日本口蓋裂学会雑誌
Online ISSN : 2186-5701
Print ISSN : 0386-5185
ISSN-L : 0386-5185
37 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • ―日本口蓋裂学術調査委員会報告―
    内山 健志, 山下 夕香里, 須佐美 隆史, 幸地 省子, 鈴木 茂彦, 高木 律男, 舘村 卓, 中野 洋子, 澁井 武夫, 道 健一, ...
    2012 年 37 巻 3 号 p. 187-196
    発行日: 2012/10/30
    公開日: 2013/03/26
    ジャーナル 認証あり
    Objective:日本における口唇裂・口蓋裂児に対する一次治療の実態を明らかにすることを目的とした。
    Design:日本口蓋裂学会学術調査委員会の指示のもと,口唇裂・口蓋裂の一次治療を行なっている日本の医療機関に対して,小冊子スタイルのアンケートを通して得られたデータの解析に基づいて行ったretrospectiveな全国調査である。
    Participants, Patients:1996年から2000年までに一次治療を行なった口唇裂・口蓋裂児4,349名で,参加した医療機関は107施設である。
    Main Outcome Measure (s):裂型,側性,乳児口蓋床の使用,一次手術の時期と術式が107施設の術者によって評価された。
    Results:総計2,874名の唇顎口蓋裂と口蓋裂単独患児のうち,口蓋床を使っていたのは1,087名(37.8%)で,口蓋床を使っていないのは1,787名(62.2%)であった。片側口唇裂一次手術は90%以上の患児で,2~6ヶ月以内に行なわれていた。両側口唇裂では285名(44.5%)において左右同時手術が行なわれていたが,258名(40.2%)が二段階法で行なわれていた。口蓋裂一次手術は2,212名(76.9%)に一期的手術が行なわれていたが,二段階口蓋形成術はすべての口蓋裂児の中で262名(9.1%)に行なわれているにすぎなかった。残り400名(14%)については治療情報の入手ができなかった。
    Conclusion:本調査によってわが国の口唇裂・口蓋裂一次治療における概況を明らかにすることができた。得られた結果から地域での専門中核病院を増やす必要性のあることと,わが国での治療の選択肢が広いものであることが示唆された。
  • 鈴木 恵子, 岡部 早苗, 弓削 明子, 池本 繁弘, 山崎 安晴, 鳥飼 勝行, 瀬崎 晃一郎
    2012 年 37 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2012/10/30
    公開日: 2013/03/26
    ジャーナル 認証あり
    北里大学病院口唇口蓋裂診療班では1975年発足当初から,上顎発育抑制の軽減を目指して口蓋粘膜弁法による口蓋形成術を行い,1982年頃からはさらに工夫を加え粘膜移植粘膜弁法を導入した。粘膜移植粘膜弁法では,4~5歳の片側完全唇顎口蓋裂児の歯槽弓幅径,長径ともに対照群と有意差なく,良好な上顎発育が認められた。本稿では,粘膜移植粘膜弁法の術後成績を言語の観点から評価する目的で,鼻咽腔閉鎖機能,瘻孔,言語症状について検討した。対象は1983年から1991年に粘膜移植粘膜弁法を施行した48例(男26例,女22例),両側口唇口蓋裂13例,片側口唇口蓋裂23例,硬軟口蓋裂5例,軟口蓋裂7例である。明らかな発達遅滞や難聴を伴う例,粘膜下口蓋裂例は除外した。平均手術年齢は1歳4ヶ月(SD 2.2ヶ月),術者は1名であった。日本音声言語医学会口蓋裂小委員会の検査法を用い,言語聴覚士3名と耳鼻咽喉科医1名が評価した。鼻咽腔閉鎖機能は「良好」,「軽度不全」,「不全」の3種に,言語症状は「構音障害」(誤った構音位置や構音方法を示す症状)と「開鼻声」(鼻咽腔閉鎖不全を直接反映して顕れた症状)の2種に分類して集計した。最終評価時期は,構音訓練を必要としなかった例では会話レベルで成人構音が安定した時期(平均5歳2ヶ月;SD 9.5ヶ月),訓練を行った例では訓練開始時(平均5歳4ヶ月;SD 14.4ヶ月)とした。結果は,1)鼻咽腔閉鎖良好が48例中46例(95.8%),軽度不全2例(4.2%),瘻孔が2例(4.2%)に認められた。ともに二次手術は不要であった。2)構音障害が48例中15例(31.3%)に認められ訓練を要した。内訳は口蓋化構音11例,声門破裂音1例,側音化構音1例,置換3例,歪み(軟口蓋音の前方化)3例であった。3)口蓋粘膜弁法と比べ,鼻咽腔閉鎖機能,瘻孔,言語症状ともに良好で,開鼻声,声門破裂音,側音化構音の発現が低率であった。4)側音化構音の発現抑制に,鼻咽腔閉鎖機能,瘻孔とは異なる粘膜移植粘膜弁法の特性が関与した可能性が示唆された。
  • 天知 良太, 堀内 信也, 川合 暢彦, 木内 奈央, 藤原 慎視, 黒田 晋吾, 田中 栄二
    2012 年 37 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 2012/10/30
    公開日: 2013/03/26
    ジャーナル 認証あり
    【目的】Goslon Yardstickは片側性口唇裂口蓋裂患者の咬合状態から治療の難易度を評価する方法で,簡便かつ再現性が高いことから広く用いられている。しかし,評価に際し相当数の歯列模型を用いるため,その管理がしばしば困難となる。一方,三次元デジタルモデル(以下,3DDモデル)は石膏模型をデジタルデータに変換するため保存が容易であるが,デジタルデータより構築した画像は石膏模型とは異なった印象を受けることもある。今回我々は,石膏模型より作成した3DDモデルを用いてGoslon Yardstickによる評価を行い,口腔模型を用いた場合との差異について検討を行った。
    【資料および方法】資料として,徳島大学病院矯正歯科を受診した片側性口唇裂口蓋裂患者37症例の石膏模型を用いた。それぞれの石膏模型をスキャニングし,3DDモデル(OrthoCAD,CADENT)を作成した。8年以上の臨床経験をもつ矯正歯科医4名が,石膏模型と3DDモデルをそれぞれ2回ずつ,5日以上の間隔をあけて評価を行った。評価はMarsらの方法に従った。また,評価の一致度を求めるために重み付きkappa値を算出した。kappa値は0.81~1.0をgood agreement,0.61~0.80をsubstantial,0.41~0.60をmoderate,0.21~0.40をfair,0.20以下をpoorとした。
    【結果】石膏模型と3DDモデルについて評価者内でのkappa値はそれぞれ0.82~0.91,0.77~0.85となり,ともに評価は一致していた。このことから,石膏模型,3DDモデルのいずれを用いた場合でも評価の再現性が高いことが示された。さらに同一評価者内の石膏模型と3DDモデルの評価の一致度については,kappa値は0.75~0.86となり,石膏模型と3DDモデルにおける評価は比較的一致していた。一致していなかったものに着目すると,3DDモデルの方がGoslon Yardstickの値をやや高く評価する傾向にあった。
    【考察】Goslon Yardstickの評価にあたって,3DDモデルの使用は石膏模型と比較しても遜色がないことが示された。
  • 五十嵐 友樹, 飯田 明彦, 小野 和宏, 朝日 藤寿一, 齋藤 功, 高木 律男
    2012 年 37 巻 3 号 p. 210-219
    発行日: 2012/10/30
    公開日: 2013/03/26
    ジャーナル 認証あり
    二段階口蓋形成手術法(二段階法)において,言語と顎発育のより良い治療成績を得るために導入したFurlow法を用いて軟口蓋形成を施行した片側性完全唇顎口蓋裂児(F群)のHellmanの歯齢IIICにおける永久歯列弓形態を歯列模型計測により評価し,従来のPerko法施行症例(P群)ならびに健常児(C群)の結果と比較した。
    結果は以下の通りである。
    1.上顎歯列弓幅径は,上顎結節点間距離でF群がP群およびC群より小さかった。犬歯から小臼歯部の幅径はF群とP群が同様であったが,C群と比較するとわずかに狭窄していた。
    2.上顎歯槽弓長径は,F群がP群に比し大きい傾向があり,破裂側の犬歯尖頭から上顎結節点までの距離がC群より長く,F群の破裂側犬歯はC群より前方に位置していた。歯列弓長径はF群とP群で差はなかったが,前方部においては両群ともC群に比し小さかった。
    3.下顎歯列弓幅径は,F群とC群との間に差はなかったが,第一大臼歯間幅径のみP群がF群およびC群より大きかった。
    4.下顎歯列弓長径は3群間に大きな差はなかった。
    5.前歯部反対咬合あるいは臼歯部交叉咬合はF群で17名中2名(11.8%)に認められたのに対し,P群では29名中11名(37.9%)にみられた。
    以上,F群の歯列弓形態はP群と比較し術式の特徴を反映したわずかな違いが生じていたものの,大きな差はなく,C群に近似していた。咬合状態もP群に劣ることなく,良好な顎発育が得られていた。良好な言語成績と併せると,Furlow法は二段階法の軟口蓋形成法として有用であると考えられた。
feedback
Top