日本口蓋裂学会雑誌
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19 巻, 3 号
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  • 口蓋帆挙筋活動に対する口腔内圧・鼻腔内圧の影響
    舘村 卓, 原 久永, 高 英保, 佐藤 耕一, 岸本 博人, 和田 健
    1994 年 19 巻 3 号 p. 111-119
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    境界線上の鼻咽腔閉鎖機能不全症の改善のために開発された持続的鼻腔内陽圧負荷(CPAP:Continu-ous Positive Air Pressure)療法の効果発現の生理学的背景を明らかにすることを目的として,独自に開発した鼻腔内陽圧負荷装置を用いて鼻腔内に陽圧を負荷し,口蓋帆挙筋活動に対する口腔内圧,鼻腔内圧の影響を,健常成人被験者3名を対象に検討し,以下の結果を得た.
    1.鼻腔内圧の上昇に伴って,口蓋帆挙筋活動は上昇した.一方,口腔内圧も鼻腔内圧の上昇に対応して上昇していた.単相関分析の結果,鼻腔内圧に対する相関係数は,口腔内圧よりも大きかったが,両者ともに有意性が示され,CPAP療法時には鼻腔内圧だけでなく口腔内圧も関与する可能性が示唆された.
    2.口蓋帆挙筋活動を目的変数とし,鼻腔内圧ならびに口腔内圧を説明変数とする標準化重回帰分析の結果,CPAP時の口蓋帆挙筋活動の変化には,鼻腔内圧が口腔内圧よりも強く作用することが示され,CPAP療法の生理学的背景には鼻腔内圧が中心的に作用することが明らかとなった.
  • 弘田 泰久, 幸地 省子, 松井 桂子, 山口 泰, 手島 貞一
    1994 年 19 巻 3 号 p. 120-128
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Tessierの顔面裂分類6型と7型の裂を合併し,さらに上顎左側第1乳臼衝,および第2乳臼歯の過剰歯2本を認める,2歳5カ月女児の症例である.顔面には,左側横顔裂形成術の癩痕,および左側口角部から外眼角にむけて弓状に走るすじ状の皮膚の軽度の陥凹がみられる.また,口腔内には,上顎左側乳臼粛部に歯槽裂を認める.この裂は,X線CTによれば,歯槽部から頬骨下方約20mmまで達している.この裂の前後それぞれに,上顎洞,第1大臼歯歯胚が見られる.過剰乳臼歯は,この裂の後方に存在していた.2本の過剰乳臼爾の発現は,裂の発生と密接に関連しており,各々の歯種を発生させる,上皮と間葉を含む顎の特定の揚所が,裂の発生により癒合されないまま,裂の前後に存在することとなり,それから同名歯の発生が別個に誘導されたものと推察する.
  • 清水 正嗣, 大西 正俊, 百瀬 文雄, 吉増 秀実, 天笠 光雄
    1994 年 19 巻 3 号 p. 129-136
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    上顎体は奇形腫あるいは,二重体奇形のあるタイプに属し,その発症部位が口蓋あるいは,頭蓋底部に置かれているものは特に稀である.今回われわれの経験した上顎体の一例は,4カ月の女児で,その母親が患児の口蓋裂と,上咽頭に基部を持つ腫瘍先端の口裂からの露呈を主訴として受診した.入院精査の上,主訴の腫瘍は上顎体と診断された.これに基づき,全身麻酔のもと1975年3月●に,上顎体の外科的摘除が行われた.切開線は,奇形腫瘤の皮膚部分よりやや外周の上咽頭天蓋,鼻中隔底部の粘膜部分に入れられ,上顎体基底部の下方で切除した.骨様の硬組織は介在しなかったが,歯胚一個が見いだされ,全体としては比較的容易に切離され,出血も少なかった.
    摘出物の大きさは,2×2×4cmの円筒形,その基部は径4cmと広基性で,左鼻中隔底部と上咽頭に位置していた.上顎体先端部には,産毛様の白色毛髪があり,全体としては,皮膚様組織で被覆されていた.摘出した奇形性腫瘤の工業用ノンスクリーンフィルムを用いたSoftex・X線撮影像において,特に骨様の物は見いださなかったが,その基底部前方に,歯胚様硬組織塊が計3個見られた.組織学的検索でば,皮膚様組織脂肪組織が主体で,歯胚を含む奇形腫性奇形teratoid malformationと診断された.術後経過は良好で退院遠隔地の自宅療養に移され,次に口蓋裂にたいする形成術を待機することとなった.しかし術後8か月あまりの1975年11月,自宅にて肺炎のため不幸な転機を取った.
    清水の1962年から1981年にいたる東京医科歯科大学口腔外科における自験例資料に基づく口腔顔面領域裂奇形3,119例に対する口蓋裂を伴った上顎体の発生頻度としては0.032%,同口蓋裂単独1,176例に対しては0.085%,唇顎口蓋裂も含めた全口蓋裂保有症例2,262例に対しては0.044%の値が得られた.
  • 連結範囲が咬合力負担能に及ぼす影響
    鈴木 るり, 谷口 尚, 大山 喬史
    1994 年 19 巻 3 号 p. 137-147
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇裂口蓋裂患者の補綴処置においては,外科及び矯正治療により改善された粛及びsegmentのre-lapseを防ぐ配慮はもちろんのこと,補綴処置終了後の口腔内環境を長期に渡り健康に保つために,顎裂を含み脆弱な骨組織を支持組織とする上顎の支持能力を高め,下顎との咬合力負担能の差を可及的に小さくする配慮が必要である.
    この二点から,補綴処置においては,顎裂をはさむ数歯ずつの連結固定が必須である.
    すでに我々は,片側性唇顎口蓋裂患者を対象とし,咬合力負担能という観点から適正な連結範囲を決定する基準を見出す目的で,連結範囲を変え,咬合力を測定し,連結範囲が咬合力負担能におよぼす影響について検討を加えた.その結果,咬合力負担能という観点からは,連結範囲は,顎裂をはさんで2歯ずつで充分であり,それ以上延長しても効果を持たないことが明らかとなった.
    今回,両側性唇顎口蓋裂患者を被験者とし,ブリッジによる補綴処置を想定し,連結範囲を変え,咬合力を測定した.その結果,以下の結果を得た.
    1.連結範囲を拡大すると咬合力は増大する傾向にあったが,右側での連結範囲が犬歯1歯のみの揚合では,左側で連結範囲を拡大しても咬合力の有意な増大はみられない場合が多かった.
    2.連結範囲を顎裂をはさみ2歯以上としても咬合力に有意な増大はみられず,咬合力負担能に対する連結の効果は期待できないと考えられた.
    3.両側性唇顎口蓋裂症例は,片側性唇顎口蓋裂症例に比べ,中切粛部において連結による咬合力負担能増大の効果が少ない傾向にあった.
  • 伊藤 大輔, 須佐美 隆史, 鈴木 るり, 大山 喬史, 黒田 敬之
    1994 年 19 巻 3 号 p. 148-155
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    鼻咽腔閉鎖機能不全の改善のためにスピーチエイドを使用している口蓋裂患者の矯正歯科治療を開始する際,矯正装置との併用が困難なためにスピーチエイドの使用を中断せざるを得ない症例が存在する.このような症例へ適用するために,スピーチエイドバルブを付加した固定式矯正装置を試作し,矯正治療を行なった.本装置は固定式上顎拡大装置に可撤式のスピーチエイドバルブを組み込んだもので,上顎拡大中もバルブによる鼻咽腔閉鎖機能を維持することができる.本論文では,装置の構造および製作方法について詳述するとともに,左側口唇口蓋裂の一症例の治療経験を通して,本装置の有用性や問題点について検討を行なった.
  • 西尾 順太郎, 北村 龍二, 岡田 元, 宮丸 英一郎, 平野 吉子, 宮崎 正
    1994 年 19 巻 3 号 p. 156-163
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Robin sequence5症例に対し,上気道閉塞を改善する目的でArgamaso法による舌固定術を施行した.5例中3例に著しい効果が得られ,上気道閉塞は改善した.しかし,他2例では十分な効果は得られず,1例は上気道閉塞に対する最終的処置として気管切開を施行し,他1例では舌固定術後も2.5カ月の長期間にわたって鼻咽頭チューブの留置を余義なくされた.Robin sequence5症例の臨床経過について総括するとともに,舌固定術の意義と問題点について報告した.
  • 冨永 礼司, 伊藤 大輔, 天野 浩美, 山本 真, 岩田 耕治, 宇治 正光, 馬場 祥行, 須佐美 隆史, 本橋 信義, 大山 紀美栄, ...
    1994 年 19 巻 3 号 p. 164-176
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正科に来院した口唇裂口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1971年から1991年の問に当科を受診した新患患者を対象として統計的観察を行った.
    検討項目は(1)年度別来院者数,(2)性別及び年齢,(3)裂型,(4)居住地域,(5)紹介元医療施設,(6)治療開始年齢,(7)歯槽弓collapseの様式,(8)crossbiteの発現部位である.なお,検討対象は(1)~(4)については全来院患者2446名,(5)(6)については,当科が専門外来登録を開始した1977年以降に治療を開始した患者1237名,(7)(8)にっいては,治療を行ったもののうち他の先天異常を伴うものを除き,資料の完備している(7)593名(8)782名とした.
    結果:(1)昭和57年の健康保険導入以降急増したが,ここ数年は毎年約120名前後の値を示した.(2)6~8歳で来院する患者が最も多く全体の43%を占めた.全体の男女比は女子46.0%男子54.0%であった.(3)口唇口蓋裂は片側性が48.9%,両側性が16.2%,あわせて65.1%,口唇裂は片側性14,3%,両側性2.4%あわせて16.7%,口蓋裂は17.2%であった.口唇口蓋裂に対する口唇裂,口蓋裂の比率が年度を追うにつれ相対的に増加する傾向がみられた.(4)東京が最も多く,関東6県と静岡県がそれに次いだ.(5)診療科別にみると,口腔外科52.7%,形成外科23.7%,その他23.5%であった.このうち本学他科からの紹介が約42%を占めた.(6)10歳で治療を開始したものが最も多く全体の17.3%を占めた.(7)片側性,両側性口唇口蓋裂共に各segmentがbutt-jointで接触しているものが過半数を占めていた.(8)口唇口蓋裂,口蓋裂に関してはtotal crossbiteをしめすものが28.4%と最も多かった.口唇裂ではcrossbiteのないものが32.5%と最も多く,crossbiteの程度は他の裂型に比較して軽度である結果が得られた.
  • 令併した先天異常について
    領家 和男, 川崎 一慶, 福本 潤二, 濱田 驍
    1994 年 19 巻 3 号 p. 177-185
    発行日: 1994/07/31
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1967年1.月から1992年10月までの過去26年間に当科を受診した顔裂・口唇裂・口蓋裂患者497例に対し,合併した先天異常について臨床統計的検討を行い以下の結果を得た.
    1.他の先天異常および症候群を合併していたものは50例で,合併頻度は10.0%であった.
    2.合併した先天異常は先天性心疾患が14例(2.8%)で最も多く,次いで耳の異常10例(2.0%),四肢異常10例(2.0%),生殖・器異常8例(1.6%)であった.
    3.先天異常保有患者における,合併した先天異常のi数は一人平均1.2個,多いものでは6個であった.
    4.症候群として診断が得られたものは22例で,その中でもPierre Robin症候群は14例で最も多く,次いで第1第2鰓弓症候群が4例であった.
    5.年度別では口蓋裂の増加傾向がみられ,先天異常合併頻度の増加傾向も見られた.
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