日本口蓋裂学会雑誌
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30 巻, 3 号
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  • 新垣 敬一, 砂川 元, 新崎 章, 天願 俊泉, 新谷 晃代, 国仲 梨香, 比嘉 努, 仲宗根 敏幸, 上田 剛生, 高良 清美, 仲間 ...
    2005 年 30 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂患者の顎裂部骨欠損に対する二次的新鮮自家腸骨海綿骨細片移植の目的は,歯槽堤形態の改善,顎裂部への側切歯・犬歯などの萌出誘導,鼻翼基部の陥凹の改善などである.現在用いられる移植骨は,腸骨を初め様々な部位から採取がされているが,当科では海綿骨が豊富で採取骨量が十分に得られることから,腸骨より腸骨海綿骨を採取している.今回,われわれは採骨部の術後評価と患者に対し腸骨からの採取に関するアンケート調査を行ったので報告した.対象は,1994年から2002年の9年間に,当科において顎裂部自家骨移植術を施行した97症例である.検討項目は,手術時年齢,採骨部の皮膚切開の長さ,骨採取量,術後から歩行開始までの口数とし,アンケート調査を含め検討を行った.
    結果:皮膚切開の長さの平均は21.1mm,骨採取量の平均は2.Ornl,歩行開始日までの期間の平均は術後2.8日で,手術時年齢との明らかな関連性は認められなかった.皮膚切開後の搬痕に対するアンケートの結果では気にならないと答えたのが76例中72例(94.7%)であった.
  • 山城 崇裕, 窪田 泰孝, 田中 武昌, 吉住 潤子, 二宮 史浩, 吉浦 一紀, 白砂 兼光
    2005 年 30 巻 3 号 p. 236-241
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    歯科用X線CT(D-CT)を用いて口唇口蓋裂患者における二次的骨移植術前の顎裂形態と術後の骨架橋形成について評価を行った.D-CTは矢状断前頭断および軸位の各断層面でシンクロナイズした明瞭な像を示すことができ,術前の正確な顎裂形態を三次元的に把握することが可能であった.また,術後の骨架橋形成の評価でも,近心隣接歯牙の歯根長を基準にした任意の高さでの唇舌的な骨架橋形成幅の把握が可能であった.歯科用口内X線写真による垂直的骨架橋形成幅の評価との比較ではD-CTとの評価結果と異なる場合があった.
    以上より,口唇口蓋裂患者における顎裂形態および骨移植術後の骨架橋形成状態の三次元的評価にD-CTは有用であると思われた.
  • 北野 市子, 朴 修三, 加藤 光剛
    2005 年 30 巻 3 号 p. 242-247
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    鼻咽腔閉鎖機能不全を認める22qll.2症候群症例に対して咽頭弁形成術を行い,手術前後の鼻咽腔閉鎖機能,構音,改善に要した期間について非症候群症例と比較検討し,以下の結果を得た.
    1.22群は全例,IQ75以下の知的障害を示していた.
    2.術前の構音状態については,両群に有意差は認められなかった.
    3.術後のブローイング時呼気鼻漏出消失までの期間について,22群は症例によるバラツキがみられたが,平均値には有意な差は認められなかった.
    4.術後の母音発声時呼気鼻漏出消失までの期問について,22群が非22群に比べて有意に長期間を要した.
    5.術後の構音について,会話レベルまで改善したものは22群47%,非22群92%でX2検定により有意差が認められた.また手術で会話まで自然改善した症例は,22群で18%だったのに対し,非22群では62%であった.
    これらのことから,本症候群に対する咽頭弁形成術は,構音の改善に一定の効果を持ちうるが,会話における改善には症例によって差があることが示唆された.
  • 神原 春絵, 阿部 厚, 中野 雅哉, 前多 雅仁, 清水 幹雄, 黒岩 裕一朗, 吉田 憲司, 栗田 賢一
    2005 年 30 巻 3 号 p. 248-253
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1983年4月から2003年3月までの20年間に当科を受診した口唇口蓋裂患者について臨床統計的観察を行い以下の結果を得た.
    1.総患者数は571名であった(男性298名,女性273名).
    2.受診経路は産婦人科からの紹介が179名(36.8%)と最も多く,次いで小児科の175名(36.0%)であり,紹介のほとんどを産婦人科と小児科が占めていた.
    3.患者の居住地は愛知県内が375名(65.6%)と大部分を占め,次いで岐阜県88名(15.4%),三重県63名(11.1%)の順であった.その他遠隔地居住の患者は23名(4.1%)にみられた.
    4.症例別分類では,唇顎口蓋裂が240名(42.0%)と最も多く,次いで口蓋裂が116名(20.3%),唇顎裂が102名(17.9%),粘膜下口蓋裂が66名(11.6%)の順であった.
    5.男女比は,唇顎口蓋裂,粘膜下口蓋裂では男性が多く,口蓋裂患者では女性が多い傾向が認められた.また唇顎裂には男女差がなかった.
    6.口唇裂の破裂側は,片側性242名(70.8%),両側性97名(28.4%)で,左右比は1.3:1で左側に多く認められた.
    7.他の先天異常を合併した患者は571名中73例(12.8%)に認められた.
  • 荒垣 芳元, 石井 千佳子, 橋本 和哉, 松本 尚之, 神原 敏之, 川本 達雄
    2005 年 30 巻 3 号 p. 254-258
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    大阪歯科大学附属病院矯正歯科における口唇裂口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1992年4月より2002年3月までの10年間に,当科を受診した口唇裂口蓋裂患者125名について統計的観察を行い,以下の結果を得た.
    1.10年間に当科を受診した総患者数3,254名中,口唇裂口蓋裂を有する矯正患者は125名で,3.8%を占めていた.
    2.居住地域は大阪府(760%)を中心とする近畿地方に集中していた.
    .男女比は男性46.4%,女性53.6%であった.
    4.初診時平均年齢は13歳9か月(2歳3か月~37歳)で,年齢分布は4歳から15歳の範囲に73 .2%が含まれていた.5.裂型別頻度は,片側性口唇口蓋裂が60.8%,両側性口唇口蓋裂が13.6%,片側性口唇裂が11.2%,口蓋裂単独が14.4%であった.
  • 森 重樹, 根来 武史, 伊藤 拓二郎, 岩田 敏男, 後藤 滋巳
    2005 年 30 巻 3 号 p. 259-269
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    愛知学院大学歯学部附属病院矯正歯科における唇顎口蓋裂患者に関する実態を把握するために1983年から2002年までの20年間に当科を受診した唇顎口蓋裂患者329名(男子172名,女子157名)を調査対象に年代的,統計的観察を行い,以下の結果を得た.年代的観察は20年間の資料を5年ごとのグループ(Group1:1983年~1987年,Group2:1988年~1992年,Group3:1993年~1997年,Group4:1998年~2002年)に分けて比較,検討を行った.
    1)20年間の唇顎口蓋裂患者数は329名であり,矯正歯科総患者数の6.7%を占めていた.男女比は1:09であった.
    2)裂型別比率は片側性唇顎口蓋裂が135名(41.0%)と最も多く,次いで両側性唇顎口蓋裂が54名(16.4%)であった.
    3)初診時年齢は8歳が20.4%と最も多く,6歳から9歳までが55.6%と過半数を占めていた.また,初診時年齢のピークに著しい年代的変化は認められなかった.
    4)∠ANB(平均値)は片側性唇顎口蓋裂と口蓋裂において年代的に増加傾向が認められた.
    5)Crossbiteは,全唇顎口蓋裂患者の88.4%に認められ,年代的には前歯及び両側側方歯・臼歯にcrossbiteを有する者が67.3%(Group1)から40.5%(Group4)にまで減少し,crossbiteのない者が増加していた.
    6)先天性欠如歯は上顎左側側切歯(29.6%)が最も多く,次いで上顎右側側切歯(23.1%)であった.先天性欠如歯の保有者は唇顎口蓋裂患者の68.2%で,先天性欠如歯部位と顎裂の一致率では左側唇顎裂において最も高い確率で顎裂部に一致した先天性欠如歯が認められた.
    7)動的治療開始時に選択された矯正装置はポーター型拡大装置が最も多く,Group1では40.8%で,Group4では50.0%に増加していた.また,骨格的な治療に用いられる装置としてはチンキャップを用いた治療から上顎前方牽引装置を用いた治療へと移行していた.
  • 阿部 厚, 前多 雅仁, 倉田 周幸, 黒岩 裕一朗, 清水 幹雄, 栗田 賢一
    2005 年 30 巻 3 号 p. 270-274
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    今回我々は,咽頭弁形成術術後に,迷走神経反射と考えられる徐脈を認めた一例を経験したので報告する.
    患者は5歳の女児.発音の不明瞭を主訴に某病院耳鼻科を受診.発音の評価および口腔内精査を勧められ,当科を受診した.初診時,体格中等度栄養状態良好で全身状態に特記すべき所見は認められなかった.全身麻酔下にて咽頭弁形成術を施行したが,手術に際し前投薬は施行せず,麻酔導入維持には笑気-酸素-セボフルランを用いた.術中の循環動態は安定しており,心電図異常も認められなかつた.術後3日目より徐脈を呈したが,心電図波形には問題が認められなかった.その後も徐脈は継続したが,術後7日目に床副子を除去したところ,改善傾向を認めた.
    今回,床副子および術後の浮腫による軟口蓋刺激による迷走神経反射や自律神経異常が考えられた.
  • 須佐美 隆史
    2005 年 30 巻 3 号 p. 275-285
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    2004年12月,スイス,ジュネーブの世界保健機関(WHO)本部において,「WHO Meeting on International Collaboration to Reduce the Health-Care Burden of Craniofacail Anomalies」という頭蓋顔面異常についての国際共同研究に関する国際会議が開かれた.会議は3日間行われ,1)疫学,治療遺伝学,遺伝子一環境相互作用,予防についての国際協力の現況,2)頭蓋顔面異常に関する集学的研究モデルの報告,3)各国および各WHO地域における共同臨床研究の現況と問題点,4)頭蓋顔面異常に関する国際データベースと登録制度,5)良好な遺伝学研究の普及・研究とその資金,の5つのセッションに分け,報告,討議がなされた.
    会議では日本の現況を述べることが求められ,1)日本における臨床的多施設共同研究は始まったばかりであること,2)これまでに,日本口蓋裂学会の学術調査委員会による「口唇・口蓋裂の発生状況と治療の実態に関する調査」と,日本口蓋裂学会の協賛で新潟大学が主導して行った「片側性唇顎口蓋裂治療の関する多施設比較研究(Japancleft)」が行われたこと,3)口本における共同研究は日本口蓋裂学会主導で行われるべきであること,4)共同研究を進めるには,その目的と利点についての理解が必要であるが,それには時間がかかると思われること,5)WHOからの勧告があれば,共同研究の推進に役立つ可能性のあることを報告した.
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