口蓋裂一次手術の際,口蓋の鼻腔側に残した露出創面が,術後,鼻咽腔の閉鎖機能および顎の発育にどの程度の影響をおよぼすかを知る目的で,2歳前後に,1)鼻腔底の粘膜骨膜を剥離して寄せ,そのまま鼻腔側に露出創面を残さないで縫合された場合(Wardill法):16例(片側性口唇口蓋裂:12例,口蓋裂:4例),2)硬口蓋の後縁にそって鼻腔粘膜を横切してpush-backされ,軟口蓋の鼻腔側に露出創面が残された場合(Secti6nofNasalMucosa法):21例(片側性口唇口蓋裂:16例,口蓋裂=5例),3)口蓋骨の一部を削除し,直視下に鼻腔底の粘膜骨膜弁を作製してpush-backされ,硬口蓋の鼻腔側に露出創面が残された場合(Manchester法):18例(片側性口唇口蓋裂:13例,口蓋裂:5例)の計55例(片側性口唇口蓋裂:41例,口蓋裂:14例)について,6歳時における鼻咽腔の閉鎖機能と上顎の発育程度を鼻腔漏出度と側方頭部X線規格写真および上顎歯列石膏模型を用いて比較し,次の結論を得た.
なお,対照として,6歳の健康児,男10例,女10例,計20例を用いた.
1,鼻腔漏出度はManchester法によった場合,18例中17例(94.4%)が1%以下で,最も良い成績であった.
2,側方頭部X線規格写真の分析による軟口蓋の後方移動率はManchester法が最も良く,Wardill法が最も悪かった.
3,A'-Ptm'の長さは,どの術式によった場合も対照と有意の差は認めなかった.
4,∠SNAおよび上顎歯列弓の長径,幅径は全ての術式において対照より小さな値を示した.しかし,Manchester法によるものが特に著明に悪いとは言えなかった.
したがって,Manchester法は口蓋裂0次手術の術式として有効な方法であると考えられた.
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