わが国では大都市圏と地方圏の差異だけでなく,地方圏の中にも地域差があるので,年齢階級別人口移動は都市システムの研究にとっても住民のライフコースの研究にとっても重要である。札幌市では壮年移動以外のすべての年齢階級にとって転入超過を示し,転入超過数が最も多いのは後期高齢者である。関係圏の形態には中心地の魅力度の差が強く反映され,札幌市の若年移動の関係圏は北海道全域に広がる。農村部や小都市では札幌市に向かって流出する後期高齢者が異常に多く,北海道特有の現象とみることができる。
本研究の目的は,大分市の特別養護老人ホーム(特養)を対象に,事業所・従業者へのインタビュー及びアンケート調査を通じて,介護福祉士確保の取組みと就業特性を明らかにすることにある。全33施設中,許可の得られた8施設への半構造化インタビューとそこで働く従業者へアンケートを行い,対象者380人中,有効回答は148人であった。
調査の結果,第1に大規模施設ほど介護福祉士比率が高く,ハローワーク,縁故採用・口コミ,退職者声掛け,養成学校を通じた採用に加え,初任者研修校からの実習生採用等,介護福祉士候補者を確保できるような求人の工夫がなされていた。第2に介護福祉士確保のために資格手当の付与が大半の施設で行われ,研修機会の提供や経済的支援等も一部行われていた。
第3に本アンケートの正規職員介護福祉士は全国平均と比べて長期勤続していた。また,男女で異なる就業特性もみられた。例えば,男性は女性と比べて主任・ユニットリーダー(UL)に就く傾向にあり,主任・ULほど既婚者比率が高く,未婚者より月給が高い傾向にあった。他方,女性養成学校卒業者は,フォーマル・インフォーマルな複数の情報を勘案して就業先を決めていた。