日本口蓋裂学会雑誌
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10 巻, 1 号
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  • 6歳時における術式別評価
    藤田 靖, 山田 和祐, 関川 和男, 林 進武, 高橋 長洋, 幸地 省子, 手島 貞一
    1985 年 10 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂一次手術の際,口蓋の鼻腔側に残した露出創面が,術後,鼻咽腔の閉鎖機能および顎の発育にどの程度の影響をおよぼすかを知る目的で,2歳前後に,1)鼻腔底の粘膜骨膜を剥離して寄せ,そのまま鼻腔側に露出創面を残さないで縫合された場合(Wardill法):16例(片側性口唇口蓋裂:12例,口蓋裂:4例),2)硬口蓋の後縁にそって鼻腔粘膜を横切してpush-backされ,軟口蓋の鼻腔側に露出創面が残された場合(Secti6nofNasalMucosa法):21例(片側性口唇口蓋裂:16例,口蓋裂=5例),3)口蓋骨の一部を削除し,直視下に鼻腔底の粘膜骨膜弁を作製してpush-backされ,硬口蓋の鼻腔側に露出創面が残された場合(Manchester法):18例(片側性口唇口蓋裂:13例,口蓋裂:5例)の計55例(片側性口唇口蓋裂:41例,口蓋裂:14例)について,6歳時における鼻咽腔の閉鎖機能と上顎の発育程度を鼻腔漏出度と側方頭部X線規格写真および上顎歯列石膏模型を用いて比較し,次の結論を得た.
    なお,対照として,6歳の健康児,男10例,女10例,計20例を用いた.
    1,鼻腔漏出度はManchester法によった場合,18例中17例(94.4%)が1%以下で,最も良い成績であった.
    2,側方頭部X線規格写真の分析による軟口蓋の後方移動率はManchester法が最も良く,Wardill法が最も悪かった.
    3,A'-Ptm'の長さは,どの術式によった場合も対照と有意の差は認めなかった.
    4,∠SNAおよび上顎歯列弓の長径,幅径は全ての術式において対照より小さな値を示した.しかし,Manchester法によるものが特に著明に悪いとは言えなかった.
    したがって,Manchester法は口蓋裂0次手術の術式として有効な方法であると考えられた.
  • とくに顔面異常と脳異常との関係について
    礒谷 精彦
    1985 年 10 巻 1 号 p. 9-31
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    顔面異常と脳異常とくにholoprosencephalyとの関係を明らかにしようと考え,妊娠7日より14日にわたる時期のラットにvincristine0.2mg/kg の単一腹腔内注射を行い,妊娠21日目に胎仔を摘出して観察し,次の結果を得た.
    妊娠9日6時間より10日0時間に至る間の投与群ではすべて死亡胚・胎仔であった.妊娠8日6時間より9日0時間の間の投与群における胎仔死亡率は28.2%で,これらの群における生存胎仔の61.4%に各種の先天異常が認められた.しかし,上記以外の時期における胎仔死亡率はきわめて低く,生存胎仔には異常が認められなかった.
    本研究で認められた外形異常の主体は,無頭症,外脳症ないし脳ヘルニア,小頭症または三角頭などの脳異常と,下顎低形成,鼻上顎低形成,上唇裂または上唇顎裂,耳低位,無眼症,小眼症などの顔面異常であり,他部異常の発生はきわめて低かった.これらのうち最も多く認められた異常は脳異常で,眼異常がこれに次ぎ,以下,下顎低形成,上唇裂,耳低位,鼻上顎低形成の順であった.
    上唇裂では片側裂が最も多く,正中唇裂がこれに次ぎ,両側裂が最も少なかった.上唇裂の合併異常としては眼異常と外脳症ないし脳ヘルニアが多く,小頭症または三角頭がこれに次いでいた.合併異常の発生率は片側裂が最も高く,正中裂がこれに次ぎ,また不完全裂より完全裂の方が高かった.ただし正中完全唇裂の合併異常発生率は最も高かった.下顎低形成を示す胎仔の68.2%に耳低位が認められ,また下顎低形成を示す胎f子の40.0%に耳低位と小頭症または三角頭が認められた.下顎低形成の合併異常としては脳異常が最も多く,次いで眼異常であった.holoprosencephalyには終脳の左右分化が全くみられないものと、わずかに分化を示すものとがあり,また嗅脳が左右分化を示さないものや発育不全を示すものがあった.このようなholoprosencephalyは小頭症または三角頭,耳頭症などに多く認められた.形成不全を示す眼組織は正常胎仔に比べて著しく接近していた.また下顎無形成ないし低形成と耳低位を示す耳頭症では一般に嗅脳の発育が悪かった.
  • 金森 清
    1985 年 10 巻 1 号 p. 32-51
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂児の外鼻の変形の原因は,鼻翼軟骨の変形だけでなく,顎の変形が関与していると考えられるが不明な点が多い.そこで外鼻の形態と顎の形態との関連の追求を,50名の片側性口唇蓋裂患者を対象として試みた.
    1,Premaxillaの回転は,鄭変形に広範に関与している.特に鼻尖・鼻柱基部の健側偏位の最大の原因と考えられ,その影響は健側の鼻翼部にまで及んでいた.
    2,顎裂幅は,歯槽部における骨欠損,smaller segmentの発育不全,premaxillaの回転の総和であるが,鼻変形と大きく関与していた.しかし,後方の硬口蓋・軟口蓋の裂幅は,鼻変形と関係がなかった.
    3,両側のsegement最前点の前後差は,左右の鼻翼最外側点・鼻翼基部の前後差と深く関わりを持ち,裂側鼻翼部イの陥凹は,smaller segmentの発育不全の影響やpremaxillaの回転による影響が考えられた.
    4,鼻変形を視覚的に最も強く訴える左右の鼻翼幅の差、鼻孔幅の差は,preizzaxillaの同転度,顎裂幅と大きく関与していた.
  • 古澤 清文, 古郷 幹彦, 西尾 順太郎, 浜村 康司, 伊吹 薫, 井上 一男, 松矢 篤三, 山岡 稔, 宮崎 正
    1985 年 10 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    反射動作時の軟口蓋の挙上運動の様相を解明する目的で,舌咽神経咽頭枝求心性神経への電気刺激によって,口蓋帆挙筋の反射性活動を誘発し,同筋の反射性活動時の等尺性収縮を分析するとともに,その発生張力と筋電図活動の比較も併せて行なった.
    1)単一電気刺激時の口蓋帆挙筋の張力曲線にみられる反射性等尺性収縮のcontraction timeは45±2.6msec,half relaxation timeは35±1.6msecであった.
    2)刺激時点から発生張力波形および反射性誘発筋放電の発現までの潜時は、それぞれ19±1,8msec,12±1.6msecであった.
    3)刺激時点から最大張力が発生するまでの時間と筋電図上の最大振幅が発生するまでの時間の間に50±2.8msecの時差が存在した.
    4)刺激頻度を1-300Hzまで増加させると10Hz以上の刺激頻度では,加重様の張力の増加が認められ,その際の筋電図波形において,刺激時間の経過とともに反射性誘発筋放電の振幅が漸次減弱するのが観察された.さらに100Hz以上の刺激頻度では,発生張力および反射性誘発筋放電の振幅の著明な減弱が認められた.なお刺激頻度を増加させても嚥下動作は全く惹起されなかった.
  • 広瀬 寿秀, 幸地 省子, 真柳 秀昭, 神山 紀久男
    1985 年 10 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂児の身体発育状態及びその成長パターンを経年的資料を用いて調べるという目的で,東北大学歯学部附属病院口唇口顎裂診療班(Cleft Palate Team)で管理している患児のうち,6年以上観察し得た男子45名,女子39名,計84名のほぼ半年ごとの身長計測値及び1乃至2年間隔でとられた手指骨X線写真による骨年齢,初潮発現年齢について調査を行ない,次の結論を得た.
    1,昭和55年度乳幼児身体発育値,学校保健統計値と比較すると,患児では女子でやや小さい傾向を示すものの,男女ともその身長は全国平均値に近い値を示し,有意差は認められなかった.また年間成長量,成長パターンとも健常児との間に差は認められなかった.
    2,骨年齢と歴齢との差はほとんどなく,骨成熟の遅れはみられなかった.
    3,女子の初潮発現年齢の平均は12歳10ヵ月で,健常児との間に差は認められなかった.
    4,以上から調査した唇顎口蓋裂児では,その身長,骨成熟,初潮発現年齢は健常児と変わらず,成長発育の遅れはなかった.
  • 池田 至優, 小松 世潮, 伊藤 静代, 玄番 涼一, 砂川 元, 宮田 研, 稲垣 宏之, 高橋 孝二, 園田 充, 伊藤 恭子, 平川 ...
    1985 年 10 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    van der Woude syndromeの1例と家族的にみられたconical elevationの3例について報告し、さらに当科を受診した口蓋裂単独患者40例についてconical elevationの有無を調査した.van der Woude syndromeの症例ではsingl econical elevationと片側性先天性下口唇痩が左側口唇口蓋裂に合併していた.conical elevationが認められた症例の家族歴から常染色体優性遺伝が強く疑われた.当科を受診した口蓋裂単独患者40例中,明確なconical elevation合併例は15例で全体の37.5%を占めていた.
    合併例のうち72.7%に部分無歯症が認められた.検索の結果から,conical elevationは先天性下口唇痩と同様に口蓋裂と緊密な関係が存在すると考えられ,比較的診断の遅れがちな粘膜下口蓋裂などの発見の一助となることが示唆された.
  • 宮田 研, 小松 世潮, 伝庄 信也, 玄番 涼一, 伊藤 静代, 稲垣 宏之, 池田 至優, 高橋 考二, 山本 悦秀, 小浜 源郁
    1985 年 10 巻 1 号 p. 75-85
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和51年4月1日より昭和59年3月31日の間の過去8年間に当科に入院の上,形成手術を行なった唇裂口蓋裂患者729例について臨床統計的観察を行ない,次の結果を得た.
    1 当科において入院し,手術を行なった症例1932例中,形成手術を施行した唇裂口蓋裂患者は,729例(42.1%)であった.
    2 地域分布は,札幌市を中心とした石狩支庁が33.7%を占めていた.
    3 出産時の母親年齢は,最底19才から44才にわたっていたが,25才から29才台が最も多くみられた.
    4 唇裂口蓋裂患者の母親の流死産頻度をみると,自然流産経験者が12.6%,人工流産経験者が9.6%であった.
    5 家系内発現をみると,500家系中33例(6.6%)に認められ,口蓋裂単独に最も多くみられた.
    6 合併奇形は,500例中97例(19.4%)にみられ,舌小帯強直症が最も多く認められた.
    7口唇裂一次形成手術法は,三角弁法またはその変法が主体をなしていた.
    8口蓋裂一次症例の手術法は,昭和55年度以来,従来行なわれていた粘膜骨膜弁後方移動術(いわゆるpushback法)に変えて,骨膜上切離粘膜弁法を採用している.
  • 吉増 秀實, 石井 純一, 横尾 恵美子, 明石 喜久雄, 橋本 賢二, 塩田 重利, 道 健一
    1985 年 10 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 1985/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和41年1月より昭和60年1月までの19年1か月間に,東京医科歯科大学歯学部付属病院第1口腔外科を訪れた唇・顎・口蓋裂を伴う28組の双生児について臨床統計的観察を行った.28組のうち異1生双生児の4組は2卵性と診断し,また,残りの24組の同性双生児のうち15組については血液型,血清型による卵性診断を行い,13組が1卵性,2組が2卵性と診断された.裂の発現様式をみると,唇(顎)裂・唇顎口蓋裂については1卵性では9組中4組,2卵性では6組中1組が同胞発現例であり,口蓋裂については1卵性では4組中3組が同胞発現例であった.出生時体重に関しては,一児発現例の1卵性双生児5組ではいずれも罹患児が非患同胞より少なく,同胞発現例で裂型の異なる5組中4組では裂の重度なものが軽度な同胞より少なかった.一方,昭和16年から現在までの本邦における唇・顎・口蓋裂を伴った双生児の報告症例は77組であるが,これらを文献的に検討したところ,卵性診断の精度の高い症例は33組であった.これらについて分析した結果,唇(顎)裂・唇顎口蓋裂の同胞発現例の比率は1卵性双生児では56.3%,2卵性双生児では10.0%であり,口蓋裂の同胞発現例の比率は1卵性双生児では66 .7%,2卵性双生児では0%であった.また,自験例のうち,11組の同胞発現例において,7組は裂の部位,程度が異なっていた.以トの結果より,唇・顎・口蓋裂の発生に関して,1卵性双生児においては受精卵が2個に分離する以前の環境的要因あるいは遺伝的要因により裂奇形に罹患しやすい素因が生じる可能性が高いものと考えられた.また,遺伝的に同一の1卵性双生児においても,同胞のうち1児にのみ裂が発現したり,同胞発現例でも同胞間の裂の重症度に差がみられることが明らかとなり,この原因として,子宮内でなんらかの環境因子が裂を顕在化させ,裂の重症度を決定する因子として作用する可能性が示唆された.
  • 1985 年 10 巻 1 号 p. 100-
    発行日: 1985年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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