口蓋裂言語検査による鼻咽腔閉鎖機能の評価を行い,内視鏡および側方頭部X線規格写真(以下セファログラム)による軟口蓋,咽頭間の間隙の程度との関連性を調査した。対象は,2007年~2013年の間に4~7歳で鼻咽腔閉鎖機能を精査した口蓋裂初回手術後の48例で,裂型は唇顎口蓋裂40例,口蓋裂単独8例である。唇顎口蓋裂例は全例,顎裂部骨移植の手術前で未閉鎖の顎裂を認めた。口蓋裂言語検査の鼻咽腔閉鎖機能の判定は「良好」「ごく軽度不全」「軽度不全」「不全」の4段階と「判定保留」,軟口蓋,咽頭間の間隙の程度は「間隙なし」「間隙小」「間隙中」「間隙大」の4段階とした。口蓋裂言語検査と内視鏡,およびセファログラムによる判定の一致度の検討には重み付きカッパ値を用いた。
1.口蓋裂言語検査での判定が可能だったのは48例中29例(60.4%),判定保留は19例(39.6%)であり,判定保留は全例顎裂の未閉鎖裂隙がある症例だった。
2.口蓋裂言語検査と内視鏡,セファログラムによる軟口蓋,咽頭間の間隙の大きさについて,重み付きカッパ値による一致度は中等度~良好であり,口蓋裂言語検査の妥当性が示唆された。
3.口蓋裂言語検査で「良好」と判定した場合も,内視鏡検査ではごくわずかな間隙が残存する場合や,セファログラム上は間隙を認めないが鼻雑音が聴取されることがあった。
4.音声言語の聴覚判定の評価者間一致度を調べたところ,開鼻声は中等度,呼気鼻漏出による子音の歪みは良好な一致度を示した。
5.口蓋裂言語検査での鼻雑音の取り扱い,ブローイング検査の位置づけ,未閉鎖裂隙や瘻孔の大きさと判定保留との関連についてはさらに検討が必要である。
抄録全体を表示