口蓋裂に伴う構音障害は多様であり,そのうちでも特に舌運動の異常によるものが多いが,その判定は従来より聴覚的印象によるものが主であり,客観性に欠けることが多かった.そこで,より客観的な構音の判定法を確立し口蓋裂患者の構音治療に役立てることを目的として聴覚的に異常構音と診断され構音治療の対象となった口蓋裂術後患者20名(早期手術後鼻咽腔閉鎖良好例11例,その他9例)の歯音・歯茎音構音時の舌と口蓋の接触様式をダイナミック・パラトグラフィーによって観察し得られたパラトグラム・パターンの分類を試みた.
分類項目は次の通りである.
1.接触の連続性:開放型(S型,O型),閉鎖型(T型,Max型)
2.接触部位:前方型:後方型(b型)
3.接触の範囲:辺縁接触性(1型),広域接触性(2型)
4.接触部位の対称性:対称性,非対称性('型)
5.接触あ非連続の部位:正中開放性,側方開放性("型)
これらの項目を組み合わせて歯音・歯茎音構音時の最大接触時および音産生時のパターンを分類したところ,大分類4型,小分類20型に分けることができた.
最大接触時のパターンで健常人と異なった特徴的なものとして接触位置が硬口蓋後方へ変位したSb,Sb',Tb,Tb'型,舌が口蓋全体で接触するMax型,口蓋と接触しないO型などが多くみられた.
最大接触時から音産生にかけての接触様式の変化としては開放持続式,閉鎖一開放式,閉鎖持続式,非接触式の4つの運動様式に大別され,健常入と異なるものとして閉鎖持続式,非接触式がみられた.
これらの接触型,運動様式と聴覚的印象,裂型,咬合状態,口蓋形態,年令,鼻咽腔閉鎖機能,手術時期などとの関連が示唆された.
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