破片状MP及び自動車タイヤ由来の路面摩耗粉じんが、一部地域の水底堆積物において生物や生態系に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。

  • 高橋 一生
    2025 年30 巻2 号 p. 167-173
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     本研究では、水産研究・教育機構が保管する表層曳プランクトン試料を用いて、1949年〜2020年の71年間にわたる日本周辺海域の海洋プラスチックごみの長期変動を解析した。その結果、汚染動態は、1950年代〜1970年代の増加期、1980年代〜2010年代初頭の停滞期、2010年代中期以降の再増加期の3つの時期に大別されることが明らかとなった。また、流出開始から現在に至るまでプラスチック粒子の継続的小型化が確認された。停滞期のプラスチックごみ密度は、調査海域の一次生産量の年変動を示す冬季PDO指数(北太平洋の20N以北における海面水温が約10年周期で変動する現象であるPacific Decadal Oscillationの強さを示す指標)と有意な負の相関を示した。このことから、プラスチックごみの小型化により、植物プランクトンとの凝集体形成を通した沈降除去が促進された結果として、密度の停滞が生じた可能性が示された。近年の再増加期はこの除去能力を上回る放出が進行していることを示唆しており、表層生態系への影響が一層深刻化している可能性がある。

  • 大河内 博, 谷 悠人, 小野塚 洋介, 王 一澤, 速水 洋, 竹内 政樹, 反町 篤行, 藤井 佑介, 竹中 規訓, 池盛 文数, 加藤 ...
    2025 年30 巻2 号 p. 175-184
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     プラスチック製品の大量生産と大量廃棄に伴い、微細化したマイクロプラスチック(microplastics;MPs)は海洋、河川、土壌だけでなく大気中にも広く拡散している。なかでも微小粒子状物質(PM2.5)に含まれる大気中マイクロプラスチック(airborneMPs;AMPs)は肉眼で確認できず、吸入による健康影響が懸念されている。脳、肺、喀痰、心臓、血液、母乳、胎盤などヒト組織からMPsが検出されており、経気道吸入は主要な取り込み経路と考えられている。さらにAMPsは地球表層を循環し、生態系や気候へ複合的に影響する可能性も指摘されている。本稿では、AMPsの実態とその健康及び気候変動リスクに関する最新知見とともに、環境研究総合推進費プロジェクトで得られた成果を紹介する。

  • 田中 厚資, 高橋 勇介, 鈴木 剛
    2025 年30 巻2 号 p. 185-192
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

      海洋プラスチックの劣化・微細化は、マイクロ・ナノプラスチックの重要な発生源と考えられているものの、海洋環境での劣化・微細化速度についての定量的な情報は明らかになっていない。本研究では、プラスチックごみの劣化・微細化が起こる主要な場と考えられる海岸に注目し、劣化したプラスチックに波を模した物理的作用を加える試験によって、海岸での劣化・微細化速度の実験的な見積もりを行った。フィルム形状、厚手形状のポリプロピレン、ポリエチレンの試験片を対象に試験を行い、特に形状によって、劣化・微細化傾向に顕著な差異があることを明らかにした。さらに、得られた劣化・微細化速度を環境省のガイドラインに沿って行われた海岸漂着ごみ調査のデータに適用することで、実際の海岸での劣化・微細化によるマイクロ・ナノプラスチックの生成速度について見積もりを行った。

  • 早川 淳, 野方 靖行, 山下 麗, 伯耆 匠二, 中野 碧, 西部 裕一郎, 小川 展弘, 河村 知彦
    2025 年30 巻2 号 p. 193-202
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     大量のプラスチックごみが流入し続けた結果、海洋環境中には膨大な量のプラスチックが存在している。海底に沈降したプラスチックについては、海洋表層で生じる紫外線や波浪による微細化がされにくいと考えられている。しかし、海中ではあらゆる基質に付着生物が出現するため、付着藻類などを摂餌する植食性底生動物(グレーザー)がプラスチック上で摂餌することで、岩盤など天然の基質上で生じるものと同様に、表面の掘削による微細化が生じる可能性がある。加えて、基質に強固に接着する付着生物が脱離することによって、プラスチックごみ表面に損傷が生じることも想定される。本稿においては、プラスチックごみの海底への沈降、基質表面への付着生物の出現、プラスチックの微細化に寄与することが考えられるグレーザー・付着生物の摂餌や付着のメカニズム、これらの生物によるプラスチックの微細化の実例について現在分かっている知見をまとめた。

  • 仲山 慶, 田上 瑠美, 鈴木 剛
    2025 年30 巻2 号 p. 203-210
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     マイクロプラスチックの魚類への影響評価において、成長阻害に着目した試験法を検討した。コイ(Cyprinus carpio)の稚魚を対象に、タイヤ粒子(CMTT)とサイズの異なるポリプロピレン(PP)を曝露する試験を実施した。CMTT曝露では有意な成長阻害は認められなかった一方、PP曝露では、粒子サイズが小さいほど成長率の低下が顕著であった。統計解析の結果、水槽平均での成長率を指標とすることの妥当性を示した。再現性の高い試験条件設定を前提とし、4週間以上の試験期間が理想的だと考えられた。試験期間中の給餌量の再計算は必要ではあるが、影響を矮小化する可能性を指摘し、成長阻害の解釈には慎重を期すべきと結論付けた。

  • 大嶋 雄治, 高井 優生, 島崎 洋平
    2025 年30 巻2 号 p. 211-218
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/06/12
    ジャーナル フリー

     本研究は、マイクロプラスチック(MP)を介した化学物質取り込み(ベクター効果)の定量化と機構解明を目的として、メダカを用いたin vivo共曝露実験とコンパートメントモデル解析、in vitro脱着試験を実施した。その結果、ポリエチレン(PE)/ポリスチレン(PS)MPと多環芳香族炭化水素アントラセン(ANT)の共曝露では、実験条件下で総蓄積量の33%がMP経由で取り込まれると推計された一方、現実的に起こりうるMPとANT濃度で予測した結果、寄与率は1%未満と予測された。粒径で比較した結果では、10-μm MPに比べて2-μm MPはANT体内濃度を有意に増加させたが、形状(球状/破砕状)は蓄積量に影響しなかった。クロロベンゼン類ではベクター効果は観察されず、脱離が限定的であることが要因だと示唆された。In vitro試験で胆汁酸はANTとフェナントレン(PHE)の脱着を顕著に促進した。本結果より、ベクター効果評価にはin vitro脱着試験が有効であると結論された。

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