脊髄空洞症による知覚障害により発見が遅れ, 治療に難渋したMRSAによる化膿性肩関節炎の1例を報告する. 症例は66歳男性, 脊髄空洞症による温痛覚障害および膀胱直腸障害を認める. 右肩関節腫脹・発赤を認めたが, 疼痛がなく発症後約7週間で当科受診となった. 関節穿刺液, 尿, 静脈血培養でMRSAを認めた. その後寛解・増悪を繰り返し, 合計4回の入院, 計8回の手術を施行し, 最終的に広背筋皮弁により鎮静化された. 自験例は培養の結果から尿路感染よりの血行性感染と考えた. 治療は一般的に早期治療が原則で, 自験例では受診までに約7週間を要したこと, 起炎菌がMRSAであったことが難渋した原因であった. 肩関節は血行が良く抗生剤の投与も効果的であるが, 解剖学的に複雑で広範であり, 滑膜の増殖や壊死肉芽組織の発生する前に手術的な治療を行なうことが必要と考える.
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