集団就職関連の諸制度は戦時期の労務動員体制下で整備された。「少年産業戦士」と呼ばれた若年労働者の中には遠隔地の大都市部における大手企業への就職を選択した者もおり,子供の将来を考えてそれを望む家族もあった。各企業は労働力の確保の点で競合し,指定された募集地域での求人活動や福利厚生を重視した。本稿では東京芝浦電気株式会社を対象に,求人活動や集団赴任,寄宿舎での生活状況,故郷との関係をみることで,これまでほとんど忘却されてきた少年産業戦士の集団就職の一端を解明する。東芝は就職者の確保や定着のために故郷との関係を重視し,就職者は様々な思いを抱いて就職移動した。故郷の家族は東芝への就職移動に同意し,食料を送ることで動員体制の一翼を担った。この現象は動員体制と諸アクターの思惑や実践が交錯することで成立した。
本研究は,「シデン・シャーマン」現象に着目し,従来の氏族継承型との比較分析を通じて,現代中国における満州族シャーマニズムの変容,特にその儀礼空間の再編について分析した。得られた知見は次の4点にまとめられる。第一に,シデン・シャーマンの出現は,国家政策の転換,制度的な機会の提供,氏族内部の軋轢,現代的要請への適応が複合的に作用した構造的な産物であり,文化継承における担い手の多様化と出自に基づく権威構造の変容を示している。第二に,儀礼の空間と実践の再編は,出自に基づく基準から技能習得へという継承の前提条件の転換と連動しながら,正統性の根拠,参加資格,伝承内容の選択基準を変容させている。第三に,複数のアクターが文化の定義・解釈をめぐって多層的な交渉を展開し,協力と競合を使い分ける戦略的な関係を形成している。第四に,「原生態」概念は,少数民族文化と国家政策との戦略的な接合を可能にする言説的装置として機能している。この機能は,同概念がもつ空間的な側面(場所の真正性)と時間的な側面(原始への回帰)という解釈上の二重性によって実現されている。本研究により,氏族継承型とシデン・シャーマンが,この二重性をそれぞれ戦略的に援用し,自らの正統性を構築している交渉プロセスが明らかになった。本研究は,従来の研究が主に内容の変化に着目してきたのに対し,この儀礼空間の再編という視点を導入することで,文化的実践と国家政策・地域社会との相互構成を示し,シャーマニズム研究や文化遺産研究における視座を拡張する。