愛知学院大学歯学部附属病院矯正歯科における唇顎口蓋裂患者に関する実態を把握するために1983年から2002年までの20年間に当科を受診した唇顎口蓋裂患者329名(男子172名,女子157名)を調査対象に年代的,統計的観察を行い,以下の結果を得た.年代的観察は20年間の資料を5年ごとのグループ(Group1:1983年~1987年,Group2:1988年~1992年,Group3:1993年~1997年,Group4:1998年~2002年)に分けて比較,検討を行った.
1)20年間の唇顎口蓋裂患者数は329名であり,矯正歯科総患者数の6.7%を占めていた.男女比は1:09であった.
2)裂型別比率は片側性唇顎口蓋裂が135名(41.0%)と最も多く,次いで両側性唇顎口蓋裂が54名(16.4%)であった.
3)初診時年齢は8歳が20.4%と最も多く,6歳から9歳までが55.6%と過半数を占めていた.また,初診時年齢のピークに著しい年代的変化は認められなかった.
4)∠ANB(平均値)は片側性唇顎口蓋裂と口蓋裂において年代的に増加傾向が認められた.
5)Crossbiteは,全唇顎口蓋裂患者の88.4%に認められ,年代的には前歯及び両側側方歯・臼歯にcrossbiteを有する者が67.3%(Group1)から40.5%(Group4)にまで減少し,crossbiteのない者が増加していた.
6)先天性欠如歯は上顎左側側切歯(29.6%)が最も多く,次いで上顎右側側切歯(23.1%)であった.先天性欠如歯の保有者は唇顎口蓋裂患者の68.2%で,先天性欠如歯部位と顎裂の一致率では左側唇顎裂において最も高い確率で顎裂部に一致した先天性欠如歯が認められた.
7)動的治療開始時に選択された矯正装置はポーター型拡大装置が最も多く,Group1では40.8%で,Group4では50.0%に増加していた.また,骨格的な治療に用いられる装置としてはチンキャップを用いた治療から上顎前方牽引装置を用いた治療へと移行していた.
抄録全体を表示