日本口蓋裂学会雑誌
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4 巻, 1 号
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  • 大槻 寿朗
    1979 年4 巻1 号 p. 1-14
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者の顎顔面頭蓋形態の異常が口蓋裂にともなう顎顔面頭蓋骨の発育不全にもとつくものか,あるいは手術侵襲による影響かを検討するためにdexamethasoneで発生させた口蓋裂マウス胎仔と正常口蓋マウス胎.仔の顎顔面頭蓋形態の比較を行った.
    妊娠11日目のddNマウスにdexamethasone 3 mS/栂を1回皮下注射して,胎生16.5, 17.5,18.5日目に帝王切開により標本を得た.それらを同腹のマウス胎仔で口蓋裂胎仔群を1群,その同胞の正常口蓋胎仔群を2群,同腹のマウス胎仔がすべて口蓋裂胎仔であったものを3群,同腹のマウス胎仔がすべて正常口蓋胎仔であったものを4群,そして無処置のマウス胎仔を5群として比較検討した,その結果は次のとおりであった.
    1,体重は口蓋裂胎仔群(1,3群)が正常口蓋胎仔群(2,4,5群)よりも日令がすすむにつれて有意に小さくなった.
    2.16.5口から口蓋裂胎仔群(1,3群)は,前口蓋孔間の幅径と左右の歯槽突起間の幅径が正常口蓋胎仔群(2,4,5群)よりも有意に広かった.
    3.同腹のマウス胎仔の口蓋裂胎仔群(1群)と正常口蓋胎仔群(2群)を比較した結果は以下のごとくであった.
    1)鼻骨,前上顎骨の前後径は口蓋裂胎仔群が小さかった,
    2)前口蓋孔間の幅径と左右の歯槽突起間の幅径は口蓋裂胎仔群が広かった.
    3)左右の歯槽突起の幅径は口蓋裂胎仔群が小さかった.
    4)その他の頭骨の前後径,幅径においては差は認められなかった.
  • 口蓋裂単独症例について
    広瀬 恒久
    1979 年4 巻1 号 p. 15-47
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇顎裂を伴わない口蓋裂単独症例の口蓋形成術前後における上顎歯槽弓の発育を同一個体について継続的に追求し,口蓋形成術の影響を検索した.研究方法は硬軟口蓋裂患者25名,軟口蓋裂患者25名について継続的印象摸型を採取し,健康小児12名のそれと比較検討した,
    1.硬軟口蓋裂,軟口蓋裂共に生後6ケ月頃までは旺盛な顎発育を示すが,以後の発育がやや鈍化し,健康小児に比して顎の前方部幅径,前後径が劣り,先天的に顎発育能の低下が存するものと考えられる.
    2.いずれの裂形態においても口蓋形成術後には大なり小なりの顎各径の減少が見られ,以後の回復も緩徐で,顎の狭窄と発育抑制が認められた.
    3.硬軟口蓋裂では術前から裂による開大のための顎後方部幅径が対照群より大きく,一方前方部幅径と前後径は,対照群を下回っていたが,術後さらにこの傾向が強調され,後方部幅径が広く前後径の短い圧偏された歯列弓となる.
    4.軟口蓋裂では,術前各径が対照群に比して同等かやや下回っており,対照群に比して全体的に小ぶりで,術後この差がやや大きくなっている.
    5.硬軟口蓋裂,軟口蓋裂について口蓋形成術の影響を比較すれば,硬軟口蓋裂の方が大きな影響をうけている,
    6.口蓋形成術の顎発育に対する影響を軽減するために,今後手術法について検討を加える必要がある.
  • 元村 太一郎, 三村 保, 後藤 友信, 井上 一男, 宮崎 正
    1979 年4 巻1 号 p. 48-58
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者の治療にあたって,鼻咽腔閉鎖機能をいかに獲得させるかは,最も重要な課題である.特に,Blowing時や破裂子音時に比べ,母音発音時における完全な鼻咽腔閉鎖運動を獲得させることは,困難な場合が多い.しかしながら,母音発音時における鼻咽腔閉鎖機構の詳細は,正常人においてさえ,未だ明らかにされておらず,その意見の一致をみていない.今回,著者らは,正常人を対象に,口蓋帆挙筋と上咽頭収縮筋の両者より,同時に筋電図を採取することによって,母音発音時における筋活動状態を把握した.さらに,口蓋裂未手術患者を対象に測定し,正常人との違いを明らかにするとともに,咽頭弁移植術後患者とも比較検討した.その結果,
    1.正常入においては,口蓋帆挙筋,上咽頭収縮筋ともに,母音発音時より破裂子音発音時に高い筋活動が示された.しかし,母音の違いによる筋活動量の変化に一定の傾向は認められなかった.口蓋帆挙筋筋活動量と,上咽頭収縮筋の筋活動量は相反している様相が示された,
    2.口蓋裂未手術群においては,口蓋帆挙筋と上咽頭収縮筋とが,同調した筋活動を示すとともに,母音各音間での筋活動量に著明な差を認めた.
    3.咽頭弁手術後群では,正常人に類似した様相を示すものと,口蓋裂未手術群に似た様相を示すものとがあった.
  • 稗田 豊治, 矢尾 和彦, 神原 修, 櫛田 雄一, 土居 将男, 船越 禧征, 大原 義雄
    1979 年4 巻1 号 p. 59-64
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇裂口蓋裂患者は一般正常児に比較して,歯離虫罹患性が高く,趨再蝕は重症であり,そのために歯列や顎の正常な発育が妨げられ,将来の補綴処置や矯正治療に際して甚大な影響があるといわれている.しかし,欧米においては,唇裂口蓋裂患児の騙蝕罹患率は正常児と変わらないといわれており1),なかには,Stephen,K,W,2)のように十分な歯離虫抑制処置を施せば歯離虫の発現は正常児よりもはるかに少なくなるという報告もある.
    私たちは,昭和50年9月から昭和53年4月までの2年6ケ月間に兵庫県立こども病院を訪れた唇裂口蓋裂患者258名に対して口腔衛生指導を行い,初診時と活動開始後2年6カ月経過した昭和53年3月の時点における爾蝕罹患状態を比較検討した結果,以下の結論を得た.
    唇裂口蓋裂患者は無歯期のうちに,親に簡単な口腔衛生の知識を与えておくと,鯖蝕罹患者率は正常児とほぼ同程度になり,これらの患児に口腔衛生指導を継続することによって歯爵蝕罹患者率, def歯率ともに減少することが判った.このため,唇裂口蓋裂患児にできるだけ早期から口腔衛生指導を開始し,継続することが,騙蝕予防の上で不可欠であると考えられる.
  • 小林 正幸, 奥野 善彦, 西山 瞳
    1979 年4 巻1 号 p. 65-72
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇口蓋裂患者の形成手術後に,さらに機能的ならびに審美的回復を補綴物によって行なう場合,口腔内の状態によりその維持安定を得ることが非常に困難な症例が多い.
    今回,口唇口蓋裂患者4症例について,義歯の推持装置として1-Cアタッチメントを応用し予後観察を行った結果,審美的にも機能的にもほぼ満足すべき結果が得られた.このことから,このアタッチメントは口唇口蓋裂患者に対する義歯の維持装置として非常に有効であることが判明した.
  • 手島 貞一, 山口 泰, 糠塚 重徳, 大村 武平
    1979 年4 巻1 号 p. 73-76
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    男児の不完全正中上唇裂の1例を報告した,上口唇正中赤唇に切れ込みを認め,上唇小帯裂,上顎歯槽骨正中裂も認めた.なお,頭頂部に毛髪の脱色と禿髪,右眼内斜視を伴っていた.手術は,赤唇裂部を紡錘形に切除し口輪筋断端を縫合し,赤唇部は直線法,上唇小帯はZ形成術を施行して延長した.
    不完全正中上唇裂(一名,真の正中唇裂)は,その特徴的な形態からtrueharelipとも呼ばれ,きわめて稀な疾患であり,その本態については発生学的にも興味ある問題点が少なくない.われわれは本症の1例を経験したので報告する.
  • 1979 年4 巻1 号 p. 92-
    発行日: 1979年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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