日本口蓋裂学会雑誌
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9 巻, 1 号
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  • 葉山 正超
    1984 年 9 巻 1 号 p. 1-24
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇裂術後搬痕の病態を明らかにするため,唇裂患者60例の第2次修正手術時に得られた上唇皮膚部癩痕について光顕的ならびに走査電顕的観察を行った.なお対照として搬痕周囲の健康皮膚25例を用いた.
    光顕的には,唇裂術後癩痕の表皮層とくに穎粒細胞層および棘細胞層は対照よりもやや薄いが,角化層は厚い傾向がみられた.また棘細胞,穎粒細胞および基底細胞に空胞変性の認められるものがあった.真皮層における線維構造によって唇裂術後癩痕を3型に分けることができた.typelは主として膠原線維から成る浅層と膠原線維束から成る深層に区別できるものであり,type2は浅層と深層の境界が不明瞭で,主として膠原線維から成るもの,type3は浅層と深層の境界が不明瞭で,主として膠原線維束から成るものである.なお線維芽細胞や毛細血管の分布は一般に少なかった.
    走査電顕的には,唇裂術後疲痕表面は主皮溝および皮野から成る皮紋の形成が著しく少なく,副皮溝が多く認められた.また角質表層細胞の剥離,境界,step-like shadow depressionなどの状態は対照よりも変化に富んでいた.表層細胞における1次reliefも著しく複雑で,対照にみられる如き微小堤網や微小堤のほかに小孔,微絨毛,不規則雛壁などが認められた.type1の膠原線維および膠原線維束は対照よりも大小不同が著明で,やや密に分布し,変曲の程度も強かった.type2では膠原線維束の形成がみられず,主として膠原線維および膠原原線維より成るが,膠原原線維の凝集が少なく,膠原線維未形成の状態がしばしぼ認められた.このような膠原線維および膠原原線維は湾曲が著明で,波状ないしコイル状を呈していた.type3は層状の膠原線維束から成り,膠原線維はほとんどみられず,時として膠原線維束が癒合して線維東間間隙が消失し,amalgam-like appearanceを示すものがみられた.
    唇裂術後癩痕では皮膚付属器管である毛根,脂腺,汗腺などがきわめて少なく,毛幹は著しく細いものから,剛毛と呼ばれる著しく太いものまでみられ,対照と異なって皮野中に毛幹の出現していることが少なくなかった.
  • 糟谷 政代, 平岩 清貴, 西 正寛, 金田 敏郎, 岡 達
    1984 年 9 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂児の身体発育成長状態を把握することを目的に名古屋大学医学部附属病院口腔外科言語治療室に来室した,6歳から12歳までの唇顎口蓋裂児115名を対象に,出生時における身体計測値(母子手帳より)と,来室時における各年齢層に対して,身体計測(身長・体重・胸囲)および両手部骨格X線撮影をおこなった.比較対照には,昭和45年度新生児全国平均値(厚生省)と,昭和55年度学校保健統計の全国平均値を選択した.また,骨の成熟度は杉浦らの骨年齢評価点数にもとずき評価した.
    結果:
    1)唇顎口蓋裂児の出生時における身体計測値は,健常児の出生時全国平均値と比較して,有意差はみられなかった.
    2)各年齢層における唇顎口蓋裂児の身体計測値は,同年齢層の健常児と比較すると,身長は低く,体重は少なく,胸囲は小さい傾向がみられた.
    3)唇顎口蓋裂児の手根骨における骨点数は,同年齢の健常児に比らべ,高い傾向がみられた.しかし,発育状態としては正常範囲内にあった.
    4)唇顎口蓋裂児の各年齢層における生物学的年齢の対比では,最も発育が促進されていたのが骨年齢であり,ついで身長年齢,体重年齢の順であった.
    5)生物学的指数による発育の異常については,最も発育の異常な促進を示すものは,骨年齢に多く,逆に,発育の異常な遅延を示すものは,体重年齢に多かった.
    6)6歳から12歳までの唇顎口蓋裂児の体型は,小柄でやせている子供が多かった.
  • 黒木 信雄, 熊谷 憲夫, 荻野 洋一
    1984 年 9 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    横隔膜の部分欠損にともなう肝実質の胸腔への嵌入をきたした両側唇顎口蓋裂例と小陰唇の癒着による膣閉鎖を伴う口蓋裂例の視覚的所見を中心に報告した.
    横隔膜部分欠損例では胸腹部のX線単純写真を多方向にて撮ることにより,固定性の実質物であることを確認し,エコーグラムおよび心エコー図により心および血管系の陰影を否定し,肝シンチグラムにより腫瘤が肝の一部であることをほぼ確認した.小陰唇の癒合例は症例を紹介するにとどめた.
  • 河合 幹, 成田 幸憲, 鍋谷 秀信, 金森 清, 白木 豊, 夏目 長門, 麻生 昌邦
    1984 年 9 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    完全唇顎口蓋裂においては術後,顎裂部付近に痩を残す症例に遭遇することがある.この問題を解消するため口唇一次形成時にvomer flapを用いて顎裂部および硬口蓋前方部を閉鎖する手術方法をVeau(1939)が発表し,その後,種々の改良法がおこなわれているが,いずれも口腔側または鼻腔側にrawsur faceが大きく露出したり,口唇粘膜が牽引されて変形するなどの欠点を持っている.そこで我々はVeauの手術方法に準じた硬口蓋前方部の一次閉鎖を行い,その上を凍結乾燥豚皮(LPS)でカバーする方法を実施している.顎裂部の閉鎖は披裂側にhinge flapを作製し,その小flapと非披裂側につくられたvomer flapとを翻転縫合し,鼻孔底,顎裂部,硬口蓋前方部を連続して閉鎖した後,口腔側に露出した創面に対してLPSを適合させ,周囲を縫合し,その上にロールガーゼを置きtieover法にて圧迫固定している.術後4日でtieoverされたロールガーゼを取り除いているが,貼布されたLPSは7日目頃より徐々に融解をはじめ,14日目頃には創面の上皮化はほぼ完了していた.術後1年の口蓋形成術を行う頃には顎裂部および硬口蓋前方部は完全に閉鎖され歯槽弓の形態も良好で,この時点においては,顎発育に対する影響は軽いと考えられた.
  • 山城 正宏, 儀間 裕, 本村 和弥, 金城 孝, 仲宗根 康雄, 藤井 信男
    1984 年 9 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和48年9月より昭和56年8月までの8年間に,琉球大学医学部附属病院歯科口腔外科(沖縄県)で,一次形成手術を行なった口唇裂口蓋裂患者222名について臨床統計的観察を行なった.
    性別では男性137名,女性85名で,その比は1.6:1であった.
    裂型別分類では,唇(顎)裂68名(30.6%),唇(顎)口蓋裂113名(50.9%),口蓋裂41名(18.5%)であった.また,口唇裂を伴った181名の破裂側をみると,片側性128名,両側性53名で,その比は2.4:1であった.左右差では,左側89名,右側39名で,その比は2.3:1であった.
    出生時体重で,2500g以下の低体重児が11.2%みられた.出生順位は第1子,第2子,第3子,第4子の順で多く,母親年齢では,25-29歳(36.3%),20-24歳(23.6%),30-34歳(18.4%),35-39歳(13.7%),40歳以上(5.7%)の順であった.
    209家系中,多発家系は49家系で,家系発現率は23.4%であった.家族性発現を親と同胞に限って9家系についてみると,唇(顎)裂の発端者2名に同じ裂型1名と唇(顎)口蓋裂1名,唇(顎)口蓋裂の発端者6名に,同じ裂型の3名と唇(顎)裂3名,口蓋裂の発端者1名に同じ裂型2名がみられた.今回の調査期間で両親健康な場合の同胞発現は,唇(顎)口蓋裂と口蓋裂の発端者に各1名みられた.片親発現は8家系であったが,今回これら同胞発現は認められなかった.
  • II.一般人の属性別による認識の比較
    夏目 長門, 服部 吉幸, 成田 幸憲, 金森 清, 大辻 清, 長縄 吉幸, 橋本 治, 河合 幹
    1984 年 9 巻 1 号 p. 56-64
    発行日: 1984/06/30
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    口唇,口蓋裂に対して,地域社会の人々によりよい形で理解を得させるための基礎資料として,名古屋市の小学生の保護者1712名を対象に質問紙法による調査を行い,解答が得られた1608名(回収率93.9%)のうち,記入に不備のあった18名を除いた1590名分のdataを本学電算機センターFacomM150Fシステムに入力し,crosstableを作製し,本症に対する一般の人々の認識の程度は,属性により差異が認められるかどうかを検討し,以下の如き結論を得た.
    1.本症に対する認識は,性,年齢,居住区などによる差は少なく,むしろ就学年数(学歴),職種などとの関連が感じられた.
    2.就学年数(学歴)の多い人程,本症をよく知り,予後を明るくみているにもかかわらず,患者に対する否定的見解,社会的不適応感を抱く傾向が見られた.このような比較的教養の高い人々に対する本症理解のための積極的な働きかけが必要だと考えられた.
    3.就学年数(学歴)が少ない人では,予後に対して悲観的見解を有する傾向があるにもかかわらず,患者に対する否定的見解は少なく社会的適応も悪くないと考えているが,反面,本症の実態を充分理解していないと推測され,低年齢(小学,中学校)における本症を含めたこの種の疾患全般にわたる教育(啓蒙)の必要性を感じさせた.
  • 1984 年 9 巻 1 号 p. 68-
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 9 巻 1 号 p. 69a-
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 9 巻 1 号 p. 69b-
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 9 巻 1 号 p. 70a-
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1984 年 9 巻 1 号 p. 70b-
    発行日: 1984年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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