片側性唇顎口蓋裂患者の側貌外鼻形態が成長に伴ってどのように変化していくかについて長期的に評価した.
対象は,Hotz床併用二段階口蓋形成手術で治療した片側性唇顎口蓋裂患者(以下CL群),男子10名,女子10名(1982~1990年生まれ)とし,対照群には,8歳から10歳の間に第1期治療にて歯性の反対咬合を治療し,上下顎関係に大きな不調和がない(12歳時のANBが0°~4°)非裂者(以下NCL群)男子10名,女子10名とした.資料は,8歳から14歳までに撮影された側面セファログラムを8歳群,10歳群,12歳群,14歳群に分類してトレースを行い,前頭蓋底の緒構造を基準に重ね合わせた後,計測を行った.CL群NCL群を比較した結果を以下に示す.
1.CL群における∠SNAはNCL群に比べ,男女とも有意に小さく,上顎骨劣成長の傾向を示していた.
2.CL群における外鼻上の計測点は,NCL群と比べ,男女とも後方に位置しており,中顔面軟組織も劣成長である傾向を示していた.しかし,外鼻そのものの高さ(鼻尖点から鼻下点の距離)は,男女とも今回計測した年齢ではCL群とNCL群で有意差は認められなかった.
3.CL群の外鼻形態は男女とも,すべての年齢において鼻背角(∠1)が小さく,鼻底轡曲度(∠4)が強い傾向にあった.これは,鼻背の突出傾向が弱く,鼻尖から鼻下点にかけての鼻底の形態が丸いことを示していた.
4.鼻骨下端の水平的,垂直的位置や頭蓋底に対する鼻骨の前方突出度,および上顎骨の位置が外鼻形態に影響を及ぼしていることが示唆された.
5.鼻尖角の変化量は各年齢間(2年)で男女ともに1°以下で,各年齢時における鼻尖角の計測値問にも有意差を認めなかったことから成長による変化は少ないことが示され,今回観察した年齢の範囲では鼻尖形態は変化せずに8歳時点での形態的特徴が保たれたまま成長する可能性が示唆された.
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