【目的】大腿骨転子部骨折の髄内釘手術で骨折部の安定性獲得を目的として骨折部に人工骨補填を試みたので報告する.【症例】受傷時に転位を認めた大腿骨転子部骨折10例.女性8例,男性2例,平均年齢83歳.【手術方法】髄内釘手術で大転子先端を開孔しリーミング後,ネイル挿入孔から人工骨を差し込んだ専用スリーブを挿入し骨折部に人工骨を補填した.使用した人工骨はHA配向連通多孔体(リジェノス
®)であり,この内2例はHAとβTCPを混合した.【結果】3ヵ月以上経過観察可能であった9例中8例に骨癒合を認めた.術後sliding量は平均5mmで,特に円柱ブロックを2個使用した5例のsliding量は平均2mmであった.【考察】症例数は少ないものの,大腿骨転子部骨折の骨折部に人工骨を補填することで,術後過剰なslidingを予防することができた.髄内釘手術で骨折部に人工骨を補填することは,骨折型別での効果などの検討が必要であるが,有効な手技になると考える.
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