地理科学
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シンポジウム
論文
  • 森 清成
    原稿種別: 論文
    2025 年80 巻3 号 p. 88-97
    発行日: 2025/09/28
    公開日: 2025/10/03
    ジャーナル 認証あり

    関口ほか(2017)の研究によると,「地元意識」は「地域そのものとの繋がりよりも,親密な人の存在が地元意識の形成の核になる」と考えられている。人とのかかわりによって,「地元意識」が形成されるならば,多様な地域から通ってくる本学校園の子どもたちにとって,学校園で出会う人の存在によって,この地域が地元になるか否かが左右されるといっても過言ではない。

    筆者の勤務校では,幼稚園・小学校・中学校の一貫教育において,共通の資質・能力を子どもにつけさせるために「光輝(かがやき)」という教育活動を行ってきた。教師同士で子どもの姿を基にして,対話をしながら,課題をみつけている。その中で,目の前の子どもたちに足りない力は「人と関わる力」であった。この「人と関わる力」を育むために,さまざまな人との交流活動を行った。それによって,異なる学年・異なる校種だけではく,地域の人とのかかわりと通して,子どもたちの「人と関わる力」が高まった。

    「人と関わる力」を育むために,安心できる「ホーム」と心理的負荷のかかる「アウェイ」を往還する「越境」を意識することが重要である。それによって,安心できる人のいる「ホーム」を広げていくことが「地元意識」の醸成につながる。そして,子どもたちの「地元意識」を広げていくことが地域づくりへと広がっていくのである。

  • 吉田 剛
    原稿種別: 論文
    2025 年80 巻3 号 p. 98-107
    発行日: 2025/09/28
    公開日: 2025/10/03
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,幼小中高一貫地理教育カリキュラムのフレームワークの有用性を探ることを目的とした。その成果は次の4つである。

    1)OECDの『Education 2030』によるカリキュラム・デザインの基本原理「意図されたカリキュラム」に対する,一貫地理教育カリキュラムのフレームワークの対応を検討した結果,汎用性が窺えた。

    2)中央教育審議会諮問「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」の概要に対する,一貫地理教育フレームワークの対応を検討した結果,日本の教育方向に応じる時勢の社会性が窺えた。

    3)他方で,小学校社会科実践に対する一貫地理教育フレームワークの分析結果をもとに,地理的探究を重視したモデルづくりを行った。

    4)これらの成果によって,地理的概念と他の軸から捉える一貫地理フレームワークの多様性や柔軟性が見込まれた。一貫地理教育フレームワークは,教師や児童生徒などの教育・学習活動を支えるカリキュラム・ツールとなり,授業開発,授業分析,授業改善に役立てられる。

  • 永田 成文
    原稿種別: 論文
    2025 年80 巻3 号 p. 108-119
    発行日: 2025/09/28
    公開日: 2025/10/03
    ジャーナル 認証あり

    現行学習指導要領(2017年,2018年告示)の小・中・高等学校の地理教育では,公民としての資質・能力の育成と関わり,「持続可能性」と5つの地理的概念を活用して地理的な見方・考え方を働かせて思考・判断するESDとしての地理的探究が求められる。

    本研究では, ESDとしての地理的探究を行う地理ESD授業において,ESDの重点分野で示されている現代世界の諸課題をSDGsと関連づけて,持続可能な社会づくりに向けた地理的価値態度の育成を系統的に示した。また,ESDとしての小中高一貫地理教育カリキュラムのアウトラインとして, 現行学習指導要領においてESDとしての地理的探究が系統的に可能である,持続可能な地域づくり,異文化理解,地球的課題,防災の4つのカテゴリーを示した。地域調査を核とする持続可能な地域づくりを事例として,取り上げる概念の順次性,ESDの「持続可能な都市化」のテーマに対応するSDGsの種類,フィールドワークの類型に着目して,地域の課題を考察・構想する小・中・高等学校の系統を明らかにした。

    ESDとしての地理的探究を行う地理ESD授業では,UNESCOの「ESD for 2030」で強調された「変容的行動」を意識し,どうしたら「新たな価値を創造する力」が育成できるのか,ワークライフバランスや主観的幸福の指標に対応できるのかについて検討する必要がある。

  • 牛垣 雄矢
    原稿種別: 論文
    2025 年80 巻3 号 p. 120-129
    発行日: 2025/09/28
    公開日: 2025/10/03
    ジャーナル 認証あり

    平成29・30年告示の学習指導要領に基づいて作られた中学・高等学校の地理の教科書において,地域づくり学習に関する単元では,地域の課題やその対策の学びが中心であり,地域そのものの特徴を把握することには紙面が割かれていない。現状のカリキュラムでは,居住地や学校所在地など身近な地域をしっかりと学ぶ機会が乏しい状況といえる。身近な地域の課題を理解し対策を考えるうえで,まず地域の特徴を把握することは不可欠であり,その際には地理学で使われてきた地域構造図が有効と考える。本稿では,地理教育で活用する際の有効性や課題を踏まえて,地域構造図の特徴を明らかにする。

    地域構造図の特徴は以下の通りである。①地域を構成する要素の関係性を示す。②位置情報が含まれる。③地域の特徴を解明するうえでの糸口となる特徴的な事象に焦点をあてる。これは動態地誌における中核事項に近い。④地域の課題・問題をとらえる場合は,地域構造図にそれを位置づける。⑤地域構造図は,ア:要素・事象間の関係性を重視したもの,イ:歴史的視点(時間軸での事象・要素のつながり)を重視したもの,ウ:空間的視点(空間的差異やパターン)を重視したもの,の3つに分類できる。アとイは事象の関係性が理解しやすく,ウは地域内部の差異や周辺地域との関係などを踏まえて「空間的相互依存作用」による理解がしやすい。

  • ――公民区分・公民的分野における実践を通して――
    小澤 裕行, 栗本 一輝
    原稿種別: 論文
    2025 年80 巻3 号 p. 130-140
    発行日: 2025/09/28
    公開日: 2025/10/03
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,小学校3年生と中学校3年生を対象に,吉田(2023)の地理的概念を用いた授業実践を通して,発達段階に応じた地理的概念の理解度と活用能力を明らかにすることが目的である。

    授業実践を通じて,次のことが明らかになった。小学校3年生においては,概念「位置や分布」を用いることは可能であるが,概念「人間と自然環境との相互依存関係」を用いたり,理解したりするのには困難を伴うことがわかった。一方,中学校3年生においては,他分野の単元であっても地理的概念を身に付けることが可能であった。例えば,概念「位置や分布」・「場所」「空間的相互依存作用」などは観光ルート作成するときに自然と用いていたとみられる。また新しい概念である「ウェルビーイング」や「持続可能性」についても理解可能であるし,主体的に用いていたことが明らかになった。

  • ――高等学校「地理総合」・「地理探究」での授業実践を事例に――
    木場 篤
    原稿種別: 論文
    2025 年80 巻3 号 p. 141-153
    発行日: 2025/09/28
    公開日: 2025/10/03
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,「地域づくり」を題材とした高等学校の地理総合および地理探究の授業実践を事例に,地理的概念の援用方法を整理し,中等地理教育におけるカリキュラムの一貫性についての視座を提示するものである。

    地域の可塑性やレジリエンス,さらにはスケール概念に着目した結果,地域の見方・考え方は次の4点に整理できる。①地域がどのような影響を受けているのか,地域のアイデンティティがどのように形成されるのかを理解する視点,②地域に介在する諸課題どうしの矛盾を調整するための方法を考察する視点,③地域の変化,さらには将来の展望に対し,修正,進化,維持といった過程を思考・判断する視点,④学習者と地域の主体者の日常的実践や価値観の往還を通して地域性を探る視点,である。これらの地域の見方・考え方は,授業実践のフレームワークとしてワークシートに反映させて活用することで,学習者の地域へのまなざしや思考の可視化が可能となり,地域づくりへの主体的なかかわりを促す効果が期待できる。

    実際の地理授業実践では,地理的概念,さらには地理的技能を継続的に扱うために,カリキュラムの一貫性を踏まえた評価基準を設定した。その結果,価値態度形成に資することが明らかになった。

    今後の課題として,場所の感覚といった他の地理的概念と学習者のポジショナリティとの関係を踏まえた授業のあり方を提案すること,検証を積み重ねる形で中等地理教育での学びの過程を分析することが求められる。

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