Colloid & Interface Communications
Online ISSN : 2758-5379
最新号
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巻頭言
  • 飯村 兼一
    2025 年 50 巻 2 号 p. 1-2
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    本年3月より部会長を拝命いたしました。副部会長の懸橋理枝先生(大阪産業技術研究所)や石田尚之先生(同志社大学)、坂井隆也様(花王(株))、事務局長の安部裕様(ライオン(株))、役員や委員、部会員の皆様と協力して、部会の運営と発展のために尽力してゆきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

    本部会は、皆様のおかげで、非常に活発な活動を継続しています。紹介も兼ねてそれらをまとめてみますと、まず当部会の最大の事業である「コロイドおよび界面化学討論会」は、現在の部分的ハイブリッドの方式になってからのここ2年間を見ると、発表件数は約410、430件、参加者数は約620、700人と、盛況な会議となっております。また、若手研究者・学生の育成と研究活動の活性化を目指した「未来のコロイドおよび界面化学を創る若手討論会」や、学生が企業・大学の研究者との交流を通じてキャリアを考える機会を提供しようとする「キャリ探セッション」も、それぞれ50~60人程度、50~80人程度の規模で開催されています。また、目的や参加者対象が異なる多くのセミナーが、それぞれの性格や実施方法によって参加者数は30~90人程度まで様々なのですが、定期的に開催されています。若手社員や新たにこの分野の知識を必要とされている方々のための集中講義という位置づけである「界面コロイドラーニング」はできる限りの参加機会をご提供すべく東京会場と大阪会場で開催されています。また、毎回魅力的なテーマを掲げ、関連する内容を深く学ぶ「コロイド界面技術シンポジウム」や「コロイド先端技術講座」、「コロイド・界面技術者フォーラム」もあります。さらには、関西支部による「関西界面科学セミナー」や「関西コロイド・界面実践講座」、九州支部による「九州コロイドコロキウム」、コロイド分散凝集分科会による「分散凝集科学技術講座」など、支部や分科会が主導する様々な事業も活発に行われています。これらの事業の多くがオンライン参加あるいはオンデマンド視聴も可能な方法(完全オンラインも含む)で実施されており、参加者の希望に対応する工夫がなされております。セミナー等の事業以外にも、部会ホームページやニュースレターC&I Communicationでは様々な情報発信が着実に行われており、特に後者は2023年1号からJ-STAGEに掲載され容易にアクセスできるようになっています。また、現副部会長の懸橋先生が初代委員長を務められたDEIR(Diversity, Equity, Inclusion and Respect)委員会が2023年度に発足し、部会内での体制や意識の改革が進められておりますが、それによる変化が部会運営の色々な場面で反映されつつあります。

    さて、これから、に目を向けると、以上のような活動を持続的に続けることがまずは重要であり、そのための体制作りが執行部の役割であると認識しています。上記のアクティビティーの高さは本部会の特徴ですが、それらが、部会員の交流や相互理解を促進し、日用品の化学から最先端の科学までを網羅するコロイド界面化学の発展を牽引し、ひいては健康で豊かな社会生活や科学技術の発展につながることは言うまでもありません。また、本部会は元来、企業との結びつきが強く、様々な企業の研究者も役員や委員としてご活躍頂き、討論会やセミナーでもご発表とご参加を頂いております。学際的な学問であるコロイド界面化学の発展のため、および少子化や人材不足が叫ばれる中、将来当分野で活躍する人材の育成のために、企業と教育・研究機関との継続的な協力は今後益々重要になってくるものと思います。この点に関しては、坂井副部会長のお力添えを頂きながら、維持や強化を進めていきたいと思います。一方、部会をとりまく諸変化に対応した部会運営については、議論を進め、必要に応じて効率化や改善のための対策を実施してゆく必要があると考えています。特に昨今の経済状況の急激な変化は、複合的に部会運営に影響しつつあり、それらに対応した運営を検討する時期にあると感じています。

    本部会は、2026年に設立50周年を迎えます。これを記念して、2026年11月には、副部会長の石田先生を実行委員長として、沖縄県名護市の万国津梁館にて国際会議「Okinawa Colloids 2026」を開催します。また、今年の9月に千葉大学で開催される第76回コロイドおよび界面化学討論会でも、50周年関連の小規模なイベントが計画されております。また、部会ニュースレターC&I Communicationには創刊50周年特集記事を掲載する企画が進められています。一方、部会ホームページの「コロイド偉人館」(「ギャラリー」からアクセスすることができます)の改訂に向けた準備も進められています。

    部会ホームページの「当部会について」から到達できる「歴史」のページを見ると、本部会はその創成期から、非常に精力的に活動が続けられてきたことがわかります。その当時の先生方が作り上げてくださった土台の上に、その後の先生方がさらに石を積み上げて今の部会があり、現在の日本のコロイド界面化学があることをあらためて感じさせてくれます。この先さらに50年後に、未来の部会員からもそう思って頂けるように、皆様からのご意見とご協力を得て、部会の持続的な発展に努めてゆきたいと思います。

特集記事
  • 宮田 隆志, 新倉 謙一, 増田 造, 高井 まどか, 佐々木 善浩, 水田 涼介
    2025 年 50 巻 2 号 p. 3-13
    発行日: 2025/05/10
    公開日: 2025/05/10
    ジャーナル オープンアクセス

    バイオマテリアルは生体組織や細胞との界面で相互作用し機能を発揮する材料であるため、コロイド・界面化学はバイオマテリアルの設計・開発において重要な役割を担っています。本特集では、コロイド・界面化学に基づいたバイオマテリアルの最新の研究動向を紹介します。この特集を通して読者の皆様にバイオマテリアル分野におけるコロイド・界面化学の重要性を認識していただき、今後の研究活動への新たな視点を提供することを目指します。

     

    〔担当:並河 英紀(主担当)・景山 元裕・天神林瑞樹・伴野 太祐・安原 主馬(五十音順)〕

     

    〔1〕医療応用を目指した刺激応答性高分子材料の設計

     関西大学 化学生命工学部 宮田 隆志

    刺激応答性高分子は、温度やpHなどの外部環境変化に応答して構造や性質を変化させる。刺激応答性高分子からなる粒子やフィルム、ゲルなどはDDSやセンサー、細胞制御などの医療応用を目指して精力的に研究されている。本稿では、温度や光、生体分子によって構造変化する刺激応答性高分子の医療応用を目指した材料設計(ゲル、薄膜、微粒子、自己集合体)について、筆者らの研究を中心に概説する。

     

    〔2〕クラウンエーテルとポリフェノールで作る超分子コロイド粒子と機能

     日本工業大学 環境生命化学科 新倉 謙一

    新しい薬剤(ペプチド、タンパク質、核酸など)が開発されるとともに、それらを目的の細胞や組織、患部に効率よく届けるための「薬剤輸送キャリア」の重要性が増している。薬剤輸送キャリアは、製造が簡単で、生体内で分解されることが求められている。ここでは、その候補として、クラウンエーテルとポリフェノールを使って作られる新しい超分子コロイド粒子の特徴について説明する。

     

    〔3〕構造制御された高分子界面におけるタンパク質との相互作用計測と機械学習を活用した解析

     東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 増田 造

     東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 高井 まどか

    高分子から構成される界面は生体分子や細胞と相互作用するバイオ界面として重要な役割を担う。精密ラジカル重合により得られるポリマーブラシは、タンパク質や細胞と相互作用の構造-機能相関の解析に非常に有用である。本稿では、筆者らによる精密ラジカル重合を駆使したポリマーブラシの設計やタンパク質・細胞との相互作用解析や機械学習を利用したモデリングについて概説し、今後の展望を述べる。

     

    〔4〕nanoDIP法による生体膜ハイブリッドナノ粒子の設計とバイオ応用

     京都大学大学院工学研究科 佐々木善浩・水田 涼介

    生体適合性や機能性の向上を目的とした生体膜によるナノ粒子の被覆が、近年注目を集めている。本稿では、天然の細胞膜を利用したナノ粒子の界面機能とその応用について概説し、特に筆者らが開発したnanoDIP法による高機能ナノ粒子の作製技術と、DDSやバイオセンシングへの応用可能性を紹介する。

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