984年4月より1994年3月までの過去10年間に徳島大学歯学部附属病院矯正科を受診した口唇裂口蓋裂患者の実態を把握する目的で調査を行い,以下の結果を得た.
1.過去10年間における総患者に占める口唇裂口蓋裂患者の割合は6.9%で,男女の比率は若干男子の方が多かった.
2.初診時年齢には,3歳以下と10歳から13歳までの二つのピークが認められ,Hellmanの咬合発育段階では,IA期とIIIB期が最も多かった.
3.居住地域では,四国が94.4%を占めており,紹介元の医療機関には徳島大学医学部形成外科が最も多く,次いで徳島大学歯学部口膣外科の順であった.
4.第一大臼歯咬合関係では,Class II(41.3%)が最も多く,Class I(28.4%)とClass III(30.3%)は,ほぼ同じ割合であった.また,上下顎第二乳臼歯遠心面(terminal plane)の関係においては,distal steptype(45.9%)が最も多く,vertical type(32.4%),mesial step type(21.6%)の順であった.
5.裂型分類では,口唇裂6.8%,口唇口蓋裂89.4%,口蓋裂3.1%,正中裂0.6%であった.また,口唇裂,口蓋裂は女子に多く,口唇口蓋裂は男子に多くみられた.さらに裂隙の部位は,口唇裂,口唇口蓋裂ともに左側が多かった.
6.上顎爵槽弓形態において,片側性口唇裂,口唇口蓋裂患者ではbutt-joint型が69.9%で最も多く,両側性口唇裂,口唇口蓋裂患者では,切爾骨突出型が53.6%で過半数を占めていた.
7.交叉咬合の分類では,total crossbiteであるタイプ2が44.8%と最も多かった.
8.先天的欠如歯'(永久歯)は,全患者の66%に認められ,破裂側の側切歯に最も多かった.
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