日本口蓋裂学会雑誌
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29 巻, 3 号
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  • 4歳時の評価
    峪 道代, 西尾 順太郎, 山西 整, 山西 由紀子, 平野 吉子, 住田 恵子, 松浦 尚子
    2004 年 29 巻 3 号 p. 247-254
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    目的:早期二期的口蓋裂手術を施行した片側性完全唇顎口蓋裂30例(二期群)の4歳時における言語評価をまとめ,本治療法の有用性を検討した.この方法は,口蓋閉鎖を12ヵ月時にFurlow変法により軟口蓋閉鎖,18ヵ月時に硬口蓋閉鎖を行なう二期的手術法である.
    方法:評価の結果を,従来行なってきたpushback法による一期的口蓋閉鎖術を施行した片側性完全唇顎口蓋裂41例(PB群)と比較した.
    結果:口蓋閉鎖後の口腔機能の習得および子音産生の時期は,二期群がPB群に比べて遅れる傾向を示した.吸うこと,吹くことの習得と口唇音産生は両群間に有意差がみられ,硬口蓋に残存した裂隙の影響が推察された.4歳時の言語評価において,鼻咽腔閉鎖機能の獲得率は二期群93.3%,PB群95.1%であった.正常構音を獲得したものは二期群23例(76.7%),PB群26例(63.4%)であった.構音障害は口蓋化構音が多く,二期群6例(20.0%),PB群12例(29.3%)に認められた.口蓋化構音を示した子音は,二期群では歯(歯茎)音で,PB群はこれに加えて歯茎硬口蓋音もあった.両群間で口蓋化した子音の種類に差があったのは,二期群の方が上顎歯槽弓形態の発育が良好であったことにも関連すると考えられた.
    結論:早期二期的口蓋裂手術法による治療は,一期的口蓋閉鎖術による治療と比較しても良好な結果が得られた.
    硬口蓋の閉鎖時期については,口蓋裂児にみられる表出言語と構音の発達的特徴を考慮するならば,月齢24ヵ月まで遅らせることも可能と考えられた.
  • 4歳時における評価
    山西 由紀子, 西尾 順太郎, 山西 整, 平野 吉子, 峪 道代, 足立 忠文, 宮 成典, 向井 隆雄
    2004 年 29 巻 3 号 p. 255-269
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    大阪府立母子保健総合医療センター口腔外科で1997年以降行ってきた「早期二期的口蓋裂手術法」の有用性を検討するため,本法を施行した片側完全唇顎口蓋裂症例を対象に4歳時までの上顎歯槽弓形態を検討した.
    対象:片側完全唇顎口蓋裂患児72例を対象症例とした.内訳は,生後約12ヵ月時のFurlow変法による軟口蓋閉鎖と約18ヵ月時の硬口蓋閉鎖から成る早期二期的口蓋裂手術(Earlytwo-stagepalatoplasty;ETS)施行症例30例(ETS群),生後約12ヵ月におけるpushback法を用いた一期的口蓋閉鎖を施行した症例42例(PB群),健常児66例(Cont群)であった.
    研究方法:4歳時までに採取した上顎歯槽石膏模型を研究資料とし,上顎結節点問,乳臼歯点問,および乳犬歯点間の歯槽弓幅径および裂幅,majorおよびminorsegmentの前後径の8項目の計測を行った.
    結果:4歳時,ETS群の上顎歯槽弓形態は,前後径,幅径共にCont群には及ぼなかったものの,全ての計測点でPB群よりも有意に大であった.さらに,ETS群における12ヵ月時(軟口蓋閉鎖直前)から4歳時までのmalorsegment前後径の増加率は,Cont群よりも大であった.幅径の変化率をETS群とCont群で比較すると,ETS群では18ヵ月時~2歳時(硬口蓋閉鎖後)における乳犬歯点間幅径の増加率が低かったのに対し,Cont群における乳犬歯点間幅径は,同期間中に著しい成長を示すことが明らかとなった.また,ETS群の硬口蓋裂幅は,軟口蓋閉鎖後に急速に縮小した.
    結論:早期二期的口蓋裂手術は一期的pushback法と比較し,4歳時において,より良好な上顎歯槽弓形態を獲得し得ることが明らかとなった.さらに,音声言語発達面の許容範囲内で,硬口蓋閉鎖時期を再検討する事で,早期二期的口蓋裂手術後,4歳時の歯槽弓幅径がより改善される可能性が示唆された.
  • 第一報手術時期別骨架橋形成について
    石井 正俊, 森山 孝, 森田 圭一, 今泉 史子, 小村 健, 石井 良昌, 大山 紀美栄, 本橋 信義, 飯田 敏明, 谷口 尚, 小野 ...
    2004 年 29 巻 3 号 p. 270-277
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1986年8月から1998年12月までの12年間に当科において顎裂部への二次的骨移植を施行した229名,289顎裂の中で移植骨として腸骨海綿骨を使用し,資料の整った188名,233顎裂について,手術時期により3グループに分類し,骨移植部の予後に関して検討を加え,下記の結果を得た.分類は,グループ1:顎裂隣i在歯未萌出群.グループ2:顎裂隣在歯既萌出で18歳未満の群.グループ3:18歳以上の群とした.
    1.全188名の手術時年齢は7歳から47歳で平均17.0歳であった.グループ別内訳はグループ1,42名で平均9.6歳,グループ2,56名で平均14.1歳,グループ3,90名で平均22.0歳であった.
    2.被覆軟組織の内訳は局所粘膜骨膜弁137名,頬粘膜回転弁10名,舌弁41名であった.
    3.骨架橋形成率は,全体では93.6%(218/233顎裂)であった.グループ別ではグループ1では98 .0%(49/50顎裂),グループ2では97.1%(67/69顎裂),グループ3で89.5%(102/114顎裂)であり,グループ分類と骨架橋形成には有意な関連が認められなかった(p=0.025).
    4.歯槽頂側骨架橋形成の程度に関しては,スコア1(75%以上)の割合では,全体で32.1%(74/233顎裂),グループ別ではグループ1では62.0%(31/50顎裂),グループ2では31 .9%(22/69顎裂),グループ3では18.4%(21/144顎裂)であり,グループ分類との間に有意差を認めた(p<0.001).スコア1および2の合計(50%以上)の割合では,全体で60.1%(140/233顎裂)であった.グループ別では,グループ1で84.0%(42/50顎裂),グループ2で58.0%(40/69顎裂),グループ3で52.6%(60/114顎裂)であり,本グループ分類との問で有意差を認めた(P<0.001).
  • 廣瀬 健, 鈴木 聖一, 大山 紀美栄
    2004 年 29 巻 3 号 p. 278-286
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    先天性疾患により顎顔面に形態異常を発現する患者の顎顔面の成長発育は,正常なものとは異なる様相をたどると考えられ,その機構や顎整形力に対する応答性などについての基礎的研究を行うためには,顎顔面頭蓋に形態異常を発現する実験動物モデルが必要となる.このうち,遺伝子操作や母獣に催奇形物質を投与して作製した奇形発症動物は,他の致命的な内臓奇形を合併するため出生直後に死亡し,生後の成長観察が不可能となる場合が多い.本研究の目的は,胎仔外科の手法を用いて出生時において顎顔面領域に形態異常を発現し, .かつ,出生後も育成可能な実験動物モデルを作成する新しい方法を開発することにある.
    妊娠14日目のICRマウス母獣をネンブタール麻酔下にて開腹し,子宮に切開を入れ胎仔を羊膜に包まれた状態で子宮より露出させた.次に眼科用アルゴンレーザー光線をマウス胎仔の鼻口唇部に照射して小さな傷を作成した.その際,アルゴンレーザー光線は透明な羊膜を透過するため羊水の漏出はなかった.レーザー照射終了後マウス胎仔を母獣の腹腔内に戻して腹壁を縫合し,子宮外妊娠の形で妊娠が継続された.これら胎仔手術をうけたマウス胎仔は妊娠18日目に帝王切開にて誕生し,同日出産した雌マウスを養母として育てられた.胎仔手術を受けたマウス胎仔の54.6%が誕生時に生存し,生存した新生仔の55.4%の鼻口唇部に形態的非対象が認められた.これらの新生仔マウスは生後3ケ月以上育成され,全身の成長とともに鼻口唇部においてレーザー照射側と非照射側の形態的相違がさらに明瞭になった.これらの結果により,アルゴンレーザーを用いた胎仔外科の手法が顎顔面領域に奇形を発現する実験動物モデルの作成に有用であることが明らかとなった.
  • 平川 崇, 佐藤 麻衣子, 宮崎 英隆, 松本 亨, 三島 木節, 小林 眞司, 安村 和則, 山本 康, 鳥飼 勝行
    2004 年 29 巻 3 号 p. 287-297
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    神奈川県立こども医療センターを受診した片側完全唇顎口蓋裂患者18名の術前顎矯正の治療成績について報告する.
    術前顎矯正に使用した装置は,裂部周囲を埋める加工を施した上顎石膏模型の上で製作した硬性レジン製の口蓋床を用いた.維持安定には床の裂部唇側に付与されたフックから頬部へ向けて貼付したCheekstrapと義歯安定剤を用いた.
    術前顎矯正に要した期間は平均で生後17日から生後204日までであった.
    口蓋床装着により一回哺乳量,一回哺乳時間,時間あたり哺乳量,一日哺乳量共に改善した.それらの値はホッツ床による哺乳改善効果と変わらない結果であった.
    全例で,セグメント裂側断端の頭側偏位の改善と誘導された成長による裂部の狭小化が観察された.顎裂において平均値で術前10.8mmが術前顎矯正により1.5mmにまで狭められた.硬口蓋裂後端幅において平均で術前13.0mmが術前顎矯正により8.5mmにまで減少した.歯槽弓幅は緩やかに増加し同年齢非裂者の平均値を上回っていた.
    本法により比較的速やかにcollapseすることなく裂部狭小化が叶うことが示された.
  • 森田 圭一, 石井 正俊, 森山 孝, 今泉 史子, 小村 健
    2004 年 29 巻 3 号 p. 298-304
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇裂に対する外鼻修正術を行う際,問題となる点の1つとして,術後の後戻りが挙げられる.今回我々は,片側性口唇裂の外鼻修正手術術前術後の側貌頭部X線規格写真分析と鼻翼幅の計測を行い,術後の後戻りについて検討した.
    対象は,2001年7月から2003年1月の問に当科にて田嶋の逆U字切開による鼻翼軟骨吊り上げ法を基本とした外鼻修正手術を施行した片側性口唇裂で十分な資料が採取可能であった23名とした.計測項目は,鼻唇角,鼻尖高(側貌頭部X線規格写真分析),鼻翼幅(実測長)とし,術後1か月時の資料を基準として術後の後戻りについて検討した.
    術後12か月時における後戻り率はそれぞれ,鼻唇角:平均29.2%,鼻尖高=平均29.2%,鼻翼幅:平均25.4%であった.いずれの計測項目においても術後1か月から術後3か月までの変化が大きく,後戻り全体の約60%がこの期間に生じる.ついで,術後3か月から術後6か月にかけて後戻りの程度は弱まり,術後9か月頃にほぼ安定する傾向にあった.
    また,手術による外鼻形態変化の大きい群と小さい群の2群にわけて比較した結果,いずれの評価項目においても術後12か月時における後戻りの程度に有意差は認められなかった.
    以上より,片側性口唇裂の外鼻修正手術後の後戻り率は,手術による外鼻形態の変化量の程度に関わらず術後12か月で約30%であることが示唆された.
  • 山本 一郎
    2004 年 29 巻 3 号 p. 305-315
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂をもって生まれた児をもつ母親は直接授乳が出来ないばかりか,哺乳びんを使用しても授乳が困難なことがある.その問題点を明らかにし,授乳を容易にすることを目的としてアンケート調査を行った.対象は当院に通院中の口唇口蓋裂児の母親200名である.14項目からなる質問紙に対し161名から有効な回答が得られた.アンケートを分析したところ,以下の結果が得られた.
    1)出産後母子の対面の時期は出産当日が39%と最も多かったが,5日以上遅延した例も20%あった.しかし,近年出産当日の対面は増加傾向にあった.
    2)産前の授乳指導は約64%の母親が受けていた.産後,乳房の手当てや哺乳びんに関する指導は70%,児の抱き方や姿勢の指導は50%の母親が受けていた.
    3)ホッツ床等の人工口蓋床(以下ホッツ床等)の指導は16%の母親しか受けていなかった.ホッッ床等を使用した母親の70%は授乳が容易になったと答えた.
    4)多くの母親が母乳での育児,それも直接授乳での授乳を望んでいたが,成功例は少なかった.多くは医療技術によって直接授乳が可能になることを希望していた.
    5)実際の授乳方法は人工乳を哺乳びんでの授乳(40.5%)が最も多く,搾乳して哺乳びん(36.9%),直接授乳(9.4%),鼻腔栄養チューブ(7.8%),スプーン(5.2%)の順であった.母親は,乳児の姿勢や与え方,哺乳びんや乳首の工夫等,様々な工夫をこらしていた.
    6)授乳に際して困ったことは:1.鼻や口からミルクがよくこぼれた2.授乳に時間がかった3.母親のストレスが多かった等があった.
    7)授乳困難時の相談相手は59%の人があったとし,その相手は看護師が最も多かった.しかし約40%の人が相談相手さえなかった.哺乳びんや飲ませ方に関する情報は役立ったが,同じ状況の母親から実際の情報を得られれば良かったという声もあった.
    口唇口蓋裂児をもつ母親が授乳に際して多くの困難を経験し,種々の工夫を行っていることが分かった.一方で医療関係者から得られる情報は限られており,口蓋裂治療に携わる者として,授乳にも積極的に関わる必要があると考えた.
  • 飯野 光喜, 佐々木 知一, 幸地 省子, 福田 雅幸
    2004 年 29 巻 3 号 p. 316-321
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    顎裂部骨移植術に準じた痩孔閉鎖術で顎裂と硬口蓋裂を同時に閉鎖し得た,硬口蓋のみ未手術であった右側口唇口蓋裂成人女子1症例の概要を報告する.
    症例:23歳,女性,右側口唇顎口蓋裂.初診時口腔内所見は,口唇と軟口蓋は閉鎖されていたが,硬口蓋・顎裂は未手術で口蓋中央部に大きな披裂が認められた.披裂閉鎖の目的で通常の顎裂部骨移植術に準じた手術を行なった.顎裂部唇側粘膜骨膜の切開・剥離に引き続き顎裂近遠心両側の粘膜骨膜を前方から披裂部後端まで剥離し,それぞれ鼻腔側と口腔側に切開後両側の粘膜骨膜を縫合して鼻腔底と口蓋を形成した.この際,肥大して披裂部に嵌入していた下鼻甲介下部を切除した.次いで,腸骨海綿骨細片を前方の顎裂唇側部から硬口蓋後端に至る骨欠損部に密に充填した.最後に粘膜骨膜弁にて顎裂唇側を閉鎖して手術を終了した.術後経過は良好で,2年経過時の所見では,鼻口腔痩,硬口蓋は完全に閉鎖され,歯科用口内X線写真,CT所見ともに良好な骨架橋形成が認められた.
    以上,本症例において顎裂部骨移植術は顎裂の閉鎖のみならず硬口蓋の大きな旗孔閉鎖に対しても有効であった.
  • 福田 雅幸, 宮本 洋二, 飯野 光喜, 幸地 省子
    2004 年 29 巻 3 号 p. 322-324
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂患者の口蓋形成術後の鼻口腔痩は,顎裂が存在する症例では二次的顎裂部骨移植術時に閉鎖することが多い.しかし,摂食障害や構音障害がある場合には,その改善に痩孔閉鎖装置が必要である.従来の痩孔閉鎖装置は,アクリル樹脂とワイヤーによる床装置が用いられてきたが,床内面への食物残渣の停滞による不快感や維持を乳歯に求めることから十分な安定が得られず,その使用・管理にあたっては保護者や患児の精神的苦痛を伴う場合も少なくない.そこでわれわれは,常温重合型粘弾性レジンを用いて,痩孔周囲のアンダーカットを利用した小型の栓塞子を考案した.本装置は,作製法が容易で,扱いやすく,装着時の違和感も少ない装置が完成した.
  • 藤原 百合
    2004 年 29 巻 3 号 p. 325-327
    発行日: 2004/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂言語の国際的評価基準に関するNIDCD(NIH)ワークショップの経過と暫定的同意事項を報告した.
  • 2004 年 29 巻 3 号 p. e1-
    発行日: 2004年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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