日本口蓋裂学会雑誌
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38 巻, 3 号
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総説
  • 中島 龍夫
    2013 年 38 巻 3 号 p. 259-268
    発行日: 2013/10/30
    公開日: 2014/03/20
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    著者の片側唇裂初回手術にたいするこだわりは1)横方向の縫合線を避け,人中稜に沿った直線にする。2)出生後早期の手術で出来るだけ多くの問題を解決する。3)後日再手術がやりにくくなるような複雑なデザインは避ける。4)鼻筋,口輪筋の正確な同定縫合による口唇外鼻の形態改善。5)初回手術時と同時に行う外鼻形成術。などである。この趣旨に沿うべく今回報告した方法は1)鼻翼基部周囲の皮弁の内脚隆起後方への移動。2)Vermillion borderの上部で皮弁を利用せず被裂縁に弓状の組織欠損を作成し互いに縫合する。3)鼻筋の同定と矯正位への固定。4)外鼻形成。の4点に要約される。今回報告した方法によると術後の縫合線は人中稜の走行に沿った直線となり,長期の経過観察例でも縫合線は目立ちにくく,外鼻と鼻翼部の形態も良好であった。手術法を具体的に解説し本法を行うに至ったいきさつと中期的手術結果を報告し,これまでの手術法にたいする著者の考えを述べる。
原著
  • 丸山 智子, 宇塚 聡, 宮下 渉, 小森 成
    2013 年 38 巻 3 号 p. 269-276
    発行日: 2013/10/30
    公開日: 2014/03/20
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    5-Year-Olds' Indexは評価方法が比較的簡便で再現性が高いとされているものの,精度や再現性については不明な点が多い。そこで,5-Year-Olds' Indexの評価方法に関して評価の精度や再現性について調査を実施した。
    今回の調査では,Japancleft委員会が主催した講習会にて配布された5-Year-Olds' Indexの分類(Group 1~5)において2症例ずつ((1),(2))計10症例の基準模型を用いた。まず,本試験に先立ち行われた予備試験において,これら模型の妥当性が示され,5-Year-Olds' Indexの基準模型として適切であると判断した。本試験においては,10症例の基準模型が歯科医師21名によりそれぞれ2回評価された。この結果より,正解との一致度(精度)および評価者内の一致度(再現性)について重み付きKappa値を求め,臨床経験年数(評価者A群:10年以上,評価者B群:2~9年,評価者C群:2年未満)と正解との一致度について検討した。また,基準模型ごとの正答率および評価を誤答する傾向についても調査した。正解との一致度(Kappa値)は,評価者A群が0.83,B群は0.83で「Very good」,C群が 0.53で「Moderate」であった。評価者内一致度(Kappa値)は,評価者A群が0.79,B群は0.80で「Good」,C群が 0.50で「Moderate」であった。さらに,正解との一致度を臨床経験年数で比較した結果,評価者A群およびB群と比較し,C群はKappa値が低い傾向を示した。基準模型ごとの正答率において,最も高いものは5-(1)で95.2%だった。評価の誤答については3-(2)をGroup 4と判定したものが40.5%と最も多かった。
    5-Year-Olds' Indexの評価精度および再現性を向上させるためには,基準模型による評価訓練の徹底に加え,片側性口唇口蓋裂患児の治療に携わる機会を増やす必要性が示唆された。
臨床
  • 松本 美樹, 真野 樹子, 中谷地 舞, 三條 恵介, 藤本 舞, 時岡 一幸, 中塚 貴志, 鐘ヶ江 晴秀, 須田 直人
    2013 年 38 巻 3 号 p. 277-284
    発行日: 2013/10/30
    公開日: 2014/03/20
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    明海大学病院と埼玉医科大学病院では,片側性唇顎口蓋裂児に対し,出生直後より哺乳床型口蓋床を用いた術前顎矯正,生後4から6ヶ月時にNoordhoff法による口唇形成術と歯肉骨膜形成術(gingivoperiosteoplasty: GPP),生後12から18ヶ月時にFurlow変法による口蓋形成術を行っている。本治療プログラムの短期的結果を評価する目的として,片側性唇顎口蓋裂児5例の4から5歳時に採得された歯列模型と頭部X線規格写真により歯列弓形態と顎顔面形態を検討した。術前顎矯正と外科手術は,5例とも各々同じ歯科医と形成外科医によって施行された。歯列模型より,4例で前歯部反対咬合(内1例は片側性の臼歯部反対咬合を合併)をみた。5例とも犬歯間はやや狭かったものの,臼歯間に狭窄はみられなかった。上顎の前後的評価では,SNAは2例で小さく上顎骨の劣成長をみたが,他の3例では日本人平均値と差がなかった。下顎の前後的評価は多様であり一定の傾向をみなかったが,骨格性III級を示したのは1例のみであった。上顎前歯は3例で舌側傾斜していた。顔面の対称性については,上顎の骨格性偏位はほぼみられず,咬合平面の傾斜と下顎骨の偏位を1例でみた。以上より現在行っている治療プログラムの短期的評価として,上顎前歯が舌側傾斜した例が多いものの,上顎歯列の狭窄や上顎骨後退に起因した前後的顎間関係の不正は少なかった。
症例
  • 山本(佐藤) 友紀, 土佐 泰祥, 木村 智江, 大久保 文雄, 保阪 善昭, 吉本 信也, 槇 宏太郎
    2013 年 38 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 2013/10/30
    公開日: 2014/03/20
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    Presurgical Nasoalveolar Molding治療(NAM)後にTwo flap口蓋形成手術を行った患者の5歳時の結果が得られたので報告する。症例:左側唇顎口蓋裂女児,初診時年齢2週,顎裂幅13mm,生後3週にてNAM治療を開始し,約4ヶ月間の治療後,顎裂幅0mmにて口唇鼻形成手術(小三角弁+Millard法)を施行,1歳1ヶ月で口蓋形成手術(Two flap法変法)を行った。なおMillard type Gingivoperiosteoplasty(GPP)は行っていない。生後2歳2ヶ月にて軽度開鼻声と声門破裂音及び鼻咽腔構音が観察されたが,生後3歳4ヶ月までに開鼻声と鼻咽腔構音は自然治癒した。早期構音訓練を開始し6ヶ月後に声門破裂音は消失した。再評価時年齢5歳11ヶ月,軽度の左右非対称はあるが良好な口唇鼻形態とstraight profileを示すとともに,口腔内所見から垂直被蓋,水平被蓋とも+1.5mmと良好な歯列弓形態が観察された。レントゲン所見から骨格性I級であり,上顎前歯萌出完了まで矯正治療は経過観察と診断した。なお裂部側切歯の欠損及び顎裂部には骨欠損が確認され,近い将来第二次歯槽骨移植手術の必要性が確認された。本症例の5歳時における治療結果は良好であり,日本人にもNAM治療およびTwo flap口蓋形成手術は審美,言語,顎発育,口腔形態ともに良好な結果をもたらす可能性が示唆された。しかし一時的な声門破裂音が認められたことは重視すべき問題であり,言語,顎発育において更なる検討が必要と考えられる。
  • 鈴木 一史, 松林 幸枝, 橋本 幸治, 石渡 靖夫, 山崎 安晴, 武田 啓, 鳥飼 勝行
    2013 年 38 巻 3 号 p. 291-299
    発行日: 2013/10/30
    公開日: 2014/03/20
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    今回我々は片側の上顎側切歯先天欠如を伴う唇顎口蓋裂患者に対し,下顎前歯の移植を伴う矯正歯科治療により,顔貌および咬合状態ともに良好な結果を得た2例を経験したので報告する。〔症例1〕初診時年齢8歳2ヶ月,左側唇顎口蓋裂の男児で上顎歯列弓の狭窄と前歯から臼歯部にかけてのクロスバイトを認めた。ポーター型拡大装置を使用後,顎裂部骨移植を施行した。その後,セクショナルアーチにより被蓋の改善と上顎前歯の排列を行い,保定装置にて経過観察を行った。17歳3ヶ月時に再診断を行い,マルチブラケット治療中に下顎前歯を上顎左側側切歯先天欠如部へ移植する方針とした。18歳1ヶ月時に移植を行い,19歳4ヶ月時に保定を開始した。〔症例2〕初診時年齢8歳7ヶ月,両側唇顎口蓋裂の女児で中間顎の前右方偏位と著しい過蓋咬合と上顎歯列弓狭窄を認め,前歯から臼歯部にかけてのクロスバイトを認めた。ポーター型拡大装置による歯列弓拡大後,中間顎骨切りと同時骨移植を施行した。セクショナルアーチで被蓋の改善と上顎前歯の排列を行い,保定装置にて経過観察を行った。14歳11ヶ月時に再診断を行い,マルチブラケット治療中に下顎前歯を上顎左側側切歯先天欠如部へ移植する方針とした。15歳3ヶ月時に移植を行い,17歳1ヶ月時に保定を開始した。それぞれ移植後3年10ヶ月,6年8ヶ月現在,経過は良好である。
国際委員会報告
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