北海道大学病院歯科診療センター矯正歯科専門外来を受診した口唇裂・口蓋裂患者の実態を把握する目的で,1997年1月から2006年12月までの10年間における当科初診の患者を対象として年代的,臨床統計的検討を行い,以下の結果を得た.
1.口唇裂・口蓋裂患者の来院数は452名であり,矯正歯科総患者数の169%を占めていた.
2.男性222名,女性230名で,男女比は1:1.04であった.
3.初診時年齢は7歳が26.1%と最多で,6歳から8歳までの患者が64.4%と過半数を占めていた.近年初診時年齢のピークがわずかに若年化していた.
4.裂型別比率は口唇口蓋裂(54.2%),口唇顎裂(19.9%),口蓋裂(20.3%),口唇裂(4.9%),その他(0.7%)であったが,近年わずかに口唇顎裂患者の来院数が増加していた.側性は口唇口蓋裂,口唇顎裂,口唇裂全て左側が多かった.口唇裂,口唇口蓋裂では男性が多く,口唇顎裂,口蓋裂では女性が多かった.
5.永久歯の先天性欠如歯の保有者は56.9%であった.先天性欠如歯の歯種は上顎右側側切歯(25.4%),上顎左側側切歯(24.9%)の順に多かった.顎裂側と同側の上顎切歯もしくは犬歯の先天性欠如を示した者は,右側口唇顎裂で83.3%,左側口唇顎裂で65.0%,右側口唇口蓋裂で79.5%,左側口唇口蓋裂で74.7%と高い一致率を示した.
6.前歯部オーバージェットがプラスであるものは33.6%,マイナスが61.3%であった.
7.初診時∠SNAは口唇顎裂,片側性口唇口蓋裂で経時的増加傾向を示し,初診時∠ANBは片側性口唇顎裂,片側性口唇口蓋裂で経時的に増加傾向を示した.
8.動的治療に用いられた最初の矯正装置は上顎前方牽引装置,リンガルアーチ,側方拡大装置の順に多く使用された.経時的にリンガルアーチの使用割合が減少し,上顎前方牽引装置の割合が増加していた.
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