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星 賢治, 渡邉 五郎, 藤平 知佳音, 田中 隆二, 黒瀬 靖郎, 藤井 二郎, 蒲田 和芳
セッションID: O-0001
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】ラテラルスラスト(以下,スラスト)は立脚初期に生じる膝の横ぶれを指す。変形性膝関節症(以下,膝OA)において,スラストは痛み(Lo, H. et al.2012),膝OA進行のリスク(Chang, A. et al. 2004),マルアライメント(Kuroyanagi, Y. et al. 2012),ピーク膝内反膝角度の増加(Chang, A. et al 2013)との関連性が指摘された。しかし,先行研究の結論は視覚的観察や体表マーカーによるモーションキャプチャーを用いた計測に基づいており,膝関節の微細なキネマティクスは未報告である。本研究の目的は,3D-to-2D registration法を用いて,末期膝OA患者のスラスト中の微細な膝関節キネマティクスを明らかにすることであった。【方法】1.対象:リクルート対象は人工関節置換術施行予定の末期膝OA患者であった。肉眼的に著明なスラストが認められた17名21膝(男性4名,女性13名,平均年齢72.6±6.8歳)が研究参加に同意した。2.X線透視撮影:本研究は横断研究である。膝キネマティクスは3D-to-2D registration法により算出した。その場での足踏み動作を前額面のX線透視撮影の動作課題とした。対象者の転倒リスクを考慮し,足踏み動作中に非対象肢側に設置したバーの把持を許可した。3.3Dモデル:対象者の患肢のCT撮影により得られた画像に,3D-Doctor(Able Software Corp., Lexington, MA)を用いて骨皮質の輪郭をセグメンテーションし,大腿骨と脛骨の多角形サーフェスモデルを作成した。それぞれの骨モデルに対しKneeFitter(University of Colorado)を用いて局所座標系を埋設した。大腿骨の局所座標系は,Eckhoffら(Eckhoff, G. et al. 2007)の方法に準じ,大腿骨の両後顆に仮想円柱をフィットさせた。脛骨の局所座標系は,腓骨頭レベルに仮想長方形をフィットさせた後,関節面のレベルに移動させた。座標系は前後方向をX軸,上下方向をY軸,内外側方向をZ軸とした。4.分析:足踏み動作の遊脚後期から接地後の膝の側方移動が終了するまでを解析対象とした。大腿骨と脛骨の6自由度位置・方向は,JointTrack(University of Florida, USA)を用い,3D骨モデルをX線透視画像に投影し,その形状を重ねることにより取得した。次に3D-JointManager(GLAB Corp., Japan)により,投影角を用いて膝関節の6自由度キネマティクスおよび大腿骨と脛骨の近接距離を算出した。測定位置は脛骨の3次元骨モデルの幅を100%としてZ軸上かつXY面にて原点から±25mmの位置で統一し,大腿骨との近接距離をマッピング分析にて算出した。5.統計:統計解析は対応のあるt検定を用い,α=0.05とした。【結果】1.キネマティクス遊脚後期から側方移動終了時まで膝内反(p=0.218),および脛骨外旋角度(p=0.300)に変化は見られなかった。大腿骨に対し,脛骨は2.5±2.0 mm有意に外側に偏移した(p<0.001)。2.近接距離脛骨高原から内外側大腿骨顆の距離は,内側が0.7±1.2 mm(p=0.016),外側が1.5±1.6 mm(p<0.001)増加した。増加量は大腿骨外側顆の方が内側顆に比べ1.2±2.1 mmと有意に大きかった(p=0.016)。【考察】本研究の結果からは,ラテラルスラストは膝の内転よりも脛骨の外側偏移と大腿骨外側顆のリフトオフにより生じていることが明らかになった。脛骨外方変位はSaari(2005)らの報告と一致していた。ラテラルスラストの主体は脛骨大腿関節の内転運動ではなく,股関節を中心とした下肢全体の外旋と側方移動である可能性も考えられる。また末期膝OAにおいて外側脛骨隆起の摩耗が観察されることが多く,こうした外側偏移が顆間隆起の摩耗を惹起している可能性も考えられる。今後は脛骨顆間隆起と大腿骨顆の位置関係や,一連のスラスト動作中のキネマティクスを明らかにしていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】膝OAに特徴的なラテラルスラストの微細なキネマティクスにおいて,膝内転運動の貢献はごく小さいことが判明した。空間における大腿骨と脛骨の運動をさらに詳細に分析することにより,スラストの構成要素がより具体的に解明される可能性がある。この結果は将来の膝OAの保存療法の発展に寄与することが期待される。
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徳田 一貫, 新小田 幸一, 澤田 智紀, 谷本 研二, 緒方 悠太, 武田 拓也, 高橋 真, 木藤 伸宏, 阿南 雅也
セッションID: O-0002
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】歩行中の外部膝関節内転モーメント(以下,KAM)の上昇は,内側型変形性膝関節症(以下,膝OA)につながる危険要因の一つである。近年,KAMの軽減を目的とした歩行修正アプローチが注目されており,歩行立脚期に足部を外転位にする歩行修正が,立脚期後半のKAMのピーク値を軽減させることが報告されている。歩行の立脚期前半のKAMは膝OAの進行を予測するための重要なパラメーターとされているが,一方で立脚期後半のKAMの軽減についての臨床的妥当性や有用性は明らかにされていない。また,人間の歩行は,無数のパターンが存在し,各関節の運動の自由度を協調的に制御しながら遂行されているため,足部を外転位にする歩行修正は関節協調性に影響を及ぼす可能性がある。そのため本研究では,関節運動の協調性の定量的評価法であるUncontrolled Manifold(以下,UCM)解析を用いて,健常成人を対象に,足部外転位の歩行修正が歩行立脚期中の身体の協調性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。【方法】被験者は,15人の健常成人(男性7人,女性8人,年齢:22.5±1.5歳)であった。課題動作は,被験者の選択した快適スピードでの平地歩行(以下,N)と静止立位の足部外転角度から20°外転した角度での平地歩行(以下,TO)の2条件で行った。歩行動作は,各5試行ずつ計測した。歩行中の足部角度を,MATALAB2014a(MathWorks社製)を使用してプロジェクトスクリーンにリアルタイムで表示し,被験者はスクリーンを見ながら足部角度を調節した。運動学的データは,赤外線カメラ6台からなる三次元動作解析システム(Vicon社製)を用いて取得した。運動力学的データは,8基の床反力計(テック技販社製)を用いて取得した。得られたデータを基にBody Builder(Vicon社製)を用いて,標点マーカ座標,各関節と身体の質量中心(以下,COM)座標,立脚期前半のKAMのピーク値(以下,1stKAM)と立脚期後半のKAMのピーク値(以下,2ndKAM)を算出した。タスク変数は,COMの前後方向の座標(以下,COM
AP),左右方向の座標(以下,COM
ML)とし,要素変数は,各関節角度とした。その後,それぞれのタスク変数に対してUCMの線形近似から,タスクを安定化させる変動(以下,V
UCM)とタスクを不安定にする変動(以下,V
ORT)を,MATLAB2014a(MathWorks社製)を使用して算出した。歩行立脚期の1stKAMと2ndKAM,100%で時間正規化した歩行立脚期の10%毎の各タスク変数に対するV
UCMとV
ORTを2条件間で比較した。統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS Ver.22.0(IBM社製)を用いて,2条件間の比較には対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付き順位検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】2ndKAMは,TOがNと比較して有意に低かった(p<0.001)。1stKAMは,条件間で有意差を認めなかった。COM
APのV
ORTは,0-10%の区間においてTOがNよりも有意に高かった(p<0.05)。COM
MLのV
UCMは,70-80%の区間においてTOがNよりも有意に高かった(p<0.01)。【考察】2ndKAMはTOがNよりも有意に低かった。先行研究において,足部外転位の歩行修正は立脚期に足圧中心が外側に移動してKAMのレバーアームが短縮し,2ndKAMの軽減につながることが報告されており,本研究においても同様の結果を示したと推測された。TOでは,歩行立脚初期におけるCOM
APに対するV
ORTが増加した。このことから,足部外転位で接地することは,立脚初期のCOMに対して各関節の協調的な制御ができず,各関節にはCOMを不安定にする変動がもたらされたと推察された。またTOでは,立脚後期のCOM
MLに対するV
UCMが,Nよりも有意に高かった。これは,立脚後期にかけて,足部外転位によりCOMの内外側方向の位置において各関節の協調性を高めて制御を行っていることが示唆された。以上のことより,足部外転位の歩行修正は,立脚後期の内外側方向のCOM位置に対する協調性を高め2ndKAMを軽減させるが,立脚初期の前後方向のCOM位置に対する協調的な制御ができず膝OAの進行に関連する1stKAMを軽減することができないことが示された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,足部外転位の歩行修正を行っても立脚初期では協調された関節運動とはならず,適切なCOMの制御が達成できないため,歩行修正の良し悪しはKAMの軽減のみに捉われず,身体全体の協調性を含めて多角的に評価する必要性を示した点に意義がある。
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丸毛 達也, 金村 尚彦, 山崎 弘嗣, 白銀 暁, 国分 貴徳, 藤野 努, 塙 大樹, 高柳 清美
セッションID: O-0003
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【はじめに】多関節運動の形成において,他関節の動きによって生じるトルクすなわち相互作用トルク(Interaction Torque:INT)の影響は無視できない。ヒトはINTを巧みに利用することで関節運動制御を効率化している。INTは上肢リーチ動作において盛んに研究されてきたが,近年では荷重下全身運動においてもINTの寄与が報告されている。藤澤ら(2010)は立ち上がり動作において,下肢関節運動の形成にINTが大きく寄与したと報告している。しかし,荷重下全身運動では抗重力と従重力の運動方向の違いや速度条件の影響について詳細に調べられていない。そこで,本研では抗重力と従重力の運動を含むスクワット動作において,動作速度の違いがINTの寄与に与える影響を調査することとした。【方法】対象は下肢に整形外科的既往がない健常成人男性10名(年齢21.1±1.2歳,身長172.2±2.7cm,体重63.7±5.1kg)。課題動作はスクワット動作とし,踵が浮かない範囲で最大にしゃがんだ後に停止せず開始姿勢に戻るよう口頭指示を与えた。計測肢は左脚とした。計測条件は至適速度と最速速度の2条件とし,各3試行実施した。計測には三次元動作解析装置(VICON社製,100Hz)を用い,マーカーセットはPlug in Gait Full Bodyモデルを参考に35個の赤外線反射マーカの三次元座標を記録し関節角度を算出した。膝関節角加速度から動作の開始地点と終了地点を同定した。トルク解析にはHAT,大腿,下腿の3セグメントリンクモデルを用いた。データ解析は数値解析ソフトウェアMATLABを使用し,ラグランジュの運動方程式を用いて総トルク(Net Torque:NET),筋トルク(Muscle Torque:MUS),重力トルク(Gravity Torque:GRA),相互作用トルク(INT)を算出した。動作時間を動作開始時0%,動作終了時100%となるように正規化を行った。INTと動的筋トルク(筋トルク+重力トルク:(Dynamic Muscle Torque:DMUS))のNETに対する寄与率を算出した。寄与率は,各トルク成分がNETトルクと全く同じ変化パターンを示した場合100%となり,変化パターンが大きく異なる場合マイナスの値を示すとした。運動時間,下肢各関節(股関節,膝関節,足関節)の最大屈曲(背屈)角度,各トルク成分(NET,MUS,GRA,INT)の最大・最小値,NETに対するINT寄与率・DMUS寄与率を速度条件間で比較し,INT寄与率とDMUS寄与率を速度条件内で比較した。統計処理は対応のあるt検定を用い,有意水準は5%未満とした。【結果】動作時間は速度条件間で有意差を認め,各関節における最大屈曲(背屈)角度は有意差を認めなかった。各関節トルクの最大・最小値は至適条件と比較し最速条件で高値を示した。2速度条件の各トルク成分は類似した波形を示した。各関節におけるNETの波形は運動の前半と後半で対称的2峰性波形を示した。各関節においてINTはNETと類似した波形を示した。MUSは主にNETと逆位相を示したが,膝関節において伸展トルクが生じる動作中間地点でDMUSがNETと類似した波形を示した。GRAは1峰性の波形を示した。INTとDMUSの寄与率は各関節において速度条件間で有意差を認めなかった。全ての条件でINT寄与率はDMUS寄与率と比較し高値を示した。全ての条件において股関節と足関節のDMUS寄与率はマイナスを示し,膝関節のDMUSはプラスを示した。【考察】スクワット動作において動作速度に関わらずINTが関節運動の形成に大きく寄与した。これは,速度条件によって運動パターンが変わらない荷重下全身運動ではINT寄与率は動作速度に依存しないことを示す。先行研究ではINTは速度依存トルクとも呼ばれ,速い動作で研究されることが多かった。しかし,本研究の結果から,荷重下全身運動においても速度に関わらずINTの寄与が大きいことが示された。Dounskaiaら(2005)は,主導関節が肢全体の動的機能を作り出し,従属関節にINTを発生させるとするLeading joint hypothesisを提唱している。膝関節において動作中間地点でDMUSがNETと類似した波形を示し,膝関節DMUS寄与率がプラスの値を示したことから,スクワット動作は動作中間地点において膝関節が主導関節となり,股関節と足関節が従属関節となって抗重力関節運動を形成していたと考えることが出来る。【理学療法研究としての意義】荷重下全身運動においても動作速度条件に関わらずINTの寄与が大きいことを示した。トルク波形の特徴から荷重下全身運動において,関節毎に異なる筋トルク発揮の役割を明らかにした。これは,荷重下全身運動の関節運動の形成における詳細な理解につながり,効果的な動作指導を可能にすると考えられる。
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~筋線維長に着目したランダム化比較試験による検討~
田中 浩基, 池添 冬芽, 梅原 潤, 中村 雅俊, 梅垣 雄心, 小林 拓也, 西下 智, 藤田 康介, 荒木 浩二郎, 市橋 則明
セッションID: O-0004
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】筋力トレーニング効果には特異性があることが知られており,たとえば等尺性トレーニング(Isometric Training:IT)を行った関節角度での筋力が特に向上するという関節角度特異性が報告されている。これら関節角度特異的に筋力が向上するという報告はすべて最大筋力の80%以上の高負荷でトレーニングを実施している。先行研究では関節角度と発揮筋力によって筋線維長が変化するとされており,高負荷IT時の筋線維長は同じ関節角度での最大筋力発揮時と同程度となる。つまり高負荷ITの関節角度特異的な筋力向上は,トレーニング時と同じ筋線維長での筋力が向上するという筋線維長特異性とも考えられる。一方で先行研究によると,筋短縮位での低負荷筋力発揮時の筋線維長は筋伸張位・最大筋力発揮時の筋線維長と同程度になると報告されている。このことから本研究においては,筋短縮位での低負荷ITによって筋伸張位での最大筋力が向上するという仮説をたてた。そこで本研究の目的は,筋短縮位での低負荷ITの筋力増強効果を関節角度別に分析し,IT時と同じ筋線維長となる関節角度での最大筋力が向上するのかどうかを検証することとした。【方法】対象者は整形外科的疾患を有さない健常女性16名(年齢21.8±1.5歳)とし,介入群8名,対照群8名に対象を分類した。介入前後に足関節底屈の最大等尺性筋力(MVC)および腓腹筋の筋束長の測定を行った。MVCはBiodex System4(BIODEX社製)を用いて足関節背屈20°から底屈30°までの10°ごと(6肢位)の足関節底屈MVCを測定した。腓腹筋の筋束長は超音波診断装置(LOGIQ e:GEメディカルシステム社製)を用いて,足関節背屈20°から底屈30°までの10°ごとにそれぞれ安静時,MVC時および30%MVC時の3条件で測定した。筋束長の測定部位は膝窩と外果を結ぶ直線の1/3の高さで腓腹筋内側頭とした。筋束長はAndoらが推奨している方法を用いて,Image J(NIH製)にて超音波画像上の筋束起始部からの走行延長線と腱膜延長線との交点を仮想の筋束付着部としてその距離を測定した。超音波画像は各条件3枚ずつ撮像し,その平均値をデータとして用いた。介入群には利き足の足関節底屈筋のITを週3回,4週間実施した。ITは足関節底屈20°位で3秒間の足関節底屈の等尺性収縮を20回3セット行った。負荷強度は足関節底屈20°位での30%MVCとした。なお,対照群に介入は実施しなかった。統計処理は介入群と対照群における介入前後のMVCについてシャピロ-ウィルク検定にて正規性を確認後,足関節角度ごとに分割プロットデザインによる分散分析を行った。事後検定として交互作用が認められた足関節角度でのMVCについて介入前後の比較を対応のあるt検定を用いて行った。なお,有意水準は5%とした。【結果】介入群における介入前のMVC時の筋束長は足関節背屈20°,10°,底屈0°,10°,20°,30°それぞれにおいて,4.4±1.3cm,3.5±0.9cm,3.3±1.2cm,2.8±0.7cm,2.5±0.4cm,2.3±0.3cmであった。一方,トレーニングを行った足関節底屈20°・30%MVCでの筋束長は3.1±0.5cmであった。統計学的分析の結果,足関節底屈0°,10°のMVCにおいて交互作用が認められ,底屈20°の低負荷ITにより底屈0°と10°の筋力が有意に増加した。介入群の介入前後の変化量は足関節底屈0°,10°において23.8±15.7 Nm,18.3±17.2 Nmであった。【考察】低負荷ITを行った結果,トレーニングを行った角度(足関節底屈20°)ではなく足関節底屈0°と10°でMVCの向上がみられた。トレーニングを実施した足関節底屈20°・30%MVCにおける筋束長は3.1cmであり,これはMVC時でみると足関節底屈0°(3.3cm)と10°(2.8cm)のときの筋束長に近い。このことは関節角度特異的ではなく筋線維長特異的に筋力が向上したことを示唆している。関節角度特異性を報告している先行研究では80% MVC以上の高負荷でトレーニングを行っており,この場合,MVC時の筋線維長はトレーニングをしている角度の筋線維長と同程度になる。しかし,今回は低負荷・筋短縮位でトレーニングを実施したため,MVC時では筋伸張位の筋線維長と同程度になったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果,低負荷ITにおいて筋線維長特異性が存在することが示唆された。すなわち低負荷でITを実施する場合は筋短縮位でトレーニングを行うことで,筋伸張位での最大筋力を改善できる可能性が示された。
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転倒事故に着目
高見 千由里, 加藤 正樹, 松田 佳恵, 加藤 喜隆, 山上 潤一, 早川 美和子, 才藤 栄一
セッションID: O-0005
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】当院は急性期医療を担う大学病院であり,重症例やハイリスク症例にも早期からリハビリテーション(以下リハビリ)を介入し,療法士は適切で万全なリスク管理が求められている。当院リハビリ部ではリハビリ時における事故発生状況について定期調査をおこなっており,今回我々は2009年~2013年度の事故発生状況,中でも転倒事故に着目し,当院におけるリスクマネジメントへの取り組みも含めて検討したので報告する。【方法】2009年4月1日から2013年3月31日の5年間に当院療法士が提出した事故報告書を基にリハビリ中に発生した事故314件を比較検討した。年間単位数から1単位あたりの事故発生率を求め標準化した。調査項目は事故報告書から転倒事故について発生時の動作,介助レベル,場所を抽出し年毎に比較検討を行った。また当院リハビリ室には2012年から安全懸架(Safety Suspension,以下SS)と位置づけられた懸垂装置を導入している。SSは患者の体幹に装着したハーネスと天井のレールにつながる懸垂装置である。今回,SSについての意識調査アンケートを部内療法士対象に実施した。【結果】事故件数及び1単位あたりの発生率は2009年度78件(0.038%),2010年度75件(0.034%),2011年度58件(0.025%),2012年度44件(0.018%),2013年度59件(0.020%)であった。事故のうち転倒は2009年度27件(34.6%),2010年度21件(28.0%),2011年度25件(43.1%),2012年度12件(27.3%),2013年度8件(13.6%)と低下を認めた。転倒事故において5年間合計件数の多い順に動作別では1位:歩行(34.1%),2位:立位(14.8%),3位:車椅子座位(12.5%),介助レベル別では1位:近位監視(49.4%),2位:軽介助(21.7%),3位:遠位監視(12.1%),場所別では1位:PT室(32.5%),2位:OT室(21.7%),3位:廊下(15.7%)であった。年度毎の歩行中転倒件数は2009年度9件,2010年度6件,2011年度11件,2012年度1件,2013年度3件であった。近位監視中転倒件数は2009年度10件,2010年度10件,2011年度14件,2012年度5件,2013年度2件であり,それぞれ2012年度から件数の低下を認めた。SSについてのアンケートでは「転倒事故防止を目的に使用している」との答えが61%であり「歩行練習中の事故防止に効果的か?」という質問では「非常に効果的」,「やや効果的」との答えが94%であった。【考察】当院では部内リスクマネージャーと安全管理室が連携し新人研修や部内勉強会においてリスク管理に関する講義を実施している。事故発生時には管理職療法士,リスクマネージャーから担当療法士に対し改善点についての指導,他療法士への周知徹底が行われ再発予防に取り組んでいる。リハビリ部では2012年度PT室にSSを導入しており,必要に応じて転倒防止ベルトの使用も推奨してきた。そのため2012年度から転倒事故件数の減少が認められ立位,歩行練習時にSSを使用することは事故防止に効果的であることが考えられた。アンケート結果でも転倒事故防止を目的にSSを使用しているスタッフが過半数におよんでいた。またSSについて歩行練習中の事故防止に効果的であると答えたスタッフが94%におよび歩行時の転倒事故防止に対するスタッフの意識向上が認められた。しかしSSは使用場所が限られる為,今後病棟や屋外では持ち運び可能な転倒防止ベルトの使用を今まで以上に推奨し,状況に合わせた使い分けをすることで,より安全で適切かつ効果的なリハビリの提供が必要と考える。【理学療法学研究としての意義】本研究では医療安全に関する要因の検討,スタッフの認識が把握できた。リスク管理の教育におけるシステムの構築に非常に有用と考えられる。また当院と同様の急性期医療施設への情報提供となり,今後の積極的かつ安全なリハビリの普及にも有用と考えられる。
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リハビリテーション科における過去5年間の分析
椎木 孝幸, 市田 嘉也, 今高 康詞, 吉田 誠, 倉持 由惟, 構井 健二, 金森 貴未, 西本 好輝, 森岡 銀平, 安達 由紀, 中 ...
セッションID: O-0006
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】インシデントレポートを提出する大きな目的は,重大な医療事故を未然に防ぐことである。近年,理学療法士の数が急激に増加し,新卒の入職者を複数人受け入れる施設は多くなっている。経験の少ないセラピストがアクシデントを起さないようにするためには,提出されたインシデントの事例を共有しておくことが大事である。ハインリッヒの法則によると1つの重大な事故の背後には29の軽微な事故があり,その背景には300の異常が存在するといわれている。インシデントレポート数の目安は,病院全体で1ヶ月に病床数の1/3は必要という報告や1年間で病床数の5倍との報告があるが,リハビリテーション部門における報告数はどの施設を取ってみても少いのが現状である。当院においても平成15年からレポートの提出を義務づけているが,開始当初はインシデントの数は少なく,報告数を増やすことが一つの課題となっていた。5年前より報告数を増やす取り組みを行った結果,報告数の増加が見られたため,5年間のインシデントの分析とともに若干の考察を加えて報告する。【方法】対象は2009年1月~2013年12月までの5年間に当リハビリテーション科に提出されたインシデントレポート416件とした。インシデントレポートをレベル0~2に分類し,月単位で集計した。報告数増加の取り組みとしては,1.インシデント事例の紹介と検討会の実施,2.危険予知トレーニングの実施,3.患者急変時の対応に関する勉強会の開催,4.インシデントレポートの簡素化と記名式への変更,5.リスクマネージャーによる講義などを実施した。すべての取り組みは危機管理能力を向上させる目的でおこなった。【結果】2009年のインシデント報告数は43件,2010年は66件,2011年は92件,2012年は97件,2013年は118件と年々増加した。また内訳は,レベル0が2009年11件,2010年29件,2011年36件,2012年23件,2013年38件と大きく増減は見られなかったが,間違いが認められたレベル1以上の件数は,2009年32件,2010年37件,2011年56件,2012年74件,2013年80件と増加傾向にあった。レベル1以上の内容については,5年間で「転倒・転落」が54件,「診療時間管理」が50件,「接触」が31件の順で多かった。報告者の経験年数は2年~5年目が最も多く216件,1年目は87件であった。1人当たりの報告数は1年目が多く,6年目以降の報告数は減少していた。インシデント発生の時間帯は午前中が191件,午後が206件,時間外が19件であった。インシデント発生場所は,理学療法室が243件,作業療法室が93件,病棟が30件の順で多かった。【考察】新人教育の中でインシデントは,罰を与えるものではなく人事考課には影響しないということをまず最初に認識させた。また逆に提出することで自分の身を守ることができることを繰り返し説明したことで,取り組み前に比べるとレポートを提出しやすい環境になったと思われる。検討会では実際に起こった事例を提示し,改善策についてグループで話し合う場を設け,またリハビリテーション室の環境からどのようなインシデントが発生し易いかなどの危険予知能力を高めるトレーニングを行った。方法で示す1~5のどの取り組みが効果的であったかについては定かではないが,毎年繰り返しインシデントに関する勉強会を開催したことによって,少しずつ危機管理に関する関心が高まり,報告数の増加につながったと思われる。報告数の増加に伴い,レベル1以上の件数も増加した件については,スタッフ数が増え,1日で実施するリハ件数が増えたことなどが考えられる。1年目の1人当たりの報告数は,他に比べて多かったが,これは指導者からの提出の促しがあったことも要因として考えられる。逆に6年目以上では報告数が少なくなっていることは,経験を積みインシデントを未然に防ぐ能力が身に付いたことも考えられるが,報告を怠っていることも考えられるためこれについては,今後の課題と捉えている。今後は,より質の高いインシデントレポートを作成し,情報共有を図り医療事故防止に努めていきたい。【理学療法学研究としての意義】医療事故を未然に防ぐためにはインシデントレポートの提出が不可欠であり,報告数を増加し,インシデントの内容をスタッフ全員で共有することは非常に重要である。報告数の増加への取り組みを行った結果,報告数は増加したことから一定の成果があったものと考えられる。
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足立 睦未
セッションID: O-0007
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】厚生労働省の調査によると,全国的に転倒骨折が原因で介護が必要になった割合は11.8%であった。島田は,高齢者の転倒危険因子として,内的要因,外的要因,活動要因の3種類に分類しており,転倒は多くの要因が複雑に絡み合うことで発生し,多角的な介入が重要である。村田らは,転倒は高所での活動のように危険度の高い活動より,歩行を中心とした日常生活における動作中によく発生すると報告している。日常生活活動(以下,ADL)の向上を目指している回復期リハビリテーション病院では,転倒事故が多く,転倒予防は重要な課題となっている。当院で転倒を経験した患者の記録から,転倒発生時の状況や患者の状態を明らかにして,転倒を防止する一助とすることを目的に調査した。【方法】対象は,平成25年2月~平成26年2月の期間内に転倒を経験した105件であった。転倒は「自らの意思によらず,足底以外の部位が床,地面に着いた場合」と定義されており,本研究においても同様の定義で転倒と判定した。電子カルテ上の各職種の記録とインシデント,アクシデントレポート,「転倒,転落対策チームまくれん隊」が中心となって行っている転倒,転落カンファレンスの記録を用いて調査を行った。調査項目は,転倒発生場所,転倒発生時の行動目的,複数回転倒を経験した人数(以下,複数回転倒者),入院から初回転倒までの期間,患者の病棟における統一事項の変更(以下,統一事項の変更)の有無と,統一事項を変更した内容(以下,統一事項の変更内容)について確認した。統一事項の変更の有無と変更内容は,電子カルテの各職種の記録から転倒が発生する1週間前に遡り転倒が発生した日までの1週間の記録を用いた。統一事項の変更は,患者の身体能力,認知面,体調の変化に伴い多職種で話し合いを行い,病棟における患者の活動をどの程度のレベルで遂行していくか,居室内の環境をどのように変更するか決定をしている。統一事の変更内容は,患者のADL動作時の介助量の変更,居室環境の変更,患者のADL動作時の介助量と居室環境の変更,その他の4つに分類した。【結果】転倒発生場所は,ベッドサイド69件,洗面台前10件,トイレ内6件,出入り口4件となり,居室内で発生した転倒件数は転倒件数全体の84.7%を占めた。転倒発生時の行動目的は,排泄39件,物をとる17件,移動12件,移乗10件であった。転倒を経験した者57名に対して複数回転倒者の割合は49.1%を占めた。入院から初回転倒までの期間は平均33.8日で,入院して約1ヶ月で転倒している事例が多かった。統一事項を変更していた件数は79件,変更していなかった件数は26件で,統一事項を変更していた件数は,転倒発生件数の83.0%を占めた。また,統一事項の変更内容は,統一事項を変更した79件に対して,患者のADL動作時の介助量の変更が40.5%,居室環境の変更が7.6%,患者のADL動作時の介助量と居室環境の変更が44.3%,その他が7.6%であった。【考察】入院から初回転倒までの期間が約1ヶ月であったことや統一事項の変更後に転倒が発生した割合が83.0%を占めたこと,統一事項の変更内容として患者のADL動作時の介助量と居室環境の変更が44.3%を占めた。この結果から,患者のADL動作に対する介助量の変更や居室環境の変更が転倒の一要因となると考えた。東らによると高齢者は環境への適応能力は低下していると報告し,杉原らによる報告では,環境に対する身体機能の不適切が転倒要因になるとしている。今回の結果から複数回転倒者の割合が49.1%と半数近くを占めていることから,患者のADL動作時の介助量と居室環境の変更だけでは,転倒予防として不十分である。変更後にそれぞれの専門的な視点から再評価を行い,情報共有をしていく必要があると考える。また,転倒発生場所の84.7%が居室であった。当院は個室であり,患者の身体機能や運動能力に合わせて自由に居室環境を調整出来る利点があるが,人の目が少ないことから,患者の異変や単独行動に気づきにくい可能性がある。複数回転倒者の割合も半数近くを占める事から,事前に転倒予防に視点を向けた統一事項の変更が転倒予防へつながると推察された。【理学療法学研究としての意義】患者の転倒予防対策を行うためには,多角的な介入が重要である。転倒予防対策後に理学療法士の専門である身体機能と環境の適否において再評価が重要となる。また,患者と1対1で接する機会の多いリハビリ職として患者の変化にいち早く気づく必要がある。これらを他職種へ積極的な情報発信することで,転倒予防へ繋がる。
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―公益財団法人日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業の報告から―
内藤 幾愛, 斉藤 秀之, 稲田 晴彦, 柳 久子
セッションID: O-0008
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】わが国では,2004年からは医療事故事例等の収集事業が開始され,現在は公益財団法人日本医療機能評価機構が医療事故情報収集等事業として運営している。理学療法士によるインシデントに関する全国調査は皆無であり,研究報告も非常に少ない。本研究の目的は,医療事故情報収集等事業に報告されている理学療法士によるインシデントを分析し,影響レベルや内容項目を明らかにするとともに,理学療法士によるインシデントの最多とされている「転倒・転落・打撲・その他の外傷」項目について,受傷内容や発生状況を明らかにすること,また,経験年数との関連性を検討することとした。【方法】医療事故情報収集等事業における公開データ検索を使用した。2013年3月31日時点での参加登録機関数は1,339施設であった。検索は「事故事例報告」と「ヒヤリ・ハット事例報告」の両者で行い,発生年月は2009年3月から2013年3月とした。検索キーワードは,「リハビリ」と「理学療法」とした。除外基準を,当事者が理学療法士以外の事例,重複事例,理学療法士が直接関与していない事例,外来区分事例とした結果,80事例が対象となった。内容分類には,日本リハビリテーション医学診療ガイドライン委員会の定める「リハビリテーション中に起こりうるアクシデント」11項目に“その他”を追加した全12項目を用い,インシデントのレベル分類には,国立大学病院医療安全管理協議会の定める影響レベルを用いた。疾患名については,国際疾病分類第10版を用いた。そして,総報告における影響レベル別件数を算出した。その後,レベル2以上の事例の当事者経験年数,内容分類,発生時間帯,発生場所,患者の性別,患者の年代,事故に直接関連する疾患名について,件数と割合を算出した。また,「転倒・転落・打撲・その他の外傷」項目の事例については,影響レベルと受傷内容,発生状況の詳細を分析し,当事者の経験年数と件数の関連性をスピアマンの順位相関係数(以下,r
s)を用いて検討した。統計処理にはSPSS Statistics 22.0 for Macを使用して,有意水準は5%とした。【結果】影響レベル別では,レベル0が2件,1が9件,2が18件,3aが9件,3bが33件,4aが2件,4bが1件,5が1件,その他が5件であった。内容は,「転倒・転落・打撲・その他の外傷」が45件(70.3%)で最多であり,次いで,「バイタルサインの急激な変化や自覚症状の出現」が5件(7.8%)であった。発生時間帯は,「10:00~11:59」が28件(43.8%)と最多であった。発生場所は,機能訓練室が39件(60.9%),病室が13件(20.3%)であった。患者の性別は,男性が54.7%,女性が45.3%であり,年代は,60歳代以上が全体73.4%を占めた。事故に直接関連する疾患名は,最多が「損傷,中毒およびその他の外因の影響」で18件,次いで,「筋骨格系および結合組織の疾患」が12件であった。「転倒・転落・打撲・その他の外傷」において,経験年数とインシデント件数の相関係数はr
s=-0.50であり,有意な負の相関を認めた(
p<0.01)。また,レベル2は9件,3aは8件,3bは28件であり,3bは全て骨折事例であった。骨折事例の発生状況は,関節可動域練習中が10件(35.7%),歩行練習中が9件(32.1%)であった。【考察】医療事故情報収集等事業の公開データは,登録施設のみの報告であることや,「ヒヤリ・ハット事例報告」の全例が公開されていないなどの限界はあるが,影響レベルの高い事例内容を把握するためには有用な情報と考える。本研究より,「転倒・転落・打撲・その他の外傷」事例のうち,影響レベルが高く,発生件数も多い受傷内容は,骨折であることが明らかとなった。そして,発生状況として,歩行練習中が多いことは,過去の報告からも推察されたが,それと同等の割合で関節可動域練習中に骨折事例が生じていたことは,新たな知見であり,改めて注意喚起が必要であると考える。また,竹内(2011)は経験年数とインシデント件数に,内藤ら(2014)は経験年数と「転倒・転落・打撲・その他の外傷」件数に有意な負の相関を認めたと報告しており,本研究もこれらを支持する結果であった。理学療法士の技術向上によって防げる可能性がある「転倒・転落・打撲・その他の外傷」事例の減少や,影響レベルの重度化を予防するためにも,まずは各々の理学療法士が実態を知ることや,各組織において関節可動域練習や歩行練習の技術向上を図る取り組みが必要と考える。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果は,各養成校や職場にて,理学療法士による患者安全への取り組みを強化していく際に,有用な資料と成り得るのではないかと考える。
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~安全なリハビリテーション体制を目指して~
松浦 道子, 新田 勉, 吉川 創, 錦見 俊雄
セッションID: O-0009
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】近年の理学療法士数増加に伴い,卒後教育体制の確立は重要な課題である。当院は,回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)病棟を有する,療養病床である。平成24年度よりリハビリ部門をPT・OT・ST(以下,療法士)合同のユニット単位での管理体制(以下,療法体制)とし,同時に療法士共通の教育体制を構築した。教育体制の基本理念は,自己研鑽・自己管理と現場教育重視。また療法士のキャリアイメージと,経験1~5年目に相当する専門職技能の段階的な到達目標を示し,レベルに応じた課題・研修を設定した。さらに平成26年度より,療法体制と並んで教育部門が設置され,安全なリハビリ体制構築という視点で活動する機会を得たため,インシデント報告書分析を用いて報告する。【方法】まず,当院療法士の教育に関する課題を,バランスト・スコアカードを用いて評価し,平成26年度の活動計画を立案した。療法士教育部門の使命は,安全で質の高いリハビリの提供。平成26年度目標は,安全なリハビリ体制構築。当院の療法士到達目標において,医療安全は療法士共通項目に挙げており,質の向上のため,まず初めに解決すべき課題とした。重点化した目標項目は,医療事故等による損失防止,指標は院内インシデント報告書件数。平成25年度の院内インシデント報告書をABC分析した結果,リハビリ中の転倒・転落,皮膚損傷等の外傷,ルート・チューブ類トラブルの発生件数が多かったため,組織としての損失リスクが高いと考え,療法士教育部門の対策対象として抽出した。具体的施策は,リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルを防止するための業務マニュアルの見直しと現場指導,院内医療安全研修の参加推進と伝達講習支援とした。これらの活動結果として,提出日が平成25年4月から平成26年3月(以下,25年度)と平成26年4月から9月(以下,26年度上期)の,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提出した院内インシデント報告書件数を後方視的に調査した。なお,1事例に対する複数の報告書は,1件とした。【結果】リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルに関する,院内インシデント報告書提出総件数は,25年度45件,26年度上期12件。レベル別内訳では,レベル2は,25年度20件,26年度上期7件。レベル1は,25年度25件,26年度上期5件。項目別では,リハビリ中転倒件数は,25年度21件,26年度上期7件。リハビリ中転倒のうちレベル2は,25年度3件,26年度上期2件。外傷は,25年度14件,26年度上期5件。ルート・チューブ類トラブルは,25年度10件,26年度上期0件であった。一番件数の多かった転倒については,傾向として言語聴覚士には移乗場面,作業療法士はADL練習場面,理学療法士は基本動作練習場面が多かったが,全体としてあらゆる場面にリスクがある状況であった。【考察】半年間の結果ではあるが26年度上期に,リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルの発生件数が減少傾向であった。今回,教育支援のひとつとしてリハビリ業務マニュアルの見直し,未整備であった具体的な対策行動を明確化,情報発信を実施した。また療法士の行動を適切化するために現場指導を行った。当院の療法士教育において,専門職技能向上のため専門職ラインでの現場指導を重視し,指導体制の構築,推進を行っている。現場指導は,各療法士からの要請に応じて,役職者による治療代行,同行指導という形式で積極的に行っている。勉強会等で知識を補うだけでは,行動変容は起こりにくく,実際に治療中の行動をフィードバックすることが有効であると考えたからである。その現場指導場面で,安全教育も重要であることを再確認できた。以上半年間の結果より,リハビリ時の安全対策は徐々に功を奏してきているため,今後はさらに質の向上むけての対策を強化していきたい。【理学療法学研究としての意義】リハビリ部門において,安全に関する療法士教育について検討したことは,卒後教育の目標のひとつに安全性向上を捉えられること示し,またその方法を模索する一助になると考える。
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西川 正一郎, 西廼 健, 今井 智弘, 松田 洋平, 朽木 友佳子, 南口 真, 藤井 隆文
セッションID: O-0010
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】近年の急性期病床における入院日数の短縮やそれに伴う早期リハビリテーションが実施される場面では,リスクを伴う訓練を実施する機会が多い。その反面,そういった経験値が必要な治療内容であっても,新人セラピストがこのような場面に遭遇する機会も年々増加している現状である。そこで,患者が急変した状況やこれに対する不安要素をアンケート調査し,このような状況下で対応できるようシミュレーション訓練を試行したので,ここに報告する。【方法】当院理学療法士54名に対しリスク管理・意識に関わる事前アンケート調査を実施。調査内容のうち,急変時の対応・連絡手順において79%が「理解しているが不安である」と回答した。この調査結果を元に,シミュレーション訓練の実施を考案した。原案を消防訓練と同様の手順として医療現場に置き換えて行った。シミュレーション訓練実施前に事前学習として,「意識障害の対応」,「バイタルサインが示す徴候」,「転倒時の対応方法」,「消防訓練手順を元とした応援要請」を当院理学療法士全員に教育した。シミュレーション内容は参加者を患者役,セラピスト役に振り分け,無作為で患者役の内3名にアクシデントのシナリオ(病名,ADL能力,発生する急変内容等を記載)を渡し,そのアクシデント患者を担当したセラピストはシナリオに応じた急変対応手順を行った。訓練の記録はアクシデント発生に遭遇したセラピストが周辺スタッフに応援を呼ぶまでの時間,Drハート(救急対応依頼の全館放送の隠語)要請までの時間,搬送用意までの時間を計測した。【結果】訓練には理学療法士36名が参加,参加者は1~3年目が15名,4~6年目が9名,7年目以上が12名であった。1回目のアクシデント(患者役経験年数2年目,PT経験年数7年目)では,応援を呼ぶまでに33秒かかり,Drハート要請までの時間1分,搬送用意までの時間1分10秒であった。2回目のアクシデント(患者役経験年数14年目,PT経験年数9年目)では,応援を呼ぶまでに3秒,Drハート要請までの時間1分8秒,搬送用意までの時間1分30秒であった。3回目のアクシデント(患者役経験年数4年目,PT経験年数2年目)では,応援を呼ぶまでに3秒かかり,Drハート要請までの時間34秒,搬送用意までの時間1分17秒であった。【考察】シナリオ回数が増すにつれて,応援要請までの時間は短縮され,要請後の役割依頼を他のスタッフへ的確に行うことが出来ており訓練成果が見られた。医療事故発生時のパニック対応や他のスタッフへの依頼といった基本的な行動は実地訓練でなければ訓練の成果が把握できないことが認識できた。急変の可能性がある患者を対象とするリハビリテーションの現場においては,安全に治療できるためのスタッフ教育が必要である。また,搬送におけるストレッチャー,車椅子の場所の確認や搬送ルートの確認を再確認することが出来る訓練となった。今回のリスク管理教育において,事前学習とシミュレーション訓練の両方が重要であると認識できる結果であった。【理学療法学研究としての意義】理学療法教育における救急医療や急変対応技術は,机上レベルの学習が現状であり,臨床現場における対応は施設による卒後教育の訓練が重要であると思われる。また理学療法士が勤める施設としても重要な管理内容であると考えられる。【参考引用文献】1)阿部勉,他:生活期リハ・訪問リハで役立つフィジカルアセスメントリスク管理ハンドブック,2014.4.28初版第1刷2)碓井孝治,他:当院総合リハビリテーションセンターにおける急変時対応の取り組み,2014.5.31,第49回日本理学療法学術大会
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―Case report;study of immediate effects by using kinesiological evaluation―
Manji Atsushi
セッションID: O-0011
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】Transcranial direct current stimulation(:tDCS)studies for the stroke related symptoms such as motor paralysis and neuropsychological dysfunctions at the chronic phase were reported. We aimed to investigate the effect of tDCS on the improvement of the paretic hand function by using kinesiological parameters. In order to assess the improvement of the upper extremity movements, the angle and velocity was evaluated by using motion capture analysis.【Methods】Two stroke inpatients participated in this study. Case A:68 year - old man who had suffered a right radiata ischemic stroke(60 days from onset:restorative stage inpatient). Case B:55 year - old man who had suffered a medial pre-frontal cortex, precentral and postcentral gyrus ischemic stroke(3.3 years from onset:chronic patient). We applied tDCS(1mA, 20 minutes)bilateral primary motor cortex. Paretic wrist extension and thumb abduction motion were analyzed with motion capture and analysis software(Flame-DIAS IV). Measurement was taken at before and after the tDCS and sham-stimulation.【Results】Case A:Angle velocity of wrist extension movement improved after tDCS stimulation(164 to 273 degree/second:66%). Case B:Angle velocity of thumb abduction 12.0 to 23.4 degree/second:94%). There are not significant change in the other movement and parameters.【Discussion】The findings demonstrated the feasibility and efficacy of tDCS. The facilitative or inhibitory effect of tDCS on motor cortex resulted in improvement of paretic hand with faster and wider movement. The results indicate implications for the use of tDCS for stroke rehabilitation.
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Osumi Michihiro, Takamura Yusaku, Sano Yuko, Wake Naoki, Ichinose Akim ...
セッションID: O-0012
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】We revealed that pain caused by brachial-plexus-avulsion-injury(BPI)ameliorated after re-acquiring voluntary movement representation of the affected limb by the mirror visual feedback treatment(Sumitani et al 2008). Based of our previous findings, we investigated the relationship between pain intensity and motor representation in an objective method using the circles-lines bimanual coordination task.【Methods】Eight BPI patients participated in this study. While blindfolded, they were asked to repeatedly perform uni-manual drawing movements(drawing vertical lines back and forth on the tablet PC monitor by the intact hand)or bimanual movements(drawing the lines by the intact hand and simultaneously intending to draw circles by the affected hand)for 20 seconds. The patients could not draw circles by the affected hand because of motor paralysis. An oval shape transfiguration of the repeatedly-drawn vertical lines by the intact hand when simultaneously intending to draw circles by the affected hand indicates that voluntary movement representations of the affected hand can influence those of the intact hand. Namely, the oval transfiguration suggests confirmation of the voluntary motor representation of the affected limb. In order to quantify the oval shape of the lines drawn by the intact hand, an arbitrary ovalization index(OI)was calculated as the standard deviation of the intact hand trajectories from the absolute vertical line. We analyzed the relationship between the OI value and their pain intensity measured by numeric rating scale(NRS).【Results】A significant negative correlation was observed between the OI value(8.24±1.68%, mean±SD)and NRS(4.62±1.86)(r=-0.66, p<0.05). The patients, demonstrating the noticeable oval transfiguration of the intact hand movements, suffered less pain, and vice versa.【Discussion】Our present finding suggests our methodology can assess motor representation objectively, and implies that BPI patients suffering severe pain merely confirm vague motor representation of the affected limb.
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Iwatsuki Hiroyasu, Echigo Ayumi, Sakamoto Mayu
セッションID: O-0013
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】Unilateral spatial neglect is a behavioral syndrome occurring after a right-hemisphere stroke. Treatment for spatial neglect focuses on cognitive rehabilitation that uses prism adaptation therapy as one approach. However, this therapy has limitations both in terms of its narrowness of focus and duration of the beneficial effects. This study was carried out to evaluate the effects of pointing practice on walking performance looking through a right-left reversing prism.【Methods】The participants were twelve right-handed healthy persons with a mean(SD)of 25.5(6.7)years. They put on prism glasses causing right-left reversal of the visual field, and were asked 30 times to point to targets placed 3m in front using a laser pointer once daily, five days a week. Timed up and go(TUG)test and walking around the edge of a 3m square(SW)were used to measure walking performance and were evaluated 3 times(before, immediately after and 5 mins after the pointing practice)daily for 5 days.【Results】From 3 day to 5 days, the required times, both TUG and SW, recorded immediately after and 5 mins after the pointing practice were significantly shorter than that of before. In particular, the deviations from the walking path in SW showed significant differences between the values recorded immediately after and 5 mins after the pointing practice and that of before.【Discussion】Improvement of walking performance with a prism after the pointing practice might have facilitated adaptation between mediated proprioceptive perceptions and visual information.The efficacy of single-session prism adaptation suggests general improvement of daily activities in patients with unilateral spatial neglect.
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Ueta Kozo, Kikuchi Moe, Sakamoto Ryo, Mitsuyoshi Toshiyuki, Okada Yohe ...
セッションID: O-0014
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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[Purpose]In individuals with stroke, balance training under a dual task may help to regain balance automaticity(Geurts 2005). During a dual task, the coactivation of ankle muscles and center of pressure(COP)sway are thought to decrease by reducing voluntary control of postural control(Reynolds 2010, Nafati 2011). We investigated whether coactivation and COP sway decrease by voluntary control reduction when individuals with stroke performed a cognitive task during quiet standing.[Methods]Seventeen individuals with unilateral stroke(64.5 years;11 affected left limbs)were asked to perform a Control condition(they were instructed to stand as usual)and Dual condition(they performed a cognitive task while standing). Each condition(20 s)was performed twice. The root mean square of total COP and the mean velocity of COP of each limb were calculated. Electromyographic data(tibialis anterior and medial gastrocnemius muscles)were used to calculate the coactivation index(CI). After completing each trial, the subjects were asked to provide a Likert scale(LS)score of the degree of voluntary control on a 4-point scale(4=high voluntary control), and they were grouped into an increase or decrease(higher or lower LS score under the Dual compared to the Control condition, respectively)group. Each reduction difference value(Control-Dual condition)of the variables of the COP and CI was compared between both groups.[Results]The reduction difference value of the root mean square of total anteroposterior COP, the mean velocity of anteroposterior COP, and CI of the nonparetic side limb were significantly larger in the decrease group(9 subjects)compared to the increase group(8 subjects)[Discussion]The results of this study suggest that reducing voluntary control during a dual task training could lead to a decrease in the coactivation, amplitude, and velocity of anteroposterior COP in individuals with stroke.
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Nakayama Yasuhide, Iijima Setsu, Kakuda Wataru, Abo Masahiro
セッションID: O-0015
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】A slant board has been applied as one of the therapeutic devices for patients with spastic lower hemiparesis. We previously reported that standing on the slant board can produce a forward shift of center of pressure in healthy adults and hemiparetic patients. However, no data regarding the influence of the training using a slant board on walking function in post-stroke hemiparetic patients is available.【Methods】Six post-stroke hemiparetic patients with gait disturbance were studied(mean age:58.7±6.0 years). The patients were instructed to perform our proposed home-based training using a slant board for 30 days at their living place. The patients were scheduled to perform two sets of 3-min training using the board three times a day as a home-based training. They try to keep standing position with both ankle joints flexed in the dorsiflexion direction for 3 minutes. The angle of the slant was set at 20 degrees for all patients. Brunnstrom Recovery Stage, Barthel Index, range of motion in the ankle joint, modified Ashworth scale of calf muscle, sensory impairments with Numeral Rating Scale, maximum walking Speed(MWS), number of steps and Timed“Up and Go”test(TUG)were serially evaluated at the beginning and end of the 30-day protocol.【Results】All patients completed the 30-day protocol without any adverse events. With the protocol, MWS significantly increased(p<0.05). The number of steps significantly decreased after the protocol(p<0.05). In addition, significant shortening of TUG performance time was found after the protocol(p<0.05).【Discussion】We speculate that the improvement in walking function found in studied patients was due to forward shift of a center of gravity, which can be an important part of motor learning for gait. The efficacy of the training should be confirmed in a further study of large number of patients and three-dimension analysis.
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Izawa Kazuhiro, Satoshi Watanabe, Tochimoto Shinobu, Hirano Yasuyuki, ...
セッションID: O-0016
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】This study aimed to determine the relation between the regression slope relating minute ventilation to carbon dioxide output(VE/VCO
2 slope)and maximum phonation time(MPT), and the MPT required to attain a threshold value for VE/VCO
2 slope of ≤34 in chronic heart failure(CHF)patients.
【Methods】This cross-sectional study enrolled 115 CHF patients(mean age, 54.5 years;men, 84.9%). VE/VCO
2 slope was assessed during cardiopulmonary exercise testing(CPX). Thereafter, patients were divided into two groups according to exercise capacity:VE/VCO
2 slope ≤34(VE/VCO
2 ≤34 group,
n=81)and VE/VCO
2 slope>34(VE/VCO
2>34 group,
n=34). For MPT measurements, all patients produced a sustained vowel/a:/for as long as possible during respiratory effort from a the seated position.
【Results】All subjects showed significant negative correlation between VE/VCO
2 slope and MPT(r=-0.51,
P<.001). After adjustment for clinical characteristics, MPT was significantly higher in the VE/VCO
2 ≤34 group versus VE/VCO
2>34 group(21.4±6.4 vs. 17.4±4.3 sec, F=7.4,
P=.007). The appropriate MPT cut-off value for identifying a VE/VCO
2 slope ≤34 was 18.12 sec.
【Discussion】An
MPT value of 18.12 sec may be a useful target value for identifying CHF patients with a VE/VCO
2 slope ≤34 and for risk management in these patients.
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Abe Yoshifumi, Matsunaga Atsuhiko, Matsuzawa Ryota, Yoneki Kei, Harada ...
セッションID: O-0017
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】Deterioration in walking ability characterized by slow walking speed is associated with an increased risk of hospitalization and mortality in hemodialysis(HD)patients. However, few studies have focused on walking speeds associated with reduced clinical events. Here we assessed the benefits of a range of maximum walking speeds(MWS)to reduce cardio-cerebrovascular events in HD patients.【Methods】A total of 188 Japanese outpatients(90 men, 98 women;mean, 65±10 years)undergoing maintenance HD 3 times a week were monitored for 7 years. We measured clinical characteristics(age, sex, body mass index, HD duration, comorbid conditions, serum albumin, and serum C-reactive protein)and MWS at baseline, and followed the patients for clinical events. Patients were divided into quartiles(Q1=lowest[slow MWS], Q4=highest[fast MWS])based on MWS for each sex as follows:≤79 m/min, 79 to 89 m/min, 89 to 105 m/min, and>105 m/min in men;and ≤72 m/min, 72 to 85 m/min, 85 to 100 m/min, and>100 m/min in women. Kaplan-Meier analysis and Cox proportional hazards regression were used to assess the contribution of MWS to cardio-cerebrovascular events.【Results】During the follow-up period, cardio-cerebrovascular events occurred in 67 patients. Seven-year cumulative incidence rates were 36%, 32%, 13%, and 9% for Q1 through Q4, respectively, and a significant difference across quartiles of MWS was observed(Log rank,
P<0.001). While the incidence did not significantly differ between Q1 and Q2 and between Q3 and Q4, Kaplan-Meier curves clearly differed between Q2 and Q3. After adjusting for potential confounders, the hazard ratio for events per 10-m/min increases in MWS was 0.71(95% confidence interval:0.58-0.86;
P=0.001).【Discussion】Our findings suggest that MWS>89 m/min in men and>85 m/min in women should be maintained in order to reduce subsequent cardio-cerebrovascular events in HD patients.
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Hagiwara Yuta, Kamisaka Kenta, Sakui Daisuke, Adachi Takuji, Deguchi K ...
セッションID: O-0018
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【Purpose】Gait speed has been shown to independently predict mortality and disability in elderly patients with HF. However, which factors relate to slow gait speed is not fully understood yet. This study aimed to examine factors related to slow gait speed in elderly patients with HF.【Methods】The subjects were patients with HF 65 years old and over who were admitted to Kitano Hospital for decompensated HF. Patients were excluded if they could not walk independently no matter what walking aid was used. All measurements were examined prior to discharge. Gait speed was tested over distance of 4m. Patients were divided into two groups according to the definition of slow gait speed in previous studies(gait speed<0.8 m/sec). Student's t-test and chi-squared test were used to compare clinical characteristics including the severity of HF, co-morbidities, grip strength, geriatric nutritional risk index(GNRI)and Mini-Mental State Examination(MMSE)between the two groups. Logistic regression analysis was used to examine the independent association with slow gait speed.【Results】Sixty one patients(aged 80.9±8.3 years)were enrolled, out of which 34 patients were defined as slow gait speed. Age, BMI, grip strength, GNRI and MMSE were significantly different between two groups. However, there was no significant difference in severity of HF. In logistic analysis, grip strength(OR=0.854 95%CI:0.761-0.952,
P=0.021)and MMSE(OR=0.788, 95%CI:0.658-0.944,
P=0.019)were independent related factors of slow gait speed.【Discussion】Slow gait speed was associated with not only reduced muscle strength but also cognitive impairment. The findings indicate that cognitive impairment might be an independent related factor for the relationship between gait speed and fundamental physical function. Therefore, physical function should be assessed in conjunction with cognitive function particularly in elderly HF patients.
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Sasanuma Naoki, Takahashi Keiko, Itani Yusuke, Tanaka Takashi, Fujii R ...
セッションID: O-0019
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【Purpose】The aim of this research is to reveal predictors of in-hospital mortality risk by using a score of activities of daily living undergoing cardiac rehabilitation(CR)patients.【Methods】This study included 949 patients from January 2010 through December 2011. Inclusion criteria for participate the CR was based on the standard which the Ministry of health, Labor and Welfare in Japan shows. The main outcome measurements were Functional Independence Measure(FIM)scores at beginning of CR and at discharge, CR period, and outcomes to dead or not. Furthermore, age, BMI, complications, comorbidities, and presence of heart failure at admission were investigated. In a Cox's proportional hazards analysis, dead outcome was set of a dependent variable. Another all data were adopted as independent variable. Prior to the hazard analysis, Spearman rank-order correlation analysis was carried out because the connection between each variable was evaluated. The cutoff point of FIM scores were computed using ROC curve and the area under the curve(AUC)was calculated.【Results】The case that dead/alive outcome was 55/894participants. In the hazard analysis, the existence of heart failure(p<0.05), motor and cognitive FIM scores at admission(p<0.05)were extracted as a significant factor. The result of having used ROC curve, the cutoff value determined as 29/30 points in motor FIM and 30/31 points in cognitive FIM score at admission with AUC as 0.784 and 0.757.【Discussion】In previous report which dealt with orthopedic patients(Hershkovitz A, et al. 2010), when the admission FIM score was below 39 points, the mortality rate increased. Our result was consistent with this previous report. In-hospital phase CR, the mortality risk might be higher with the motor and cognitive FIM scores were below 30 and 31 points.
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西原 浩真, 岩田 健太郎, 影山 智広, 門 浄彦, 前川 利雄, 瀬尾 龍太郎, 矢野 敏史, 中川 淳
セッションID: O-0020
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【目的】近年多くの研究でICU入室患者において挿管且つ人工呼吸器管理下であっても安全な離床が可能と言われている。Morrisらは人工呼吸器管理を受ける急性呼吸不全患者群に対し48時間以内の早期離床によりICU在室日数や入院期間が短縮したと報告している。今回,転移性肺腫瘍により右主気管支が閉塞することで完全無気肺を生じ,急性呼吸不全となった症例に対し,挿管中の離床と呼吸練習を実施した結果,無気肺が改善され,抜管,早期に在宅復帰可能となったため報告する。【症例提示】69歳男性。既往歴:左腎細胞癌(開腹腎摘出術後)。病前ADL自立。今回血痰と呼吸苦を主訴に救急搬送,転移性肺腫瘍の気道内浸潤によって右主気管支が閉塞した結果,急性呼吸不全となり挿管され,ICU入室となった。【経過と考察】第1病日:A/Cモード PC:8cmH
2O PEEP:4cmH
2O FiO
2:1.0でSpO
290%前後。bed上よりリハ開始。四肢MMT4レベル。第4病日:PS:8cmH
2O PEEP:5cmH
2O FiO
2:0.7 Dr,Nsと連携し早期離床,深呼吸・腹式呼吸練習開始。軽介助にて立位練習開始。第6病日:PS:6cmH
2O PEEP:5cmH
2O FiO
2:0.45車椅子移乗練習開始。第8病日:抜管。自己喀痰可能。第11病日:歩行練習開始。ICU退室。第13病日:独步,階段昇降自立。労作時もroom airでSpO
296%。第31病日:退院となった本症例は積極的な治療や気管切開は望んでおらず,ADL向上に加え早期抜管や腫瘍からの出血を助長するような吸引刺激を回避し自己喀痰可能とすることがリハビリの治療目標であった。また,無気肺改善後の気道再閉塞による呼吸状態悪化を防止するため,早期から呼吸筋筋力低下予防,肺活量の維持も必要であると考えた。そこで本症例に対する挿管中の離床に加え深呼吸練習を実施した結果,肺換気量やFRCの増大が得られ,右主気管支が開通することで排痰でき,無気肺が改善されたと考えられる。
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金尾 亮兵, 永冨 史子, 森國 順也, 濱口 雄喜
セッションID: O-0021
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【目的】ICU-AWなどの発生は生命予後や機能予後を不良にし,入院期間延長の原因となる。合併症を予防し早期改善することは理学療法の重要な役割である。今回,イレウス術後に敗血症となり,四肢麻痺および両側声帯麻痺を呈しCIPを併発した症例を経験したので報告する。【症例提示】80歳代男性。腹痛,嘔吐にて近医でイレウスと診断され,外科加療目的にて当院入院となった。イレウス解除術後より敗血症性ショックを呈し意識レベル低下し人工呼吸器管理となった。人工呼吸器抜管後も咽頭部にwheezeを認め両側反回神経麻痺と診断,気管切開施行された。意識レベル回復後も四肢筋力低下が残存したが,頭蓋内病変は認めず,末梢神経伝導検査にて軸索障害の所見を認め,CIPと診断された。【経過と考察】術後7病日よりICUにて理学療法開始した。覚醒状態はRASS:-1。自動運動能は肘関節屈伸と手指屈伸,足関節底背屈のみ可能であった。CIPの治療に確立されたものはないが,早期リハ介入により予後は良好とされている。本症例においても筋機能の改善を目的に筋伸長運動,自動介助運動を実施し,さらに抗重力刺激を用いた筋機能の賦活を目的に端座位保持練習を実施した。この際,静脈還流量の低下による血圧低下が危惧され,動脈圧波形より心拍出量を推測し,血圧をモニタリングしながら下腿ポンプ併用下での離床運動を実施した。27病日より四肢筋力は徐々に回復し歩行練習を開始した。本症例では反回神経麻痺による嚥下障害も呈しており胃瘻の受容が進まず経鼻栄養が続いたため,杖歩行安定後も病棟歩行自立とはならなかった。その後,胃瘻造設し66病日に近医転院,97病日で自宅退院となった。本症例ではリスク管理を行いながら早期からの理学療法介入により比較的良好な経過を辿ったが,経鼻栄養が病棟活動度向上への弊害となった。ADL向上には早期に栄養ルートを確保し積極的な運動療法を実施することが重要と考えた。
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森下 誠也, 三浦 理沙, 曽我本 雄大, 山中 孝訓, 森 一起
セッションID: O-0022
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【目的】ICU入院中の患者に対して理学療法実施中に心停止となった患者の経験に対する考察【症例提示】年齢性別:70歳代男性。診断名:脳梗塞,第5頸髄損傷,右肋骨骨折,右肩甲骨骨折,外傷性気胸。現病歴:外来リハビリ受診時にレベル低下。MRI施行し脳梗塞にて入院。第26病日に頚動脈血栓内膜剥離術施行。第31病日に転落により第5頸髄損傷,右肩甲骨骨折,右肋骨骨折,右外傷性気胸及び血胸受傷。【経過と考察】第32病日に呼吸状態悪化し気管挿管し人工呼吸器管理。第37病日理学療法実施中に心停止。ボスミン投与後即座にセラピストによる胸骨圧迫を行い,3分後心拍再開。第39病日より理学療法再開。その後のバイタルサインや意識レベルに関しては心肺停止による影響はなかった。今回の心肺停止の原因は挿管チューブが若干浅く,側臥位への体位変換時に更に浅くなり,人工呼吸器での換気が不十分になったことによる低換気が引き金になったと考えられる。理学療法再開までの期間が短期間であった理由に,ICUでの理学療法であったため心停止の認識が早かったこと,心拍再開までの時間が短かったことが挙げられる。その他,セラピストはBasic Life Support(BLS)を受講しており心停止時の胸骨圧迫に対する知識および技術が十分にあったことも要因の一つであったと考えられる。今回のようなモニタリング管理下でのリハビリは,異常があればアラームが鳴ることや医師や看護師が近くにいるため,緊急時の対応は行いやすい。しかし,リハビリの実施場所はモニタリングのないリハビリ室や,他の職種のいない訪問リハビリでの現場の方が多く,その際は各セラピストが緊急性の判断を行うこともある。今後,リハビリスタッフへの救急救命教育が必須であると考える。
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Sato Kenji, Hosokawa Tomoya, Komatsu Eriko, Suzuki Satoshi
セッションID: O-0023
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【Purpose】Although it is well documented that women are more likely to suffer anterior cruciate ligament(ACL)injuries than men, little is known about sex difference in subsequent injury after ACL reconstruction. The purpose was to compare rates of graft rupture and contralateral injury after ACL reconstruction between sexes among competitive athletes.【Methods】Two hundreds competitive athletes(91 men;18.4 years, 109 women;18.1 years)who underwent anatomic double-bundle ACL reconstruction using hamstring tendons between 2005 and 2012, participated in this study. They were followed-up at least 2 years. Semitendinosus(ST)or semitendinosus gracilis(STG)were used as the grafts. The rates of STG and graft sizes were obtained from operative reports and compared between sexes. The rates of graft rupture and contralateral injury were compared between sexes. The chi-squire test, non-paired t-test and the wilcoxon test were used for comparison(P<0.05).【Results】The rates of STG in men was significantly lower than that in women(23% and 45%, P=0.001). Graft sizes of anteromedial and posterolateral bundles in men was significantly greater than those in women(P=0.000 and P=0.002, respectively). Graft rupture rates were 11.0% in men and 6.4% in women(P=0.249). Contralateral injury rates were 11.0% in men and 8.3% in women(P=0.512).【Discussion】Sex differences were examined among same activity level, because it has been suggested that subsequent injury rate varies according to activity level. To our knowledge, this is the first study comparing subsequent injury rate between sexes among same activity level. Regardless of higher incidence of primary ACL injury and smaller graft size in women, no significant sex differences in subsequent injury rate were found. Therefore, careful attention should be paid to men as well as women to prevent graft rupture and contralateral injury.
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Katogi Takehide, Kotani Toshiaki, Okumura Taro, Kawai Kei, Shimizu Nao ...
セッションID: O-0024
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【Purpose】Though adolescent idiopathic scoliosis(AIS)patients usually undergo surgeries during adolescence when they are active in sports, little is known about the influences of correction surgery on their sports activities. The purpose of this study was to analyze the impact of surgery on sports activities in patients with AIS.【Methods】Twenty AIS patients(3 males, 17 females, average age 14.4±1.5 years old, range 12-17), with an average Cobb angle of the main curve of
55.7±18.1°were included. We evaluated preoperative and postoperative sports activities using deviation values of national physical fitness tests preoperatively and postoperatively. A postoperative physical fitness test was performed between 6 months and 1 year after surgery. Preoperative and postoperative results of the fitness tests were compared. Patients whose lowest instrumented vertebra(LIV)was above L2 and ones whose LIV was below L3 were grouped as upper LIV(uLIV)and lower LIV(lLIV), respectively. Postoperative results were compared between these two groups.【Results】Postoperatively, general performance on the physical fitness test improved for 2 patients, remained stable for 15 patients and declined for 3 patients. The total scores were 40.3±15.2 and 39.6±16.2 pre- and postoperatively, respectively(p=NS).
Scores of
agility(p=0.031)and endurance(p=0.034)were improved significantly after surgery. However, there were no significant differences in other individual physical fitness tests pre- and postoperatively. Postoperatively, there were no significant differences between uLIV and lLIV groups.【Discussion】Correction surgery for AIS improved agility and endurance, but did not influence strength, bendability or speed of the patients. Correction of the scoliotic spine may improve ability of shift weight back and forth and respiratory function in patients postoperatively.
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Imoo Yoshiyuki, Mamizuka Naotaka, Kubota Yuji, Suzuki Hisashi, Hirano ...
セッションID: O-0025
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】Walking disability is one of the most vital impairments for lumbar spinal stenosis(LSS). The 6-minute walk test(6MWT)has been validated as an outcome measure in patients with circulatory or respiratory disease. In addition, there are several studies on the 6MWT in elder people or patients with orthopedic disease in recent years. However, the criterion-related validity of the 6MWT has not been studied enough for the patients with LSS. In this study, we evaluated the criterion-related validity of the 6MWT by examining a correlation with a self-report questionnaire.【Methods】This study included 75 patients(Age:71±8 y.o)following rehabilitation after the surgery of LSS. They completed Zurich Claudication Questionnaire(ZCQ)and performed the 6MWT before the surgery and three months after the surgery. Correlation with ZCQ subscales(symptom severity and physical function)was examined to evaluate the criterion-related validity of the 6MWT.【Results】ZCQ score and the parameters of the 6MWT after the surgery improved significantly compared to the pre-surgery. It was found there were weak correlations between the parameters of the 6MWT and symptom severity scale of ZCQ(distance:r=-0.30, p=0.009, walk speed:r=-0.25, p=0.028)and physical function scale of ZCQ(distance:r=-0.38, p=0.002, walk speed:r=-0.30, p=0.009)before the surgery. Also, the parameters of 6MWT showed weak correlations with the symptom severity scale of ZCQ(distance:r=-0.27, p=0.018, walk speed:r=-0.29, p=0.012), and with the physical function scale of ZCQ(distance:r=-0.38, p=0.001, walk speed:r=-0.36, p=0.001)after the surgery.【Discussion】Stucki et al. (1996)reported ZCQ has the validity and the reliability for the evaluation of the patients of LSS. This study showed the weak relationships between ZCQ subscales and the parameters of the 6MWT at the pre-surgery and the post-surgery. 6MWT would be useful as the valid walk ability evaluation tool for patients with LSS.
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Urakawa Susumu, Takamoto Kouichi, Sakai Shigekazu, Matsuda Teru, Taguc ...
セッションID: O-0026
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】Manual therapy(MT)including manual compression has been widely accepted to be effective especially for musculoskeletal pain. Excessive muscle use(overwork)or unaccustomed exercise usually induces muscle pain expressed discomfort or soreness, which is called delayed onset muscle soreness(DOMS). Although MT is recognized as a therapeutic intervention for DOMS, the mechanisms of analgesic effects remain unclear. To investigate physiological mechanisms of MT, we developed an animal model of MT(intermittent manual compression of muscles)for DOMS. Then, we analyzed the effects of MT on the metabolite-profiles of the exercised muscle.【Methods】Male Sprague Dawley rats, 6 week-old at the beginning of the experiments, were used. Following adequate handling, lengthening contraction(LC)was imposed on the rat gastrocnemius muscle by synchronous electrical stimulation of the muscle and mechanically forced dorsi-flexion of the ankle joint, which was repeated 500 times under the anesthesia. One day after LC, MT(compression by an experimenter's finger)was applied to the muscles of awake rats under pressure monitoring. To evaluate mechanical hyperalgesia in DOMS, withdrawal threshold was measured by Randall-Selitto apparatus and von Frey hairs. In the other groups of rats with and without MT after LC, we conducted metabolome analyses to analyze muscle metabolites of the muscles.【Results】The LC induced mechanical hyperalgesia 2-4 days after LC. Application of MT significantly ameliorated the mechanical hyperalgesia of DOMS. MT following the LC significantly altered metabolite profiles.【Discussion】In the present study, MT ameliorated DOMS in the rat gastrocnemius muscle. The present metabolome analyses for the first time demonstrated that the concentrations of the several metabolites in the muscles were altered following LC and/or MT. The present results along with the previous data suggest that ameliorative effects of MT might be mediated through alterations in muscle metabolites.
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A randomized controlled trail
Nankaku Manabu, Kuroda Yutaka, Nishimura Jun, Matsuda Shuichi
セッションID: O-0027
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【Purpose】Gait training while carrying loads in the ipsilateral hand may be an effective weight-bearing exercise for strengthening muscle of lower extremity after THA. However, there are no clinical trials that evaluated outcomes of gait training while carrying handheld loads after THA.
The purpose of this study is to investigate the effects of gait training while carrying loads in the early post-operative period on the mid-term physical functions after THA.
【Methods】Twenty-six patients who underwent THA were randomized to an exercise group(n=13)or a control group(n=13). In exercise group, in addition to standard rehabilitation program, gait training while carrying loads in one hand to the side of THA was performed for 2 weeks. After intervention, the participants in the both group did not receive any intervention. Outcome measure were hip pain, hip range of motion, muscle strength of lower extremity and Timed up and go test. These parameters were assessed before surgery, 4 week and 6 month postoperatively.
【Results】The two-way ANOVA analysis showed a significant group by time interaction effect for the hip abductor and knee extensor strength(P<0.01). The hip abductor strength at 4 weeks after THA showed significantly better results in the exercise group than in the control group. The hip abductor and knee extensor strengths in the exercise group
were significantly greater than in the control group at 6 month postoperatively.
【Discussion】The hip abductor strength at 4 weeks after THA was significantly greater in the exercise group than in the control group because carrying loads in the ipsilateral hand may contribute to promote weight bearing to the operative side for strengthening hip abductor muscle. Moreover, increasing physical activity by strengthening hip abductor strength in early stage after THA result in improvement of muscle strength of lower extremity at 6 month postoperatively.
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装着アンケート調査と三次元加速度センサを用いた歩行解析
西村 幸子, 梅津 美奈子, 菊池 佑至, 喜古 勇, 堀井 亮太, 佃 岳, 下村 里子, 横尾 健人, 和田 義明, 松原 正明, 三宅 ...
セッションID: O-0028
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】近年,リハビリテーションにおいてロボット技術の導入が進んでいる。Hondaが開発した装着型歩行補助装置「歩行アシスト」(以下,「歩行アシスト」)は,腰部から大腿部に装着し,歩行リズムの相互適応現象を利用して,股関節屈曲伸展運動をアシストするトルクを発生し,歩行運動を支援する装置である。当院の先行研究では脳卒中片麻痺患者での歩容変化を検討し,改善効果が示唆されるが,セラピストや機器を使用した歩行評価・観察が不可欠であると報告した。中枢神経系が障害されていない,整形外科疾患患者では即時効果の期待が大きいと考えられる。そこで,変形性股関節症により人工股関節全置換術(以下,THA)を施行した患者に対し「歩行アシスト」の有用性を,装着者へのアンケートと三次元加速度センサを用いた歩行解析により検討した。【方法】①対象は2014年7月~10月に変形性股関節症によりTHAを施行し,術後8日目以降の歩行自立(当院基準400m自立歩行可)している80名(男性:女性=4:76,年齢63.7±8.6)。測定は平地を連続5分間,自由歩行速度にて1回実施した。歩行アシストは左右股関節屈曲伸展とそれぞれのアシスト量を設定可能であるが,歩行の全体的なアシストを目的とし,左右股関節屈曲伸展,それぞれ1.0の設定で歩行し,使用前後の通常歩行と比較した。装着者にはアンケート形式で「歩行アシスト」の重量感,運動制限感,使用中,使用後の自覚的な歩行のしやすさを調査した。可能な患者では下記のように歩行計測をした。②杖歩行自立日(400m歩行可能となった日)から調査日はランダムに装着を実施し,アンケート結果を比較した。③対象患者のうち可能な患者では,フットセンサと三次元加速度センサを用いて歩行中の空間的な変位と左右の立脚期・遊脚期の区別を行なう腰軌道計測システムを使用し,歩容変化を評価した。測定は直線約30mの歩行路を自由歩行速度にて実施した。腰軌道は前額面後方より観察した場合を示し,上下左右に各方向において腰軌道パターンの特異性を定量的に示す為の特微量を次のように定義した。踵接地~立脚中期の腰の上方移動の左右非対称性をVUsym,左右方向での振幅をHA(cm)とし比較した。解析対象は歩き始めの3歩行周期と終わりの4歩行周期を過度期とし,それらを除外した範囲内で連続した10歩行周期分の変動係数が最小となる範囲とした。統計学的解析はMann-WhitneyのU検定を用い有意水準を5%未満とした。【結果】①5分間連続歩行した時の「歩行アシスト」の重量感は71.2%が「重い」と回答し,「運動制限感がある」との回答は62.5%であった。使用中は「歩きやすい」61.2%,「歩きにくい」16.2%であり,使用後の通常歩行では53.8%が「歩きやすくなった」と回答し,「歩きにくくなった」15%であった。②歩行自立日から調査日までの日数で感想を比較した結果,歩行自立日から早期に装着した例では,歩行の改善を感じる患者が多かった。一方,日数が経過するにつれ「歩きにくい」との回答が増加する傾向があった。③腰軌道の検討においては,腰の上方移動の左右非対称性UVsymや左右方向の振幅HAは有意に数値が減少し,左右対称に近づき改善を認める例もあった。しかし,今回の客観的評価結果は一定ではなかった。【考察】THA患者への歩行アシストの適応において,本装置の重量は2.6kgであり,装着では時に重量を感じたり,運動制限感を感じる患者は多かったが,使用中はアシストの効果が認められた。THA患者は術後,疼痛逃避や筋出力低下により,非術側への重心偏倚や股関節伸展モーメントの不足が歩行時に観察される。代償パターンは様々であるが,装置装着とアシストにより代償歩行が制限され,このような結果が得られたと考える。それらは日数の経過とともに軽減され,術後早期からの適応がより効果的である傾向であった。短時間での装着でも使用後に「歩行のしやすさ」を感じる患者も多く,大畑らは「歩行アシスト」の使用により歩幅や歩行対称性が改善し,効果は使用後の歩行にも継続すると報告しており,THA後のリハとしての歩行の導入には有用性があると思われた。客観的検証ではやはりばらつきがあり,有用性は全例では示せておらず,今後,他覚的検証に基づいた適応症例の検討も必要である。【理学療法学研究としての意義】理学療法の一手段としてリハビリテーションロボットは,リハ効果が得られるかどうかが今後の発展に重要である。検証によりTHA患者への「歩行アシスト」使用の有用性が示唆された。
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股関節累積負荷に着目した解析
建内 宏重, 小山 優美子, 塚越 累, 宗 和隆, 黒田 隆, 後藤 公志, 秋山 治彦, 市橋 則明
セッションID: O-0029
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】変形性股関節症(股OA)は,軟骨の変性・摩耗を生じる慢性進行性の疾患であり,臼蓋形成不全などを有する前期から初期,進行期を経て末期に至る。また,歩行などの運動機能も疾患進行に伴って低下する。しかし,股OA患者を対象とした歩行特性(速度,関節角度や外的負荷などの特徴)やそれに関連する要因を調査した報告は,末期あるいは人工股関節全置換術後の患者を対象としたものがほとんどである。一般に,保存療法としての運動療法の適応は,疾患が進行し末期に至る以前が最適であると考えられており,その時期の関節症の進行程度と歩行特性との関連性を調査することは,疾患の進行予防などを目的とした理学療法を検討する上で重要であると考える。本研究の目的は,前期から進行期の股OA患者を対象として,関節裂隙狭小化と歩行特性との関連性を明らかにすることである。【方法】対象は,前期から進行期の股OA患者50名(全例女性:年齢;48.2±10.7歳:BMI;22.3±4.0)とした。診察のために撮影された臥位レントゲン正面像から,股OAの診断や進行の指標として最も信頼性が高いとされている最小関節裂隙幅を測定した。加えて,Sharp角,CE角も測定した。歩行特性の評価は,約7mの歩行路における自然歩行とし,3次元動作解析装置(Vicon Motion Systems社製:200Hz)と床反力計(Kistler社製:1000Hz)を測定に用いた。測定時には,Tシャツとスパッツを着用し,骨盤,大腿,下腿,足部に計20個の反射マーカーを貼付した。数回の練習後に,安定して行えた3試行を記録した。記録したデータから,歩行速度,歩行中の股関節屈伸・内外転・回旋の関節可動域,および外的負荷の指標として股関節屈伸・内転・回旋の外的モーメント積分値および3平面での外的モーメント積分値の合計を算出した。各変数について,3試行の平均値を解析に用いた。加えて,全対象者に歩数計(山佐時計計器社製)を配布し,連続した7日間における歩数(入浴を除いた起床から就寝まで)を記録した。膝関節を対象とした先行研究を参照し,股関節モーメント積分値(屈伸,内転,回旋,および合計)に患側下肢の1日平均歩数(7日間の平均歩数/2)を乗じることで,股関節累積負荷を算出した。股関節累積負荷は,股関節に対して一日に加わる外的負荷の総量を意味している。関節裂隙狭小化と関連する要因を調べるために,まず,最小関節裂隙幅とSharp角,CE角,年齢,BMI,歩数,および各歩行変数の間の単相関関係(ピアソンの積率相関係数)を分析し,さらに最小関節裂隙幅を従属変数としその他の要因を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。有意水準は5%とした。【結果】対象者の最小関節裂隙幅は3.5±1.3 mmであった。単相関分析では,最小関節裂隙幅に対して,年齢が有意な負の相関を示し,歩数,歩行中の股関節可動域(屈伸),股関節累積負荷(屈伸)がそれぞれ有意な正の相関を示した。重回帰分析の結果,最小関節裂隙幅に対して年齢と股関節累積負荷(屈伸)が有意な変数として抽出された(R
2=0.49:標準偏回帰係数;年齢-0.36,股関節累積負荷(屈伸)0.30)。累積負荷に関わる関節モーメント積分値や歩数は,有意な変数とはならなかった。分散インフレ係数による評価では多重共線性は確認されなかった。なお,年齢と股関節累積負荷(屈伸)との間には,有意な相関関係は認められなかった。【考察】股OA患者において,加齢に伴い関節裂隙幅が減少することは,先行研究の結果と一致した。一方,歩行特性については,関節裂隙幅の減少と特に屈伸方向の股関節累積負荷の減少が関連することが示された。本研究より変数間の因果関係を明確にすることは困難であるが,関節裂隙の狭小化に伴って屈伸方向の股関節への負荷を減じる適応的な変化が生じることが推察される。本研究で求めた累積負荷は,歩行時の関節モーメント積分値と歩数から算出されるため,関節モーメントの増減にかかわる歩容と日常の活動量の両要因の影響を受ける。しかし,関節モーメント積分値や歩数それ自体は,有意な変数としては抽出されておらず,関節症の進行と関連する要因としては関節モーメント積分値と歩数を統合した指標である股関節累積負荷に着目することの重要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究では,新たな指標として算出した股関節累積負荷が,初期から進行期の股OA患者の関節病態の変化と関連することが示唆された。本研究結果は,股OA患者の縦断的調査や理学療法の効果検証を行う上で,重要な知見を提供するものである。
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尾藤 貴宣, 玉利 光太郎, 天野 徹哉, 河村 顕治, 青木 隆明, 伊藤 芳毅, 秋山 治彦
セッションID: O-0030
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】人工股関節全置換術(THA)後,半年以降の日常生活動作は,疼痛なく独歩にて生活している症例が大部分を占めるとされている。一方,THA適用患者は退院後も継続して階段昇降が困難な状況にあることが報告されており,退院にあたっては歩行だけでなく段差を含む階段昇降能力の獲得は重要であると考える。近年の診療報酬改定により,在院日数・理学療法介入期間は制限されており,術後早期の運動機能の改善に影響を与える因子を明確にすることは,周術期の理学療法をより効率的に実践するために必要不可欠である。しかしながら,先行研究では,THA適用患者の退院時の階段昇降能力について縦断的に調査した報告はない。本研究では,THA適用患者を対象に退院時の階段昇降能力を予測する術前の身体機能的因子を検討することを目的とした。【方法】対象は当院整形外科にて変形性股関節症(股OA)と診断され,初回片側THAの適用になった40例(男性8例,女性32例,年齢:66.2±9.4歳,BMI:23.5±3.3kg/m
2)とした。取り込み基準は,退院時に階段昇降が可能な者,除外基準は,神経学的疾患を有する者・関節リウマチを有する者・臼蓋側骨移植や大腿骨骨切術を併用した者とした。研究デザインは前向きコホート研究でベースライン調査として,術前に基本属性である性別・年齢・BMI,医学的属性であるOA側(両側性または片側性)・鎮痛薬剤使用の有無・術中出血量・自己効力感(SER),身体機能である疼痛・術側股関節と膝関節可動域(ROM)・術側股関節と膝関節周囲筋の最大等尺性筋力の調査・測定を行い,追跡調査として,退院時に改訂Timed stair test(TST)の測定を行った。改訂TSTは,階段昇降にかかる時間を測定するTSTを基に我々が考案し,第49回日本理学療法学術大会において,その信頼性・妥当性を報告した尺度である。統計解析は,改訂TSTをアウトカムとした重回帰分析を行った。身体機能を説明変数とし,事前に単変量解析にて変数選択を行い,有意水準が0.20を下回る説明変数を投入した。また,医学的属性についても,単変量解析にて有意水準が0.20を下回る変数を基本属性と併せて交絡因子として強制投入した。なお,本研究の改訂TSTは退院直前に測定しており,対象者毎に術後から測定までの日数が異なる。そのため,改訂TST測定までの術後日数を交絡因子として強制投入した。統計ソフトはSPSS ver.19を用い,有意水準は両側5%とした。【結果】単変量解析の結果,抽出された変数は説明変数では股関節屈曲筋力・股関節伸展筋力・膝関節屈曲筋力・膝関節伸展筋力・股関節伸展ROM・股関節外転ROM・膝関節伸展ROMであり,基本属性以外の交絡因子では改訂TST測定までの術後日数であった。重回帰分析の結果(p=0.001,R
2=0.334),退院時の改訂TSTを予測する術前因子は,股関節伸展筋力(p=0.004,β=-0.421)と膝関節伸展ROM(p=0.038,β=-0.300)であった。交絡因子投入後の重回帰分析の結果(p<0.001,R
2=0.616),股関節伸展筋力(p=0.013,β=-0.309),年齢(p=0.014,β=0.317),改訂TST測定までの術後日数(p<0.001,β=0.478)が抽出され,膝関節伸展ROMはモデルから除外された。股関節伸展筋力は,年齢と改訂TST測定までの術後日数などの要因からも独立して退院時の改訂TSTを予測する因子として抽出された。なお,本研究で抽出されたモデルの検定力は,事後検証の結果,1-β=0.999であった。【考察】本研究の結果より,術前股関節伸展筋力は年齢や改訂TST測定までの術後日数などの要因からも独立して,退院時の改訂TSTを予測する因子であることが示唆された。すなわち,退院時の改訂TSTが遅延する患者は,術前の股関節伸展筋力が有意に低かった。Puaらは股OA患者において階段昇降の遂行時間と股関節伸展筋力が関連すると報告している。本研究では,股OA患者はTHA術後から退院時までの縦断的な検討においても,先行研究を支持する結果となった。また,改訂TST測定までの術後日数が長い患者は退院時の改訂TSTが遅い結果となった。本研究では,改訂TSTは退院直前に測定しており,術後入院期間に影響を受けると考えられる。したがって,術後入院期間を遅らせる何らかの要因が,退院時の改訂TSTに影響を与えたものと推察された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,退院時の階段昇降能力の向上を目的とした周術期の理学療法を検討するための一助になると考える。
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加速度計を用いた調査
池田 光佑, 古谷 英孝, 美崎 定也, 三井 博正, 杉本 和隆
セッションID: O-0031
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【目的】人工股関節全置換術(以下THA)後の理学療法において,跛行改善が一つの目標であり,治療効果を判定する上で,科学的根拠に基づいた評価指標を用いることが必要である。近年,THA術前後の歩行分析には3次元動作解析装置による報告が多く見受けられるが,3次元動作解析装置は高価で測定に時間を要し,臨床で用いるには適していない。また,臨床場面では観察により歩行分析することが多い。よって,簡便で且つ,観察的に跛行を評価する指標が必要である。Horlstomannらは,THA患者の跛行を評価する上で,観察的に歩行分析をし,跛行の程度を4段階に分類するLimping Assessment Scaleを用いているが,その妥当性や信頼性に関する調査は成されていない。そこで今回の目的は,Horlstomannらが用いたLimping Assessment Scaleの妥当性および信頼性を重心の動揺を計測できる加速度計を用い,調査することとした。【方法】対象の選択基準は,妥当性の調査ではTHA術後患者とし,信頼性の調査では変形性股関節症,大腿骨頭壊死症,リウマチ性股関節炎,THA術後患者とした。また,全て片側例で独歩可能な者とした。除外基準は,重篤な心疾患,中枢神経疾患,他関節の手術既往,認知症を有する者,両側罹患者とした。測定項目は1)歩行中の左右方向への重心動揺,2)Limping Assessment Scaleとし,1)2)を測定する際の歩行課題は,快適速度による10m歩行とした。1)には加速度計(LSIメディエンス社)を用いた。測定方法は,対象者の第三腰椎棘突起部に加速度計を装着し,歩行中の重心加速度を測定し,得られた加速度データから10m歩行分の二乗平均平方根(Root Mean Square:以下RMS)を算出した。RMSは歩行の安定性を評価する指標として用いられ,RMSが大きいほど左右方向への重心動揺が大きいことを示す。2)は,No limping,Slight limping(only visible to the trained therapist),Moderate limping(abnormal pelvic motion:pelvic drop,Trendelenburg sign),Severe limping(pronounced lateral body and trunk sway)の4つに分類される。測定方法は,理学療法士が前額面上で前方かつ後方から歩行を観察し,評価した。統計解析は,1)で得られたRMSの変数と2)の4分類の関連をみるためにSpearmanの順位相関係数を用いて相関分析を行い,さらに,1)を従属変数,2)の4分類を因子とした一元配置分散分析および多重比較(Tukey検定)を行い,妥当性を検証した(有意水準5%)。信頼性の検討は,デジタルビデオカメラ(Panasonic社)を用い,対象者の前額面上の歩行を撮影した。その後,撮影した動画を観察し,Limping Assessment Scaleを用いて理学療法士が評価した。検者内信頼性は再テスト法を用い,1週間後に同一検査者が評価を行った。検者間信頼性は2名の理学療法士にて評価を行った。統計解析は重み付けKappa係数を用いた。【結果】妥当性の調査に含めた対象者の属性は,男性10名,女性38名,No13名,Slight15名,Moderate14名,Severe6名,年齢[平均±標準偏差(範囲)]64.0±10.7(43-85)歳,BMI25.7±4.1(18.3-39.2)kg/m
2,全例THA術後患者であった。相関分析の結果,重心動揺RMSとLimping Assessment Scale間に正の相関が認められた(r=0.512)。また,多重比較検定の結果,SevereはModerate(
p=0.033),Slight(
p=0.006),No(
p=0.006)と有意差が見られ,ModerateはSevere(
p=0.033),Slight(
p=0.048),No(
p=0.044)と有意差が見られた。SlightとNo(
p=0.999)の間に有意差は認められなかった。信頼性の調査に含めた対象者の属性は,男性5名,女性23名,年齢[平均±標準偏差(範囲)]62.5±9.92(40-80)歳,BMI25.7±4.1(18.3-39.2)kg/m
2,変形性股関節症22名(Kellgren-Lawrence Grade,Grade1:2名,Grade2:3名,Grade3:8名,Grade4:9名),大腿骨頭壊死症1名,THA術後5名であった。統計解析の結果,重み付けKappa係数は検者内で0.909,検者間で0.863,と高い値を示した。【考察】今回検証したLimping Assessment Scaleは,検者内,検者間において高い信頼性が示された。しかし,SlightとNoの間には重心動揺RMSの統計的有意差は認められず,歩行観察で分類するには困難である結果となった。この結果を踏まえると,観察的に跛行を評価し分類するには,SlightとNoを合わせ,その他のModerateとSevereの3段階スケールを用いる必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】歩行を分析する上で,SlightとNoを合わせた3段階のLimping Assessment Scaleを用いることが,簡便で,且つ科学的根拠を踏まえた評価方法に成り得る。
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生友 尚志, 永井 宏達, 三浦 なみ香, 岡村 憲一, 奥埜 尭人, 伊本 悠矢, 田篭 慶一, 中川 法一, 増原 建作
セッションID: O-0032
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】末期変形性股関節症(股OA)患者は同年代の健常者に比べて転倒発生率が高く,転倒予防対策が必要である。しかし,その転倒発生の原因については解明されていない。そこで本研究では,末期股OA患者の股関節機能や運動能力を横断的に調査し,転倒発生に関連する因子を検討した。【方法】2013年1月から2014年9月までに人工股関節全置換術(THA)を目的に入院した末期股OA患者210名を調査対象とした。男性患者,慢性関節リウマチ,中枢神経障害,心臓疾患,めまいを有する患者,骨切り術後,大腿骨頚部骨折術後,再THA,THA後1年以内の患者は対象から除外した。調査内容は,過去1年間での転倒経験の有無,罹患期間,罹患側,併存疾患の有無,服薬の有無,歩行補助具の使用,連続歩行可能時間,脚長差,骨盤傾斜の有無,疼痛(VAS:Visual Analog Scale),身体活動量(IPAQ:国際標準化身体活動質問票),股関節臨床評価(HHS:Harris Hip Score),股関節外転筋力,膝関節伸展筋力,10m歩行時間,跛行の有無とした。脚長差と骨盤傾斜は術前のX線画像より測定し,脚長差は両涙痕を結んだ線と小転子を通る平行線との距離の患健差とし,骨盤傾斜の有無は両涙痕を結んだ線と水平線のなす角である骨盤側方傾斜角が±2°以上を骨盤傾斜ありとした。身体活動量はIPAQを用いて各活動強度と活動時間から1週間の身体活動量(Mets.mins)を算出した。筋力の測定にはHand-Held Dynamometer(アニマ社製μTas F-1)を使用して,手術予定側の股関節外転と膝関節伸展の最大等尺性筋力を測定し,トルク体重比(Nm/kg)を算出した。跛行の有無は跛行なし,軽度,中等度,重度の4段階にて判定し,中等度か重度の場合を跛行ありとした。統計学的分析としては,転倒経験の有無により転倒群と非転倒群に分け,各調査項目の2群間の比較をMann-Whitney U検定とχ
2検定を用いて検討した。転倒発生に関連のある因子を検討するために,従属変数を転倒発生の有無,独立変数を2群間の比較にてp値が0.25未満であった項目とし,年齢,BMIを強制投入したステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を実施した。また,抽出された因子に対してROC曲線を作成し,カットオフ値を算出した。有意水準は5%とした。【結果】対象者のうち除外基準に該当せず,欠損データのない153名(年齢:64.0±9.1歳)を解析対象とした。過去1年間で転倒経験がある人は46名であり,転倒発生率は30.1%であった。各調査項目の転倒群と非転倒群の比較の結果,HHS(p<0.05),股関節外転筋力(p<0.01),膝関節伸展筋力(p<0.01)は転倒群のほうが有意に低下していた。10m歩行時間は転倒群のほうが有意に長かった(p<0.01)。外出時に歩行補助具を使用する割合は転倒群のほうが有意に高かった(p<0.05)。中等度以上の跛行を有する割合は転倒群のほうが有意に高かった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析の結果,転倒発生に有意な関連要因として抽出された因子は,跛行の有無(オッズ比:3.3,95%信頼区間:1.49-7.14)と膝関節伸展筋力(オッズ比:0.22,95%信頼区間:0.05-0.85)であった。得られた回帰モデルはHosmerとLemeshowの検定の有意確率p=0.30と適合は良好であり,判別的中率は74.5%であった。転倒の危険性を判断する膝関節伸展筋力のカットオフ値は0.93Nm/kgであった。中等度以上の跛行かつ膝関節伸展筋力が0.93Nm/kg未満の人の転倒発生率は68.8%であり,相対危険度は4.7であった。【考察】本研究の結果,末期股OA患者の転倒発生に跛行と膝関節伸展筋力が関連していることが明らかになった。さらに中等度以上の跛行を呈し,膝関節伸展筋力が0.93Nm/kg未満である患者は転倒の危険性が非常に高いことがわかった。転倒発生時の状況として末期股OA患者はつまずくこと,バランスを崩すことで転倒する場合が多い(生友,2014)。中等度以上の跛行を呈する場合,歩行周期変動が増大している可能性があり,歩行時遊脚期のつま先の床クリアランスが低下した際につまずき,転倒する危険性が高いと考えられる。また,下肢筋力の低下は高齢者においても重要な転倒原因とされており,股OA患者も同様に膝関節伸展筋力の低下により転倒の危険性が高くなることが明らかになった。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より,末期股OA患者において中等度以上の跛行の有無と膝関節伸展筋力は転倒リスクアセスメントとして有用であることが明らかになり,転倒予防対策を講じる上でも重要な情報となると考える。
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福元 喜啓, 建内 宏重, 塚越 累, 沖田 祐介, 秋山 治彦, 宗 和隆, 黒田 隆, 市橋 則明
セッションID: O-0033
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】変形性股関節症(以下,股OA)患者が呈する歩行障害として特徴的な歩容異常があり,トレンデレンブルグ徴候,デュシェンヌ現象や,股関節角度・モーメントの低下などが報告されている。これらの歩容異常の原因のひとつに股関節周囲筋の筋力低下が挙げられ,臨床では股OA患者に対する運動療法として筋力トレーニングが行われる。しかし,筋力トレーニングによって股OA患者の歩容異常が改善するかどうかを運動学的・運動力学的に検証した報告は見当たらない。筋力トレーニングの方法として,運動を素早く行う高速度(以下HV)筋力トレーニングがあり,高齢者を対象とした研究では低速度(以下LV)筋力トレーニングと比べて筋パワーや運動能力の向上が大きいとの報告がなされている。我々は,股OA患者に対するHVトレーニングはLVトレーニングよりも運動能力を向上させることを報告した。本研究では,HVおよびLVトレーニングが股OA患者の歩容異常に与える効果を運動学的・運動力学的に検討することを目的とした。【方法】対象は地域在住の股OA女性患者46名(平均年齢53.4±9.8歳)とした。年齢(50歳未満と50歳以上)およびOA重症度(前期または初期股関節症(軽度)と,進行期または末期股関節症(重度))による層化ランダムブロック割り付けにより,対象者をHV群23名とLV群23名に群分けした。両群とも自宅にて8週間毎日,セラバンドを使用した両側の股関節外転,伸展,屈曲および膝関節伸展の4種類の筋力トレーニングを実施した。運動速度として,HV群は求心相ではなるべく素早く,遠心相では3秒間かけて行い,LV群では求心相,遠心相ともに3秒間かけて実施した。介入前後に,下肢筋力測定,疼痛評価と歩行解析を行った。下肢筋力として,患側股関節外転,伸展,屈曲および膝関節伸展の最大等尺性筋力(Nm/kg)を測定した。また日常生活における歩行時痛を,線分100mmのVisual Analogue Scaleを用いて評価した。歩行解析には3次元動作解析装置(VICON社製)および床反力計(Kistler社製)を使用し,反射マーカーをplug in gait full bodyモデルに準じて貼付し,自由速度での歩行を行った。計測パラメータは,体幹側屈,骨盤側方傾斜,患側股関節屈曲・伸展の関節角度(°)と,患側股関節屈曲・伸展・外転の関節モーメント(Nm/kg)とし,それぞれのピーク値を算出した。また,患側の1歩行周期の値から歩行速度を算出した。歩行は3試行行い,平均値を解析に用いた。統計学的検定として,各測定値の介入前の群間比較には対応のないt検定を用いた。また,群と期間を要因とした分割プロットデザイン二元配置分散分析を行った。統計の有意水準は5%とした。【結果】介入途中でHV群では4名,LV群では3名が離脱した。さらに介入が終了した対象者のうち,HV群の4名,LV群の3名が歩行解析を実施できなかったため,最終的にHV群15名,LV群17名となった。OA重症度は,HV群では軽度6名/重度9名であり,LV群では軽度9名/重度8名であった。介入前の年齢,身長,体重および各測定値に群間の有意差はなかった。疼痛とすべての下肢筋力は,交互作用がなかったが期間の主効果が認められ,介入により下肢筋力は15~23%増強し,疼痛は29.2から10.4まで減少した。歩行解析の計測値では,交互作用はなかったが股関節伸展角度(介入前4.6±6.4°,介入後7.8±6.2°)および歩行速度(介入前1.21±0.17m/s,介入後1.29±0.15m/s)に期間の主効果が認められ,いずれも介入によって値が大きくなった。他の歩行計測値には主効果・交互作用が認められなかった。【考察】本研究では下肢筋力トレーニングにより,HV群,LV群ともに同程度の筋力増強と疼痛改善が得られた。また歩行計測値では股関節伸展角度において,交互作用はなかったが期間の主効果が認められた。このことから股OA患者に対する下肢筋力トレーニングはその運動速度によらず,歩行時の股関節伸展制限の改善に有効であることが示唆された。本研究では介入によって歩行速度の向上も得られたが,この歩行速度向上は股関節伸展角度の増大により引き起こされたことが推察された。一方,体幹側屈角度や骨盤側方傾斜角度は介入による変化が得られなかったことから,筋力トレーニングのみではトレンデレンブルグ徴候やデュシェンヌ現象は改善しえないことが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】本研究は股OA患者の歩容異常に対する筋力トレーニングの効果を運動学的・運動力学的に検証した初めての研究であり,臨床における股OA患者の歩容改善を目的とした理学療法プログラムのための一助となる。
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森 一晃, 和田 治, 赤山 僚輔, 飛山 義憲
セッションID: O-0034
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】前十字靱帯(ACL)損傷は,スポーツ膝傷害の中でも頻度が高く,スポーツへの復帰を目標としてACL再建術を施行されることが多い。先行研究では術後6ヶ月や12ヶ月における膝伸展筋力の回復に,年齢や性別,術前の筋力や活動レベル,術後の腫脹などが影響することが報告されているが,ランニングやアスレティックリハビリテーションが開始される術後3ヶ月における膝伸展筋力の回復に影響を与える因子を検討した報告はみられない。また,術後3ヶ月における膝伸展筋力は術後12ヶ月の筋力に影響することも報告されており,その後のスポーツ復帰の時期にも大きく影響することが示唆されている。そこで,本研究の目的を術後3ヶ月の筋力回復に影響を与える因子を検討することとし,その要因を術後早期の膝機能から予測するため,術後1ヶ月の膝機能から明らかにすることとした。【方法】対象は2013年5月から2014年7月までに当院にて半腱様筋・薄筋腱による解剖学的一重束再建法によるACL再建術を施行され,術後1ヶ月から3ヶ月までの追跡調査が可能であった54名(男性25名,女性29名,平均年齢29.2±12.8歳,Body Mass Index23.0±3.3 kg/m2)とした。除外基準は,複合靭帯損傷例,両側例,再々建例とした。評価時期は術後1ヶ月,3ヶ月であり,身体機能評価として,腫脹の指標となる膝蓋骨上縁の周径,膝関節可動域,膝伸展筋力,Heel Height Difference(HHD,腹臥位での両踵骨高の健患側差)の計測を行った。腫脹および膝伸展筋力は患側値を健側値で除した健患側比として求め,膝関節可動域は,健側の可動域から患側の可動域を差し引いた健患側差を算出した。身体機能評価に加え,膝前面痛の評価としてShelbourneらのAnterior Knee Pain Score(AKP Score)を用い,主観的膝機能の評価としてIKDC Subjective Scoreを用いた。統計学的分析は,術後3ヶ月の膝伸展筋力の達成目標とされる健患側比65%を基準として,対象を健患側比65%以上の筋力回復良好群(G群)と65%未満の不良群(P群)の2群に分け,それらを従属変数とし,年齢,性別,BMI,半月板切除・縫合術の有無,術後1ヶ月での腫脹の健患側比,膝関節可動域の健患側差,HHD,AKP Score,IKDCを独立変数とする変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。【結果】G群は41例(男性21例,女性20例,平均年齢28.3±12.5歳,BMI23.3±3.2kg/m
2),P群は13例(男性5例,女性8例,平均年齢33.3±12.9歳,BMI 22.1±3.4kg/m
2)であった。術後3ヵ月の筋力回復に影響する因子として,AKP Score(p=0.04,オッズ比0.96)のみ抽出された。【考察】本研究の結果から,術後3ヶ月の膝伸展筋力の回復に影響を与える因子としてAKP Scoreのみが抽出され,術後1ヶ月の膝前面痛が術後3ヶ月の膝伸展筋力の回復に関与していることが明らかとなった。これまで,術後12ヶ月,24ヶ月の膝伸展筋力の回復に膝前面痛が影響を与えることが明らかとされているが,本研究ではさらに,術後3ヶ月の膝伸展筋力に術後1ヶ月という早期の膝前面痛が影響を与えるということを明らかにした。近年,スポーツへの早期復帰を目的とし,術後の加速的なリハビリテーションが実施されており,術後3ヶ月におけるランニングやアスレティックリハビリテーションへの移行を円滑に進めるため,術後早期から膝前面痛にも十分に留意したリハビリテーションが重要であると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究ではACL再建術後3ヶ月における膝伸展筋力に術後1ヶ月の膝前面痛が影響することを明らかにした。スポーツ復帰時期の術後6ヶ月や12ヶ月における膝伸展筋力の予測因子を検討した報告は多いが,ランニングやアスレティックリハビリテーションを開始する術後3ヶ月における膝伸展筋力の予測因子を検討した報告は少なく,術後早期から膝前面痛に留意したリハビリテーションの重要性を示した意義ある研究である。
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~体重支持指数(WBI)を用いた筋力指標~
小坂 則之
セッションID: O-0035
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【目的】膝前十字靭帯(ACL)再建術後のスポーツ復帰は半年から1年と期間が長く,スポーツ復帰時にも筋力が完全に回復していないことが多い(堀部2005,柏2012)。またスポーツ傷害予防のためには体重支持指数(WBI:weight-bearing index)1.3が必要(黄川1991)とされているため,術後1年での筋力改善は必要不可欠である。本研究の目的は再鏡視時の患側膝伸展筋力に影響を与える要因を明らかにし,筋力改善のための指標を検討することである。【方法】対象は2012年5月から2013年6月の期間に一般クリニックにて同一術者による解剖学的二重束再建術(STG腱)を施行した患者である。除外基準は高位脛骨骨切り術同時例,両側ACL再建例,再断裂例,経過追跡困難例とし,分析対象は28名28肢(男性10名,女性18名,左16肢,右12肢),年齢28.9±14.2歳(範囲14~63歳),身長163.6±8.4cm(範囲150~180cm),体重62.0±10.9kg(範囲45~90kg)であった。合併症は,外側半月板損傷10例,内側半月板損傷例4例,内側側副靭帯損傷及び内側半月板損傷合併1例であった。対象患者は1年後を目安に再鏡視及び抜釘術を施行した。(442.8±84.4日)術後は,翌日から可動域訓練(CPM:半月板縫合例は翌週より開始),patella setting,SLR,術後1週で1/3部分荷重,伸展制限-10°,術後2週で2/3部分荷重,伸展制限-5°,術後3週で全荷重,膝伸展制限なし,術後4ヶ月でランニング,術後6ヶ月でジャンプトレーニングを開始し,徐々にスポーツ活動に部分復帰し,術後10~12ヶ月で完全復帰を目標としたリハビリテーションを行った。方法は,術前及び2ヶ月,4ヶ月,6ヶ月,再鏡視時に等尺性膝伸展筋力(角度60°でのWBIによる健側・患側及び患健比。百分率にて表示。OG技研社製アイソフォースGT-330使用。)を評価した。またスポーツ活動指標として術前のTegner Activity Level Scale(tegner score)を調査した。再鏡視時の膝伸展筋力に影響をする要因を抽出するため,再鏡視時患側膝伸展筋力を従属変数,年齢,術前・2・6ヶ月患側膝伸展筋力(WBI),術前tegner scoreを独立変数として重回帰分析(AIC基準によるステップワイズ法)を適用した。また多重共線性を確認するためにVIF及び相関行列を確認した。統計解析にはR2.8.1,EZR(freeware)を使用し,有意水準は5%とした。【結果】再鏡視患側膝伸展WBI99.7±24.0%,術前患側伸展WBI64.2±24.9%,2ヶ月患側伸展WBI54.9±24.1%,6ヶ月患側伸展WBI85.2±32.5%,術前tegner score7.3±1.8であった。再鏡視時患側膝伸展筋力に影響する項目は年齢(p=0.057),6ヶ月患側伸展WBI(p<0.01),術前tegner score(p=0.102)であった。(定数:40.6,偏回帰係数:-0.250,0.628,1.679,95%信頼区間:-0.508~0.008,0.522~0.734, -0.365~3.724,標準化偏回帰係数:-0.148,0.850,0.130,調整済みR
2:0.89,AIC=114.88,ANOVA:p<0.001)【考察】再鏡視時の患側膝伸展WBIは99.7±24.0%,同患健比89.0±15.0%であり,ジャンプやダッシュ,ターンなどの激しい運動を不安なく行うために必要とされる90%以上(黄川1991)を上回っていたが,スポーツ傷害を予防する指標である130%を達成していたのは2例(7%)と少数であった。統計解析から再鏡視時の患側膝伸展筋力は年齢及び6ヶ月患側膝伸展筋力,術前tegner scoreが影響しており,年齢の減少及びスポーツ活動性増加に伴い伸展筋力は増加する結果となった。しかし,年齢及び術前tegner scoreはp>0.05であり,変数による変動が大きいことを考慮する必要がある。6ヶ月の患側伸展筋力は標準偏回帰係数も0.850と高いため,再鏡視における6ヶ月患側膝伸展筋力の影響はかなり強いことが推定された。術後膝伸展筋力の回復は6ヶ月までに約90%回復(桜井2011)されるとの報告もあり,6ヶ月までに筋力を回復させることが1年後の予後を改善するために重要であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】前十字靭帯再建術後の筋力予後予測は様々な要因が関与しているため,その判断や解釈が困難である。本研究において6ヶ月の患側伸展筋力が大きく影響していることは有用な意味をもっており,この期間までに筋力を回復させておくことが重要であり,術後トレーニングの計画に大いに役立つものであると考える。
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上田 雄也, 荒木 大輔, 松下 雄彦, 瀧口 耕平, 柴田 洋平, 小野 くみ子, 小野 玲, 松本 知之, 高山 孝治, 酒井 良忠, ...
セッションID: O-0036
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】膝前十字靭帯(以下,ACL)再建術後では再建側の筋力低下が問題となる。術後の膝伸展筋力の回復はスポーツ復帰おける重要な因子の一つであり,先行研究ではスポーツ復帰に向けては等速性膝伸展運動において健患比で85%以上の値が必要であると報告されている。しかしACL再建術後の膝伸展筋力回復に関係する因子についての報告は散見しており,多くの因子を包括的に検討した報告は少ない。また近年では術後のスポーツ復帰時期は短縮傾向にあり,術後6ヶ月頃にスポーツ復帰を果たす例も報告されている。一方で,この時期に良好な筋力回復を得る上での関連因子を検討した報告はない。そこで本研究ではスポーツ実施者においてACL再建術後6ヶ月時点での膝伸展筋力の回復に関連する因子について男女別に検討すると共に,関連因子のカットオフ値について提示することを目的とした。【方法】本研究では2003年から2014年の間に当院または当科関連病院にてHamstrings腱を用いたACL単独再建術を施行し,術前および術後6ヶ月に当院にて膝機能測定を実施した531名の内,反対側の受傷が無く,受傷前のTegner scoreが6点以上の者で,退院後,当院または他院にて外来リハビリテーションを6ヶ月間実施した254名(男性:126名,女性:128名,平均年齢:23.0±8.7歳)を対象とした。個人特性として性別,年齢,BMI,術前Tegner score,受傷から手術までの期間(以下,待機期間),術式(解剖学的一重側再建法または二重束再建法)について問診およびカルテから情報を収集した。膝機能測定では術前および術後6ヶ月においてKT-2000による脛骨前方移動量の健患差と,MYORET RZ-450による角速度60°/secにおける膝伸展筋力の健患比(以下,%膝伸展筋力)を測定した。群分けに関しては,%膝伸展筋力が85%以上の者(以下,High群)と85%未満の者(以下,Low群)の2群に分類した。統計解析として,High群とLow群において各測定項目について単変量解析を用いて群間比較を実施した。次に群間比較にて有意な傾向(p<0.20)を示した変数を独立変数とし,High群であることを従属変数とした多変量ロジスティック回帰分析を実施した。さらに多変量ロジスティック回帰分析にて有意な関連(p<0.05)を示した連続変数についてはReceiver Operating Characteristic(以下,ROC)曲線による分析を行い,カットオフ値を算出した。統計ソフトとしてJMP ver 11.0を用いた。【結果】男性においてHigh群60名,Low群66名。女性においてHigh群38名,Low群90名であった。群間比較において,男性では年齢(p<0.01),術前Tegner score(p<0.05),術前の%膝伸展筋力(p<0.01)が,女性では年齢(p<0.01),待機期間(p<0.01),術前Tegner score(p<0.01),術前の%膝伸展筋力(p<0.05)がそれぞれ選択された。多変量ロジスティック回帰分析においては,男女共に年齢(男性:オッズ比0.89,95%信頼区間0.82-0.96,女性:0.91,0.83-0.98)と術前%膝伸展筋力(男性:1.02,1.00-1.04,女性:1.02,1.00-1.04)が因子として抽出された。High群であることを従属変数としたROC曲線から得られたカットオフ値は,男性は年齢22歳(曲線下面積0.71,感度73.3%,特異度60.4%),%膝伸展筋力70.2%(曲線下面積0.68,感度70.0%,特異度60.4%)であり,女性は年齢17歳(曲線下面積0.72,感度73.7%,特異度64.4%),%膝伸展筋力56.1%(曲線下面積0.63,感度84.2%,特異度43.3%)であった【考察】男女共にACL再建術前の膝伸展筋力が,術後6ヶ月での膝伸展筋力の回復に関連しており,カットオフ値から男性では術前の膝伸展筋力の健患比が約70%以上,女性では約56%以上の場合で術後6ヶ月における膝伸展筋力の回復が良好であることが示された。また年齢についても,男女共にACL再建術後6ヶ月での膝伸展筋力に関連する因子であったことから,ACL再建術後の膝伸展筋力の回復に向けては,術前の膝伸展筋力の増強を図るだけではなく,術後においても年齢という対象者の特性も考慮したリハビリテーションプログラムを作成する必要があることが示唆される。【理学療法学研究としての意義】スポーツ実施者におけるACL再建術後6ヶ月での膝伸展筋力の回復に関連する因子を抽出した。本研究の結果は,ACL再建術後の膝伸展筋力の回復および術後早期でのスポーツ復帰に向けた理学療法介入の一助となり得る。
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鈴木 理恵, 吉田 昌平, 青島 早希, 相馬 寛人, 吉川 信人, 吉田 純, 橋尾 彩花, 谷口 里奈, 下谷 聡
セッションID: O-0037
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】過去に我々は,女子バスケットボール選手における膝前十字靭帯再建術(以下,ACLR)後の等速性膝関節伸展筋力(以下,膝伸展筋力)が,競技レベルに関わらず同様の回復過程を示すことを報告した(青島ら2014)。また,渡辺ら(2010)は,術後3ヵ月で20回以上通院している症例では,筋力の回復が良好であると報告している。しかしながら,ACLR後の競技復帰時期までのリハビリテーション(以下,RH)の頻度と膝伸展筋力の回復過程に関しては我々の渉猟しうる限り,一定の見解が得られていない。そこで今回我々は,ACLR後の競技復帰まで当院にてRHを継続して行うことが可能であった女子バスケットボール選手において,競技復帰までの通院回数と膝伸展筋力の回復過程について検討した。【方法】対象はACLRを施行し,競技復帰まで当院にてRHを継続して行うことが可能であった女子バスケットボール選手69名(年齢17.8±1.7歳,身長163.7±7.4cm,体重57.5±5.8kg,通院回数41.8±11.2回)である。対象を通院回数で2群に分けて,通院回数40回以上の48名(年齢17.9±1.6歳,身長163.8±6.7cm,体重57.2±5.2kg,通院回数48.5±2.0回)をA群,通院回数40回未満の21名(年齢17.5±1.8歳,身長163.5±8.9cm,体重58.2±7.0kg,通院回数26.5±7.8回)をB群とした。膝伸展筋力はCybex Normを用いて60deg/secにて測定し,ピークトルクの体重比(Nm/kg)と,患健側比(以下,患健比)(%)を評価値とした。測定時期はACLR後3,4,6ヵ月(以下,3,4,6M)とした。統計学的処理は,A群,B群それぞれの3,4,6Mにおける患側の膝伸展筋力について,群と時期を要因とした二元配置分散分析を用いて比較した。また,A群,B群それぞれの患健比について,対応のないt-検定を用い各時期での2群間の比較を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】60deg/secでの膝伸展筋力は,3MでA群健側2.7±0.5Nm/kg,患側2.7±0.4,患健比96.0±9.5%,B群健側2.7±0.3,患側2.3±0.3,患健比87.0±14.0であった。4Mでは,A群健側2.9±0.3,患側2.9±0.3,患健比100.7±7.3,B群健側2.8±0.3,患側2.5±0.3,患健比91.1±9.8であった。6Mでは,A群健側3.0±0.3,患側3.1±0.3,患健比103.8±6.9,B群健側2.8±0.2,患側2.7±0.3,患健比96.0±10.6であった。膝伸展筋力のA群患側とB群患側間では,A群がB群と比較して3,4,6M全ての時期において有意に高い値を示した。患健比も同様に,3,4,6M全ての時期においてA群がB群と比較して有意に高い値を示した。【考察】今回,患側膝伸展筋力,患健比共に,3,4,6Mの全ての時期においてB群と比較してA群が有意に高値を示していた。このため,ACLR後のRHを行った頻度が膝伸展筋力の回復に関与することが明らかとなった。当院では,競技レベルに関わらずプロトコールが統一されているため,各時期の目標は明らかでありモチベーションを保つことができる。また,各時期に応じたトレーニングや動作練習を段階的に負荷の設定をしながら行い,さらに理学療法士が介入することで,個々の特徴に合わせたプログラムを作成している。それを,週2回の頻度で通院することによって反復することができる。このように,当院ではトレーニングの原理・原則に基づき,ACLR後のRHを行っている。そのため,今回A群とB群ではすでに3Mから差がみられており,約週2回の頻度で術後からの6か月間通院したA群では,B群よりも競技復帰時期までの間で,患側膝伸展筋力の回復が良好であったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から,ACLR後,トレーニングの原理・原則に基づいたRHを競技復帰までの間行うことで,膝伸展筋力の回復が良好となることが明らかとなり,理学療法研究として有用であると示唆された。
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回旋中心の検討
大角 侑平, 井野 拓実, 小竹 諭, 浮城 健吾, 三浦 浩太, 大森 啓司, 吉田 俊教, 前田 龍智, 鈴木 航, 大越 康充, 川上 ...
セッションID: O-0038
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】膝前十字靭帯(ACL)損傷後の長期経過における関節症性変化の発生が知られており,その一因として膝関節の異常運動が指摘されている。この異常運動を明らかにする事は膝関節に生じる機械的ストレスを推察し関節症性変化の発生メカニズムを解明する一助になると期待されている。ACL損傷後の異常運動については“Quadriceps avoidance gait”や“Pivot-shift avoidance gait”など運動学的および運動力学的な変化に関する報告が散見されるものの,動的環境下における生体膝の回旋中心(center of rotation,以下COR)の変化に関する報告は演者らが渉猟し得た限りない。本研究の目的は三次元動作解析装置を用いて歩行時におけるACL不全膝のキネマティクス,キネティクス,そして回旋中心を明らかにする事である。【方法】平成21年4月から平成24年6月までの期間に当院を受診した片側ACL損傷患者のうち,動作解析を施行し得た36例の患側と健側を対象とした。内訳は男性18例,女性18例,BMI23.5±3.8kg/m
2,年齢24.7±12.8歳,受傷から計測までの期間は6.7±12.8ヵ月であった。また健常成人ボランティア20例の40膝を対照群とした。内訳は男性10例,女性10例,BMI20.5±2.4kg/m
2,年齢26.0±5.7歳であった。全ての対象者はAndriacchiらが報告したポイントクラスター法に準じて体表マーカが貼付され,赤外線カメラ(120Hz)と床反力計(120Hz)により定常歩行が計測された。得られたデータはQualisys Track Manager 3Dにて処理し,ポイントクラスター法に準じて膝関節の6自由度運動を算出した。キネマティクスデータは膝完全伸展位での自然立位をゼロ点とし,一歩行周期を100%として時系列を規格化した。また逆動力学計算により膝関節の外的モーメント(屈伸,回旋,内外反)を算出した。算出した関節モーメントは対象者ごとに身長と体重で標準化し,立脚期を60%として時系列を規格化した。CORは脛骨平面上に投影されたtransepicondylar axis(pTEA)と運動により変位したpTEA'の交点と定義した。CORについては荷重応答期と立脚終期について検討した。これらのパラメーターについてACL不全群の患側,健側そして対照群の3群間で比較検討した。統計解析には一元配置分散分析および事後検定としてTukey-kramer法を用いた。なお有意水準は5%に設定した。【結果】荷重応答期における患側の回旋中心は脛骨関節面中央より外側に11.8cm,前方に1.1cmであり対照群(外側7.0cm,前方0.0cm)と較べて外側傾向かつ有意に前方であった。さらにこの時の患側の膝屈曲モーメントは0.229±0.127Nm/Bw×Htであり対照群の0.336±0.113Nm/Bw×Htと較べて有意に低値,脛骨後方並進移動量は1.1±0.5cmであり対照群の0.8±0.5cmと較べて有意に高値であった。立脚終期において3群の回旋中心の間に有意差は認められなかった。しかしこの時の患側の膝屈曲角度は13.3±7.1°であり対照群の9.3±5.2°と較べて有意に高値,脛骨内旋モーメントは0.026±0.023Nm/Bw×Htであり対照群の0.043±0.034Nm/Bw×Htと較べて有意に低値であった。脛骨の回旋角度については3群間に有意差は認められなかった。【考察】荷重応答期においてACL不全膝の膝屈曲モーメントは有意に低値,かつ脛骨後方並進移動量は有意に高値であった。これにより大腿四頭筋活動により生じる脛骨の前方不安定性の発現を抑えていたことが推察された。この時,荷重による脛骨内旋と代償動作の一つである脛骨後方並進によりCORは前外方に位置するものと考えられた。立脚終期においてACL不全膝は屈曲角度が有意に高値であり,かつ脛骨内旋モーメントが有意に低値であった。これらの特徴はFuentesらが報告したACL不全膝に認められる“Pivot-shift avoidance gait”と同様の所見であり,これにより脛骨の前外側回旋不安定性の発現を抑えていたと考えられた。ACL不全膝で認められたこれらの変化は脛骨大腿関節の軟骨接点を変化させ長期経過における関節症性変化の一因となる可能性があると推察された。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は歩行時におけるACL不全膝のキネマティクス,キネティクス,そして回旋中心を示した。ACL損傷後においては不安定性を代償するための異常運動が現れており,長期経過における関節症性変化の一因となる可能性があると考えられた。
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―ジャークコストを用いて―
内野 翔太, 土居 健次朗, 河原 常郎, 大森 茂樹
セッションID: O-0039
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに】バスケットボールやバレーボールにおける着地動作は,利き脚,非利き脚での片脚着地が混在し,足関節捻挫や前十字靭帯損傷などの障害を伴うことが多いとされている。利き脚は,ボールを蹴る,足で砂を均すなど動作中優先的に使用したり,片脚で物を操作するときに使用する。非利き脚は,片脚でバランスを取るときや片脚で身体を安定させるときに使用する。非利き脚は動作中に支持脚となることが多い。利き脚・非利き脚が異なった機能を有することは,片脚着地の際,下肢3関節運動や動作の円滑さにも違いが生じると予想される。片脚着地に関して,利き脚に関する下肢関節運動の運動力学的特性や性差,筋活動に関する報告は散見する。しかし,利き脚の規定も様々であり,利き脚,非利き脚での違いに関しての報告は少ない。本研究の目的は,支持脚及び非支持脚における片脚着地の円滑さに着目し,運動学的特徴及び着地動作の円滑さについて比較検討する事とした。【方法】対象は,下肢に整形外科疾患のない成人男性7名(年齢:25.1±1.6歳,身長1.7±0.1m,体重67.1±4.9kg)とした。計測機器は,VICON MXシステム(VICON,カメラ10台,100Hz),床反力計OR6-7(AMTI,2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS1.8.5を用いた。マーカは,Helen Hayes Marker setをもとに35ヵ所に貼付した。運動課題は,30cm台から自由落下後,支持脚・非支持脚にて片脚着地し,3秒間静止することとした。支持脚及び非支持脚の規定は,Waterloo Footedness Questionnaire(Elias,Bryden,& Bulman-Fleming.1998)を用いた。各運動課題ともに計測前に十分練習を行い,3回計測を行った。3回施行した中でランダムにデータを抽出し検証した。また,各条件ともに上肢の影響を抑えるため腰に手を当て計測を行った。計測範囲は,片脚着地における初期接地(Initial Contact:IC)から身体重心(Center of Gravity:COG)最下点までの範囲とし,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列を正規化した。片脚着地の円滑さを求める指標として躍度の二乗の総和であるジャークコストを採用した。解析項目は,支持脚・非支持脚におけるジャークコスト,IC時の下肢3関節角度,ICからCOG最下点までの下肢3関節角度変位量,鉛直床反力(Vertical Ground Reaction Force:VGRF)ピーク値とした。支持脚・非支持脚間における各項目の平均値の差の有無について,Paired t-testを用いて検証し,ジャークコストとIC時の下肢3関節角度,下肢3関節角度変位量,VGRFピーク値,COG変位量の関係をPearsonの相関係数を用いて検証した。有意水準5%とした。【結果】ジャークコストは,支持脚:5.3×10
3±4.4×10
3m
2/sec
5、非支持脚:8.0×10
3±4.9×10
3m
2/sec
5で非支持脚において有意に高い値を示した(p=0.03)。また,一人を除いて支持脚と比較し非支持脚で高い値を示した。股関節屈曲角度変位量は,支持脚:25.4±3.2度,非支持脚:24.8±4.6度,膝関節屈曲角度変位量は,支持脚:50.3±6.4度,非支持脚:47.2±6.2度,足関節背屈角度変位量は,支持脚:45.2±8.4度,非支持脚:39.9±4.4度で各関節ともに有意差は見られなかった。支持脚において,ジャークコストと相関があったものは,IC時の股関節外転角度がr=0.65,VGRFピーク値がr=0.73,COG前後変位量がr=0.74で正の相関を認めた。ジャークコストと股関節屈曲変位量がr=-0.75で負の相関を認めた。非支持脚において,ジャークコストとIC時の股関節屈曲角度がr=-0.69,膝関節外反角度がr=-0.80で負の相関を認めた。【考察】非支持脚の片脚着地は,IC時の股関節屈曲角度,膝関節外反角度が大きくCOG最下点までの間,その他関節においても衝撃緩衝を行うことが出来ず,支持脚と比較し円滑さに欠けると考えられた。このことから非支持脚の片脚着地は,障害に繋がる危険性があると考えた。片脚着地を円滑に行うための条件は,IC時の股関節外転角度が減少,IC後に股関節屈曲角度が増大と考えた。それにより,COG前後変位量を最小限に留めることが可能と考えた。また,着地動作においてジャークコストを指標として評価することの有効性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究により片脚着地を円滑に行うための条件を見出すことで,スポーツ動作で発生する下肢3関節障害の原因解明,スポーツ動作の指導法構築,パフォーマンス向上に繋げることに役立つ一助となる。
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山田 実, 荒井 秀典
セッションID: O-0040
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】加齢に伴ってインスリン様成長因子(IGF-1)の血中レベルが低下することをソマトポーズという。IGF-1は成長ホルモンの刺激によって主に肝臓で生成されるが,骨格筋収縮によってIGF-1の分泌が促進されることも知られている。ソマトポーズはサルコペニア,骨粗鬆症,それにメタボリックシンドロームや認知機能低下など,高齢期に生じる様々な疾病・機能低下に関連すると考えられている。本研究の目的はソマトポーズとサルコペニア・骨粗鬆症との関連を検討することである。【方法】対象は要支援・介護認定を受けていない健常な地域在住高齢者とした。参加者に対して運動機能(歩行速度,握力),身体組成(生体電気インピーダンス法),それに踵骨骨密度(超音波)の測定を実施した。また,同日に採血を行いIGF-1の血中レベルを分析した。アジアサルコペニアワーキンググループのアルゴリズムに従い,運動機能低下および骨格筋量減少の両者を兼ね備えるものをサルコペニアと定義し,踵骨骨密度の測定により,若年比較比(%YAM)が70%未満のものを骨粗鬆症と定義した。IGF-1は男女それぞれにおいて正規分布していることを確認した後に四分位を求めた。統計解析としては,サルコペニア,骨粗鬆症の有無を従属変数に,IGF-1の四分位群(Q1-Q4)をカテゴリー変数化して説明変数に,さらに年齢を調整変数に投入したロジスティック回帰分析を行った。【結果】参加者は男性421名(74.3±5.9歳),女性720名(73.8±5.6歳),合計1,141名であった。サルコペニア有症率は男性12.9%,女性6.5%であり,骨粗鬆症の有症率は男性27.2%,女性29.7%であった。血清IGF-1は男女ともに加齢とともに減少する傾向にあり,男性では103.1±33.9ng/ml(第1四分位81ng/ml,第2四分位100ng/ml,第3四分位122ng/ml),女性では88.4±28.4ng/ml(第1四分位69ng/ml,第2四分位87ng/ml,第3四分位107ng/ml)であった。男女ともにIGF-1の血中濃度が低くなるほど,サルコペニアおよび骨粗鬆症の有症率は有意に高まった(P<0.05)。サルコペニアを従属変数に投入したロジスティック回帰分析では,IGF-1のQ4をリファレンスとするとQ1のオッズ比は男性15.7(95%CI:3.5-69.7),女性8.9(95%CI 1.1-70.2)となった。骨粗鬆症を従属変数に投入した場合でも,同様にQ4をリファレンスとするとQ1のオッズ比は男性3.1(95%CI:1.5-6.5),女性3.5(95%CI:1.8-6.6)と有意に有症率が高かった。【考察】本研究結果より,男女ともにソマトポーズがサルコペニアおよび骨粗鬆症の両者に関連していることが示唆された。IGF-1は骨格筋の同化関連ホルモンであると同時に骨形成促進関連ホルモンである。本研究では四分位によってカテゴリー化を行ったため,男性81ng/ml以下,女性69ng/ml以下というのがIGF-1の下限の目安となったが,今後は対象者数および対象者の機能レベルの幅を拡大するとともに,追跡期間を設けることによって明確な基準値の作成を行う必要がある。【理学療法学研究としての意義】IGF-1は身体活動による骨格筋収縮によって分泌が促進するため,身体活動の促進によってサルコペニア・骨粗鬆症の両者の予防に寄与できる可能性がある。ホルモンを含め,身体内部の様々な変化を詳細に捉えることにより,身体活動や理学療法のエビデンス構築につながるものと考えられる。
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立木 隆広, 伊木 雅之, 玉置 淳子, 北川 淳, 高平 尚伸, 米島 秀夫, JPOS Study Group
セッションID: O-0041
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】サルコペニアは,骨密度低下のリスク要因になることが示唆されているが,地域在住の中高年者において,サルコペニアの構成要素である骨格筋量と筋機能(筋力,身体能力)の何れがリスク要因となるかは明確な結論を得ていない。高齢者において,サルコペニアと骨密度の低下によって引き起こされる骨粗鬆症が併発した場合,サルコペニアによって易転倒性を引き起こし,骨粗鬆症による骨折リスクを増大させるため,サルコペニアの構成要素である骨格筋量および筋機能(筋力,身体能力)と骨密度の関連の解明は,超高齢社会である我が国において重要といえる。本研究の目的は,地域在住の50歳以上の女性を対象として,骨格筋量と筋機能(筋力,身体能力)が骨密度と関連するかを検討することである。【方法】対象は,Japanese Population-based Osteoporosis(JPOS)cohort Studyの15年次調査を受診した受診時50歳以上の女性680人(平均年齢65.0±9.9歳)とした。二重エネルギーX線吸収法(Hologic QDR4500A)を用いて大腿骨頸部(FN)および腰椎(L2-L4)(LS)の骨密度,並びに四肢骨格筋量および脂肪量を測定した。骨格筋量の指標として補正四肢筋量(ASMI,四肢骨格筋量/身長
2)を算出し,筋機能の指標は,筋力の指標として握力,身体能力の指標として10m最大歩行速度(MWS)を測定した。結果指標をFNおよびLSの骨密度,説明指標をSMI,握力およびMWSとした。統計学的解析は,FNおよびLSの骨密度を従属変数,SMI,握力,MWS,年齢,身長,脂肪量および閉経の有無を独立変数として,はじめに説明指標をそれぞれ単独に重回帰分析で検討した。次に,説明指標のうち,FNおよびLSの骨密度と有意な関連を示したものを,同一のモデルに投入し,FNおよびLSの骨密度との関連を再検討した。有意水準はp<0.05とした。【結果】対象者の骨密度,ASMI,握力およびMWSの平均値±標準偏差は,FN骨密度0.65±0.11g/cm
2,LS骨密度0.88±0.16g/cm
2,ASMI 6.84±0.72kg/m
2,握力21.8±4.7kg,MWS 1.9±0.4m/sであった。説明指標をそれぞれ単独に検討した結果,FNおよびLSの骨密度とASMIの間にそれぞれ有意な関連を示した(FN:β=0.22,p<0.01,LS:β=0.26,p<0.01)。また,FNおよびLSの骨密度と握力の間にそれぞれ有意な関連を示した(FN:β=0.14,p<0.01,LS:β=0.17,p<0.01)。しかし,FNおよびLSの骨密度とMWSの間には有意な関連は示さなかった。有意な関連を示したASMIと握力を同一のモデルに投入し,FNおよびLSの骨密度との関連を再検討した結果,FN骨密度とASMIの間に有意に関連を示したが(β=0.19,p<0.01),握力とは有意な関連は示さなかった。LS骨密度では,ASMI(β=0.23,p<0.01)および握力(β=0.09,p=0.03)の間に有意な関連を示した。【考察】骨格筋量の減少には筋線維の萎縮による筋断面積の減少と筋線維数の減少が関与しているが,筋線維の萎縮や筋線維数の減少は筋収縮の低下の原因ともなる。このことから,筋収縮の増減の要因として骨格筋量の増減が関連していると考えられる。一方,骨密度の増減に関連する要因の一つとして,骨が受けるメカニカルストレスの増減が挙げられるが,これは筋収縮の増減によるところが少なくない。以上のことから,骨密度の増減に与える要因の一つとして骨格筋量の増減が存在すると考えられる。本研究においてASMIと握力を同一モデルに投入し検討した結果,FN骨密度との間にはASMIのみが有意な関連を示し,LS骨密度との間にはASMIおよび握力が有意な関連を示したが,握力との関連は弱かった。この結果は,先に述べた骨密度の増減と骨格筋量の増減の関連を示唆する結果といえる。【理学療法学研究としての意義】我々理学療法士は,これまで中高年者の転倒予防や介護予防における筋に対する運動処方として,筋力の維持増加を主たる目的として行ってきた。しかし,本研究の結果は,筋力の維持増加のみならず骨格筋量の維持増加も重要であることを示唆している。サルコペニアと骨粗鬆症はともにロコモティブシンドロームの基礎疾患であり,超高齢社会における予防医学の中心課題となる。この喫緊の課題を解決するために,理学療法士は,両者に対する包括的な予防対策を立案することが求められるが,本研究の結果は,その際必要となるエビデンスとして寄与するものといえる。
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内部障害患者の身体組成,身体機能に着目して
佐藤 憲明, 高永 康弘
セッションID: O-0042
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】サルコペニアに関する報告は近年国内外で多数されており,Yamadaらは本邦の一般高齢者のサルコペニア有病率は約20%で,後期高齢者になると急激に増加すると述べている。年々後期高齢者の割合が高くなっている入院患者は,加齢に加え低活動,低栄養,疾患による二次性サルコペニアを来しやすいためサルコペニア有病率が高くなっていると思われる。しかしながらサルコペニアをスクリーニングした調査は地域在住の高齢者が対象であることが多く,入院患者を対象としたものは少ない。そこで本研究では高齢入院患者を対象にサルコペニアのスクリーニングをするとともに,その身体組成と身体機能について検討した。【方法】対象は当院に心血管疾患や呼吸器疾患などの内部障害で入院した65歳以上の高齢患者42例。歩行に支障を来すような運動機能障害や認知症のある患者および呼吸,循環動態が不安定な患者は除外した。四肢骨格筋肉量は生体電気インピーダンス法(BIA)であるタニタ社製マルチ周波数体組成計で測定し,skeletal muscle mass index(SMI)を求めた。その他の身体組成として,体脂肪率,骨量を測定した。骨量は体重で除した値を採用した。尚,日内変動による誤差を避けるため,測定は午前10時から11時台に全例実施した。身体機能は,握力,通常歩行速度,膝伸展筋力,Functional Reach Test(FRT),Timed Up & Go test(TUG),片脚立位時間,CS-30を測定した。その他の調査項目は年齢,性別,BMI,歩行自立度,在院日数とした。全ての評価は退院前に実施した。サルコペニアのスクリーニングは,新しく提唱されたAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の基準に従った。歩行速度0.8m/s以下または握力:男性26kg 女性18kg未満とSMI(BIA):男性7.0kg/m
2 女性5.7kg/m
2未満を満たした者をサルコペニアと判定した。サルコペニア群と非サルコペニア群の比較は対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,フィッシャーの正確確率検定を用いた。また,握力,歩行速度以外のサルコペニアに影響のある身体機能因子を検討する目的で,サルコペニアを従属変数とし,膝伸展筋力,FRT,TUG,片脚立位時間,CS-30を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。抽出された因子のカットオフ値はReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線より求めた。統計処理はIBM SPSS statistics 21を使用し,有意水準は5%とした。【結果】サルコペニア群15例(男性9例 女性6例),非サルコペニア群27例(男性20例 女性7例)に分類された。サルコペニアの有病率は全体で35.7%,男性31.0%,女性46.2%であり両群の男女比に有意差はなかった。サルコペニア群の平均年齢は非サルコペニア群よりも有意に高値で(79.1±7.6 vs 72.8±6.3歳 p<0.01),BMIは低値であった(19.8±2.2 vs 21.9±2.7 kg/m
2 p<0.05)。サルコペニア群は病棟内独歩自立したものは有意に少なく(p<0.001),在院日数は両群で有意差がなかった。身体機能は全てサルコペニア群の方が有意に低かった(膝伸展筋力p<0.05 他p<0.01)。体脂肪率は,有意差はなかったがサルコペニア群の方が高い傾向にあった(26.3±6.9 vs 22.5±7.1% p=0.0986)。骨量体重比はサルコペニア群の方が有意に低かった(3.8±0.46 vs 4.1±0.34% p<0.05)。多重ロジスティック回帰分析の結果は,FRTのみが影響因子として抽出された(OR 1.225 95%CI 1.062-1.412 p<0.01)。またROC曲線からFRTのカットオフ値24cmが得られた。このカットオフ値は曲線下面積0.7741,感度81.5%,特異度60%であった(p<0.01)。【考察】サルコペニア群は後期高齢者が多く,先行研究を支持するものとなった。また痩せているが体脂肪は多い傾向にあり,体脂肪率が男性25%以上,女性30%以上のサルコペニア肥満が男性6例,女性3例存在した。身体機能の改善や再発予防には,このサルコペニア肥満を解消することが重要と思われる。骨量と骨密度は有意な相関関係があり,骨量の少ないサルコペニアは骨折の危険性が高いと言える。Hidaらはサルコペニアが大腿骨近位部骨折の独立した危険因子であると述べており,特に転倒予防に努める必要があると考える。サルコペニアの影響因子として抽出されたFRTのカットオフ値24cmは,Duncanらが提唱した転倒リスクカットオフ値25.4cmと近く,興味深い結果となった。サルコペニアは重心移動が困難になり易く,これが歩行回復遅延の一因になっていると思われる。【理学療法学研究としての意義】高齢入院患者に対して理学療法を実施する際,サルコペニアの有無を把握することは治療戦略や再発・転倒予防を考える上で重要である。
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貞清 秀成, 石坂 正大, 坂川 昌隆, 貞清 香織, 下井 俊典
セッションID: O-0043
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】近年,高齢者のサルコペニアに関する報告が散見される。欧州では歩行速度が0.8 m/s以下で握力や下腿周径の低下を認められた場合にサルコペニアと定義している。またサルコペニアは移動能力やADL,死亡率とも関連していることが報告されている。歩行速度は移動能力の指標であり,下腿周径は栄養状態や骨格筋量に関与すると報告されているが,施設入所の超高齢者に対する運動療法の効果として明らかにした報告はない。本研究は下肢筋力トレーニングによる運動療法によって,歩行速度,大腿周径及び下腿周径が増加するのかを明らかにすることを目的とする。【方法】対象は指示理解,立位保持が可能な施設入所高齢者9名18肢,平均年齢91歳(85-97歳)とした。栄養の状態を把握するため,血液生化学データより血清アルブミン値(Alb)と体重を調査した。身体計測は介入前と介入後に実施した。メジャーを用いて大腿10 cm周径,下腿最大周径,下腿最小周径を背臥位,膝伸展位にて3度測定し最大値を代表値とした。また歩行可能な対象者はストップウォッチを用い10 m歩行路の歩行時間を測定し歩行速度を算出した。介入は12週間,週5日の頻度で実施した。内容は立位にて股関節屈曲,股関節伸展,股関節外転,足関節底屈運動を20回ずつの下肢筋力トレーニングを基本とした。運動負荷として2秒に1回のペースでゆっくり実施した。また身体機能に応じて立ち上がり練習,立位バランストレーニング,歩行練習を実施した。統計処理はwilcoxonの符号付き順位和検定を行い,有意水準は5%未満とした。【結果】12週間継続できた対象者は7名であった。対象者のAlbの平均は3.5 g/dlであり,体重は介入前が38.1 kg,介入後は38.3 kgであった。下腿最大周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前27.6±3.1,27.9±2.5 cm,介入後28.5±2.2,28.5±2.2 cmであった。下腿最小周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前19.3±1.3,18.8±1.6 cm,介入後18.6±1.2,18.4±1.5 cmであった。大腿10cm周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前34.5±3.2,35.3±3.9 cm,介入後35.5±2.8,36.5±2.9 cmであった。歩行可能であった対象者は5名で,歩行速度は介入前0.53±0.18,介入後0.76±0.19 m/sであった。右下腿最大周径と左右の大腿10cm周径と歩行速度で有意差がみとめられた(p<0.05)。【考察】筋力トレーニングを用いた運動療法介入は歩行可能な対象者全員の歩行速度を向上させた。歩行速度や大腿周径は大腿四頭筋の筋力と相関することが報告されており,歩行速度向上の原因として筋力トレーニングによる筋力や筋肉量の向上が考えられる。また右下腿の最大周径の増加についても栄養状態の安定と下肢の筋力トレーニングの効果が考えられる。左下腿の最大周径で増加を認めなかった要因として,最小周径でも左下腿が太い傾向があること,心不全による浮腫は左下肢にでやすいことの影響があった可能性がある。高齢者に対するトレーニングとして低負荷でゆっくりと実施するトレーニングにより安全に筋力増加が可能であることが報告されている。今回筋力トレーニングをゆっくりと実施したことで疼痛などの誘発もなく負荷も適当であったことが考えられる。今回超高齢者に対する筋力トレーニングを用いた運動療法により歩行速度や大腿及び下腿周径は改善しうる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】超高齢者に対する筋力トレーニングを用いた運動療法のエビデンスとなると考えられる。
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畑下 拓樹, 田上 徹, 濱西 啓記
セッションID: O-0044
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】高齢者は加齢に伴う様々な要因により,低栄養に陥りやすく,低栄養により運動・生理機能の低下が助長される。若林秀隆らにより,リハビリテーション(以下:リハ)を行っている入院患者の多くが低栄養状態であるという報告が数多くなされている。一方,病院を退院後の地域在住高齢者の栄養状態に関する報告は少ない。しかし,リハの対象となる地域在住高齢者においても,入院患者と同様に低栄養状態であることが予想され,リハを実施する際に栄養状態を把握することが必須と考えられる。そこで,通所介護施設利用者における栄養状態と運動機能の関連について調査し,要介護認定を受けている地域在住高齢者に対するリハビリテーション栄養(以下:リハ栄養)の必要性を検討した。【方法】当社の通所介護施設利用者53名(男性:28名,女性:25名)を対象とした。栄養状態をMini Nutritional Assessment-Short Form(以下:MNA-SF)にて,運動機能をShort Physical Performance Battery(以下:SPPB)にて評価した。栄養状態はMNA-SFの点数により低栄養(0~7点),At risk(8~11点),良好(12~14点)の3群に分け,それぞれの群の,SPPBの点数を比較した。また,SPPB各項目(バランス,歩行,立ち上がり)の栄養状態別の点数も合わせて比較した。【結果】対象者53名の内MNA-SFによる分類では,低栄養10名,At risk11名,良好32名となった。SPPBの平均点数は,低栄養群5.2±3.0,At risk群5.5±3.1,良好群8.3±2.6であり,低栄養群と良好群,At risk群と良好群で有意な差がみられた(p≦0.01)。また,SPPBの各項目では,バランスの項目では低栄養群2.0±2.4と良好群3.5±0.8で,歩行の項目ではAt risk群1.5±2.7と良好群3.2±1.7で,有意な差がみられた(p≦0.01)。立ち上がりの項目では各群間に有意な差は見られなかった。【考察】通所介護施設利用者の内,低栄養状態にある者が18.9%,At riskの状態の者が20.8%と合わせて全体の39.6%もの割合を占めており,それだけ,要介護度が重度化するリスクのある者が潜在的にいることが分かった。また,SPPBの点数が,栄養状態良好群でも8.3±2.6(中間機能)であったのは,通所介護施設利用者は,脳血管疾患による運動麻痺,運動器疾患による疼痛や筋力低下など,運動機能を低下させる症状を有しているため,SPPBの点数が低かったと考えられる。SPPBの各項目の点数と栄養状態とでは差がある群にバラつきが見られたが,SPPB全体の点数と栄養状態では,栄養状態が悪化する程SPPBの点数が低下することが示唆された。これは,疾患による一次性の運動機能の低下に加え,低栄養によってサルコペニアを進行させ,運動機能の低下を助長していることが示唆される。ADLやIADLの改善を目的に通所介護施設を利用している低栄養状態やAt risk状態の高齢者に,高い活動量のサービスを提供することで,運動機能や生理機能などが低下し,かえってADLやIADLのレベルを低下させ,要介護度の重度化を招くことが懸念される。このことから,介護予防の観点からもリハ栄養の実施は必須であること考えられる。そのため,通所介護施設利用者の栄養評価を出来る限り行い,栄養状態を把握した上で,サービス利用時の活動量や内容を検討していく必要があると考えられる。また,可能であれば管理栄養士や栄養士,看護師などと協力し,栄養指導なども並行してサービス提供していくことが望まれる。【理学療法学研究としての意義】通所介護施設利用者への調査を通じて,主に要介護(要支援)認定を受けている地域在住高齢者に,リハ栄養を実施していくことの必要性,また,同時には理学療法士も栄養についての最低限度の知識を有しておく必要性を提示できたのではないかと考える。また,具体的なリハ栄養の取り組みを検討・実施していき,その有用性の検証などが今後の課題であると考える。
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身体機能および転倒リスクとの関連
寺山 圭一郎, 新野 直明, 清水 一寛, 小川 明宏, 秋葉 崇, 根本 亜友美, 土谷 あかり, 阿左見 祐二, 中川 晃一
セッションID: O-0045
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】下腿周囲径は簡便な指標で,これまで,栄養状態や死亡率のほか,転倒と関連があるとされているsarcopeniaやfrailtyとの関連も報告されている。一方で,皮下脂肪の影響を受けるなど,個体差があることが問題点として指摘されている。本研究は,下腿周囲径の最大と最小の比をとりCalf Ankle Index(以下CAI)とし,個体差に左右されない指標として,転倒リスクと関連するかを明らかにすることを目的とした。【方法】2012年~2014年の3年の間に千葉県A市B地域およびC地域の介護予防教室に自らの意志で参加した地域在住高齢者を対象とした。対象数は2012年が40例,2013年が47例,2014年が45例で合計132例となっていた。いずれも初回参加時に体力測定および転倒リスクにかかわる調査を実施した。体力測定の項目は,身長,体重,下腿周囲径(最大と最小)の測定のほか,厚生労働省作成の介護予防マニュアルの運動器機能向上マニュアルを参考に,握力,膝伸展筋力,開眼片脚立ち時間,Timed up and go test(以下TUG)および5m歩行とした。また,転倒リスクに関しては,やはりマニュアルを参考に,転倒リスク評価票および転倒不安感尺度について調査することとした。5m歩行は通常速度と最大速度の2回実施した。下腿周囲径,握力,膝伸展筋力,開眼片脚立ち時間については,いずれも左右の平均値を算出した。解析は,身長と体重からBody mass index(以下BMI)を算出し,下腿周囲径は最大と最小の比をとりCAIとした。また,膝伸展筋力は体重との比も算出した。そのうえで,各項目の男女差をMann-WhitneyのU検定にて比較した。また,全症例におけるCAIおよび最大周囲径と各項目の関係をPearsonの積率相関係数を用いて解析した。【結果】132例のうち,男性は15例で,女性が117例となっていた。男性と女性の比較で有意差が認められた項目は下腿最小周囲径と握力で,下腿最小周囲径は男性が21.31±1.65(21.25)cm,女性が20.32±1.47(20.25)cm,握力は男性が29.63±4.80(23.67)kg,女性が20.50±4.07(21.00)kgとなっていた。最大周囲径およびCAIについては男女での有意差は認められなかった。CAIと有意な相関が認められた項目は,BMI(r=0.222),開眼片脚立ち時間(r=0.183),5m最大歩行(r=-0.184)および転倒リスク評価票(r=-0.290)となっていた。また,最大周囲径と有意な相関が認められた項目はBMI(r=0.760),握力(r=0.417)および膝伸展筋力(r=0.247)となっていた。【考察】下腿最小周囲径において男女差が認められたことから,男女での骨格の違い,つまり個体差が考えられた。しかし,CAI,最大周囲径ともにBMIと有意な相関が認められたことから,先行研究における指摘のとおり下腿周囲径は皮下脂肪の影響を受けることが示唆された。それでも,最大周囲径と比較してCAIの相関係数がより小さくなっていたことから,最大周囲径と最小周囲径の比をとりCAIとすることで,BMIの影響がより小さくなっていたものと考えられた。その他,最大周囲径は握力および膝伸展筋力と有意な相関が認められたことから,筋力を反映しているものと考えられた。一方で,CAIは弱いながらも開眼片足立ち時間と5m最大歩行および転倒リスク評価票と有意な相関が認められた。このことから,バランス能力および歩行能力と関連があり,これが転倒リスクとして反映されたものと考える。本研究の限界として,男性の症例数の少なさが挙げられる。男性と女性では骨格が異なるほか,骨格筋の質も異なるとされている。今後は,男性の症例数を増やし,下腿周囲径をCAIとすることで性差の影響がなくなるかについて検討すること,また,実際の転倒との関連について,長期縦断的に調査を進めていくことが必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】下腿周囲径をCAIとしたことで,個体差の影響を少なくしたうえで,弱いながらも,転倒リスクとの関連が明らかとなった。これにより,簡便な評価方法であるCAIが転倒予防の必要な症例を抽出するためのスクリーニングとして利用できる可能性が示唆された。
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指導者との性差関係に着目して
藤平 保茂, 古井 透, 岡 健司, 小枩 武陛, 酒井 桂太
セッションID: O-0046
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】大学生を対象とした豊田(2012)の研究では,「自分に対して要求される援助的指導や友好的指導に対し,相手の性に対する好意帰属には性差がある」としている。ところで,臨床実習(以下,実習)における学生への効果的な教育には,Active learning(能動的学習)習慣を引き出すことが推奨されている。しかし,実際の実習場面では,常に臨床実習指導者(以下,SV)から援助的指導や友好的指導を受ける場面ばかりではない。むしろ叱責されることも少なくないだろう。指導の受け止め方次第では不安感が学生の自主的な取り組みを阻害し,実習をさらに辛いものにすることもあるだろう。われわれ教員の願いは,学生が「実習は辛いかもしれないが実りのある楽しいもの」と感じてくれていることだが,SVとの性差が学生の心理状況に影響があるとすれば,実習指導時に配慮する必要があるだろう。そこで,本研究では,学生とSVとの性差関係における同性,異性の観点から,実習に対する学生の心理状況を調査・分析し,その特徴を比較することを目的とする。【方法】対象は,平成24~26年度に8週間実習を終えた大阪河﨑リハビリテーション大学(以下,本学)理学療法学専攻の204名の学生(男子144名,女子60名)であった。調査には,筆者らの臨床教育経験から予想される項目を選び本研究用に作成した調査票を用いた。属性は,学生自身の性,SVの性を問うた。質問は7項目(不安感,緊張感,辛さ,楽しさ,やり甲斐,SVへの苦手意識,我慢(とにかく我慢しなければと言いきかせた))で,「非常によくあてはまる:7」から「全くあてはまらない:1」までの7件法で評定させた。調査は,実習終了後の第一登校日に実施した。分析は,学生の性(男,女)とSVの性(男,女)の組合せにて4群に分類し,Spearmanの順位相関検定にて,質問項目間の相関関係をみた。なお,有意水準を5%未満とした。【結果】4群間の比較では,同性同士の2群に共通する相関関係では,不安感と楽しさ・やり甲斐間,辛さと楽しさ・やり甲斐間,楽しさと我慢間の関係にそれぞれ有意な負の相関(r=-0.30~-0.40)が認められた。しかし,これらの関係は異性間の2群では一切認められなかった。一方,同性間で有意な相関関係が認められたにも関わらず,女子学生と男性SV群では,不安感・辛さと苦手意識の関係,やり甲斐・苦手意識と我慢間での関係が認められず,男子学生と女性SV群において,やり甲斐と苦手意識間での有意な関係が認められなかった。【考察】学生の心理状況には,学生の性とSVの性の組合せによって相違が生じることが示唆された。つまり,男性同士,女性同士の組合せでは,不安感・辛さが強いと楽しさ・やり甲斐が低く,楽しさが高いと我慢する気持ちが低くなった。一方,男性SVと女子学生の組合せでは,不安感が強いと苦手意識が強いこと,辛さが強いと苦手意識が強いこと,やり甲斐が高いととにかく我慢する気持ちが低いこと,苦手意識が強いと我慢する気持ちが強いことが,それぞれ認められなかった。また,女性SVと男子学生の組合せでは,やり甲斐が高いと苦手意識が低いことはなかった。豊田(2012)は,「男子では,自分が援助的行動を要求された場合,同性よりも異性に対してより快な感情が生じ,女子では,自分に対して友好的行動を要求してきた場合,異性より同性に対してより快な感情が喚起される」と報告した。すなわち,例えば,担当学生が失敗を繰り返したならば,性を問わずSVはその学生への感情評定を下げるが,男性SVの場合は男子学生より女子学生に対しより援助的となり,女性SVの場合は男子学生より女子学生に対し非好意な感情を強めたと考えられる。そして,このようなSVから感じ取れる学生の思いが,異性よりも同性のSVにより強く持たれ,不安感や辛さをより強め,楽しくない実習,とにかく我慢しなければいけない実習と感じたのではないだろうか。しかし,男性SVに対し女子学生が苦手意識を高めながらも我慢しなくてはならないと感じなかったのは,男性SVが女子学生を快く指導できることが彼女らの自尊感情を高めることに繋がったからではないかと考えられる。一方,女性SVに対し男子学生がやり甲斐が高まるにも関わらず苦手意識が下がらなかったのは,男子学生の女性SVに対する非友好的感情がSVの快な感情を下げることに繋がったからかも知れない。【理学療法学研究としての意義】学生とSVとの性差に視点をおいた今回の研究は,学生の能動的な学習習慣を引き出す手がかりになり得る研究と考える。
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―学生へのアンケート調査からの考察―
大杉 紘徳, 横山 茂樹, 甲斐 義浩, 窓場 勝之, 村田 伸
セッションID: O-0047
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
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【はじめに,目的】現在,わが国のみならず世界中で実習施設の確保が教育運営上の課題となっており,新たな臨床実習形態の検討がなされている。その一つとして,一施設に対して二人の学生を配置する実習形態(複数型)がある。従来では,一施設に対して一名の臨床実習学生を配置し,一名の臨床実習指導者の指導を受ける(単独型)が,複数型では,一施設に対して二名の臨床実習学生を配置し,一施設内で二名がそれぞれに臨床実習指導者の指導を受ける。我々は先行研究において,単独型と複数型で,実習前後の気分・感情尺度の変化を比較した。その結果,単独型と比べて,複数型では実習中の精神的ストレスが高いことが明らかとなったが,その要因の検討までには至らなかった。そこで本研究では,単独型と複数型の臨床実習形態の違いが,臨床実習前後の学生の気分・感情状態に影響を与えた要因について,実習後に行った学生へのアンケート結果から検討した。【方法】対象は,検査・測定実習(3月上旬実施,実習期間10日間)を実施した理学療法学科2年次生45名(平均年齢19.3±0.5歳,男性23名,女性22名)とした。実習施設配置は,臨床実習施設として登録されている施設に対して複数型臨床実習の実施を依頼し,承諾の得られた11施設(22名)を複数型実施施設とし,その他23施設(23名)を単独型実施施設とした。測定項目は,気分・感情状態の評価指標であるProfile of Mood States短縮版(POMS-SF)と,筆者らが作成した臨床実習についてのアンケートとした。POMS-SFの回答から緊張,抑うつ,怒り,活気,疲労,混乱の下位尺度得点を算出し,さらに下位尺度得点を用いて全体的気分を算出した。POMS-SFの測定は,臨床実習開始1週間前(pre)と,終了翌週の初登校日(post)に,「過去1週間の気分」について回答させた。臨床実習についてのアンケートは,先行研究を参考に作成し,15の質問項目に対して,5件法にて回答させた。アンケート得点は負の感情ほど低得点となるように設定した。アンケートはPOMS-SFのpost測定と同日に行った。統計学的解析は全て有意水準を5%とした。POMS-SFの下位尺度得点ごとに,preとpostおよび単独型と複数型について,二元配置分散分析とLSD法による事後検定で比較した。また,アンケートの各質問項目およびアンケート合計点について,単独型と複数型でMann-WhitneyのU検定を行った。【結果】二元配置分散分析の結果,緊張(F(1,42)=31.0,
p<0.01),疲労(F(1,42)=4.4,
p<0.05),混乱(F(1,42)=6.9,
p<0.05),全体的気分(F(1,42)=6.2,
p<0.05)に交互作用を認め,事後検定の結果,全てにおいて,複数型のpostの値が単独型のpostの値よりも有意に高値を示した(全て
p<0.05)。アンケート結果の比較では,「施設スタッフとの関係」およびアンケートの合計点で,複数群が単独群よりも有意に低値を示した(ともに
p<0.05)。【考察】一施設に一名を配置する単独型と,一施設に二名を配置する複数型で,実習前と実習中の気分・感情状態の変化を比較するとともに,実習に関するアンケートの差異について検討した。結果,複数型の方が単独型よりも実習によって緊張,疲労,混乱の気分・感情が高まるとともに,施設スタッフとの関係が良くなかったと回答する学生が多かった。我々は,臨床実習を複数型で行う利点として同級生とともに実習を行うことによる安心感や精神的ストレスの軽減を見込んでいたが,本研究の結果はこの仮説を支持しなかった。単独型の実習では,同級生がいないため,情報収集や相談の相手が必然的に実習施設のスタッフとなる。一方,複数型の実習では,同級生とともに過ごす時間が長くなることにより,実習施設のスタッフとのコミュニケーションの時間が減ったと推察される。そのため,単独型と複数型では実習施設のスタッフとのコミュニケーションに差があったことにより,信頼関係の構築に差が示されたと考えられる。臨床実習におけるストレスの原因として対人関係の問題が最も影響を与えると報告されていることから,施設スタッフと良好な関係を築けなかった複数型の実習では,実習中の学生の緊張や疲労といった負の感情が高まったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】臨床実習は理学療法士養成課程における重要なカリキュラムである。臨床実習中に受ける学生のストレスは非常に強く,その対応についてはこれまでに数多く検討されてきた。本研究結果は,今後の理学療法養成課程における臨床実習形態について検証した有意義なものと考える。
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指導者側の要因に着目して
松崎 秀隆, 原口 健三, 吉村 美香, 満留 昭久
セッションID: O-0048
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【はじめに,目的】臨床実習において,臨床実習指導者supervisor(以下,SV)は認知領域(知識)および精神運動領域(技術),情意領域(態度)の指導を行う。特に専門職としての適性および実習学生としての態度などの情意領域(態度)に関する教育,指導を重視するSVも少なくない。しかし,その教育方法は様々であり,SV自身の教育に関する方法や訓練が十分でない場合も多い。著者らは,臨床実習における学生が感じる不当待遇に関する調査から,約60%前後の学生が実習中に不当待遇を経験していることを明らかにしてきた。そこで今回,臨床実習における教育方法の重要性を把握する目的で,教育,指導方法や,SV自身が過去に経験した不当待遇について調査を実施した。【方法】対象は,福岡県理学療法士会に所属し地区勉強会に参加していた理学療法士Physical Therapist(以下,PT)で,本調査研究に同意の得られた20名(平均年齢30.4±7.0歳,平均臨床経験6.9±5.9年)とした。勉強会終了後に,臨床実習,教育方法および教育(学習)用語を中心に作成した自記式の質問紙調査を実施した。質問項目は36項目からなり,「学生指導への興味関心」,「教育方法に関すること」,「教育に関する講習会への参加経験」「実習指導における不当待遇経験」などである。回答方法は,「ある」,「なし」どちらかを選択し回答,また「認知的徒弟制」,「正統的周辺参加」など教育(学習)用語については「説明を出来る」,「説明できない」などを選択する回答方法用いた。対象者に対しては,質問紙を配布し,回答終了後にその場で一斉に回収し,各項目の割合を算出し検討した。なお,質問項目の内容と回答方法については,先行研究を参考に,著者を含めた複数名で検討を重ね,妥当であると判断したものを採用した。【結果】実習において学生指導・教育に興味があると回答したものは80%であった。また,自身の勉強会への参加経験は,理学療法基礎系,神経系,骨関節系の分野を中心に95%と積極的な参加が認められた。一方で,教育系の学会や,講習会に参加した経験のあるPTはいなかった。また,勤務施設内において,SVになるための研修会(勉強会)を開催している施設は,30%であった。教育(学習)用語の理解について,説明できると回答が得られた語句は,クリニカルクラークシップ75%,OSCE(objective structured clinical examination)25%,OJT(on the job training)20%であった。最後に,自身の実習中の不当待遇の経験について,「経験した」または「感じた」と回答したPTが55%であった。項目別には「言葉による不当待遇」が45%と最も高く,次に「身体へおよぶ不当待遇」,「学業に関する不当待遇」となった。【考察】学生指導や教育に興味をもっている割合が80%と高い値を認めたことは,PTが理学療法教育の重要性を十分に認識していると判断できる。実際にSVを経験したとするPTの70%が,自分にプラスになったと回答しており,苦慮したとする65%を上回る結果を認めた。プラスとされた内訳は,基本的知識の再確認や教育,指導方法であった。また,研修会などへの参加率も95%であり,多くのPTが生涯学習の重要性について十分に理解し,努力していることも分かった。一方,教育(学習)用語については,ほとんどの語句で説明できないことを認め,教育,指導方法についてプラスになったとする回答との矛盾を認めた。これは,「教育」と「指導」という語句の捉え方にも起因していると考える。過去の不当待遇の経験が55%であることを踏まえれば,現在の学生の値との類似性が考えられる。つまり,自らが経験した実習教育方法をそのまま実施する,世代間伝達が臨床実習指導に影響を及ぼしている可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】臨床実習における教育的問題点については,あらゆる要因から検討する必要性がある。その中には,多様化するカリキュラムの不透明感など学校側の要因,モチベーションやレジリエンスに対する学生側の要因,そして本調査で検討した,指導者になるための養成研修などを含めたSV側の要因が考えられる。欧米諸国ではSVに対する批判的評価報告が散見される。一方,本邦では臨床実習教育に関するSV側の要因に着目した調査報告は極めて少なく,実態調査としての意義は大きいと考えている。
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―理学療法学科学生を対象として―
加藤 太郎
セッションID: O-0049
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【目的】突然の心停止(sudden cardiac arrest;以下SCA)には,速やかな心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation;以下CPR)の実施が重要であり,SCA症例に多い心室細動に対してCPRは生存率を上昇させる。生存退院に関わる因子として,早期通報,早期CPR,早期除細動の実施が,患者の年齢や二次救命処置よりも有意に良い影響を与えるとされる。近年,身体状態が変化しやすい発症直後から理学療法士が介入することが増えている。理学療法施行中に身体状態の悪化や,SCAのリスクは増大することが予想される。また,2025年問題を始めとする高齢社会問題により今後,訪問リハビリテーションのニーズは急速に増えていく。利用者と1対1の環境での急変に対して理学療法士は適切に行動できるのであろうか。理学療法士に対する蘇生教育の拡充は重要である。本学では,平成26年度入学生よりカリキュラムに一次救命処置(Basic Life Support;以下BLS)を組み込み,理学療法学科の学生(以下学生)への蘇生教育を授業として導入した(90分授業×8コマ)。この内,実技練習を90分×4コマ分とし,十分な実技練習時間を確保している。また,内容は成人に対するBLSを中心に,学習効果が高いとされるPractice while Watching(PWW)方式で実施している。授業として蘇生教育を実施している理学療法士養成校は少ないであろう。本研究は,学生に対する蘇生教育の効果を実際の行動に関する心理的側面から明らかにすることを目的とする。【方法】対象は,本学理学療法学科1年生86名であった。対象者にBLS授業開始前,修了後に質問紙調査を実施した。調査期間は平成26年9月から同年10月とした。調査項目は,(1)BLSに関する関心(以下関心),(2)今,目の前で人が倒れたら近づいて声をかけられるか(以下初動)と,(3)今,目の前で人が倒れたら適切な対応ができるか(以下実施)の3項目とした。各項目は5段階とし,関心は,5ある,4ややある,3どちらともいえない,2あまりない,1ないとした。初動と実施は,5できる,4ややできる,3どちらともいえない,2あまりできない,1できないとした。授業履修前後における各項目の回答の変化と,各項目内の回答の割合について比較検討した。統計処理は,各項目の回答の変化(群間比較)についてWilcoxonの符号付順位検定を用い,また各項目内の回答の割合(群内比較)についてχ
2適合度検定を用いて分析検討した。統計的有意水準は1%未満とした。なお,全ての統計解析はSPSS ver.21.0J for Windowsを使用した。【結果】アンケート回収率は99%(85名)であった。授業開始前と修了後の群間比較において,関心は,4.1±0.9から4.9±0.4に向上した。初動は,3.6±0.9から4.3±0.8に向上した。実施は,2.4±1.0から4.2±0.8に向上した。これら各項目の回答の変化は,全て有意に差があった(p<0.01)。また,授業開始前と修了後の群内比較において,関心は「ある」が増加し,初動は「できる」,「ややできる」が増加し,実施は「できる」,「ややできる」が増加した。これら各項目内の回答の割合は,全て有意に差があった(p<0.01)。【考察】本研究により,学生に対する実技練習を中心とした蘇生教育の効果が,実際の行動に関する心理的側面から明らかとなった。特に,生存率に高く寄与する早期通報(初動),早期CPR(実施)が大きく向上した。これらは,理学療法士を含むコメディカルが行動できる重要な役割である。学生に対しても蘇生教育が果たす役割,効果は大きいと考える。平成24年度より,日本理学療法士協会の新人教育プログラムにBLS(B-1一次救命処置と基本処置)が加わり,理学療法士における蘇生教育は徐々に広がりをみせている。しかし,質の高いCPRを正しく実施できるためには,ガイドラインや書物を読むだけでは不十分であり,実技練習を中心としたCPR教育とトレーニングが重要とされる。本研究結果は,実技練習を多く取り入れたことが要因として大きいと考えられ,これは資格を有する理学療法士への蘇生教育方法の再考にもつながると考える。【理学療法学研究としての意義】本研究により,実技練習を中心とした蘇生教育が実際の行動に関する心理的側面へ効果をもたらすことが明らかとなり,今後の理学療法士への蘇生教育方法の再考への一助になると考える。
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専門学校と4年制大学における調査
太田 恵, 雄賀多 聡, 三和 真人, 岡村 太郎, 高橋 伸佳, 松尾 真輔
セッションID: O-0050
発行日: 2015年
公開日: 2015/04/30
会議録・要旨集
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【目的】近年18歳人口の減少により,大学全入時代を迎えつつあり,それによって進学の目的や人生の目標が不明瞭な学生が増加していることがしばしば指摘されている。その傾向は,養成校の乱立と相まって医療専門職養成校にまで及んでおり,理学療法士あるいは作業療法士になるためのモチベーションや卒業後のビジョンがない学生が増えているように感じる。またそれが臨床実習を契機に顕在化し,問題となる事例が多く見受けられる。そこで,理学療法士・作業療法士養成校が実現すべき教育の方向性を考えるために,1年生を対象にアンケート調査を実施し,理学療法士・作業療法士養成校卒業後の進路希望の傾向について明確にすることを目的とした。【対象】アンケート対象者は理学療法士および作業療法士養成校の1年生とした。昼間部の学生のみに限定した。【方法】アンケートは無記名の自記式質問票を用いて回答させた。基礎情報についての項目は,年齢・性別・社会人経験の有無・最終学歴(高卒・専門学校または短期大学卒・大学中退・大卒・大学院中退・院卒)とした。進路希望については,養成校卒業後の最初の進路として,まず就職か進学を選択させ,次に就職先または進学先について選択式(複数回答可)で回答させた。【結果】専門学校1年生196名(男性135名・女性61名,平均年齢20.7±4.6歳),4年制大学1年生420名(男性235名・女性185名,平均年齢18.3±0.7歳)から協力を得た。専門学校では,社会人経験者27.0%,未経験者73.0%で,最終学歴は高卒74.0%,専門学校または短期大学卒6.1%,大学中退3.6%,大卒15.8%,大学院中退0.5%であった。養成校卒業後の最初の進路として,就職希望99.0%,その他・無回答1.0%だった。就職希望者のうち希望する就職先(複数回答あり)は,医療施設96.9%,高齢者・障害者用施設20.6%,行政機関6.2%,企業5.2%,教育機関4.1%,その他・無回答7.2%であった。4年制大学では,社会人未経験者99.5%,その他・無回答0.5%,最終学歴は高卒97.9%,大学中退1.0%,大卒0.2%,その他・無回答1.0%であった。養成校卒業後の最初の進路として,就職希望97.1%,進学希望1.9%,その他・無回答1.0%だった。就職希望者のうち希望する就職先(複数回答あり)は,医療施設95.8%,高齢者・障害者用施設21.8%,行政機関2.0%,企業5.9%,教育機関6.4%,その他・無回答3.4%であった。【考察】平成26年度に文部科学省が発表した,大学新卒者の進路についての報告では,就職73.9%,進学12.6%,その他13.4%とある。日本全体の動向と比較すると,理学療法士・作業療法士養成校では卒後の進学希望者の割合は低かった。しかし,4年制大学では,すでに1年次の時点で卒後に進学を希望する学生が含まれていたことから,今後4年制大学での養成が中心になるに従ってその傾向は強まるかもしれない。また4年制大学においては,卒後に臨床への就職を希望していない者(進学希望含む)が4.5%いたことも特徴的であった。さらに,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則では「実習時間の三分の二以上を病院又は診療所において行うこと」と定められており,臨床実習は病院や診療所・クリニックといった医療施設が中心となっているが,医療施設以外への就職を希望している学生も多いことが分かった。【理学療法学研究としての意義】今後も社会に必要とされる医療従事者を輩出するために,理学療法士・作業療法士養成校が担う役割を現時点で再考することは重要であると考える。そのための基礎資料として,本研究で得られた知見は価値あるものだと期待する。
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