東北大学歯学部附属病院第二口腔外科において,1982年3.月から10年間に,顎裂へ新鮮自家腸骨海綿骨細片を移植した289症例について,臨床統計的に検討した.
1.裂型別症例数は,片側口唇口蓋裂が,181症例と最も多く,ついで,両側口唇口蓋裂57症例,片側口唇顎裂41症例,両側口唇顎裂10症例であった.
2.骨移植術施行時の年齢は,7歳4カ月から33歳0カ月にわたっていたが,9歳から11歳までに行った例が多かった.また,両側口唇口蓋裂で,骨移植年齢が高い傾向がみられた.
3.骨移植時に顎裂側犬歯が萌出していたものが60.8%であった.
4.平均顎裂幅は,Omm(不全型)から21mmまでの問に分布していたが,7mm,8mm,9mmの頻度が高く,各々14%であった.11mm以上の広い幅のものが,約1/3を占めていた.
5.移植骨重量は,1症例平均5.09であった.移植骨重量と平均顎裂幅との問には,有意な相関が認められた.
以上の結果を,著者らがすでに得ている骨架橋形成に関する知見と比較検討し,顎裂への新鮮自家腸骨海綿骨細片移植術を,11歳未満で必要十分量の移植骨を採取できる時期に行う必要があり,それには,多量の海綿骨細片が採取できる術式や術前に行う矯正治療の内容等について,また,特に骨欠損の大きいBCLP症例に対しては術式そのものについて,今後検討を要することが明らかとなった.
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