日本口蓋裂学会雑誌
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12 巻, 2 号
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  • 宮崎 正
    1987 年12 巻2 号 p. 75-84
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    わが国における唇顎口蓋裂治療の現況について,54施設を対象としてアンケート方式による調査を行い,さらに,わが国の調査結果を欧米における治療実態と検討し,以下の結果を得た.
    1.術前顎矯生について:欧米ではルチーンに術前顎矯正を行う施設が多いのに対し,わが国ではわずか13%の施設が顎矯正をルチーンに行っているにすぎない.
    2.唇裂手術について:片側性唇裂に対する手術法として,わが国でも欧米でも三角弁法やMillard法を適用する施設が多い.
    3.口蓋裂手術について:わが国ではMucoperiosteal法,とくにPushback法を採用する施設が多い.一方,欧米の場合,手術法は多様であり,Mucoperiosteal法やVelo Plasty法を用いる施設が多く,Mucosal法も20%近くの施設で用いられている.
    4.言語管理について:わが国では大半の施設で口蓋裂術後に積極的な言語管理が行われている.
    5.耳鼻疾患の管理について:欧米では大半の施設で耳鼻疾患に対する管理が行われているのに対し,わが国で耳鼻疾患の管理をルチーンに行う施設はきわめて少ない.
    6.乳歯列期の矯正歯科治療について:わが国でも欧米でも乳歯列期に矯正歯科治療をルチーンに行う施設は少ない.
    7.顎裂部の再建について:欧米では顎裂部の再建(Secondary bone grafting)を混合歯列期にルチーンに行う施設が多い.一方,わが国でSecondary bone graftingをルチーンに行う施設はわずかである.キーワード:唇顎口蓋裂,鼻咽腔閉鎖不全,顎顔面発育,耳鼻疾患,唇顎口蓋裂の手術.
  • 第1報:ラット正中口蓋縫合切除後の組織学的観察
    永井 直人
    1987 年12 巻2 号 p. 85-102
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂における顎発育障害の原因を解明することを目的として,口蓋の側方発育に主要な役割を果たすと考えられている正中口蓋縫合に着目し,ラットを用いた実験的研究を行い,組織学的観察から次の如き所見を得た.
    1.ラットロ蓋の側方発育は主に正中口蓋縫合における正中側への骨添加によって行われていることが明らかとなった.
    2.正中口蓋縫合部における正中側への骨添加量は加齢とともに減少傾向を示した.
    3.正中口蓋縫合上顎骨部の軟骨膜は生後30日で明瞭に認められるが,70日で薄くなる傾向を示し,200日では痕跡をとどめるにすぎなくなっていた.一方口蓋骨部では生後30日において互いに平行に向かい合っていた左右の骨端は,70日で相互嵌入を示すようになり,加齢とともに次第に著明となっていた.こうした変化により,正中口蓋縫合での結合は次第に強化されていくことが示唆された.
    4.粘膜骨膜剥離群では,その修復は早期に完了し,正中口蓋縫合部での骨添加量も無処置群とほとんど同じであることから,口蓋の側方発育はほとんど障害されていないと考えられた.
    5.正中口蓋縫合以外の骨切除群では術後40日で骨の連続性を回復していたが,正中口蓋縫合部での骨添加量は無処置群に比べるとやや少なかった.
    6.正中口蓋縫合切除後,縫合の再生は認められず,間に線維を介し平滑な両骨端が向かい合った状態のままであった.このことから正中口蓋縫合の欠如は口蓋の側方への発育を大きく障害すると考えられた.
    7.正中口蓋縫合には相互の骨成長を調整する場としての働きがあると同時に,力学的な力の緩衝帯としての機能も併せ持っていることが示唆された.
  • 第2報:ラット正中口蓋縫合切除後の計測学的観察
    永井 直人
    1987 年12 巻2 号 p. 103-116
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂における顎発育障害の原因を解明することを目的として,口蓋の側方発育に主要な役割を果たすと考えられている正中口蓋縫合に着目し,ラットを用いた実験的研究を行い,計測学的観察から,以下の如き結果を得た.
    1.口蓋の側方発育は無処置群に比して,正中口蓋縫合切除群で最も大きく抑制され,以下,正中口蓋縫合以外の骨切除群,口蓋粘膜骨膜剥離群の順であった.
    2.粘膜骨膜剥離による発育抑制は他の要素に比べるとわずかで,この侵襲による顎発育への影響は,術後の短い期間だけに限局していることが示唆された.
    3.正中口蓋縫合以外の骨を切除した場合には,術後40日目以降抑制率は減少してゆくことから,骨切除による発育抑制は比較的大きいが,これによる影響は骨組織の修復によって骨の連続性が回復するまでの期間でのみ起こると思われた.
    4.正中口蓋縫合の欠如による発育抑制は全ての要素の中で最も著明で,かつ長期間にわたって持続することが明らかとなった.
    5.口蓋の側方発育に対する外科的侵襲と正中口蓋縫合欠如の影響は,後者が前者を大きく上回っていることが明らかとなった.
  • 高野 英子
    1987 年12 巻2 号 p. 117-141
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    正常児(N),唇顎裂(CL:不完全唇裂ICL,完全唇顎裂CCL),軟口蓋裂(SCP)ならびにHotzレジン床装着を行った唇顎口蓋裂(CLP:不完全唇顎口蓋裂ICLP,完全唇顎口蓋裂CCLP,片側唇顎口蓋裂UCLP,両側唇顎口葦裂BCLP)および硬軟口蓋裂(HSCP)の哺乳時における乳首内圧を記録するとともに,体重発育速度,1日哺乳量,規定哺乳時間などを調べ,唇裂および口蓋裂児における哺乳障害の特徴とHotzレジン床による哺乳障害の改善効果について検索し,次の如き結果を得た.
    1.CL群およびSCP群はN群と比較して異なった乳首内圧波形パターン出現率と小さな乳首内陰圧および吸畷圧を示した.
    2.床非装着時のCLP群およびHSCP群はN群,CL群およびSCP群とかなり異なった乳首内圧波形パターン出現率を示し,乳首内陰圧および陽圧ならびに吸畷圧は明らかに小さかった.
    3.上記の検査で認められる哺乳機能の低下は裂の重症度に関連し,一般にCCL群はICL群より,またCCLP群はICLP群より,BCLP群はUCLP群より哺乳機能の低下が大きかった.
    4.CLP群およびHSCP群ではHotzレジン床装着によって乳首内圧波形パターン出現率,burst時間および吸畷活動時間率がそれぞれN群,CL群およびSCP群に近づく傾向を示し,吸畷率は上昇し,乳首内陰圧および陽圧ならびに吸畷圧が増大して哺乳障害の大きな改善が認められた.
    5.床装着を生後1ヵ月未満に行ったCLPI群は床装着を生後1ヵ月以後に行ったCLPII群よりも哺乳障害の改善が大きかった.
    6.CL群,SCP群,CLP群およびHSCP群の体重発育速度はN群よりも0般に劣っていた.しかしCLPI群はCLPII群よりも体重発育速度,1日哺乳量および規定哺乳時間において優れていた.したがってHotzレジン床による治療は生後できる限り早期に開始すべきである.
  • 深野 英夫
    1987 年12 巻2 号 p. 142-164
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    成術の時期を決定し得る基礎的研究の一つとして,成長期における口輪筋の再生能について研究した.実験には家兎を用い,下唇を部分切除して切断端における口輪筋の再生状態と,下唇の成長に対する影響について観察した.未成熟群として生後10,30日目の家兎を,また成熟群としては生後180日目の家兎を用いた.口輪筋の再生は,組織学的な観察と筋線維幅径,M/C比(筋・結合組織比)を測定して評価した.また,下唇の成長については下唇の厚さと断面積を測定して評価した.その結果,口輪筋の筋線維の回復は生後10日目の家兎において良好であり,未成熟な筋線維において再生能が高いことが示唆された.これを人に外挿すれぼ,生後90日頃以前の手術が口輪筋の再生には有利であると推定できる.0方,下唇の成長については生後10日目の家兎において高径発育の抑制がみられた.このことから,筋の治癒以外の要素についても検討する必要性を有することが示唆された.
  • 第1報:口唇圧の発現と筋活動との関連
    前田 芳信, 岡田 政俊, 守光 隆, 野首 孝祠, 奥野 善彦
    1987 年12 巻2 号 p. 165-174
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者においては,上顎骨の劣成長のため補綴処置の際に上顎前歯の位置を天然歯よりも相対的に前突させ,上唇部の陥凹観の改善を計る場合が多い.このため,上唇は緊張状態となり,補綴装置に対しても常に圧が作用するものと考えられるが,口唇圧の補綴処置による変化,さらには,圧の変化が顎口腔系の諸機能,形態および補綴装置に対して与える影響については不明な点が多い.
    そこで本研究では,これらの点について明らかにする目的で,次のような検討を行った.すなわち,唇顎口蓋裂を有し,外科処置ならびに矯正処置を経て補綴処置を行った男性1名,女性2名(以下口蓋裂患者とする)と唇顎口蓋裂を有さない成人男性3名(以下健常者とする)の計6名を被験者として選び,上顎両側中切歯の唇面中央部に超小型圧力センサーを貼付し口唇圧を測定するとともに,両側咬筋ならびに上唇部口輪筋の筋活動の測定を行った.
    測定は,安静状態の他,最大開口,上下口唇の接触,上唇下制,口角後方牽引,口唇突出,発音,嚥下,ピーナッツ咀囑の各運動時に行い,その際の口唇圧の発現時期ならびに圧の大きさと力積値,ならびに咬筋,口輪筋の筋活動との関連について口蓋裂患者と健常者を比較検討し,以下のような結果を得た.
    1)各運動時の口輪筋の活動に関しては,口蓋裂患者では,健常者に比べ微弱であった.
    2)口唇圧の最大値に関しては,口蓋裂患者では,口唇突出時や発音時などにおいて大きな圧を記録した.
    3)口唇圧の力積値に関しては,口蓋裂患者において上唇下制時ならびに口唇突出時に,健常者に比べ大きな値が得られた.
  • 松井 義郎, 鈴木 規子, 今井 智子, 山下 夕香里, 道 健一
    1987 年12 巻2 号 p. 175-192
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    健常人および口蓋裂術後患者の発音時口腔鼻腔流出気量について研究することを目的として以下の検討を行った.発音時の口腔および鼻腔よりの流出気量を同時に測定し,画面上に表示できるリオン社製フローネイザリティーグラフSN-01(FNG)を用いてデータを採取した後,FNGと同社製サウンドスペクトログラフSG-07とを同期させるシステムを開発し,まずFNGの分析方法,機械的精度について検討したところ,発音時の口腔鼻腔流出気量を総呼気流量に対する鼻腔よりの流出気量の比(NFR)として表すことにより,もっとも信頼性のあるデータが得られることが明らかとなった.
    ついで,本法を健常成人20名(男性10名,女性10名,24歳-26歳)およびスピーチエイドを装着している口蓋裂術後患者10名(男性4名,女性6名,6歳-31歳)に適用し,NFRの臨床的意義について検討を行ったところ,次のような結果が得られた.
    1)同期システムにより発音時の口腔鼻腔流出気量を高い再現性で経時的,定量的に観察することが可能となった.
    2)健常成人20名での検討では,鼻咽腔閉鎖時と非閉鎖時(2名の/a/発音時,全例の通鼻音発音時)とのNFRの区別が可能であった.
    3)口蓋裂術後患者では,スピーチエイド非装着時のNFRは健常成人のNFRと比較して大きく,各症例間でも大きなばらつきを見せたが,スピーチエイド装着時のNFRはほとんどの症例で健常範囲に入るか,もしくは極めて近い値をとった.また通鼻音においても,健常成人と同様の値を示し,スピーチエイド装着により閉鼻の傾向を示す症例はみられなかった.
    4)口蓋裂術後患者のNFRと聴覚印象との関係は開鼻声では必ずしも関連性は認められなかったが,破裂音,摩擦音の歪みとの間では高い関連が認められた.
  • 渡辺 哲章, 大石 正道, 田代 英雄
    1987 年12 巻2 号 p. 193-198
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇裂口蓋裂の多くは染色体異常症候群や単因子性遺伝性疾患ではなく,多因子性遺伝性疾患とされている.多因子性遺伝性疾患に属する口唇裂口蓋裂の遺伝要因を明らかにするために,単発例と多発例における染色体異常を調べた.異形染色体を含む染色体異常の頻度は,単発例66例中疑い例1例(1.5%)であったのに比べて,多発例では43例中5例(11.6%)であった.
    より遺伝的影響を受けていると考えられる多発例で高い頻度の染色体異常がみられたが,特定の染色体部位に限られていないことから,これらの異常は直接的に口唇裂口蓋裂を発症させるものではないと思われる.
  • 混合歯列期において
    許 為勇, 鮎瀬 節子, 滝澤 良之, 小林 廣之, 森 光弘, 清水 畑明, 斉藤 茂, 柴崎 好伸, 福原 達郎
    1987 年12 巻2 号 p. 199-209
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,唇顎口蓋裂児の咬合異常で臨床上,最も頻度の高い前歯部反対咬合者の歯顎顔面形態の特徴を明らかにし,さらに矯正治療による被蓋改善などの変化について,非破裂児(健常者)の場合にみられるものと差異を比較検討することにある.研究資料としては,本学歯科病院矯正科に来院した,Hellman dental age IIIA-IIIBで片側性完全唇顎口蓋裂前歯部反対咬合者(UCLP群)20名,非破裂児前歯部反対咬合者(Non℃left群)83名の治療前後の側魏頭部X線規格写真を用い,水平,垂直距離ならびに,角度計測を行い,それらの矯正治療前後の変化について検討した.結果:10UCLP群では,上顎基底部の治療前後の変化はほとんど認められなかったが,一方,VRL-U 1の水平,垂直距離,歯軸には変化が認められた.被蓋改善の要因としては,上顎前歯の歯軸傾斜によると考えられる.2.下顎は,UCLP群,Non-cleft群ともにclockwise rotationを示し,かつ下顎前歯の舌側傾斜も認められた.3.軟組織の変化については,UCLP群,Non-cleft群の両者ともに治療前後でほぼ同じ様な変化があったが,鼻下点(SN)の相対的位置変化に関しては,UCLP群の変化はNon-clef t群よりも小さかった.
  • 和田 健, 薬師寺 登, 舘村 卓, 松矢 篤三, 西尾 順太郎
    1987 年12 巻2 号 p. 210-220
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は両側性完全唇顎口蓋裂に対し,同一・の唇裂手術法を施行した後,口蓋裂手術はPerko法に準じた我々の二段階口蓋裂手術法(Bil-T群)および口蓋粘膜骨膜弁後方移動術(Bil-s群)による手術を受けた患者の上顎骨歯槽部の成長発育を乳幼児期から6歳時に至る期間,経年的,三次元的に追跡した.口蓋裂手術方法の相違と上顎骨歯槽部の成長発育を比較検討し,さらに被験症例の各発育段階に応じて選択した非裂健常児(対照群)との比較から両側性完全裂症例における成長発育障害発現の様相を明らかにし,二段階口蓋裂手術法の本裂型症例に対する適応について検討した.症例の分析には被験対象より採取した顎顔面模型を用い,上顎骨歯槽部の成長発育を唇裂手術直前(stage A),口蓋裂手術直前(stage B),4歳時(stage C),および6歳時(stage D)の各発育段階において分析した.その結果,両側性完全唇顎口蓋裂症例においては,二段階口蓋裂手術法と口蓋粘膜骨膜弁後方移動術のいずれの口蓋裂手術方法においても上顎骨歯槽部の成長発育不全の傾向が漸次著明とならてくることが明らかとなった.
    以上の結果は,両側性完全唇顎口蓋裂症例に対して二段階口蓋裂手術法は従来の口蓋粘膜骨膜弁後方移動術に比較して上顎骨歯槽部の成長発育に特に有効であるとする所見は認められなかったこと,従って本法の両側性症例への適用については今後慎重な検討を要すること等が示唆された.
  • 栗田 賢一, 小牧 完二, 近藤 定彦, 杉本 修一, 神野 洋輔, 酒向 誠, 河合 幹
    1987 年12 巻2 号 p. 221-225
    発行日: 1987/12/26
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者の顎顔面発育を記録するため上顎顔面一体模型の製作法を開発し,その信頼性について検討した.その結果,本模型の有用性を認めた.
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