昭和大学形成外科にて1978〜1995年の間にpushback法による口蓋裂手術を1歳代で施行し,成人期まで音声言語の長期経過観察を行った40例(UCLP30例/BCLP10例)の言語成績を後方視的に調査した。評価時年齢は,幼児期(3〜5歳),学童前期(6〜7歳),学童後期(9〜12歳),青少年期 (13〜18歳),成人期(19歳以上)である。40例の結果は以下の通りである。
1.鼻咽腔閉鎖機能(以下VPC)良好例は幼児期27例(67.5%)から成人期19例(47.5%)に減少し,ごく軽度不全例が6例(15.0%)から18例(45.0%)に増加した。成人期はこれらを合わせて37例(92.5%)が実用的なVPCを獲得した。
2.学童前期から成人期にかけて,VPCの変化を31例(77.5%)に認め,悪化例は学童後期から青少年期,改善例は学童前期と成人期に多かった。
3.正常構音は幼児期18例(45.0%)であり,学童前期以降9例に構音障害が出現したが,成人期は全例正常構音であった。
4.構音障害の22例中21例(95.5%)は幼児期から構音訓練を受け,学童後期から成人期にかけて構音障害の半数が消失した。
5.構音障害は口蓋化構音が最も多く幼児期に11例あり,成人期は6例に残存した。
6.成人期正常構音は28例(70.0%)であった。
成人期のVPCを幼児期の音声言語の判定のみで予測することはできない。今回の結果から,幼児期の判定に関わらず音声言語の再評価を10歳,16歳,治療が終了する20歳頃に行うことが望ましいと考える。
構音障害については,構音訓練を終了した後も成人期まで長期にわたり改善する可能性があり,STが経過観察と指導を継続することは有用である。
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