日本口蓋裂学会雑誌
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18 巻, 1 号
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  • 前部口蓋に対する口蓋裂二次手術と顎発育
    鬼塚 卓弥, 柴崎 好伸
    1993 年 18 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 田辺 晴康, 杉崎 正志, 渡辺 優子
    1993 年 18 巻 1 号 p. 4-9
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    要旨唇顎口蓋裂術後患者の口腔管理の目的は,外科的治療,矯正治療および言語治療などを主体に,歯列弓の拡大・歯列不正を改善し,咬合関係と咀噛機能回復,審美的改善,発音の明瞭化などにある.しかし,唇顎口蓋裂患者の口腔管理を行っていく上で,下記に示す事項が大きな問題となっている.(1)矯正治療後の後戻り,(2)鼻口腔痩孔の残存,(3)成長発育,(4)審美障害,(5)精神心理学的問題.
    我々は矯正治療後25症例に対して,恒久的保定の目的で,ブロック骨を顎裂部へ移植した.これによって,骨架橋の形成が早期よりできた.我々は,ブロック骨の強度に耐えて後戻りがおこらないことを期待した.その結果,咬合や発音の回復を認めた.加えて,容易に,補綴治療Bridgeや可徹式義歯ができるようになった.
  • 幸地 省子
    1993 年 18 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    8ないしは9歳で,顎裂へ新鮮自家腸骨海綿骨細片を移植した揚合,上顎骨の成長が,この手術の影響を受けるか否かを検討した.対象は,骨移植を行った片側完全口唇裂口蓋裂女子6症例と,骨移植を行わなかった片側完全口唇裂口蓋裂女子3症例である.資料として,6歳9歳,および15歳の側方位頭部X線規格写真を用いた.その結果,上顎骨の深さの成長は,骨移植術の影響を受けないこと,また,上顎前方部の高さの成長は,骨移植後良好となり,骨移植を行った群の成長量は,骨移植を行わなかった群のそれよりも大きいことが示唆された.
  • 三村 保
    1993 年 18 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋形成一次手術は,口蓋粘膜骨膜に広範な侵襲を加えるため,顎発育を多かれ少なかれ障害する.その上に,痩孔閉鎖術が加わると,障害は一層顕著になる可能性が高い.
    痩孔閉鎖による顎発育障害を少なくする最善の方法は,痩孔を残さないことであり,そのためには,口唇形成術・口蓋形成術時の配慮が大切である.
    1歳ないし1歳6ケ月頃に口蓋形成術を行ない,25-30mm2をこえる大きさの鼻口腔痩が残った場合,正常言語獲得のためには早急に閉鎖する必要がある.
    この時期には閉鎖床が適応となる.痩孔の大きさや部位を問わず確実な閉鎖が得られ,顎発育に対する障害も軽微である.
    手術による閉鎖は,できることなら顎発育のスパートがおさまるのを待って行うのが望ましい.閉鎖を確実に得るためには,痩孔は二層に縫合しなければならない.鼻腔側は痩孔周囲の粘膜骨膜弁を翻転して閉鎖するが,口腔側を覆う主な方法として,口蓋粘骨膜のrotation flap,前庭弁,舌弁がある.Rotation flapによる方法は簡便ではあるが,小さな痩孔に対しても広範に口蓋弁を剥離挙上し,口蓋骨表面にraw surfaceを残すため,癩痕形成が強く顎発育障害は最も強いと思われる.前庭弁は前方部痩孔に便利な方法で,若年者にも用いやすく,侵襲も少ない.
    舌弁は口蓋粘膜に対する侵襲が少なく,大きい痩孔も確実に閉鎖でき,術後の療痕拘縮がないため顎発育に対する障害は最も少ない.手順が煩雑で低年齢児に行い難いのが欠点である.
  • 大久保 文雄
    1993 年 18 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    片側唇顎口蓋裂患者の疲孔閉鎖手術が顎発育に及ぼす影響について調査した.患者はコントロール群として痩孔の無いもの,a群:痩孔があるが痩孔閉鎖を行わなかったもの,b群:前庭粘膜弁で痩孔閉鎖を行ったもの,c群:口蓋粘膜骨膜弁で痩孔閉鎖を行ったもの,d群:複数回痩孔閉鎖を行ったもの,e群:舌弁で疲孔閉鎖を行ったものについて口蓋石膏モデルを用いて歯列弓の計測を行い,乳歯列完成期と第一大臼歯萌出期を較べることによりそれぞれの手術が顎発育に与える影響について調べた.
    以下のことがわかった.
    1.d群が最も顎発育が不良であった.
    2.3x3mm以上の痩孔が存在する症例で有意に顎発育が抑制されていた.
    3.3歳以前で痩孔閉鎖を行った症例ではそれ以後に行ったものより顎発育が抑制されていた.
    4.舌弁で手術した症例では比較的顎発育抑制が少ないように思えた.
  • 石倉 直敬, 宮永 章一, 谷口 和佳枝, 塚田 貞夫
    1993 年 18 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    当科では口蓋裂の初回手術法としてpalatal pushback法を用い96.5%の症例に良好な鼻咽腔閉鎖機能の獲得をみている.残りの症例には何らかの二次手術が必要となるが,当科では鼻咽腔に著しい構造的・機能的欠陥のある症例を除き,おもにrepushbackを行い咽頭弁は使用していない.本法により鼻咽腔閉鎖機能に優れた改善が得られるが,2度の手術による顎への侵襲は不明であった.そこで,今回,repushabackが顎発育におよぼす影響について検討したので報告した.
    材料・方法:当科でrepushback法を施行された64例(粘膜下口蓋裂を除く)のうち初回手術も当科で施行されたのは9例であった.このうち頭部X線規格写真による分析が行えたのは6例で,両側性唇顎口蓋裂,片側性唇顎口蓋裂が各1例,残りは口蓋裂単独例で,鼻咽腔閉鎖機能不全の原因として5例が術後癩痕拘縮による軟口蓋の短縮で,1例は先天性短小軟口蓋例であった.また,repushback法施行年齢は2歳1ヵ月-6歳4カ月(平均3歳10力刀)であった.また,repushback後の経過観察期間は1年-3年3カ月(平均2年1カ月)であった.この6例の顎発育を同じ裂型でrepushback法などを行ってV・ない同年代の症例を対照として比較した.
    結果および考察:6例全てに鼻咽腔閉鎖機能の改善を認めた.また,V・ずれの症例においてもrepushback後の顎形態は対照群と同様,口蓋裂初回手術前の顎形態との類似性を認めるものの,手術によると思われる明らかな成長抑制は見られず,上顎の前方および下方への成長は対照群と同程度であった.従って;pushbackを二度繰り返し行っても顎発育におよぼす影響は初回手術のみの症例と同程度に少なく,repushbackは鼻咽腔閉鎖機能の改善を目的とする二次手術法として機能的にも形態的にも有用であると思われた.
  • 平野 明喜
    1993 年 18 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    咽頭弁手術の顎発育への影響をみるため,経時的に撮影された頭部X線規格写真を用いて検討を行った.対象は1972年から1986年までに当科において10歳以下で咽頭弁手術を受けた患者の中から経過観察が可能であった11例である.比較には同時期に当科で口蓋裂1次修正術を受けた65例を対照群として検討した.その結果,SNAをはじめ,上顎前後径PT垂線から第1大臼歯までの距離上顔面高など上顎発育に関係する値については,咽頭弁群と対照群との間に差がみられなかった.対照群との問に差がみられたのは咽頭腔や軟口蓋の形態などの軟部組織に関する項目のみであった.今回の結果では,咽頭弁手術の影響は軟口蓋などの軟部組織までしか影響を与えず,上顎の発育には直接の影響をみることができなかった.
    しかし,咽頭弁手術症例の中には高度の上顎発育障害例もみられたことから,咽頭弁群内での比較検討を行った.咽頭弁手術例の11例中,7例が痩孔閉鎖などの何らかの口蓋裂2次修正を受けていたが,これらの患者は咽頭弁手術のみの患者に比球て顎発育障害がみられた.また,咽頭弁手術を受けた群と7歳以後に手術を受けた群を比較したところ,低年齢での手術群に顎発育抑制がみられた.咽頭弁手術の顎発育へ及ぼす影響には,口蓋裂の裂型や口蓋裂1次手術をはじめとして多くの因子の関与が考えられるため,有限要素法を用いてシュミレーションを行った.その結果,咽頭弁を伸展性のない索状物として想定した揚合,咽頭弁は上顎発育のみならず,外鼻形態の変化を生む可能性が示唆された.当科における咽頭弁手術症例数が少なく,確定的な結論とはいいがたいが,10歳以下の小児においても咽頭弁手術が顎発育を抑制するとは限らないものの,低年齢手術例では顎発育障害の可能性は否定できないと思われた.
  • 山本 照子, 川上 正良, 作田 守
    1993 年 18 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ラットの切歯骨に自然治癒しない大きさの骨欠損を作成し,脱灰骨基質(DBM)を移植して骨誘導を検討した.7週齢の雄性ウィスター系ラット(体重約1809)110匹の切歯骨の中央部に外科用トレファンバーと歯科用エンジンにより直径2mmの円形骨欠損が作成された.ラットは,骨欠損部に7mgの脱灰骨基質(DBM)を移植した群と移植しない対照群に分けられた.
    1.術後35日口にDBM移値しない対照群の欠損部は,線維性結合組織で治癒され,骨欠損周辺部に少量の骨形成がみられた.DBM移植しない対照群のアルカリフォスファターゼ活性と45Caの取り込みには経日的な変化はなかった.この骨欠損は新生骨により自然治癒しないと考えられた.
    2.DBM移植群の骨欠損部には,35日目に新生骨による骨性の修復が認められた.lDBM移植群ではアルカリフォスファターゼ活性は,10日目より有意に増大し,14日目に最大に達した.また,14日目に45Caの取り込みも増大した.しかし,(35S)硫酸のプロテオグリカンへの取り込みは7日目および9日目ともにDBM移植しない対照群,DBM移植群に有意差は認められなかった.
    以上の結果,顎裂の骨修復を想定した実験モデルとして,ラットの切歯骨欠損部において,DBMのような骨誘導物質による骨形成の検討は有効であることが示唆された.
  • 特に上顎歯列弓形態が下顎歯列弓形態に及ぼす影響について
    新垣 敬一
    1993 年 18 巻 1 号 p. 59-78
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患児の上顎歯列弓形態が下顎歯列弓形態へ及ぼす影響を調べることを目的とし,本研究を行った.資料は当教室にて手術を行い,Hellmanの咬合発育段階IICから皿A期までに達した両側性唇顎口蓋裂患児(BCLP)13名,片側性唇顎口蓋裂患児(UCLP)20名,口蓋裂患児(CP)20名,健常児30名の上下顎石膏模型である.検索した結果,以下のことが明らかになった.
    1.歯列弓長径と幅径におv・て,上顎では口蓋裂手術群は健常児に比較して有意に小さv・値を示した(BCLPの長径を除く).下顎では,それぞれの裂型に特異的な発育パターンがみられた.
    2.歯列弓の対称性において,上顎ではUCLPの乳犬歯,第1乳臼歯で非対称性を示した.下顎では口蓋裂手術群,健常児はともに対称性を示した.
    3.歯冠軸の頬(唇)舌的傾斜度は,下顎の第1乳臼歯および第2乳臼粛において,それぞれの裂型に特徴的な舌側傾斜がみられた.
    4.対咬接触歯数の多い群では,下顎歯列弓の幅径は健常児に比較し有意に小さかったが,対咬接触歯数の少ない群では,健常児に近い値を示した.
    5.対咬接触歯数の多い群では,第1乳臼歯,第2乳臼歯において同側上下顎同名歯の歯冠軸傾斜度間と,また上顎の歯列弓幅径とそれに対応する下顎の歯冠軸傾斜度に正の相関関係がみられた.
    以上のように上顎歯列弓形態が咬合を介して下顎歯列弓形態に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 小枝 弘実
    1993 年 18 巻 1 号 p. 79-106
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Perko法による二段階口蓋形成術を施行した完全唇顎口蓋裂児30例の硬口蓋形成術前後と,これらのうち正常構音を獲得した11例および調査開始時すでに正常構音を獲得していた11例を加えた計22例の3群(術前群,術後群,獲得群)計41例および正常児(対照群)10例における開鼻声値をNasometerを用いて分析するとともに,側位頭部エックス線規格写真より構音器官の分析を行った.さらに,硬口蓋形成術前後における口蓋裂言語の聴覚的な評価判定を施行し,以下の如き所見を得た.
    1.Nasometerによる開鼻声値は,すべての母音,通鼻音以外の子音および文章において術後群では術前群よりも,獲得群では術後群よりも小さな値を示し,特に硬口蓋形成術前後においてその差が著明であった.しかし,獲得群の開鼻声値は対照群より高値を示した.
    2.側位頭部エックス線規格写真における軟口蓋長径は術後群では術前群よりも,獲得群では術後群よりも大きな値を示したが,対照群より明らかに小さな値であった.軟口蓋の運動性は術前群より術後群で良好となり,さらに獲得群では対照群よりも明らかに大きな運動性を示した.また,安静時においては対照群よりも明らかに浅い咽頭腔を示した.
    3.聴覚的開鼻声度は術後群では術前群よりも,獲得群では術後群よりも小さな値を示し,会話明瞭度も同様に改善したが異常構音として側音化構音が最後まで残存する傾向がみられた.また,獲得群における開鼻声値と聴覚的開鼻声度および会話明瞭度との相関係数は両者とも0.9以上であり,極めて高い相関関係を示した.
    4.獲得群の鼻咽腔閉鎖機能の総合判定良好例は68、2%,概ね良好例は18.2%で,不良例は1例も認めなかった.
    以上のことから,Perko法による二段階口蓋形成術が的確に実施され,系統的な言語治療が施行されることにより,良好な鼻咽腔閉鎖機能と正常構音が十分に獲得されると考えられた.
  • Sectionalrotationarchによる破裂側中切歯の捻転の改善症例
    河野 益広, 鈴木 陽, 韓 乗柱
    1993 年 18 巻 1 号 p. 107-116
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    九州大学歯学部附属病院矯正科受診患者のうち片側性唇顎裂・唇顎口蓋裂者228名において,萌出直後の上顎中切歯の植立状態に関して,近遠心的傾斜度ならびに捻転度を調査した.
    中切歯歯軸の咬合平面に対する角度(傾斜度)の平均値は,健常側で87.50一方破裂側で112.7.であり,破裂側中切歯は顎裂部への遠心傾斜を示した.中切歯切縁の仮想正中線に対する角度(捻転度)は,健常側で82.2.破裂側で108.2.を示し,その近心側が舌側へ遠心側が唇側へ捻転してV・ることが判った.
    上顎中切歯の萌出異常に対し,sectional rotation arch装置を考案し,これにより矯正治療を行った2症例を報告する.
    症例1:初診時3歳6カ月の右側性唇頃口蓋裂の女児.
    症例2:初診時3歳7カ月の左側性唇顎口蓋裂の女児.
    Sectional rotation arch装置により,X線写真的には歯根の吸収,また歯髄に対しても為害作用を認めず,比較的短期間に破裂側中切歯の捻転等を改善することができた.
  • 特に心奇形,精神発達遅滞患者を中心に
    北村 龍二, 硲 道代, 川本 眞奈美, 西尾 順太郎, 宮崎 正
    1993 年 18 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇裂口蓋裂児は他の先天性疾患を伴うことが多く,その合併率は約20-30%と考えられる.このような合併異常を伴う患児の治療にあたっては,当然ながら関連各科と共に総合的に診療を進めることが大事であるが,その具体的な治療方針についてはほとんど報告されていない.そこで著者らは心奇形,精神発達遅滞を伴う患児を中心にa合併異常を有する唇裂口蓋裂児に対する当科での治療方針について報告した.1.スクリーニング当科では生後1-2カ月頃に小児内科を受診させ,合併異常の有無発達,発育について小児科的に精査を行なっている.2.心奇形を合併する患児治療方針は小児循環器科とカンファレンスを行い決定するが,基本的には心奇形に対する検査,治療を優先する.ただし,口唇形成は,循環動態が安定すれば心奇形の根治手術前でも形成手術を行なうようにしている.3.精神発達遅滞を合併する患児当センターでは発達遅滞児に対しては,小児神経科,臨床心理士,理学療法士,言語治療士,保健婦などが協力し,患児の能力をできるだけ伸ばすべく早期より適切な療育を行なう体制を作っている.精神発達遅滞患者では言語発達も遅れることから口蓋形成の時期を遅らせる施設もあるが,当科では「咀噛嚥下機能の回復」を考慮したうえで,発達遅滞患者であっても1歳6カ月頃までに形成手術を行なうようにしている.4、minoranomaliesを合併する患児基本的には合併異常のない児と治療方針は変わらない.ただ,乳幼児期に手術を必要とする疾患で,短時間で行える手術は形成手術と同一麻酔で行なう揚合がある.
  • 西尾 順太郎, 北村 龍二, 硲 道代, 川本 眞奈美, 岡田 元, 平野 吉子, 宮崎 正, 松矢 篤三
    1993 年 18 巻 1 号 p. 123-132
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1987年1月から1991年12月までの5年間の当科を受診した415名の口唇裂口蓋裂患者のうち,一次手術施行例213例および未手術経過観察例26例,計239例を対象に統計的観察を行ない以下の結果を得た.
    1.年度別来院患者数は増加の傾向にあった.
    2.患者の居住地分布は大阪府(193名80・3%)が最も多く,特に南大阪地域(149名)が多かった.
    3.239名中155名(64・9%)が外=部の医療機関からの紹介であった.院内出生を含めて院内の専門各科からの紹介は60名(25.1%)であった.
    4.裂型分類では口唇(顎)口蓋裂が106名と最も多く,口蓋裂59名,口唇(顎)裂54名,粘膜下口蓋裂20名の順であった.
    5.口唇(顎)裂口唇(顎)口蓋裂,粘膜下口蓋裂は男子に多く,口蓋裂は女子に多く見られた.
    6.口唇裂破裂部の側性は2・8:1の割合で片側が多く,左右別では1 .3:1の割合で左側が多かった.
    7.初診時月齢では口唇(顎)裂群,口唇(顎)口蓋裂群,口蓋裂群では生後1カ月までに来院するものが大半を占めたが,粘膜下口蓋裂群では受診時期が遅れ大半が2歳を過ぎて受診した.
    8.家系内発現は235家系中29家系に見られ,発現率は12.3%であった.
    9.両親が正常な場合の同胞発現率は3・1%であったのに対し,片親罹患例における同胞発現率は13.3%であった.
    10.他の先天異常を合併するものは239名中110名に見られ,合併異常の発現率は46.0%であった.とくに,粘膜下口蓋裂群や口蓋裂群では合併異常の発現頻度が高かった.
  • 三浦 真弓, 楠田 理恵子, 小薗 喜久夫, 加藤 正子, 岡崎 恵子, 鬼塚 卓弥
    1993 年 18 巻 1 号 p. 133-141
    発行日: 1993/01/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    今後の口唇裂口蓋裂治療の指針を得る目的で,昭和大学形成外科言語外来,熊本機能病院形成外科,矯正歯科,言語治療室を受診した口唇裂口蓋裂の患者の親,主として母親536名に対してアンケート調査を実施した.
    患者の裂型は,口唇裂107例,口唇口蓋裂307例,口蓋裂122例であった.年齢は生後2週間から12歳11カ月であった.
    方法は30項目からなる質問紙を用い,現在最も関心のある項目3つを選択してもらった.結果は哺乳・摂食,発達,手術,言語,耳鼻疾患,歯科的問題,容貌,社会適応・性格,進学・就職,結婚・出産,遺伝,障害の告知,X線撮影,治療費およびその他に分類した.
    1)口唇裂,口蓋裂の親の関心事は多岐に渡ってV・たが,全体では歯科的問題(20・4%),手術(16・3%),遺伝(10.8%),言語(10.2%),容貌(9.5%),耳鼻疾患(9.1%)の順に関心が高く}直接治療の対象となる項目に関心が高かった.
    2)裂型による差では,裂型による障害像の差異を反映すると考えられる関心のパタンを示し,口唇裂単独群では手術,容貌,口蓋裂単独群では歯科的問題,言語,口唇口蓋裂群では両者の特徴をあわせもち,歯科的問題,手術,言語,容貌に関心が高かった.
    3)年齢による差では,現在治療中あるいは治療の準備段階にある項目に関心が集まる傾向がみられ,乳児期では手術,幼児期では歯科的問題,手術,言語,学童期では歯科的問題,耳鼻疾患に関心が高かった.
    4)性別による関心事項の差はなかった.
    5)遺伝に対する関心はどの裂型,どの年齢群でも高かった.
    6)口唇裂,口蓋裂のもたらす一次的な障害が社会生活をするうえでの二次的な障害をひきおこす可能性があることを念頭におき一局所のみにとらわれない全人的な治療の必要があると考えた.
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