日本口蓋裂学会雑誌
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33 巻, 3 号
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  • 新垣 敬一, 天願 俊泉, 仲間 錠嗣, 石川 拓, 國仲 梨香, 牧志 祥子, 比嘉 努, 前川 隆子, 須佐美 隆史, 砂川 元
    2008 年 33 巻 3 号 p. 259-272
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    当科での初回口蓋形成術は,従来型の口蓋粘膜骨膜弁後方移動術から顎発育に配慮した粘膜弁変法を用いている.その結果,顎発育障害は軽減され,歯科矯正治療は必要とされるが比較的良好な咬合関係を保てるようになった.そめ反面,pushbackを行うため,硬口蓋前方部・顎裂部に痩孔が生じやすい.そのため当科では,非観血的に痩孔を閉鎖する目的で術後早期から痩孔閉鎖床を装着している.また,長期に床を使用することは,術後のcollapseを軽減し,正常咬合の獲得に大きな影響を及ぼしているものと推察される.そこで今回,言語および顎発育の観点から床の効果について明らかにすることを目的に検討を行った.
    対象および方法:当科において一貫治療を施行した患者を対象とした.言語に関しては,1)就学期までの正常言語獲得状況2)鼻咽腔閉鎖機能成績,顎発育に関しては,1)Hotz床使用による顎発育への効果2)HellmanのDental Age IIC~IIIA時のGoslon Yardstickによる咬合評価および顎顔面形態について検討を行った.
    結果:
    言語に関しては,
    1)就学時までの正常言語の獲得の割合は88%であった.
    2)鼻咽腔閉鎖機能成績は良好,ほぼ良好が89.7%であった.
    顎発育に関しては,
    1)Hotz床使用群の前方歯槽部は良好な形態を示していた.
    2)HellmanのDental Age IIC~IIIA時のGoslon Scoreは,全体で3.09であった.また,痩孔閉鎖床使用の有無によるGoslon Scoreは,使用群の平均が2.49,非使用群の平均は3.6であり,咬合良好群(Excellent,Good)は,良好な顎顔面発育を呈していた.
    以上の結果より口蓋形成術後の床の使用は,言語および顎発育の面から有用であることが示唆された
  • 二宮 史浩, 窪田 泰孝, 矢原 佳枝, 鈴木 陽, 松崎 幸代, 緒方 祐子, 白砂 兼光
    2008 年 33 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,鼻咽腔閉鎖不全(VPI)に対するRepushback法の治療効果を明らかにする目的で,1996年から2006年の11年間に当科で行ったRepushback法の16例(口蓋裂単独4例,片側性唇顎口蓋裂6例,両側性唇顎口蓋裂6例)を対象に術前術後の鼻咽腔閉鎖機i能(VPF)を検討した.VPFは聴覚判定による主観的評価と検査による客観的評価に分けて,術前と術後1年で評価した.Repushback法施行年齢は平均ll歳7カ月±3歳6カ月(n=16)で,術前の言語治療期間は平均8年1カ月±2年2カ月(n;16)であった.術前,スピーチエイドや軟口蓋挙上装置は16例中15例で使用され,その平均使用期問は2年3カ月±1年3カ月(n=15)であった.主観的評価では術前は全例で開鼻声がみられたが,術後では全例でその開鼻声がある程度改善され,そのうち8例では完全に消失した.客観的評価では術前は全例が不全であったが,術後は良好が13例,軽度不全が3例であった.以上より,Repushback法によって全症例でVPIがある程度改善した.よって,保存的治療で改善がみられないVPIに対して,Repushback法は有用であると示唆された.
  • 堀切 将, 朴 修三, 松井 貴浩
    2008 年 33 巻 3 号 p. 280-289
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Pierre Robin Sequence(以下PRSと略)は,小顎症に由来する舌根沈下,呼吸障害を主症状とする症状群であり,重症例では出生直後から呼吸管理を必要とすることもある.しかし,PRSの小顎症には明確な定義がないため,診断基準や呼吸管理方法にも未だ定まった見解があるとはいえない.今回われわれは,静岡県立こども病院形成外科を受診したPRS児36例の初診時日齢紹介理由,家族歴,合併症,入院時日齢,入院日数治療方針について遡及的に検討し,当院における呼吸管理方法の指針を検討した.口蓋裂は全例に合併していた.その他の合併症を持つPRS(s-PRSと略)児は9例(25.0%)と従来の報告とほぼ一致していた.入院加療を必要とした症例は16例(44.4%)で,そのうち気管内挿管や外科的処置を必要とした症例は5例のみ(気管内挿管3例,うち1例が気管切開.舌固定,舌小帯切開を各1例)で,最近10年間は外科的処置を行っていなかった.保存的治療で管理した児と外科的処置を行った児の間では入院日数に有意差はなかった.s-PRS児と合併症のないPRS(ns-PRSと略)児の間で入院時日齢や入院日数に有意差はなかった.外科的処置を必要とする可能性が高いと考えられるs-PRS児の発生率はあまり高くないことと,大半の症例は保存的治療で症状が改善したことから,PRS児に対する呼吸管理方法は保存的治療を第一選択とすべきであると考えられた.
  • 山本 悠子, 工藤 元義, 岩崎 弘志
    2008 年 33 巻 3 号 p. 290-303
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1979年以降の方針で治療を行った227例(新群)と,それ以前の270例(旧群)の言語成績および治療内容について検討を行い,以下の結果を得た.
    1.新群:2歳以下手術症例173例の術後5年目診査による鼻咽腔閉鎖機能は,全例が閉鎖良好と診断された.言語成績は,正常言語117例(67.6%),言語障害56例(32.4%)であった.開鼻声症例は無く,その後の治療の継続で言語障害残存例は,14例(8%)に減少した.
    2.新群:2歳1カ月以上(20歳以上成人を含む)初回手術症例54例については,いずれも術後の鼻咽腔閉鎖機能が良好となり,正常言語を獲得した.年長症例のほとんどが,術前に重篤な構音障害を呈したが,術前術後の構音訓練早期パラタルリフトの装着,言葉の発表会などを通じ,正常構音を獲得した.20歳以上成人症例5例も全て正常言語を獲得した.
    3.旧群の2歳以下手術症例230例の術後5年目鼻咽腔閉鎖良好は203例(88.3%)に留まり,言語障害は,開鼻声を伴う障害と声門破裂音が29例(12.6%)であった.2歳1カ月以上(20歳以上成人を含む)初回手術症例40例では,年長症例の多くが新群と同様術前に鼻咽腔閉鎖に関連する重篤な構音障害を呈していたが,術後正常構音を獲得した症例は40例中20例(50%)に留まった.20歳以上成人症例5例の改善は無かった.
    4.口蓋化構音は新群,旧群とも両側唇顎口蓋裂に多く認められ,構音訓練を行い得た症例は正常構音を獲得した.治療にあたっては床の装着などを考慮に入れた定期的訓練が必要であり,矯正治療との連携も不可欠であった.
    2歳以下手術症例の声門破裂音や年長症例の重篤な構音障害に対する訓練の効果は,術後の鼻咽腔閉鎖機能の獲得が必要条件であった.口蓋化構音では,口腔の形状に関連する問題への配慮も必要ではあるが,側音化構音とともに構音訓練そのものの重要性が示唆された.
  • 1997年から2006年の10年間
    角野 晃大, 梶井 貴史, 松野 美乃, Satimary ENDO LEONARDO, 田中 聡, 和田 悟史, 塚本 祐理, 工藤 悠介 ...
    2008 年 33 巻 3 号 p. 304-314
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    北海道大学病院歯科診療センター矯正歯科専門外来を受診した口唇裂・口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1997年1月から2006年12月までの10年間における当科初診の患者を対象として年代的,臨床統計的検討を行い,以下の結果を得た.
    1.口唇裂・口蓋裂患者の来院数は452名であり,矯正歯科総患者数の169%を占めていた.
    2.男性222名,女性230名で,男女比は1:1.04であった.
    3.初診時年齢は7歳が26.1%と最多で,6歳から8歳までの患者が64.4%と過半数を占めていた.近年初診時年齢のピークがわずかに若年化していた.
    4.裂型別比率は口唇口蓋裂(54.2%),口唇顎裂(19.9%),口蓋裂(20.3%),口唇裂(4.9%),その他(0.7%)であったが,近年わずかに口唇顎裂患者の来院数が増加していた.側性は口唇口蓋裂,口唇顎裂,口唇裂全て左側が多かった.口唇裂,口唇口蓋裂では男性が多く,口唇顎裂,口蓋裂では女性が多かった.
    5.永久歯の先天性欠如歯の保有者は56.9%であった.先天性欠如歯の歯種は上顎右側側切歯(25.4%),上顎左側側切歯(24.9%)の順に多かった.顎裂側と同側の上顎切歯もしくは犬歯の先天性欠如を示した者は,右側口唇顎裂で83.3%,左側口唇顎裂で65.0%,右側口唇口蓋裂で79.5%,左側口唇口蓋裂で74.7%と高い一致率を示した.
    6.前歯部オーバージェットがプラスであるものは33.6%,マイナスが61.3%であった.
    7.初診時∠SNAは口唇顎裂,片側性口唇口蓋裂で経時的増加傾向を示し,初診時∠ANBは片側性口唇顎裂,片側性口唇口蓋裂で経時的に増加傾向を示した.
    8.動的治療に用いられた最初の矯正装置は上顎前方牽引装置,リンガルアーチ,側方拡大装置の順に多く使用された.経時的にリンガルアーチの使用割合が減少し,上顎前方牽引装置の割合が増加していた.
  • 松野 美乃, 梶井 貴史, 角野 晃大, Mohammad Khursheed Alam, 菅原 由紀, 岡本 亨, 岩崎 弘志, 山方 秀 ...
    2008 年 33 巻 3 号 p. 315-321
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1997年から2006年までの10年間に北海道大学病院歯科診療センター矯正歯科専門外来を受診した口唇裂・口蓋裂患者における出生時から当科初診時までの治療および居住地域の実態を把握し,その地理的影響を分析することを目的として臨床統計学的調査を行ない,以下の結果を得た.
    1.口唇形成手術の施行医療機関は北海道大学病院形成外科が76.2%と最も多く,北海道内に点在する総合病院の割合は7.7%であった.
    2.口蓋形成手術の施行医療機関は北海道大学病院形成外科が54.7%と最も多く,同病院歯科診療センターを含めた北海道大学病院全体では84.7%であった.一方,北海道内総合病院の割合は4.7%であった.
    3.来院した口唇口蓋裂患者のうち,動的術前顎矯正は10.9%,Hotz床は23.0%の患者に用いられていた.その使用頻度を2年毎の推移で比較すると,動的術前顎矯正は1997年から2002年まで来院した口唇口蓋裂患者のうち10~20%の範囲で施行されていたが,2003年以降は減少傾向にあった.一方,Hotz床の使用は2003年より増加し,50%前後の患者に用いられていた.
    4.来院患者の紹介元医療施設は北海道大学病院内からが90.3%を占めており,北海道内総合病院および歯科医院からの紹介は各々1.5%であった.
    5.来院患者の居住地域は当施設が所在する札幌市が230名(50.9%)で最も高い値を示した.また北海道の全支庁から患者が来院していることが明らかとなった.
    6.初診時の前後的不正咬合では反対咬合が55.4%と最も多く,特に口蓋形成手術の既往がある患者の67.8%に,口蓋形成手術の既往がない患者の22.8%に反対咬合が認められ,口蓋形成手術の有無による前後的不正咬合分類の分布に差が認められた.
    7.初診時の垂直的不正咬合(開咬・過蓋咬合)の割合には,口蓋形成手術の有無による差は認めらなかった.
  • 最近の20年間(1987~2006)について
    北 浩樹, 三谷 英稔, 中條 哲, 幸地 省子
    2008 年 33 巻 3 号 p. 322-329
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    東北大学病院附属歯科医療センター顎口腔機能治療部に来院した口唇裂・口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1987年から2006年までの20年間における当部初診の患者を対象として臨床統計学的検討を行い,以下の結果を得た.
    1.20年間の登録患者数は1806例であった.年間登録者数は最多である1991年の128例以来,減少傾向にあった.
    2.居住県は宮城64.2%,山形10.2%が多く,東北6県で95.6%を占めた.
    3.裂型分布は口唇口蓋裂43.2%,口蓋裂27.6%,口唇顎裂22.9%,口唇裂6.3%であった.裂側は口唇口蓋裂,口唇顎裂,および口唇裂のいずれも左側が多かった.性差は口唇裂,口唇顎裂,および口唇口蓋裂は男子に多く,口蓋裂は女子に多かった.
    4.初診時年齢は0歳が最多(42.9%)で,平均は4歳10カ月であった.初診時年齢は低下傾向にあった.
    5.紹介元施設は東北大学病院形成外科が41.9%を占めた.
    6.口唇裂初回手術施設は東北大学病院形成外科が45.2%,口蓋裂初回手術施設は東北大学病院形成外科が35.0%を占めた.
  • 小原 浩, 西尾 順太郎, 平野 吉子, 峪 道代, 小林 千恵, 木全 正彰, 谷口 佳孝, 並川 麻理
    2008 年 33 巻 3 号 p. 330-337
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    987年1月に大阪府立母子保健総合医療センターに口腔外科が開設されて,開設後20年となる2006年12月までに当科を受診した口唇裂・口蓋裂患者一次症例について臨床統計をとり,以下の結果を得た.
    1.1834人の口唇裂・口蓋裂患者が来院した.調査対象となる一次症例は1366人であった.このうち年度別来院患者数は増加傾向にあり,前の10年間で583人,後の10年間で783人であった.
    2.年度別手術件数は増加傾向にあった.
    3.患者の居住地分布は大阪府(1053人,77.1%)が最も多く,特に南大阪地域(794人,57.1%)が多かった.
    4.1366人中1106人(81.0%)が院外からの紹介であった.院内の専門各科からの紹介は260人(19.0%)であった.
    5.裂型分類では口唇(顎)口蓋裂が522人と最も多く,口蓋裂370人,口唇(顎)裂343人,粘膜下口蓋裂131人の順であった.
    6.口唇(顎)裂,口唇(顎)口蓋裂,粘膜下口蓋裂は男子に多く,口蓋裂は女子に多くみられたが,全体としての男女比は1.1:1.0であった.
    7.口唇裂披裂部の側性は片側が77.0%と多く,左右別では左側が多かった.
    8.初診時月齢では口唇(顎)裂,口唇(顎)口蓋裂,口蓋裂では生後1カ月までに来院するものが多くを占めたが,粘膜下口蓋裂では2歳を過ぎて受診した症例が多かった.
    9.他の先天異常(major anomaly)を合併するものは1366人中352人にみられ,合併異常の発現率は25.8%であった.minor anomalyを含めると522人(38.2%)にみられた.特に,口蓋裂や粘膜下口蓋裂では合併異常の発現率が高かった.
  • 堀切 将, 朴 修三, 木下 幹雄, 松本 大輔
    2008 年 33 巻 3 号 p. 338-344
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    Pierre Robin Sequence(以下,PRSと略す)は,舌根沈下・小顎症と気道閉塞を三徴とする比較的まれな疾患である.患児の出生後最初に直面する問題は閉塞性呼吸困難であり,適切な呼吸管理を行わなければ死に至る場合もある.
    今回われわれは,合併症のない孤発性PRS児2例に対して独自の改良を加えたエアウェイの使用(K-Wireつきエアウェイ)により,侵襲のある外科的処置を行うことなく呼吸管理を行うことができた.この方法の評価は側貌頭位規格写真と睡眠時無呼吸検査にて行った.
    この方法の長所は,(1)外科手術を必要としない,(2)エアウェイを入れていない鼻孔からも呼吸が可能となる,(3)容易に各症例に応じた形を提供でき,即座に患児の成長に合わせられる,ことである.
    短所は,(1)エアウェイの内腔が分泌物で詰まりやすい,(2)入院期間が長くなる,(3)生後2カ月前後で呼吸状態が悪くなることがありうる,ことであるが,家族も治療に参加することでこれらの問題は改善させられると考えられる.呼吸困難を呈するPRS児に対する呼吸管理として,本法は最初に試みる価値があるものと考えられる.
  • 朴 修三, 堀切 将, 加藤 光剛, 北野 市子
    2008 年 33 巻 3 号 p. 345-353
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    静岡県立こども病院では,口蓋裂手術後や粘膜下口蓋裂および先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症にみられる中等度以上の鼻咽腔閉鎖機能不全の治療方法として,咽頭弁手術を第1選択としている.今回われわれは1989年4月から2007年12月までの問に同一術者が同一術式(Hogan変法)で行った咽頭弁手術症例に対して検討を加えた.症例数は120例で,内訳はCLP 33例,CP24例,SMCP 43例,CVPI 20例,手術時年齢は平均7歳5ヶ月,術後経過観察期間は平均5年6ヶ月であった.結果は以下であった.
    1)手術時間は平均74分,術中出血量は平均31mlで,輸血を行った症例はなかった.
    2)鼻咽腔閉鎖機能は115例(95.8%)が改善し,ll1例(92.5%)でGood以上の鼻咽腔閉鎖機能を獲得していた.5例で変化がなく,悪化した症例はなかった.
    3)構音障害では,声門破裂音が43例から17例,口蓋化構音は6例から2例に減少していた.
    4)術後は全例で翌日までの酸素投与を必要としたが,術後早期の創離開や出血はなく,再手術を要した症例はなかった.中長期の合併症として,閉鼻声が5例に見られたが,明らかな睡眠時無呼吸発作や新たな中耳炎の出現や悪化を訴えた症例もなかった.
    われわれのHogan変法による1咽頭弁手術は,口蓋裂術後,粘膜下口蓋裂,先天性鼻咽腔閉鎖機i能不全症にみられる鼻咽腔閉鎖機能不全の治療方法として,鼻咽腔閉鎖機能や構音障害の安定した改善が得られ,合併症も少ない有用な方法であった.
  • 堀切 将, 朴 修三, 松本 大輔
    2008 年 33 巻 3 号 p. 354-361
    発行日: 2008/10/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇裂・口蓋裂児は一般人口と比して先天性心疾患の合併率が高いことはよく知られている.しかし,このような児に対して唇裂・口蓋裂の手術を行う場合心臓手術と唇裂・口蓋裂手術のどちらを優先するか,手術時期や術前・術後管理について検討した報告はこれまでほとんど見られていない.今回われわれは,1977年4月から2007年3月の30年間に静岡県立こども病院形成外科を受診した唇裂・口蓋裂児を調査し,臨床統計学的検討を行うとともに,手術時期や手術適応および術前・術後管理についても検討を加えたので若十の考察を加えて報告する.全症例数は1541例(男818例,女723例)であった(男女比1.13).そのうち先天性心疾患を合併した111例(男56例,女55例.全体の7.2%)を対象とした.粘膜下口蓋裂・先天性鼻咽腔閉鎖機能不全と診断された患児の先天性心疾患合併率(15%,27%)は唇裂・口蓋裂児全体の合併率に比して有意に高かった.合併する先天性心疾患ではFallow四徴症が最も多く(31名),当院循環器科を受診した患児の罹患率と比較して有意に高かった.心臓以外の合併症を持つ患者は86例(77%)であった.症候群を合併した患者は40例(36%)で,うち22q11.2欠失症候群が最も多く23例であった.唇裂手術を施行した症例は26例で,手術時期は平均生後5.9カ月であった.心臓手術より先に唇裂手術を行った症例は20例であった.口蓋形成術を施行した症例は31例で,手術時期は平均2歳6カ月であった.心臓手術より先に口蓋手術を行った症例は8例であった.生命予後にかかわる先天性心疾患では,心臓治療が優先されるのは当然であるが,患児のQOL,整容面や言語発達なども考慮し,適切な時期に口唇裂や口蓋裂手術が行われることが望まれる.先天性心疾患を合併した唇裂口蓋裂治療においては,治療に携わる心臓外科医,循環器科医麻酔科医と密接に連携することにより,症例ごとのきめ細やかな対応が必要であると考えられた.
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