耕運機外傷による膝関節開放脱臼骨折の1例を経験したため報告する.症例は69歳男性,耕運機の刃により左下肢が巻き込まれた状態で当院救命センターに搬送された.来院時左膝前内側を中心として下腿は腹側に翻転し膝窩部は露出した状態であった.手術室で損傷部確認およびデブリードマンを行ったところ膝窩動静脈,脛骨神経の断裂は認めなかったため,この時点で患肢温存可能と判断した.膝外側不安定性を認めるも年齢を考慮し外側支持機構再建術は行わなかった.受傷後2年でModular Rotating Hinge Knee Systemを用いてTKAを施行し,安定歩行を獲得し,患者満足度は高い.下肢重度外傷に対する患肢温存か切断かの選択に関し,様々なスコアリングが提唱されている.本症例を後ろ向きにMESSとLSIの2つのスコアリングに当てはめた結果,初診時治療方針に関し,患肢温存が適切であったか否かについてスコアリングのみで判断することはできなかった.