日本口蓋裂学会雑誌
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23 巻, 4 号
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  • 嶋 香織, 緒方 克哉, 鈴木 陽, 中村 典史, 本田 康生, 後藤 圭也, 中島 昭彦, 大石 正道
    1998 年 23 巻 4 号 p. 203-213
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    九州大学歯学部第一口腔外科において1987年から1996年の問に,二次的自家海綿骨細片移植術が施行された唇顎裂および唇顎口蓋裂患者108例,133顎裂について,術後の移植骨の吸収の観点から治療成績を評価し,顎裂部への二次的自家海綿骨細片移植術の予後に影響を及ぼす因子を検討した。
    治療成績の評価には,術前,術直後,術後6か月以上経過して撮影されたX線写真を用い,移植により形成された骨架橋の垂直的高さの変化より骨吸収率を算出した。さらに,術後に移植骨の吸収に影響を及ぼす因子として,手術時年齢,裂型,犬歯の萌出状況,手術目的を取り上げ,骨吸収の程度との関連について検討を加えた。
    12歳以下の若年者において骨吸収が少なく,裂型別には両側性症例に比べて片側性症例で良好な成績が得られた。犬歯の萌出状況については,犬歯が歯槽骨から萌出し始めて歯根が未完成な場合に移植骨の吸収が少ない傾向がみられた。手術目的との関係では,術後に移植骨内に犬歯などの隣接歯牙を萌出誘導または矯正的歯牙移動を目的とした場合において良好な成績がみられた。
    以上の結果より,顎裂部への二次的自家海綿骨細片移植術の予後には,全身的ならびに局所的な骨改造活性と同様に,移植骨に持続的に加えられる生理的刺激の有無が大きな影響を及ぼすものと考えられた。
  • 儀間 裕, 砂川 元, 新垣 敬一, 平塚 博義
    1998 年 23 巻 4 号 p. 214-225
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,骨の露出を伴う口蓋粘膜骨膜欠損創の治癒過程を観察し,口蓋形成術後に生じる上顎骨の発育抑制の機序を解明することを目的とした。
    4週齢の雄性ラット32匹に対し,硬口蓋部半側の粘膜骨膜を切除し,粘膜骨膜欠損創を形成した。術後2週から12週まで一定の間隔で,口蓋の創面を光学顕微鏡ならびに走査電子顕微鏡を用いて,術創の治癒過程を組織学的に観察し,非手術側と比較した。
    その結果,口蓋粘膜欠損創の治癒過程は以下の4期に分けられた。
    第1期は,細いコラーゲン線維と細網線維が増殖し,それらが疎らな線維網を形成して凹凸不整な硬口蓋骨面と結合していた。骨組織は骨芽細胞により急速に修復された。第2期は,Sharpey線維による骨と結合組織の緊密な結合の形成によって特徴づけられ,骨および結合組織の修復は持続していた。第3期では,Sharpey線維が骨に埋入され骨と結合組織の結合はより強固になった。第4期では,緻密なコラーゲン線維が骨面に密着していたが,Sharpey稗維は骨と結合組織の境界部に残存し両者を結合していた。
    この研究結果から,口蓋粘膜骨膜欠損創に形成される癩痕組織中のSharpey線維が,硬口蓋骨と強固に結合されることによって,上顎骨の発育が抑制されるものと推察された。すなわち,pushback法による口蓋形成術の際に生じる口蓋粘膜骨膜欠損創が,上顎骨発育抑制の要因であることが示唆された。
  • 向井 陽
    1998 年 23 巻 4 号 p. 226-242
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇・口蓋裂患者の新生児期の顎顔面形態を三次元的に明らかにするために上顎顔面一体模型の分析を行った。症例の内訳は片側性不完全唇裂13例,片側性不完全唇顎裂19例,片側性完全唇顎裂16例,片側性不完全唇顎口蓋裂4例,片側性完全唇顎口蓋裂50例,両側性完全唇顎口蓋裂13例,口蓋裂単独14例の計139例で,印象採得は生後1か月頃に行った。
    片側性不完全唇裂は軽度の切歯点の患側偏位が有るのみで最も顎発育抑制がみられなかったことから本裂型を他裂型の対照とした。片側性不完全唇顎裂と片側性完全唇顎裂では,顎裂に伴う切歯点の健側への移動により切歯点はむしろ顔面正中にあった。しかし垂直的には切歯点と患側犬歯点が顎裂に向かって上方に上がっていた。片側性不完全唇顎口蓋裂では,上顎歯槽後方部の開大と健側歯槽部の外側転位の他は片側性不完全唇裂と比較して発育状態には差が少なかった。しかし片側性完全唇顎口蓋裂の患側セグメントは前下方への劣成長があり,口蓋裂単独例では上顎歯槽部全体の前方発育不良と上顎後方部の下方発育不良があった。同様に口蓋裂を有する両側性完全唇顎口蓋裂では左右セグメントの下方への劣成長は明らかではなかった。両側性完全唇顎口蓋裂以外の口蓋裂を有する裂型では出生直後より既に顎発育に問題があることから,口蓋裂単独例を含め,術前顎矯正の適用が考慮されるべきではないかと思われた。
  • 山下 夕香里, 鈴木 規子, 今井 智子, 森 紀美江, 道 健一
    1998 年 23 巻 4 号 p. 243-256
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂術後の鼻咽腔閉鎖機瀧(以下,VPC)不全に対する補綴的発音補助装置(以下,鼻咽腔部補綴物)の有効性を明らかにするために,当科で鼻咽腔部補綴物を適用し,5年以上観察し得た口蓋裂術後症例102例の治療成績を検討した。
    1.早期手術例は晩期手術例よりも1年経過時に有意に良好な治療成績が得られた。
    2.早期手術例では,装着1年経過時に6歳以下装着例の95%が有効であり,7歳以上装着例より有意に良好な治療成績を示した。
    3.晩期手術例でも,装着1年経過時では6歳以下装着例で良好な治療成績が得られたが,7歳以上装着例では治療成績が不良であった。
    4.鼻咽腔部補綴物の種類別では,バルブ型スピーチエイド(以下,バルブ型)適応例では,手術時期にかかわらず,1年経過時に85%が有効であった。バルブ型と軟口蓋挙上装置(以下,挙上子型)を時期により適用した症例では,VPCの改善が困難な症例が多かった。また,挙上子型適応例は,初診時VPCが軽度な症例であった。
    5.VPCの改善までの期間は,6か月以内の症例が多く,早期手術例は晩期手術例よりもVPCの改善率が高かった。
    6.早期手術例では,外科的治療を行わずに鼻咽腔部補綴物を撤去し得た症例は約40%であり多くの症例で装着開始時から良好な治療成績が得られた。外科的治療により撤去し得た症例は約60%であり,1年経過時および撤去後とも良好な治療成績が得られた。
    7,晩期手術例では,外科的治療を行わずに鼻咽腔部補綴物を撤去し得た症例が約30%,外科的治療により撤去し得た症例が約70%であったが,早期手術例に比べて治療成績が低かった。
    8.鼻咽腔部補綴物継続使用5例は晩期手術例であり,治療成績も不十分であった。
  • 朝田 重史
    1998 年 23 巻 4 号 p. 257-272
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    同一術者,同一術式による口唇形成一次手術を施行した片側性唇裂患者28例(唇顎口蓋裂群9例,完全唇顎裂群11例,不完全唇裂群8例)の顔面形態を,手術直前,術後2週,1か月,3か月,1年目に非接触三次元曲面形状計測装置を用いて計測し,術前の口唇外鼻形態の特徴ならびに術後経時的形態変化を裂型別に分析し,次の結果を得た。
    1.術前の外鼻は,3群いずれも患側鼻翼が健側より内後下方に位置した。外鼻の歪みと偏位の程度は唇顎口蓋裂群が最大で以下,完全唇顎裂群,不完全唇裂群の順であった。手術により鼻翼は両側共に内方に移動した。患側鼻翼が大きく前内方へ移動し,健側より前方又は同位置となり,鼻尖と鼻翼基部は正中近くに移動し,非対称が改善され,術後2週から1年まで大きい変化はなかった。
    2.術前には,3群いずれにおいてもキューピッド弓中点は健側に大きく偏位しているのに対し,口角点は患側が健側より後外方に位置した。
    術後のキューピッド弓中点はほぼ正中に位置し,3か月ないし1年後まで安定していた。前方突出は完全唇顎口蓋裂群が最も小さく,Hotz床の影響が示唆された。口角点は,手術によって患側は大きく,健側はわずかに内前方に移動し,3か月後にも完全唇裂群,唇顎口蓋裂群に口角点の左右差が残った。
    3.外鼻領域の表面積は,術前には3群いずれも患側が健側より大きい傾向を示し,唇顎口蓋裂群の患側表面積が最大であった。術後は,3群とも左右の面積がほぼ等しくなり,鼻変形が改善されていることが確認された。
    4.口唇外側領域の面積は,術前術後を通じ3群いずれも患側が健側より小さく,術後口唇領域の面積も患側が小さい傾向が持続した。
  • -鼻咽腔閉鎖不全に伴う口蓋帆挙筋疲労とスピーチエイドによる疲労抑制-
    舘村 卓, 野原 幹司, 藤田 義典, 和田 健
    1998 年 23 巻 4 号 p. 273-281
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例において,スピーチエイドの装着・非装着により発音活動時の口蓋帆挙筋疲労の程度が異なるかを検討した。Bulb-PLP装着時・非装着時において200回以上の/pu/音節の連続表出を命じ,表出開始からの順序に応じた口蓋帆挙筋活動を擬似的な時系列資料として扱い,表出順と筋活動値との問の回帰式を条件ごとに求めて筋活動の時系列変化を調べた。実験は口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例で,Bulb-PLPの装着のもとに言語治療を継続的に受けた4症例を対象にした。その結果,非装着時,装着時ともに,表出回数の増加に対する筋活動値の変化は,低下する場合や増加する場合と様々であった。しかしながら,全ての症例における非装着時の回帰係数の絶対値は装着時よりも大きく,回帰係数の差の検定の結果,4名中3名において係数の差は有意であり,その傾向は装着期間の短い例では顕著でなかった。すなわち,スピーチエイド非装着時の口蓋帆挙活動は,鼻咽腔が良好に閉鎖されている時の筋活動よりも変動が大きく,連続活動によって関連筋が疲労しやすいことを示しており,さらにスピーチエイドの鼻咽腔閉鎖機能賦活効果の背景には,会話等の連続音の表出に鼻咽腔閉鎖機能の関連筋の疲労に対する抑制効果が関与する可能性が示された。
  • 新垣 敬一, 砂川 元, 平塚 博義, 儀間 裕, 新谷 晃代, 前川 隆子, 古謝 静男
    1998 年 23 巻 4 号 p. 282-286
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂,巨口症を伴った上顎体症例を経験したので報告した。患児は在胎35週にて,体重2,222gで出生した女児である。腫瘤は口蓋裂部を通って鼻中隔より発生しているものと考えられた。切除物は7×6×6.5cmであった。この巨大な腫瘤は病理組織学的に,神経組織,重層扁平上皮組織,結合組織,軟骨組織,腺組織など三胚葉性成分が認められた。本例はArnoldの分類ではII型,Ewing,Schwalbeの分類では,III型に属するものと考えられた。
  • -顔面鼻咽腔症候群との関連-
    今井 智子, 鈴木 規子, 森 紀美江, 上笹貫 さをり, 山下 夕香里, 道 健一
    1998 年 23 巻 4 号 p. 287-299
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    われわれはこれまで特徴的顔貌を示す先天性鼻咽腔閉鎖不全症(CVPI)を顔面鼻咽腔症候群(VF:Velo-Facial syndrome)という1つの独立した疾患として取り扱ってきた。今回,当科で治療を行なったCVPI症例20例(VF症候群10例,疑われた症例1例,その他の症例9例)における染色体22q11の欠失を調査し,さらに染色体22q11の欠失の認められた症例と認められなかった症例について臨床症状および治療域績を比較したところ,以下の結果が得られた。
    1.染色体検査の結果,VF症候群およびVF症候群が疑われた症例では全例に染色体22q11の欠失が認沈られ,CATCH22症候群と診断された。一方,特徴的顔貌の認められなかった症例では22q11の欠失は1例も認められなかった。
    2.口腔内所見は,CATCH22症候群ではCalnanの3徴候がまったく認められない症例が多く,いわゆる粘膜下口蓋裂は1例もなかったが,非症候群では3徴候全てが揃った粘膜下口蓋裂が多かった。
    3.軟口蓋造影X線検査による鼻咽腔形態は,CATCH22症候群では,軟口蓋が非薄で短い工型および転口蓋の長さと咽頭腔の深さとの関係が不均衡なII型が多く,非症候群では軟口蓋が薄く短い1型が多かった。
    4.精神発達については,非症候群に比べてCATCH22症候群で軽度の精神発達遅滞を示す症例が多かった。
    5.合併症については,CATCH22症候群で先天性心疾患,耳奇形が認められた。
    6.治療成績については,非症候群に比べてCATCH22症候群で予後不良の症例および鼻咽腔閉鎖の改善に長時間を要する症例が多く認められた。
    7.今回の結果から,特徴的顔貌はCATCH22症候群を疑う臨床的に有用な手がかりとなることが示唆された。
  • -4~5歳時と7~11歳時の言語成績-
    糟谷 政代, 澤木 佳弘, 水谷 英樹, 上田 実
    1998 年 23 巻 4 号 p. 300-305
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1982~1986年に名古屋大学医学部付属病院口腔外科で,1歳代に初回口蓋形成手術を施行した88症例の構音・鼻咽腔閉鎖機能・痩孔について,4~5歳時と7~11歳時で検査し,その変化を検討した。その結果:1)4~5歳時に正常構音を習得していたものは全体の68.2%であったが,7~11歳時には80.7%と良好であった。2)両検査時に正常構音を習得していたグループは,痩孔がなく,あるいは口蓋閉鎖床などで疲孔への対応がなされており,良好な鼻咽腔閉鎖機能が獲得されていた。3)検査時年齢により異常構音の原因と発現率は異なっていた。4)従来からの報告と同様鼻咽腔閉鎖機能と痩孔は構音にかなり関与する要因であることを再確認した。
  • 増田 郁子, 夏目 長門, 下村 泰代, 杉本 修一, 神谷 博昭, 横井 基夫, 河合 幹
    1998 年 23 巻 4 号 p. 306-311
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    正中上唇裂の発生頻度は顔面裂のうちでもまれな疾患であり,発生学的にもきわめて興味深い。
    今回,われわれは正中上唇裂の1例を経験したのでその概要を報告する。症例は,生後8か月男児(体重8,3309)。上唇部の審美障害を主訴として来院した。口唇は,赤唇正中部にわずかなnotch状の披裂と,cupid'sbow正中部に段差を認めた。人中部は幹度陥凹と人中稜の大きさに多少の左右差を認めた。口腔内は,上唇小帯の強直と右下顎乳切歯と乳側切歯の癒合歯を認めた。X線所見では,上顎正中部の歯槽骨に切痕状破裂を認めた。口腔,顔面以外には特に異常は認ず。全身麻酔下にて口唇形成術と上唇小帯移動術を施行した。手術は,口輪筋の正中断裂部を縫合した後,上唇小帯を上方に移動し,左右赤唇が均等になるよう形成した。術後口唇の形態は良好に回復されているが,歯槽骨の披裂に対しては経過観察とした。
  • 伊東 節子, 古賀 義之, 水野 明夫, 佐々木 元賢
    1998 年 23 巻 4 号 p. 312-323
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    two-stage methodを実施した両側不完全唇顎口蓋裂児1例について硬口蓋閉鎖前後15年間,18歳時まで言語と顎発育についてケアーを行ったので,その概要を述べる。
    軟口蓋形成手術は1歳8か月時に実施され,obturatorは同術後3か月時より装着された。3歳11か月時,同装着時における言語機瀧は年齢並みであった。しかし,未閉鎖の硬口蓋に対して親の不安が著明であり,可及的早期の閉鎖を訴えた。4歳11か月時に歪み,置換の他に口蓋化構1音がごく1部に発現した。しかしこれは構音治療を必要とせず,5歳5か月時に自然消失を認めた。
    硬口蓋閉鎖は6歳11か月時に実施し,同術後6か月時に良好な言語機能を認めた。歯科矯正治療は7歳8か月時より開始した。矯正科初診時言語障害は認められなかったが,12歳時に呼気鼻漏および開鼻声が出現していた。しかしその程度は僅少であり,処置は不要と考えられた。
    歯科矯正治療は,混合歯列では拡大を行ったが,永久歯列では不要であった。上顎左側側切歯および右側第一小臼歯を抜去後,マルチブラケット装置による永久歯の整列と咬合の確立を行った。本報告例では顎関係に大きな問題がみられなかったため従来の手術方法に比較し,治療は比較的容易であったと考えられた。
    以上から,本報告例におけるtwo-stagemethodの実施は言語,顎発育共に良好な結果であったと考えられた。ただし,本手術方法では,軟口蓋形成手術以来,未閉鎖の口蓋に対する親の不安がみられ,これに対して適切な指導および説明の重要性そして鼻咽腔閉鎖機能に対する長期ケアを要することが示唆された。
  • 三島 木節, 吉増 秀實, 根岸 明秀, 高坂 晋哉, 天竺 光雄, 三村 保
    1998 年 23 巻 4 号 p. 324-330
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者では他の先天奇形を合併することがある。しかし,舌裂を伴うことは極めて稀であり,oral-facial-digitalsyndrome(OFDS)の特徴的所見として報告されている他はほとんど見られない。われわれは口蓋裂に舌裂,舌強直症,舌腫瘤,手指の奇形を合併した症例に遭遇し,治療する機会を得たので,OFDSとの関連を検討し報告する。
    患者は,生後2か月女児で,1994年9月9日出生(3.276g)。出生時より口蓋裂,舌裂,舌強直症,舌腫瘤,手指に奇形を認めた。8か月時に舌形成術,舌小帯伸展術および舌腫瘤摘出術,1歳6か月時に口蓋形成術を施行した。現在3歳9か月で言語発育の遅滞を認めるが,良好な鼻咽腔閉鎖機能を獲得している。
    本症例における口蓋裂,舌裂,舌小帯強直,舌腫瘤の口腔内所見,手指の所見はOFDSの報告例I,II,III,IV型に近いと考えられたが,顔面の奇形を合併しておらず,OFDSより口蓋裂に他の奇形が合併したものと考えられた。
  • 川原 一郎, 斉藤 功, 石井 一裕, 花田 晃治
    1998 年 23 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ラーゼン症候群は多発性関節脱臼と前額突出,低鼻梁,眼裂離開などの特異な顔貌を主たる症状とする稀な疾患である。30~50%に口蓋裂を伴うとされているが,歯科領域での報告は少なく,本邦でも過去において報告はみられない。今回,われわれは,ラーゼン症候群患者を歯科矯正科にて治療,管理していく機会を得たので報告する。
    患者は8歳2か月の男児で,口蓋裂を伴い,上顎に3本の永久歯先天欠如が疑われた。さらに,側面セファログラム分析では,鼻骨,上顎骨を含む中顔面領域の前方への成長発育がきわめて悪いことが明らかとなった。
  • 佐藤 耕一, 和田 健, 舘村 卓, 原 久永, 迫田 隅男, 芝 良祐
    1998 年 23 巻 4 号 p. 336-341
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    UVP変法による咽頭弁移植術後の軟口蓋咽頭弁基部の垂直的位置と厚さの変化を検討するために,11名の口蓋裂術後患者の側面頭部X線規格写真について検討した。被験者は全て咽頭弁移植術前には発音補正装置の装着下に良好な鼻咽腔閉鎖機能と構音を獲得した症例であり,10歳以後にUVP変法による咽頭弁移植術を施行した症例である。側面頭部X線規格写真を術後1年毎に3年間撮影し,軟口蓋咽頭弁複合体基部に設定した計測点をディジタイザーを用いて計測した。その結果,軟口蓋咽頭弁複合体基部の垂直的位置と厚さは術後1年の問に変化を示すものの,以後は口蓋平面に対して安定した垂直的位置と厚さを維持していることが示された。本研究の結果から,軟口蓋咽頭弁複合体基部は口蓋平面の高さに一致して設定される必要があること,UVP変法は機能的に安定した軟口蓋咽頭弁複合体を付与する有効な咽頭弁移植術であることが示された。
  • 寺田 員人, 大橋 靖, 八木 稔, 小林 正治, 中野 久, 野村 章子, 清水 光, 石井 一裕, 田口 洋, 小林 富貴子, 瀬尾 憲 ...
    1998 年 23 巻 4 号 p. 342-353
    発行日: 1998/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    991年新潟大学歯学部附属病院では,チームアプローチによる系統的な診療を円滑に行うために各診療科の代表で構成される口蓋裂診療班が発足した。その一環として639名の患者が登録されている(1997年8月31日現在)。これらの患者が,現行のチームアプローチの下でどの程度系統的な診療を受けているか評価することを目的として患者動向を調査した。
    1996年12月以前に生まれ,初回手術を当病院にて行った登録患者433名(全登録患者639名の67.8%)を対象とし,生年月,裂型,性別,現住所,各科における受診状況(初診時年齢,管理状況)を集計した。対象患者の性別は,女性207名,男性226名であった。裂型は,唇裂単独が26名,唇顎裂が70名,唇顎口蓋裂が199名,口蓋裂単独が138名であった。現住所は,新潟県内が373名,うち新潟市が70名,長岡市が32名,上越市と新発田市が共に18名の順に多く,県外が60名であった。
    対象患者は全例口腔外科に平均年齢4.3か月で初診後,言語治療室に332名(平均初診時年齢;1歳3か月,以下同じ),予防歯科に198名(2歳1か月),小児歯科に236名(2歳4か月),矯正科に209名(5歳9か月),保存科に7名(13歳1か月),補綴科に3名(14歳9か月)が受診していた。各科が管理している対象患者数は,それぞれ口腔外科371名,言語治療室166名,予防歯科127名,小児歯科163名,矯正科174名,保存科2名,補綴科1名であった。
    今後,各診療科の診療内容の向上に伴う診療体制に対応できるような順応性のあるチームアプローチに発展させる。
  • 1998 年 23 巻 4 号 p. e1a-
    発行日: 1998年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1998 年 23 巻 4 号 p. e1b-
    発行日: 1998年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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