本稿の目的は,国内アニメーション産業におけるデジタル化に伴う産業集積の変容を明らかにすることである。ここでいう産業集積の変容とは,集積の維持と地理的分散を意味している。アニメーション産業では,依然として東京一極集中が続いている。一方で,地方のアニメーション制作会社の数は増加傾向にある。そのため,本稿では制作会社や関連主体への聞き取り調査を基に,デジタル化と産業集積の変容の関係性を考察した。その結果,デジタル化は作業場所の自由化と取引コストの低下をもたらし,地方展開の要因となっている可能性が示唆された。また,仕事を獲得する場としての東京の重要性は依然として大きいが,デジタル化によって生産工程においては東京へ立地する必要性は低下している。柔軟な専門化構造には変化がみられ,これにより東京の一極集中は変化する可能性がある。