日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
21 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 1996 年 21 巻 2 号 p. e1-
    発行日: 1996年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 癩痕組織の分布と顔面・歯列の成長発育との関連
    三崎 浩一, 石川 博之, 中村 進治
    1996 年 21 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者の顎顔面および歯列の成長発育上の諸問題を把握するためには,これまでの頭部X線規格写真および歯列模型を用いた形態分析に加え,成長に影響を与える諸要因を分析することが必要である.このような要因のうち特に,口蓋形成手術後の骨露出創に生じる癩痕組織は上顎骨の成長発育に抑制的に作用し,歯列弓の狭窄をもたらすことが報告されている.それゆえ,口蓋裂患者の口蓋部術後癩痕組織の分布を把握することは,矯正治療における治療方針の作成や予後の判定の上で,極めて重要である.しかし,療痕組織の分布は個々の患者で多様であり,また肉限でとらえるには限界があるため,その分布を詳細に把握することは困難であった.そこでこれまで当講座では,レーザードップラー血流計を応用して,口蓋部の骨露出創に生じた術後療痕組織を同定する方法を考案し,さらにその有効性について報告した.今回,本計測法を用いて,口蓋裂患者の口蓋部術後療痕組織の分布を詳細に解析し,さらにこれらと上顎歯列弓形態や上顎骨の成長との関連について検討を行った.その結果,以下の知見を得た.
    1,口蓋部術後癩痕組織の分布は,その広がりの特徴により4つのタイプに分けられた.
    2.口蓋部術後療痕組織の分布と矯正科初診時の上顎歯列弓形態との問に密接な関連を認め,歯列弓の変形は癩痕組織の分布のタイプに対応して特徴的であった.
    3.口蓋部術後療痕組織の分布と上顎骨の水平的および垂直的成長との問に,明らかな関連は認められなかった.
    以上より,口蓋形成手術後の骨露出創に生じた療痕組織は歯列弓の成長発育に直接的に抑制的な影響をおよぼしているものと考えられた.また,上顎骨の成長抑制に関しては,口蓋のより後方部での外科的侵襲や癩痕組織が影響していることが推察された.
  • 健常者における検討
    原 久永, 舘村 卓, 和田 健
    1996 年 21 巻 2 号 p. 80-86
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    健常者における口蓋帆挙筋活動が,鼻腔気流量および口腔内圧の変化に対してどのような対応を示すのかを明らかにすることを同的として以下の実験を行った.実験は,健常者5名を対象に行った.発声時の呼気を鼻腔に流入させるために,先端より5cmの位置に直径5mmの開窓部を設けたビニール製の強制的呼気流入用チューブを作製した.このチューブを鼻腔より挿入し発声時の呼気が鼻膣に流入したときと,チューブ内にマンドリンを挿入することによって開窓部と内膣を閉塞し,呼気の流入を阻止した場合に,被験者に/pu/を20回以上表出させてa口蓋帆筋挙活動,鼻腔気流量,口腔内圧について検討し,以下の結果を得た.
    1.鼻腔に発声時呼気が流入した場合の口蓋帆挙筋活動は,流入していない場合と比較して有意に上昇することが明らかとなった.
    2.口蓋帆挙筋活動を目的変数とし,鼻腔気流量と口腔内圧を説明変数とする重回帰分析を行った.その結果口蓋帆挙筋活動の調節には鼻腔気流量と口腔内圧の両者が関与し,鼻腔気流量の影響が口腔内圧よりも強いことが示された.
    以上のことから,健常者においても,発声時呼気が鼻腔に流入する際鼻咽腔閉鎖機能の調節に鼻膣気流量ならびに口腔内圧が影響することが明らかとなった.
  • 香林 正治, 下村 隆史, 中川 真, 出村 昇, 松野 千尋, 嶋 浩人, 鈴木 聡, 川上 重彦
    1996 年 21 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    初診時16歳4カ月,両側性唇顎口蓋裂の晩期矯正歯科治療の一治験例を報告した.最初,狭窄した上顎歯列の拡大を行ったのち,18歳2カ月より上下マルチブラケット装置を装着し,18カ月の術前矯正期間を経て,19歳8カ月時両側矢状分割術,オトガイ形成術,鼻根部骨移植が施行され,術後矯正期問中にさらに口唇修正術が追加され,20歳6カ月より保定を開始した.20歳11カ月時,口蓋痩孔閉鎖術が施行されたのち,21歳1カ月より術後補綴処置を開始し,3カ月後ドルダーバーと内冠で連結した支台歯に金属床をつけたテレスコープ義歯を装着し処置を終えた.顔貌の改善,咬合の回復により患者の高い満足を得られたが,早期治療開始により少なくとも爾歯の多発を防ぐことができれば,このような大型の補綴物装着はさけられたのではないかと考えられた.
  • 内山 健志, 重松 司朗, 松崎 英雄, 中野 洋子, 大畠 仁, 斎藤 力, 鶴木 隆重, 重松 知寛, 坂本 輝雄, 鈴木 敏正, 山口 ...
    1996 年 21 巻 2 号 p. 95-106
    発行日: 1996/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    両側口唇顎口蓋裂術後患者では顎間骨の三次元的位置異常をきたしていることが少なくない.顎間骨がfloating Premaxillaの状態で可動性を示し,前歯部が重度の過蓋咬合あるいは反対咬合を呈する場合には単独の矯正治療では,その修正がかなり困難である.このような患者には顎間骨の骨切りがしばしば必要になる.
    著者らは顎間骨の位置異常をきたした両側口唇顎口蓋裂術後患者に対し,顎聞骨の骨切りと顎裂部の骨移植を同時に行う顎間骨整位術を1974年から1995年までの22年間で9例に施行し,以下のごとき結果を得た.1.顎間骨整位術を施行し,比較的良好な結果を得るとともに,以下のごとき本手術の有用性を確認した.
    1)本手術によって顎間骨の位置異常をほぼ術前に想定したごとく,三次元的に修正することができる.
    2)本術後には顎裂部における骨架橋が形成されるので,中切歯のみならず側方歯群における矯正治療が容易となり,その結果,良好な咬合を得ることができる.
    3)鼻口腔痩を同時に閉鎖することができる.
    4)術前における美的障害および口腔機能障害を改善できる.
    2.本手術による良好な結果を得るためには,外科医と矯正歯科医との長期にわたる密接な連携が必要である.
    3.矯正治療の進歩と普及がもたらされた現在,本手術の有用性から顎間骨整位術は積極的に行われるべきである.
feedback
Top