日本口蓋裂学会雑誌
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20 巻, 2 号
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  • 舘村 卓, 原 久永, 和田 健, 佐藤 耕一, 高 英保, 森本 知花
    1995 年 20 巻 2 号 p. 33-38
    発行日: 1995/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    鼻口腔痩の鼻咽腔閉鎖機能への影響について,鼻口腔痩を口蓋前方1/3に有する初回口蓋形成術後症例の中から,鼻咽腔閉鎖機能の良好な3例(VPC群)ならびに鼻咽腔閉鎖機能不全症を呈する2例(VPI群),計5例を対象に,口蓋帆挙筋活動を指標に検討した。実験は,鼻口腔痩を綿花で気密に閉鎖した場合と開放した場合のそれぞれにおいて,スピーチサンプル/Pω/を20回以上表出させ,発音開始時における筋電図積分波形ならびに口腔内圧最大値について分析した。口膣内圧は,鼻口腔痩を閉鎖した場合に,VPI群ならびにVPC群ともに上昇する傾向が認められた。一方,鼻口腔痩を閉鎖した揚合の口蓋帆挙筋活動には,VPI群では開放時と比較して有意の変化が認められなかったが,VPC群では有意に低下することが認められた。このことから,鼻咽腔閉鎖機能が良好な症例では,鼻口腔痩の開放閉鎖が鼻咽腔閉鎖機能に影響することが明らかとなり,鼻咽腔閉鎖機能の調節機構に鼻口腔痩を経て鼻腔に漏出する鼻腔1呼気流が組み込まれていることが明らかとなった。
  • レーザードップラー血流計による解析の考案
    石川 博之, 三崎 浩一, 大坪 弘人, 土門 東香, 上野 拓郎, 安藤 葉介, 友近 晃, 中村 進治, 工藤 元義, 福田 博, 井上 ...
    1995 年 20 巻 2 号 p. 39-51
    発行日: 1995/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋形成手術により発生する骨露出創と,その治癒過程で生じる瘢痕組織は,上顎骨の成長発育に対して抑制因子として作用し,歯列歯槽形態の狭窄をもたらすことが報告されている.またこの瘢痕組織は,矯正治療においても酋列弓の拡大を困難なものとし,さらに治療後のいわゆる後戻りの大きな要因になると考えられている.したがって,口蓋裂患者の口蓋部に存在する術後瘢痕組織の分布を把握することは,矯正治療における治療方針の作成や予後の推定の上で,極めて重要である.このような瘢痕組織の分布は個々の患者で多様であると考えられるが,その部位や広がりを肉眼で詳細にとらえるには限界があり,現状では有効な方法は存在しない.そこで,レーザードップラー血流計を応用して,口蓋部に存在する術後瘢痕組織の分布を解析する方法を考案し,さらに本法の有効性について検討を加えた.その結果,以下の知見を得た.
    1.非破裂者において,本計測系により大口蓋孔相当部粘膜の加圧にともなう口蓋粘膜各部の血流量変化の計測を行ったところ,3009の荷重で口蓋全域にわたり血流量の減少が認められた.
    2.口蓋裂患者では大口蓋孔相当部粘膜を3009の荷重で加圧しても,口蓋前方部で血流量の変化が認められなかった.また症例によっては,中央部および後方部の左右側においても血流量の変化が認められなかった.
    3.口蓋裂患者の埋伏歯の開窓術の際に得られた口蓋粘膜の組織像の観察から,本計測系は組織血流動態の違いに基づき,瘢痕組織と正常粘膜組織を明確に識別できることが確認され,口蓋部の術後瘢痕組織の分布の解析に有効であることが示唆された.
  • 鈴木 純一, 平賀 順子, 河上 宗博, 小田島 哲世, 小浜 源郁
    1995 年 20 巻 2 号 p. 52-58
    発行日: 1995/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    中央矯正歯科クリニックにて矯正歯科治療を行なっている口唇裂口蓋裂200症例中,頸椎癒合を認めKlippel-Feil症候群と診断された2症例の臨床所見について報告する。症例1:初診時10歳男性,反対咬合,第3第4頸椎の癒合,口蓋裂,鼠径ヘルニア,停留こう丸,動脈管開存症,心室中隔欠損症,舌小帯短縮症,上顎逆性過剰埋伏歯,2/2先天的欠損,鏡像現象。症例2:初診時8歳11カ月男性,口唇裂口蓋裂,反対咬合,第4~第6頸椎の癒合,心房中隔欠損他。これらの症例は,矯正歯科治療を開始すべく頭部X線規格写真のトレース時,頸椎の癒合が発見されたものである。突然の神経症状発症や,神経組織の非可逆的変化を生じる前に,患者および保護者に対し告知すると共に,矯正歯科治療を行なう上で,頭頸部固定装置の使用を避けることが必要と考える。
  • 幸地 省子, 猪狩 俊郎, 飯野 光喜, 松井 桂子, 高橋 哲, 福田 雅幸, 千葉 雅俊, 伊藤 まゆみ, 斉藤 哲夫, 松田 耕策, ...
    1995 年 20 巻 2 号 p. 59-74
    発行日: 1995/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    東北大学歯学部附属病院第二口腔外科において,1982年3.月から10年間に,顎裂へ新鮮自家腸骨海綿骨細片を移植した289症例について,臨床統計的に検討した.
    1.裂型別症例数は,片側口唇口蓋裂が,181症例と最も多く,ついで,両側口唇口蓋裂57症例,片側口唇顎裂41症例,両側口唇顎裂10症例であった.
    2.骨移植術施行時の年齢は,7歳4カ月から33歳0カ月にわたっていたが,9歳から11歳までに行った例が多かった.また,両側口唇口蓋裂で,骨移植年齢が高い傾向がみられた.
    3.骨移植時に顎裂側犬歯が萌出していたものが60.8%であった.
    4.平均顎裂幅は,Omm(不全型)から21mmまでの問に分布していたが,7mm,8mm,9mmの頻度が高く,各々14%であった.11mm以上の広い幅のものが,約1/3を占めていた.
    5.移植骨重量は,1症例平均5.09であった.移植骨重量と平均顎裂幅との問には,有意な相関が認められた.
    以上の結果を,著者らがすでに得ている骨架橋形成に関する知見と比較検討し,顎裂への新鮮自家腸骨海綿骨細片移植術を,11歳未満で必要十分量の移植骨を採取できる時期に行う必要があり,それには,多量の海綿骨細片が採取できる術式や術前に行う矯正治療の内容等について,また,特に骨欠損の大きいBCLP症例に対しては術式そのものについて,今後検討を要することが明らかとなった.
  • 川上 重彦, 谷口 和佳枝, 木村 哲治, 石倉 直敬, 塚田 貞夫
    1995 年 20 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 1995/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    頭蓋顔面骨の先天異常を合併した口唇裂,口蓋裂治験例(5例)を報告し,統計的観察事項からみた合併頻度,治療上の問題点について検討を加えた。
    治験例の内訳は以下のとおりである。
    症例1:7歳男児。片側口唇裂に頭蓋顔面裂(Tessier分類cleft No.10)を合併。生後3カ月時に口唇裂初回手術,2歳6カ月時に頭蓋・左眼窩形成を行なった。
    症例2:6歳女児・片側口唇・口蓋裂に頭蓋骨早期癒合症(斜頭症)を合併。生後7カ月,1歳11カ月時にそれぞれ口唇裂,口蓋裂の初回手術,そして,3歳6カ月時に頭蓋・上眼窩形成術を行なった。
    症例3:4歳女児・正中唇裂に頭蓋顔面裂(Tessier分類cleft No.14)を合併。1歳4カ月時に前頭蓋底形成術,3歳4カ月時に正中唇裂形成術を行なった。
    症例4:3歳,男児。正中唇裂に頭蓋骨早期癒合症(三角頭蓋症)を合併。1歳5カ月時に頭蓋・上眼窩形成術,2歳5カ月時に正中唇裂形成術を行なった。
    症例5:2歳女児・口蓋裂に頭蓋骨早期癒合症(三角頭蓋症)を合併。生後10カ月時に頭蓋・上眼窩形成術,1歳3カ月時に口蓋裂初回手術を行なった。
    口唇裂,口蓋裂に頭蓋顔面骨異常の合併する頻度については,報告施設によってばらつきを認めたが,およそ5%前後と考えられた・また,治療においては,頭蓋顔面骨異常に対する診断法,および再建に必要とされる頭蓋顔面外科手技とその再建施行時期を熟知する必要があると考えられた。
  • 飯野 光喜, 奥田 まゆみ, 福田 雅幸, 高橋 哲, 幸地 省子, 越後 成志, 手島 貞一
    1995 年 20 巻 2 号 p. 84-91
    発行日: 1995/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    矯正治療により移植骨部へ歯を移動し,欠損補綴を行なわずに歯列を形成することは,顎裂部二次的骨移植術の重要な目的のひとつである.矯正治療のみによる歯列形成を可能にするためには,手術に際し可及的に大きな移植床を作り,この移植床に海綿骨を緊密に充填することが重要である.
    顎顔面への骨移植では,従来より腸骨稜前縁からの骨採取が行なわれている.しかし腸骨稜後縁は前縁と比較して,より多くの海綿骨が採取できることが知られている.
    われわれはこれまで,腸骨稜後縁より海綿骨を採取し顎裂への二次的骨移植術を行なった症例(後縁群)を22症例経験した.これら症例の移植床の大きさ,移植骨量,手術時問,出血量などにつき,腸骨稜前縁より海綿骨採取を行なった症例(前縁群)との比較検討を行なったところ以下の結果が得られた.
    1)移植床の大きさならびに移植骨量の前縁群と後縁群の比率は約1:2であった.
    2)手術時間と出血量の前縁群と後縁群の比率も約1:2であった.
    3)後縁群の腸骨採取にともなう術後合併症はきわめて少なかった.
    以上より,腸骨稜後縁より海綿骨を採取する方法は,術中に体位変換が必要で手術時間が長くなるという欠点があるものの,より少ない合併症で多量の海綿骨を採取できるという大きな利点を有しており,骨欠損が大きく多量の海綿骨移植が必要な症例にとっては最も有用な手段であると考えられる.
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