日本口蓋裂学会雑誌
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原著
  • 楢本 達也, 中根 隆, 深沢 香菜子, 丸山 歩美, 川原 良美, 影山 徹, 杠 俊介, 山田 一尋
    2021 年 46 巻 3 号 p. 145-152
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/07
    ジャーナル 認証あり
    唇顎口蓋裂患者の口唇形成術後の静的な顔貌については多くの研究が行われ,軟組織と硬組織の形態の改善が示されている。しかし,スマイル時の軟組織の動きについては不明な点がみられる。そこで我々は,片側性唇顎口蓋裂患者の口唇形成術後のスマイル時の口唇および頬部の三次元的移動様相について検討した。
    被験者は,松本歯科大学病院矯正歯科を受診した片側性唇顎口蓋裂の男児14名(平均年齢5.3歳)である。スマイル時の口唇と頬部の三次元運動を,ステレオ写真で解析した。また,正面顔面形態を正面セファログラムで評価した。さらに,正面顔面形態とスマイル時の口唇と頬部の運動の関連も検討した。  その結果,患側口角は健側口角に比べ,有意に大きく外方,上方,後方に移動した。下唇中央部の下方移動量は上唇中央部の上方移動量より有意に大きかった。一方,頬部は患側と健側の移動距離に有意差はなかった。
    口唇と頬部の移動量と正面顔面形態の関連では,患側と健側の下顎骨幅差とMe偏位量は口角水平方向の患側と健側の移動量差と有意な正の相関を示し,患側と健側の上顎骨高差と下顎骨高差は,口角垂直方向の患側と健側の移動量の差と有意な負の相関を示した。
    これは,片側性唇顎口蓋裂患者では,スマイル時に患側口角が,健側よりもより上方,外方,後方に移動し,その結果非対称なスマイルを生じていることが示された。また,非対称なスマイルは,正面顔面形態に関連していた。
  • 香西 早苗, 中新 美保子, 稲川 喜一, 井上 信次, 手塚 征宏, 岐部 俊郎, 中村 典史
    2021 年 46 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/07
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は,口唇裂・口蓋裂児(Cleft Lip and/or Palate:以下CLPと記す)のQOLの自己評価と保護者による評価の差異と関連要因を明らかにすることである。133組のCLP児と保護者を対象に日本語版KINDLRを用いた質問紙調査を行い分析した。結果,自己評価と保護者による評価は総得点および全ての下位領域得点に正の相関が認められた。QOL総得点は自己評価が保護者による評価より低かったが,有意差はなかった。同様に,下位領域の<身体的健康><自尊感情>は有意に低く,<家族>は有意に高かった。特に<自尊感情>においては,性別の女子,校種別の小学生・中学生,裂型の口唇裂(顎裂含)・口唇裂口蓋裂等の関連要因との比較において自己評価が低く有意差があった。保護者による評価と比較したCLP児の<自尊感情>の低さが最も気がかりである。手術や定期的な受診で医療者と関わることが多いCLP児と保護者ではあるが,常に児が自信を持てる声掛けや対応を心がけることが我々医療者に示唆されている。
統計
  • 鈴木 大喜, 野尻 尚子, 藤本 舞, 長谷川 紘也, 真野 樹子, 須田 直人
    2021 年 46 巻 3 号 p. 160-167
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/07
    ジャーナル 認証あり
    明海大学病院矯正歯科に来院した口唇裂・口蓋裂患者の実態を把握するため,2001年1月から2020年12月までの20年間の臨床統計的検討を行った。
    1.当科で初診時資料の採得を行った総患者数は5,485例であった。このうち口唇裂・口蓋裂患者は284例(5.2%)であった。前半10年間と後半10年間を比較すると20.2%増加した。
    2.初診時年齢は,0歳児が110例(38.7%)と最も多く,5歳児は26例(9.2%),6歳児は23例(8.1%),4歳児は22例(7.7%)であった。0歳時は前半10年間の17例から後半10年間は93例と大幅に増加した。
    3.裂型は,片側性唇顎口蓋裂 39.4%,口蓋裂 19.4%,片側性唇顎裂 17.6%,両側性唇顎口蓋裂 17.2%,両側性唇顎裂 3.2%,口唇裂 3.2%であった。
    4.口蓋裂のみ男性1.0に対し女性2.1と,性差がみられた。
    5.紹介元として,埼玉医科大学の附属病院が前半10年間と後半10年間で各々63.6%と53.6%と多かった。診療科別では形成外科が前半10年間と後半10年間で各々70.5%と82.6%と多かった。
    6.乳歯列完成期以降にcrossbiteのない動的矯正歯科治療未施行例の割合が,前半10年間の28.9%から後半10年間の53.8%へ増加した。一方で,この割合は両側性唇顎口蓋裂では15.4%から12.5%へやや減少した。
    7.術前顎矯正治療を施行した症例は,前半10年間は全例の13.2%,後半10年間は50.3%と著しく増加した。2015年以前の術前顎矯正治療施行例(現在5歳以上)の当科への再受診率は83.3%であった。
    以上の結果より,口唇や口蓋の閉鎖術の進歩,動的矯正治療開始時の咬合歯列の改善に伴って,近年当科が担う役割は大きく変化したと考えられる。
症例
  • 廣田 友香, 上田 晃一, 荻野 真梨子, 大橋 剛輝
    2021 年 46 巻 3 号 p. 168-173
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/07
    ジャーナル 認証あり
    18トリソミーおよび13トリソミー(以下18/13トリソミー)は重度の精神運動発達遅滞や多発する特徴的な身体異常所見に加え,様々な小児外科疾患を合併する染色体異常である。かつてはいずれの疾患群も非常に不良な生命予後から保存的治療を選択されてきたが,近年ではその自然歴が見直され外科的治療を含む積極的な治療を行い長期生存が可能となる症例が増えてきた。しかし未だ18/13トリソミーに対する定まった治療方針はなく,特に生命に関わらない合併症に対する治療に関しては報告も少ないのが現状である。今回われわれは2歳の13トリソミーと5歳の18トリソミーの患者に唇裂一次形成術を施行した。整容面で良好な結果が得られ,患児のQOLは改善し家族の満足が得られた。18/13トリソミーの重症度や合併症は症例ごとに異なり,診断,治療,退院後のケアなど,さまざまな状況で倫理的および社会的問題が発生するため,治療方針については依然として議論が尽きない。医療の進歩に伴い,今後長期生存症例における形成外科的治療への希望が増えることが予想される。生命に関わらない合併症の外科的治療の適応に関しては,合併症の種類や重症度,全身状態などの評価および家族の意向を十分に確認した上で患児のQOLを改善する最善の治療を行うことが肝要と考える。
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