日本口蓋裂学会雑誌
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29 巻, 1 号
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  • 臨床症状,合併症,言語機能を中心として
    北野 市子, 朴 修三, 加藤 光剛
    2004 年 29 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    22q11.2欠失症候群児73例の臨床症状,合併症,知的発達および言語症状について検討し,次のような結果となった.
    1.臨床症状としては特異顔貌が99%に認められ,その他,低身長,口角下制筋麻痺などが観察された.
    2.合併症では心疾患が73%と高率に認められ,その内ファロー四徴症が半数以上を占めていた.その他,低カルシウム血症,副甲状腺機能低下,耳介の軽微変形,指趾の異常,頸・脊椎骨の異常など全身にわたる合併症が観察された.
    3.IQまたはDQについては65%が指数60以下であった.
    4.言語症状では鼻咽腔閉鎖機能(VP)不全はなく構音障害を呈する者は11例で,そのうちの4例には声門破裂音がみられた.VP不全を示した42例中,29例に手術を行った.その結果,咽頭弁形成術の有効性が示唆された.鼻咽腔閉鎖機能が改善しても会話で正常構音に至るには長期間を要した.
  • 口唇形成術から口蓋形成術まで
    本田 康生, 鈴木 陽, 笹栗 正明, 中村 典史, 大石 正道
    2004 年 29 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    完全片側性唇顎口蓋裂児における口唇形成術に伴う歯列弓形態の三次元的成長変化の解析を行った.資料は九州大学歯学部附属病院にて口唇裂と口蓋裂の形成手術を受けた片側性唇顎口蓋裂児31名の口唇形成術時と口蓋形成術時に採得した上顎歯列弓模型である.三次元形状入力装置で歯列弓模型の形状を読み取り,口蓋皺襞を基準として同一患者の歯列弓模型の重ね合わせを行い計測点の変化を調べた.その結果,上顎歯列弓各部位における三次元的変化が以下のごとく明らかになった.
    1.上顎結節部は外側(頬側),後方,また下方(口腔側)へ成長する
    2.乳切歯部は後方かつ下方へ成長する
    3.乳犬歯部は内側(裂側)および前下方へ成長するまた,各計側点の空間移動距離の大きさは上顎結節部>歯槽弓前方部>乳犬歯部の順であり,上顎結節部の成長変化量が最も大きかった.以上より,口蓋皺襞を用いた重ね合わせによって,口唇形成術後の上顎歯列弓の各部位における三次元的変化の詳細が明らかになった.
  • 大庭 知子, 三木 善樹, 岡崎 雅子, 高橋 巧, 茶野 秀太郎, 堀内 信也, 森山 啓司
    2004 年 29 巻 1 号 p. 16-29
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    顎裂部二次的自家腸骨海綿骨移植術(顎裂部二次骨移植術)が矯正治療後の上顎歯列弓の安定性に与える影響を検討することを目的として,動的矯正治療中に上顎歯列弓を拡大した片側性口唇口蓋裂(UCLP)患者のうち,顎裂部二次骨移植術を行った症例について形態学的な分析を行った.対象は,徳島大学医学部・歯学部附属病院矯正歯科にて,学童期から成長終了期にかけて上顎歯列弓の拡大を伴う動的矯正治療を行ったUCLP患者のうち,動的矯正治療中に顎裂部二次骨移植術を行った8症例(移植群)と移植術を行わなかった7症例(対照群)とした.移植群の初診時平均年齢は11歳3か月であり,対照群の初診時平均年齢は11歳0か月であった.研究資料として,初診時,動的矯正治療終了時,保定時の石膏口腔模型を用いて,前歯部被蓋,歯列弓幅径ならびに歯列弓長径を裂側・非裂側について計測し,変化量および変化率を検討したところ以下のような結果を得た.
    1・前歯部被蓋に関しては,保定期間中の変化量,変化率において水平被蓋・垂直被蓋ともに移植群の方が小さい傾向を示した.
    2.歯列弓幅径に関しては,保定期間中の変化量は移植群の方が小さく,特に第一大臼歯幅径においては,裂側・非裂側ともに移植群の方が有意に小さな値を示した.
    3・歯列弓長径に関しては,裂側では犬歯長径・第一小臼歯長径・第一大臼歯長径ともに,移植群において変化率が高い傾向が認められた.
    以上より,顎裂部二次骨移植術は,動的矯正治療後の上顎歯列弓の安定性に影響を与える可能性が示唆されたが,今後は資料数の増加や症例の統一による再検討を行う必要があると考えられる.
  • 第1報 4歳時と5歳時における言語成績
    寺尾 恵美子, 高木 律男, 大橋 靖
    2004 年 29 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Furlow法によるHotz床併用二段階口蓋形成手術法を施行した症例で,軟口蓋形成術以前の早期から定期的に言語管理が可能であった4歳児37例(F4群),5歳児33例(F5群)を対象に,鼻咽腔閉鎖機能,正常構音の獲得過程および異常構音の種類について調査した.さらに,Furlow法による言語機能獲得過程の特徴を調査する目的で,Widmaier変法により軟口蓋形成術を行った症例(W群)と比較し,以下の結果を得た.
    1.鼻咽腔閉鎖機能は,4歳時,5歳時ともにF群においてW群より高率に,かつより早期に獲i得されていた.
    2.一方,正常構音の獲得は,F群では異常構音が発現せず正常構音を獲得する症例が多く,異常構音が出現した場合でも自然消失する症例が多かった.
    3・また,F群では4歳時,5歳時とも異常構音と診断される構音の数がW群より少なく,会話明瞭度についても,より明瞭であると思われた.以上より,4歳時,5歳時の鼻咽腔閉鎖機能と構音は,W群よりもF群の方が良好であると考えられた.
  • アンケートによる多施設共同研究
    松井 義郎, 大野 康亮, 福田 雅幸, 高橋 哲, 立川 敬子, 朝波 惣一郎, 山本 一彦, 藤澤 健司, 白土 雄司, 富永 和宏, ...
    2004 年 29 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    目的:近年,顎裂部に対する歯科インプラント治療の報告がみられるようになってきた.しかし,従来の報告には多数例を長期間,詳細に検討した報告は見当たらない.本研究は,顎裂部への歯科インナラント治療の有用性をアンケート形式による多施設共同研究により明らかにすることを目的とした.
    方法:アンケートでは,対象患者の一般的事項,骨移植,インプラント手術,補綴治療,インプラント周囲の軟組織に対する手術,インプラントの残存率,患者の満足度などを質問した.結果:研究には11施設が参加した.登録患者は103名(男性47名,女性56名,片側性78名,両側性25名)であった.インプラント埋入前骨移植は全例自家骨だった.移植時期は,インプラント埋入5か月~121か月前(平均32か月前)であった.インプラント埋入時の患者年齢は9歳8か月~61歳(平均22歳7か月)であった.大半の使用インプラントの直径は3.25~4.0mm,長さは13~15mmであった.24名には,埋入時同時骨移植が施行されていた.軟組織に対する手術は19名に行われた.上部構造は,全て固定式であった.累積残存率は5年経過時に98.6%,10年経過時に95.4%であった.ほとんど全ての患者が治療に満足していた.
    結論:以上の結果より,本治療法が顎裂の治療法の一つとして,きわめて有用であることが明らかとなった.
  • 第1報
    山本 真弓, 森口 隆彦, 浜中 孝臣, 稲川 喜一, 篠山 美香, 三河内 明
    2004 年 29 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1990年4月から2002年3月末迄の12年間に,川崎医科大学形成外科で初回手術を施行した口唇裂口蓋裂及び口蓋裂単独症例について臨床統計学的観察を行い,以下の結果が得られた.
    1)過去12年間に初回手術を施行したのは,口唇裂口蓋裂群308名(片側性246名,両側性62名),口蓋裂単独群85名の計393名であった.
    2)外来新患総数,年度別手術件数からみた初回手術件数は,1996年以後増加傾向にあった.
    3)患者の居住地域分布は,岡山県188名(47.8%),広島県102名(26%) ,愛媛県38名(9.7%)で,中国四国地方のものが全体の94.7%をしめていた.
    4)口唇裂口蓋裂群の披裂程度は,完全186名,不完全122名で,裂型別にみると,口唇裂では不完全,口唇顎裂では両者ほぼ同数,口唇顎口蓋裂では完全が多く認められた.
    5)片側性症例の左右差は1.9:1で,いずれの裂型においても左側に多く認められた.
    6)性差は,口唇裂口蓋裂群は男児に,口蓋裂単独群は女児に多い傾向にあった.
    7)血縁関係は,4.8%に認められ,口蓋裂単独群は口唇裂口蓋裂群と比較して約2倍多く認められた.
    8)同一家計内発現頻度は,9.9%であった.
    9)合併異常の発現率は19・6%で,中でも口蓋裂単独群に発現する頻度が最も高く,種類も最多かつhighriskであった.
  • 代田 達夫, 斎藤 茂, 中納 治久, 山口 徹太郎, 柴崎 礼子, 向山 和孝, 歌門 美枝, 中村 篤, 大野 康亮
    2004 年 29 巻 1 号 p. 57-70
    発行日: 2004/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂では,上顎の劣成長によって重篤な反対咬合を来す場合がある.このような症例では,口蓋に形成された疲痕組織によって上顎の前方移動が制限をうける.そこで,従来の骨切り術に代わる有効な治療法として,上顎に対する骨延長術が適用されつつある.今回われわれは,上顎の劣成長によって反対咬合を来した口唇口蓋裂3症例に対し,創内型装置による上顎骨延長術と下顎枝矢状分割術による咬合改善を行ったので,その概要を報告する.
    上顎骨に対し,high Le Fort I 型骨切り術を行い,術後7日間の待機期問をおいて骨延長を開始した.延長速度は1日あたり1.0mmとし,10mm延長したところで延長操作を終了した.上顎骨延長終了後約6ケ月経過してから,骨延長装置を撤去して,ミニプレートにより骨延長部を固定した.同時に,下顎枝矢状分割術による下顎後方移動を行って咬合状態を改善させた.その結果,良好な顔貌および咬合状態が獲得され,口唇口蓋裂患者への創内型装置を用いた上顎骨延長術は有用な方法であることが示された.
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