株式には、残余財産と残余利益に対する条件付き請求権が組み込まれている。前者は倒産時における資産総額を原資産、また負債総額を権利行使価格とするコール・オプション、後者は毎期の純利益を原資産、また資本コストを権利行使価格とするコール・オプションとして複製されるペイオフ構造を有している。本稿では継続企業を前提として、後者の残余利益に基づくオプション評価モデルを提示するとともに、同モデルによってスタートアップ時点におけるインターネット企業の株式価値を評価する。シミュレーションの結果、本稿の残余利益オプションモデルは、売上高を原資産とするSchwartz
and Moon (2000)の株式価値評価モデルよりも高い予測精度を示した。