【目的】三角線維軟骨複合体 (TFCC) 損傷は手関節尺側部痛をきたし手の外科医が比較的頻繁に遭遇する疾患である. 従来, その損傷形態にはPalmerの分類が用いられてきた. この分類がTFCC損傷の概念を確立したのは疑いの余地がないが, 近年この分類に該当しない断裂形態の存在や治療法の選択に直結しない, などの問題点が明らかとなってきた. 今回, 自験例をもとにTFCC損傷形態の新しい分類を作成し, 分類に応じた治療法について報告した.
【対象•方法】手関節鏡視下および直視下にTFCC損傷を認めた215例216手関節を対象とし, その損傷形態を分析した.
【結果】大まかな分類はPalmer分類同様, 外傷性断裂と変性断裂とした. 外傷性断裂は実質部と周辺部に分類し, 実質部断裂は裂状, 弁状, 水平, 尺骨頭側断裂に, 周辺部は遠位, 背側, 橈側部剥離, 尺骨茎状突起剥離, 尺骨小窩剥離, 遠位橈尺靭帯断裂にそれぞれ分類できた. 実質部断裂は掻爬, 周辺部断裂は縫合あるいは再建の適応となる. 変性断裂は断裂形態ではなく尺骨突き上げの有無により分類し, 尺骨突き上げ無しではTFCC掻爬のみ, 有りではTFCC掻爬および尺骨短縮術の適応とした.
【まとめ】今回提案した分類により, 216手関節のTFCC断裂のすべてが分類可能で, 治療法の選択も容易となった.
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