日本は地震や土砂災害などの自然災害が多発する国であり,ハードとソフトの両面からの対策が進められている。ソフトの対策の1つとして防災教育があげられる。現在,中等教育における防災教育の実践報告はあるが,2022年度からはじまる必修科目「地理総合」における防災教育の実践報告はみられない。
本研究では,平成30年7月豪雨の被災地域である広島市安芸区矢野を事例として「地理総合」を視野に入れた防災教育の実践報告を行う。本実践の目的は,次期学習指導要領における3つの要素と対応させた。すなわち,①防災に活用できる知識・技能を習得させること,②安全な避難経路を立案し,根拠に基づいて説明できること,③防災を主体的に学ぶ態度を育成することである。
本実践では地形図の読み取り,避難経路を考えるDIG(Disaster Imagination Game)や理想の避難場所の構想といった活動を取り入れた。DIG作業の過程では,ハザードマップや豪雨時の浸水域の提示により,避難経路を修正させた。また,理想の避難場所とはどんな場所かを,避難後の生活などを踏まえて構想し,現実的であるかどうかを考察させることを狙いとしている。
本実践は「地理総合」で求められる,①知識及び技能の習得,②思考力・判断力・表現力等の育成,③学びに向かう力,人間性等の育成・涵養の3点を満たし,「地理総合」における防災教育のモデルの一例となりうると考える。
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