臨床神経学
Online ISSN : 1882-0654
Print ISSN : 0009-918X
ISSN-L : 0009-918X
48 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
日本神経学会賞受賞
  • 堀川 楊
    2008 年 48 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル 認証あり
    神経難病など重症神経疾患患者の退院後のアフタケアの必要から,1978年,新潟市の信楽園病院に,往診と定期的な訪問看護を提供する継続医療室が創設された.著者は,1990年の論文でその13年間の実績を報告し,在宅医療を支える包括的,継続的な地域ケアシステムの構築の必要性とあるべき形態を提唱した.その後,高齢社会の到来にともなう施設医療から在宅医療への施策の転換で,種々の在宅ケアサービスが整備された.著者は,1997年に患者の受け皿となるべく新潟市に複合体の内科・神経内科診療所を開設し,2000年に発足した公的介護保険制度を軸に,地域の行政および医療,介護に携わる多職種の人々と連携して在宅医療を実践してきた.本論文は,1990年論文をもとに,同地域ケアシステム構築の経緯を加筆し,神経内科診療におけるシステム化された在宅ケアの有用性を評価したものである.
総説
  • Akio Takagi, Hirofumi Nakase
    2008 年 48 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    Adverse reactions to genral anesthesia, which partly resembled malignant hyperthermia (MH), were more frequent in muscular dystrophy than in controls. In the present study, 35 cases so far reported in Duchenne or Becker muscular dystrophy (DMD or BMD) were analyzed and their pathogenesis was discussed. Cardiac involvements were sole manifestations in 7 cases. In other 28 cases, the acute rhabdomyolysis was the most prevailing manifestation. About 60% of myolysis cases were associated with muscle contracture (rigidity) or other hypermetabolic signs such as hypercapnia, hyperthermia and metabolic acidosis. Cases with BMD were more hyperthermic than with DMD. These results suggest Ca ion-induced hypermetabolic reactions are also present in dystrophinopathy, which have been assumed as core syndromes of the classical (gene-defined) MH. However, question whether the abnormal Ca ion is from the extracellular or intracellular stores is still unclear. Circumstancial evidences suggest that the Ca-induced Ca release (CICR) mechanism might also be involved. Endogenous redox modulators such as nitric oxide or reactive oxygen species in the dystrophic muscle might contribute to the perturbed Ca ion homeostasis.
原著
  • 谷口 彰, 成田 有吾, 内藤 寛, 葛原 茂樹
    2008 年 48 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    平成16年度に厚生労働省特定疾患治療研究事業パーキンソン病(PD)関連疾患として受給者証が交付された75,026人のうち,電子入力され厚労省から研究用に提供されたPD 23,058人の臨床調査個人票を集計・解析した.平均年齢71.3歳,平均発症年齢62.7歳で,男女比1:1.47であった.40歳未満の若年発症PDは626人(2.7%)で,863人(3.7%)にPDの家族内発症をみとめた.初発症状は振戦が53.6%でもっとも多かった.今回の集計・解析は,対象がYahr III度以上のPD患者に限られる.このため医療費補助との関係でバイアスが入る可能性がある.医師の能力や診断基準が明瞭でないなど診断精度に問題があり,交付件数に比して利用可能な登録データ件数が少ないなど多くの制約はある.しかし本邦におけるPD患者の実態の一端を反映すると考えられた.
  • 松本 英之, 濱口 浩敏, 中山 貴博, 小田 哲也, 五十川 孝志, 今福 一郎
    2008 年 48 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    頭部CT骨条件では一部の症例で内頸動脈サイフォン部に石灰化が観察される.しかし病的意義は不明な点が多く,この石灰化を頭部MRAと頸動脈超音波の所見と比較した.対象は脳血管障害と診断したまたはうたがった患者112例である.石灰化を形状により4段階に分類し,頭部MRAでの同部位の狭窄度および頸動脈超音波でのmax IMTと比較したところ,有意な相関関係をみとめた.近年のPACS技術の発達によりDICOM viewer上での骨条件への変換は容易となった.石灰化の程度から内頸動脈サイフォン部と総頸動脈分岐部の動脈硬化を即座に簡便に推定でき,内頸動脈の石灰化は虚血性脳血管障害の診療上,注目すべき項目の1つと考える.
症例報告
  • 高橋 真, 融 衆太, 太田 浄文, 泉山 肇, 横田 隆徳, 水澤 英洋
    2008 年 48 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は31歳の女性である.緩徐進行性の近位筋優位の筋力低下ならびに多発骨折をみとめ,血液・尿検査の結果などより腫瘍性骨軟化症ミオパチーをうたがった.各種画像検査などをおこなうも原因腫瘍の発見にいたらなかったが,Indium-111 octreotideシンチグラフィを施行し原因腫瘍を発見した.腫瘍摘出をおこない疼痛,筋力低下はすみやかに改善した.腫瘍性骨軟化症の原因腫瘍は良性で小さく,成長の遅い間葉系細胞からなる腫瘍が多く,一般的な画像検査では検索が困難となる症例が多い.本症例はIndium-111 octreotideシンチグラフィにて腫瘍性骨軟化症性ミオパチーの原因腫瘍を発見しえた本邦初の報告である.
  • 桑原 宏哉, 野口 悦正, 稲葉 彰, 水澤 英洋
    2008 年 48 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    複雑部分発作にて来院した81歳女性である.頭部MRI拡散強調画像で右側の大脳皮質・視床に高信号病変,脳波で周期性一側性てんかん発射(PLEDs),脳血流シンチで同側の血流増加をみとめた.治療血中濃度域にあったものの,2カ月前より内服していたテオフィリンによる痙攣と診断.同薬剤を中止して病状は改善した.その後,2日間の下痢を生じた後よりふたたび部分発作が出現した.血清ビタミンB6が測定感度以下であり,混合ビタミンB製剤の投与にて痙攣はすみやかに消失した.テオフィリン投与下では血中濃度に関係なく痙攣を誘発しうること,およびテオフィリン関連痙攣の症例ではビタミンB6欠乏状態が存在しうることに留意すべきである.
  • 田中 公二, 柴田 護, 野沢 悠子, 駒ヶ嶺 朋子, 森田 陽子, 五味 愼太郎
    2008 年 48 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/02/22
    ジャーナル フリー
    症例は23歳の女性である.4歳時からアトピー性皮膚炎,小学生時から気管支喘息に罹患していた.200X年7月に歩行障害,下肢感覚異常,膀胱直腸障害を急激に発症し入院した.神経学的所見では,下肢筋力低下,下肢の温痛覚と位置覚障害,下肢腱反射低下ないし消失,および弛緩性の膀胱直腸障害をみとめた.入院時のMRIでは,円錐上部の腫脹がみとめられ,髄液検査では細胞・蛋白・IgGは正常であったが,IgE(8IU/ml)とMBP(7.8ng/ml)は高値であった.血液検査ではダニ特異的IgEが強陽性であった.以上の所見からアトピー性脊髄炎と診断した.入院後,ステロイド・パルス療法と血漿交換療法で臨床所見は改善した.第21病日以降に施行されたMRIでT2強調画像にて高信号を示す散在性病変が腰髄∼仙髄レベルに確認された.髄液と血液のIgEおよびアルブミンの測定結果から,IgE髄内産生の可能性が示唆された.髄液IgEを経時的に測定したが,病勢との相関は明らかでなかった.本例のような病巣部位と急性の経過は従来の報告に比し,非典型的と考えられた.
短報
feedback
Top