日本口蓋裂学会雑誌
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33 巻, 1 号
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  • Goslon Yardstickを用いた検討
    石川 拓, 新垣 敬一, 天願 俊泉, 仲間 錠嗣, 砂川 元
    2008 年 33 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,片側性唇顎口蓋裂児の混合歯列期における咬合状態について調べ,Goslon Yardstickによる咬合評価が頭蓋顎顔面形態の良否との関連性について検討を行った.対象は,当科にて一貫治療を行っている片側性唇顎口蓋裂児のうち,混合歯列前期に相当する21名である.これら21名の歯列弓石膏模型と側方頭部X線規格写真を用いた.方法は,21症例をGoslon Yardstickを用いた咬合評価を行ない,咬合良好群と咬合不良群に分けた.また角度分析11項目と距離計測11項目のセファロ分析を行った.結果角度分析では咬合良好群の∠SNA,∠ANBが咬合不良群に比べ有意に大きな値を示した.距離計測においては,咬合良好群のAr-AとS-Nが有意に咬合不良群に比べ大きな値を示した.Ar-GoとN-Goにおいては咬合不良群が咬合良好群に比して有意に小さい値であった.今回の研究から,上下顎が調和した良好な咬合を獲得することが,口唇口蓋裂児の中顔面形態に影響をおよぼす一因であることが示唆された.
  • 清水-山木 貴子, 岡藤 範正, 中塚 久美子, 柳澤 宗光, 山田 一尋, 栗原 三郎
    2008 年 33 巻 1 号 p. 12-24
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    従来,反対咬合症例に対して,チンキャップや上顎前方牽引装置などの矯正治療装置が使用されてきているが,それらの装置を低年齢小児に用いると頭蓋変形や顎関節に影響を及ぼす可能性がある.そこで,低年齢から快適に使え,前歯部反対咬合を改善する装置として機能的顎矯正装置の一つであるムーシールドが応用されてきている.これは,外力による顎整形力を用いることなく,筋機能の調和を求めることによって,原因論的に不正咬合を治療していく装置である.これまでに,乳歯列反対咬合にムーシールドを応用した症例発表は見られるが,口唇裂口蓋裂患者に応用したという報告は見られない.口唇裂口蓋裂患者は,口唇の緊張が強く口唇圧が強いため,上顎骨の劣成長による反対咬合が多数見られ,本装置が非常に有用であると考えられる.そこで我々は松本歯科大学歯科矯正学講座に来院した,口唇裂口蓋裂患者2名について2年間本装置を応用した結果を検討した.
    症例15歳6カ月女児,オーバージェットOmm,オーバーバイトOmm,ターミナルプレーンメジァルステップタイプ,ANB4.0°切端咬合可診断左側口唇口蓋裂切端咬合である.
    症例25歳7カ月女児,オーバージェット-lmm,オーバーバイト4mm,ターミナルプレーンメジアルステップタイプ,ANB1.0°切端咬合不可診断口蓋裂上顎骨の劣成長と下顎骨の過成長による反対咬合であった.
    症例1においてはANBが4.0°から5.5°に増加し,骨格的な改善がみられ,上顎骨の前下方成長と下顎骨のわずかな時計回り方向の回転を認めた.治療開始2年半後には右側中切歯のみであったがオーバージェットの改善もみられた.症例2においてはANBが1.0°から2.0°に増加した.また上顎骨の下方成長が確認され,下顎骨の時計回り方向の回転を認めた.
    2症例とも上下顎骨の位置関係が改善され,ムーシールドはカリエスや歯の萌出障害をみとめることがなく低年齢から使えるという点で非常に有用であると考えられた.
  • 砂川 昌代, 新垣 敬一, 石川 拓, 仲間 錠嗣, 天願 俊泉, 牧志 祥子, 前川 隆子, 砂川 元
    2008 年 33 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1985年から2003年までに当科を受診した粘膜下口蓋裂50例の鼻咽腔閉鎖機能について治療経過別に検討した.
    1.性別は,男性24例(48.0%),女性26例(52.0%)であった.
    2.年齢は,最少年齢が生後1カ月,最高年齢が29歳,平均年齢5.08歳であった.
    3.主訴別内訳は,言葉の問題が30例(60.0%),口腔内精査希望15例(30.0%),手術希望3例(6.0%),矯正・補綴治療希望2例(4.0%)であった.
    4.治療経過別内訳では,手術群27例(65.1%),非手術群14例(34.1%),その他9例(1.8%)であった.
    5.手術群の術後(平均1年6カ月),鼻咽腔閉鎖機能成績は,良好・ほぼ良好症例を合わせた良好症例は70.4%であり,精神発達遅滞を伴わない症例では良好・ほぼ良好を合わせた症例が84.1%であった.精神発達遅滞を伴う症例8例では良好・ほぼ良好を合わせた症例が37.5%であった.
    6.非手術群における観察または言語治療後の鼻咽腔閉鎖機能成績は,良好およびほぼ良好が92.8%であった.
  • 小林 眞司, 平川 崇, 山本 康, 安村 和則, 木島 毅, 府川 俊彦, 前川 二郎
    2008 年 33 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    本邦では上顎の成長発育に対する影響を懸念し,多くの施設で乳幼児期に顎裂部への手術的侵襲を避けてきた.われわれは,片側唇顎裂に対して,顎裂幅に関わらず歯肉骨膜形成術(Gingivoperiosteoplasty以下GPP)を口唇形成術と同時に行い,5歳時の骨形成をCTで評価し,顎裂幅と骨形成との関連を検討した.対象および方法:1999年9月より2003年2月までの期間に口唇形成術を施行した片側唇顎裂18例(手術時年齢:2カ月~6カ月,平均3.5カ月).初回の口唇形術時に顎裂の幅に依存せず,全例GPPを施行した.術前後に顎模型,口腔内写真,3D-Computed Tomography(CT)撮影を行い顎裂部の状態を評価し,その後の二次的顎裂部骨移植(Secondary bone graft以下SBG)の適否につきretrospectiveに検討した.結果:1.術後における合併症(乳歯萌出阻害,感染,出血など)は認めなかった.2.GPPによりSBGを回避できた症例は10/18(55.6%)であった.3.顎裂幅(a-a')が5mm以下の症例は良好な骨形成能を認めたが,6mm以上の症例はSBGを回避するに十分な骨形成が認められない傾向にあった.考察:顎裂6mm以上の症例で,骨形成が不十分であり,術前に顎裂部を狭小化するような顎矯正が必要であると思われた.たとえ骨形成が不十分な症例でも,すでに骨膜は修復されているため,その後のSBGが容易になることが推測された.SBGを回避できるGPPは,有効な手段であり,今後本邦においても普及していくものと考えられた.
  • 古里 美幸, 森田 修一, 朝日藤 寿一, 小野 和宏, 高木 律男, 齊藤 力, 齋藤 功
    2008 年 33 巻 1 号 p. 42-56
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    片側性唇顎口蓋裂患者の側貌外鼻形態が成長に伴ってどのように変化していくかについて長期的に評価した.
    対象は,Hotz床併用二段階口蓋形成手術で治療した片側性唇顎口蓋裂患者(以下CL群),男子10名,女子10名(1982~1990年生まれ)とし,対照群には,8歳から10歳の間に第1期治療にて歯性の反対咬合を治療し,上下顎関係に大きな不調和がない(12歳時のANBが0°~4°)非裂者(以下NCL群)男子10名,女子10名とした.資料は,8歳から14歳までに撮影された側面セファログラムを8歳群,10歳群,12歳群,14歳群に分類してトレースを行い,前頭蓋底の緒構造を基準に重ね合わせた後,計測を行った.CL群NCL群を比較した結果を以下に示す.
    1.CL群における∠SNAはNCL群に比べ,男女とも有意に小さく,上顎骨劣成長の傾向を示していた.
    2.CL群における外鼻上の計測点は,NCL群と比べ,男女とも後方に位置しており,中顔面軟組織も劣成長である傾向を示していた.しかし,外鼻そのものの高さ(鼻尖点から鼻下点の距離)は,男女とも今回計測した年齢ではCL群とNCL群で有意差は認められなかった.
    3.CL群の外鼻形態は男女とも,すべての年齢において鼻背角(∠1)が小さく,鼻底轡曲度(∠4)が強い傾向にあった.これは,鼻背の突出傾向が弱く,鼻尖から鼻下点にかけての鼻底の形態が丸いことを示していた.
    4.鼻骨下端の水平的,垂直的位置や頭蓋底に対する鼻骨の前方突出度,および上顎骨の位置が外鼻形態に影響を及ぼしていることが示唆された.
    5.鼻尖角の変化量は各年齢間(2年)で男女ともに1°以下で,各年齢時における鼻尖角の計測値問にも有意差を認めなかったことから成長による変化は少ないことが示され,今回観察した年齢の範囲では鼻尖形態は変化せずに8歳時点での形態的特徴が保たれたまま成長する可能性が示唆された.
  • 山下 佳雄, 重松 正仁, 鏑木 正紀, 後藤 昌昭
    2008 年 33 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇裂患者の顔面形態を3次元的にとらえ分析することは,手術法の選択や顎発育の評価に不可欠である.しかしながら従来の顔面石膏模型やコンピュータ上での3D画像は単色の画像で視覚的な情報が少ないため,個人や部位の識別が困難な場合がある.今回,われわれは3 Dimensional computer graphic(3DCG)softwareを利用して唇裂患者の顔面形態を色情報と伴に,コンピュータ上に統合表示することを試みた.
    非接触3次元レーザー形状計測装置にて患児の術前顔面石膏模型を計測し,得られた3次元データとデジタルカメラで撮影した顔面写真を,3DCGソフトウェアに取り込み,両データを統合することで,色情報を含めた3次元顔面モデルを構築した.画像のレンダリングにて作製されたモデルは,質感や遠近感を十分に感じ得るものであった.また,コンピュータ上でモデルの移動,回転が可能であり,あらゆる方向からの検索も可能であった.
  • 代田 達夫, 渋澤 龍之, 石浦 雄一, 樋口 大輔, 松井 義郎, 山下 夕香里, 羽鳥 仁志, 新谷 悟
    2008 年 33 巻 1 号 p. 64-73
    発行日: 2008/04/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,中間顎の萎縮による広範な顎裂と著しい上顎の劣成長を認めた両側性唇顎口蓋裂患者を治療する機会を得たので報告する.患者は31歳の女性で,摂食障害および顔貌の審美障害を主訴として当科に来院した.そこで,顎裂閉鎖に対しては水平的歯槽骨延長を両側から行って顎裂を縮小させた後,新鮮自家腸骨海綿骨を移植して顎裂を閉鎖した.上顎劣成長に対しては骨延長術によって上顎前方移動を行った.次いで,上顎に対しては部分床義歯,下顎に対してはインプラントを用いて咬合改善を行った.その結果,顔貌形態および咀囎機能は満足行くものとなった.
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