地理科学
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短報
  • ――鹿児島中央駅地区と天文館地区の比較から――
    與倉 豊
    原稿種別: 短報
    2024 年 79 巻 2 号 p. 33-50
    発行日: 2024/08/28
    公開日: 2024/08/30
    ジャーナル 認証あり

    本稿では鹿児島市を事例として,伝統的な中心商店街,駅前の再開発地区,新興商業地である郊外部との競合関係を把握し,公民連携による商業系再開発事業が,地方都市の空間構造に及ぼす影響を明らかにした。本研究の成果は以下のようにまとめられる。まず九州新幹線開業に伴う鹿児島中央駅周辺の再開発進展を契機として,伝統的な中心商店街である天文館地区への商業の一極集中が解消された。さらに郊外部の商業集積の台頭もみられたことから,鹿児島市では多極的な商業集積が生まれていた。鹿児島市の商業系再開発事業の展開をみると,建物の老朽化を起因とした商業機能の低下が課題であった鹿児島中央駅周辺では,商業機能と居住機能が融合した都市型居住空間の形成が実現された。さらに再開発の際には鹿児島市が道路の付け替えや拡幅を行うなど鹿児島中央駅周辺の回遊性の向上が図られ,商業機能の強化が公民連携の手法を導入して達成された。一方,天文館地区では百貨店の撤退など商業機能の低下が深刻化するなか,地場企業主導の再開発事業により商業機能の維持が図られた。さらに公的不動産を活用した文化商業複合施設の新設や,図書館のような公益施設の再開発ビル内への整備などによって,回遊性を担保する拠点づくりが行われ,伝統的な中心商店街のにぎわいを維持するための試みがなされていた。

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