本稿では,国土縁辺部にある一奥地山村旧A村(現在,G市A町)を事例として,1990年代末期以降の公共事業縮小・入札制度改革の下における土木業者の再編過程を跡づけた。1990年代末期以降,旧A村の地元土木業者は,公共事業縮小・入札制度改革に加えて,域外業者の参入に苦しみながらも,業者間競争を激化させたり,撤退や合併による経営基盤の強化という経営行動をとることなく,旧A村内外での受注調整を堅持し,売り上げの減少や利益率の低下の中で,自己資本を切り崩しながら「我慢比べ」を続けていることが明らかになった。このような事態が発生した一因として,国の土木業再編に関するシナリオにおいて,国土縁辺部における土木業者群の特徴などの地域的な文脈がほとんど理解されていないことが挙げられる。
抄録全体を表示